ボエームの練習に行ってきました。
全員が一同に揃って…と書きたいところですが、拘束時間と場所の広さの都合もあって、時間をズラして、一緒に音楽稽古をやる人たちが集まりました。ですから、私は第1幕のオープンニングと、第4幕のフィナーレ担当ですから、第1幕の後半の稽古や、第3幕、第4幕の前半の稽古に付き合いません。本当は、他の人達がどんなふうに歌うのか、すごく興味があって、お稽古を見学したいのですが、場所の問題もあって、それはかないません。うむ、残念。まあ、当日本番の演奏を聞くことで我慢しましょう。
で、私が練習会場に行ったのは、もう練習が始まって、だいぶ経ってからです。すでにY先生は(練習を注意するために)叫びすぎてノドが痛いと言ってましたもの。それくらい、後の時間に登場したわけです。
私の出番の直前練習では、第4幕のロドルフォとマルチェッロの二重唱のシーンを練習していました。ここでロドルフォを歌うのは、私ではなく、テノールのK先生です。部屋に入ったら、いきなりK先生が歌っているわけで…なんかスゴイ。現役のオペラ歌手の生声をほんの数十センチの距離で聞いちゃいました。いやあ、ご満悦ですわぁ…。やっぱプロは違うわ…(って当たり前ですね)。
で、前の稽古が終わって、ちょっと休憩を挟んで、第4幕のフィナーレの練習が始まりました。この部分で歌うのは、前半のメインがミミ(妻が担当)で、それにロドルフォ(私)が絡んでいくという構成。途中でショナールとマルチェッロとムゼッタが参加し、ミミとムゼッタの二重唱から、ムゼッタの祈りへと、歌の中心がミミからムゼッタに移り変わって、コルリーネの登場からセリフ劇に突入し、ロドルフォの絶叫で劇を終えるという構成になっています。
バリトンのY先生、ソプラノのF先生、テノールのK先生と、3人のオペラ歌手が総掛かりで音楽稽古をしてくださいました。実に贅沢ですわ。
ムゼッタさんの到着が遅くなるとの予定だったので、まずはムゼッタ登場以前のシーンを中心に稽古してもらいました。ロドルフォの高いBを含んだフレーズは不出来(汗)でしたが、ここは今注意したからと言って、どう変わるわけでもないので、スルー。まあ、稽古にやってきて、いきなりここのフレーズは歌えません。本番では、アリアを歌って、第1幕を歌っていますから、その後、声を冷やさないように注意していけば、きっとなんとかなるでしょう(楽天主義です)。
いくつかイタリア語の発音を取り違えてたところや、無意識にいらない子音や母音を挟み込んで歌っていた箇所を直されました。注意されたのは、それくらいかな? まあ、基本的、私は合いの手を入れる立場であって、音楽的には完全な脇役なので、そんな感じで十分なんだと思います。
ムゼッタさんが到着してから、その残りに取り掛かりました…が、いわゆる「ムゼッタの祈り」と呼ばれるアリエッタをどう歌うかで、先生方の意見が割れました。テンポの問題もあるし、どこまで楽譜通りに歌っていくのかもあるし、そこに表現やアンサンブルの問題もからんで…最後は一つのカタチに落ち着きましたが、まあ、色々あるわけです。
この部分(第4幕フィナーレ)は、ミミもロドルフォもムゼッタもマルチェッロもショナールもアマチュアさんなのですが、色々な都合があって、コルリーネ役はY先生が歌う事になりました。先生だけ声が“いかにもプロ”なので、違和感があって、私は吹き出しそうになりました。やっぱり、プロとアマには越えられないほどの山や谷があるんだなあって思ったわけです。
少しの休憩を挟みました。ムゼッタさんは帰宅し、残りのメンバーで、今度は第1幕のオープニングのシーンの練習です。Y先生は、またもコルリーネを歌うので、アンサンブルの中に入り、F先生はお子さんの面倒を見るために母屋に戻ってしまったので、この部分の稽古は、K先生のご指導で進められました。
実は、今回のボエームの中で、我々にとって一番難しいと思われるのが、この第1幕のオープニングの男声四重唱なのです。とにかく、登場人物が4人と多いし、それぞれに歌が入り組んでいるし、歌っているのが男性だし(笑:アマチュアの歌の世界では、女性の歌のレベルと比べると、男性のレベルは庶民的だというのが常識です)、まずは歌い通すのが大変ではないかと予想されていたほどです。
実際、難しかったですよ。生きた人間を相手に歌うわけですからね。生きた人間は、自宅練習段階で想定していた理想の相方とは、テンポも違えば、フレージングも違うわけで、こちらもあらかじめ想定していた歌い方とは変えて歌わないといけないわけで、その違いが面白かったです。
まあ、全般的には、テンポはかなりゆっくりめになっていたし、それに伴って、パワーは若干必要となりますが、合わせそのものは、やりやすくなりました。
どうしてもアマチュアですから、それぞれが忙しい日常の中で時間を作って練習していわけですから、人によって仕上がり具合が違うのは当たり前だし、歌っているうちに、リズムを取り間違えたり、休符を飛ばしたり、ロングトーンが短かったり、フレーズを飛ばす、落とす、間違えて歌う、他人のパートを歌うなどなど、色々と事故は起こります。そりゃあもう、大変なんです。
私は途中から、お仲間の歌ではなく、ピアニストのピアノに合わせて歌うことにしたくらいです。いやあ、そうしないと、歌がバラバラになって分解してしまうかも…と心配しちゃったからです。
そういう所から始めて、一つ一つ注意され、指導をされて、解決策を探して、修正していきました。私も2~3箇所、食い気味で歌って(食い気味で歌うのは良いけれど)その後のテンポを少しずつアップさせてしまったので、そこは注意され、無駄にテンポを上げないように言われました。それと、高い音の続くフレーズを張った声で歌ってしまったので、そこは声を張らずに軽く歌うように…と直されました。あと、ソットヴォーチェと指示された箇所を、ソットヴッーチェを意識しすぎて、声が半分ほど抜けた歌い方をしていたので、そこまで声を抜かずにしっかりと歌うように直したくらいかな? ま、私はそんな感じかな?
最初はどうなるかな?と思いましたが、最後にはなんとかまとまり、よかったなあと思いましたし、やっぱり大勢で歌うのは、楽しいなあって思いました。たぶん、発表会でも何とかなるでしょうね。次回のボエームの練習の結果を見て、楽譜を外すかどうか、演技を付けるかどうかを、先生方で考えるようです。
まあ、理想の演奏としては、楽譜を外して暗譜で歌い、衣装をつけて、演技をつけて、普通にボエームのオペラを上演することですが、何しろ大勢の人間がかかわるわけだし、みんなアマチュアで、それぞれの生活や仕事がある中で、この発表会の準備をしているわけだし、準備期間も約三ヶ月という短さだし…。そういう諸々の条件を考えると、もしかすると、楽譜が外せない人が出てくるかもしれないし、暗譜で歌うのが精一杯で芝居なんてできない人が出てくるかもしれません。まあ、そうなったら、そうなったで、一番安全安心なところを選択していかないといけません。オトナとしての妥協が必要とされるわけです。さあ、どうなるでしょうか?
私は演奏会形式のオペラ上演(衣装も芝居も無しで譜面ガン見)でもいいやと思ってます。たまにプロの歌劇団の演奏会形式でのオペラ上演って奴を見ますが、それはそれで面白いですしね。我々が行うのは、あくまでも発表会であって演奏会ではないので、歌う人の都合に合わせて演奏形態を考えて、プログラムを組めばいいので、あえて冒険はせずに演奏会形式でいいんじゃないかって思ってます。
ちなみに、私はすでにボエームの暗譜は、終えてますよ(えへえへ)。
お稽古が終わって、みんなで場所を変えて反省会を開きました。私はK先生から「第4幕は、声が出しづらかったのですか?」と「高音がだいぶ出るようになりましたね」と言うお言葉をいただきました。第4幕…と言うか、やっぱりスロースターターなんでしょうね、私。声が温まるまでに多少の時間がかかりますって答えました。それと、高音に関しては、ほんと、ここ2~3ヶ月で急に出るようになりました。なんとなく、高音発声のコツがつかめてきたような気がするのです(こちらの記事を参照してくださると幸いです)。まあ、これもY先生のご指導と、ボエームに取り組んだおかげだと思います。K先生から「たぶん、ボエーム丸々一本歌えるんじゃないの?」と言わましたが、少なくとも今のところ、ロドルフォのアリア「冷たい手を」(Hi-Cがあります)は歌える気がしません。このアリアが歌えれば、ボエーム丸々一本も夢ではないだろうと思いますが…そんな夢物語を語っても仕方ないですね。
さて、来週もボエームの音楽稽古があるぞ、頑張ろう。
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コメント
ご無沙汰しております。
大掛かりで楽しそうですね。
練習が楽しいのは何よりです。
で、発表会はいつですか?
メールを送りました。
お疲れ様です。ボエーム練習の進捗状況など楽しく読ませていただいています。「高音発声」についてのまとめも参考になります。私が習い、練習している方法と違う点もありますが、その人に合った方法に出会うことが重要なのでしょうね。
ということで一度、キング先生本人の歌を聞いてみたいものです(笑)。
これから仕上げに向けてたいへんでしょうが、体調に気を付けてがんばってください。
BEEさん
最近、詳細が決まり、次の声楽関係の記事のところでアップしようと思っていたところです(記事の中で告知しないと読めない人もいますからね)
でも、せっかくですから、ここでも告知しちゃいます。
2016年7月18日(海の日)
JR関内駅・市営地下鉄関内駅・みなとみらい線馬車道駅 下車
関内ホール 小ホール
13:30開場/14:00開演 入場無料(笑) 声楽発表会
発表会自体は二部構成で、第一部が通常の発表会、第二部がボエームのハイライトとなっています。私は、第一部の9番目に「フェデリコの嘆き」を歌い、第二部の最初(第1幕のオープニング)と最後(第4幕のフィナーレ)でロドルフォを歌います。
というわけで、よろしくお願いします。
axbycz21さん
メール、届いてませんよ。他の方のメールは普通に到着し返信できていますので、axbycz21さんのメール不着の件は、こちらがわの問題ではないと思います。メールソフト等の設定をご確認ください。よろしければ、ご再送いただけますと、感謝です。
ねぎさん
>私が習い、練習している方法と違う点もありますが、その人に合った方法に出会うことが重要なのでしょうね。
人それぞれ、持っている楽器が違いますから、高音発声一つとっても、大筋は同じであっても、細かい部分は違うのかもしれないし、本当は大切なポイントなのに、私が書き落としているかもしれませんので、その点はご了解ください。
さて、キング先生はテノール歌手としては、なかなか素晴らしい歌手だと思います(これ、ほんと)。何と言っても、持ち声が良くて、切々と甘く歌うので、女性ファンも多いです。ご本人はドイツリートが専門だと言い、ドイツリートを中心に活動なされたいと常々言ってました。
>ということで一度、キング先生本人の歌を聞いてみたいものです(笑)。
キング先生は現在、歌のお仕事はかなりセーブしているようで、教えることを中心にしているようです。ですので、ナマのステージ(年に2~3回ほど出演されます)を聞くのは、なかなか難しそうですが、幸いにもYouTubeに音源をアップされていますので、そちらで聞くことは可能です。
と言うわけで、先生の十八番の、シューマンの「詩人の恋」です。先生はこの作品を大切にされていて、毎年毎年「詩人の恋」をメインにしたコンサートを開いているくらいです。
https://www.youtube.com/watch?v=aJ-eUsqweZQ
かつての生徒として、生意気な事を言えば、先生は、ドイツリートよりもイタリア歌曲の方が似合っていると思うし、オペラも悪くないですよ。キャリア的に、舞台となると、脇役テノールが多いようですが、一つ一つ誠実に歌われています。もっともっとキャリアを積んで、主役をやれるようになればいいのですが…今は教える方にシフトしているんですよね、なんとも残念です。