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みんなで軍歌を聞きませう

 最近、いわゆるアラサーやそれ以下の若い世代の間で、軍歌が流行っているそうなんです。

 「そうなんですか?」 どうもそうらしいです。YouTubeやニコ動の軍歌関係のアクセス数が増えていたり、アマゾンなどでも軍歌関係のCDが売れているそうです。レコード会社も、最近はCDが売れずに困っていますから、若者向けにジャケット・デザインを一新して、頑張って軍歌のCDを販売しているそうです。

 軍歌が流行っている…もしかすると、若者の右傾化? 別に関係ないと思います。彼らの多くはファッションとして軍歌を捉えていると思います。

 …日本は戦争への道を歩みだした? それって『テレビを見ているとバカになる』とか『ゲーム脳は子どもをダメにする』というのと同じ類の妄想妄言ですね。J-POPでラブソングばかりが歌われているからと言って、日本の若者たちが、年がら年中発情して、性犯罪を犯しまくっているのかと言えば、そりゃあ違うわけです。むしろ草食系男子が増えて、未婚率がグングン上昇して少子化社会を迎えて、大変な状況になっているじゃないですか?

 とは言え、イデオロギー的に軍歌を受け付けない人たち(主に団塊の世代以上の、戦後すぐのアメリカによる“War Guilt Information Program”に沿った教育を受けた人々)がいる事は理解してますし、心情的に軍歌を受け付けられない人や、軍歌が悲しい思い出とリンクしているような人は、無理して軍歌を聞く必要もないわけです。

 今回の軍歌ブームなんて、ただの流行りですから(笑)。

 軍歌とか戦時歌謡と言っても、ただの、約70年前の日本の流行歌なわけです。歌詞が現代の世相に合わないのはもちろん、イデオロギー的に反感を覚える人がいても、そりゃあ仕方ないです。だって、大昔の流行歌だもの。今の価値感覚で考えると、色々あって当然です。

 たぶん、若い世代にとっては、軍歌って、今まで聞いたことも無い、新しい音楽なんじゃないかな? 若者って、新しもの好きだからね。そういうモノに飛びつくのは、彼らが若いからでしょう。

 さて、最近、軍歌が若者に流行っていると聞いて、私も久しぶりに軍歌を聞いてみました。どうせ聞くなら、今一番流行っている曲がよいでしょう。ちなみに、今、一番流行っているのは、林伊佐緒&ボニー・ジャックスによる「出征兵士を送る歌」なんだそうです。これです。

 いやあ、軍歌だなあ…。しかし、21世紀の今の耳で聞くと、確かに個性的なサウンドだよね。若者にとっては、斬新すぎるくらいに斬新な音楽です。こりゃあ、イデオロギー抜きで若者が飛びつくのも分かります。歌も伴奏も、嫌味なく真っ直ぐだし、単純明快でスカッとした音作りをしています。

 ちなみに、ここで歌っているのは、作曲家である林伊佐緒氏ご自身ですね。この曲は、歌手である林伊佐緒が自ら作った歌なわけで、今で言う、シンガーソングライターのハシリのような人ですね。

 さて、戦時歌謡を含む軍歌と言うと、私などは子供の頃に散々聞きましたね。私は…もちろん戦後生まれですが(笑)、私が子どもの頃は、まだ駅前には傷痍軍人をカタる乞食がたくさんいて、物乞いをしていた時代だったんです。乞食…今の若者は、乞食なんて、リアルに見たことないでしょうね。

 軍歌も普通に町中に流れていました。軍艦マーチなんて、パチンコ屋の定番曲で、聞きたくなくても耳に入ってきましたね。テレビ番組でも、普通にBGMとして軍歌が流れていたし、オトナたちもお酒が入ると、普通に軍歌を歌ってました。のど自慢番組でも、頻繁に軍歌が歌われていました。そんな風に、私が子どもの頃は、まだまだ軍歌が愛されていました。

 やがて時が流れ、新作が作られなくなった軍歌にとって変わって流行り始めたのが、演歌でした。演歌とは、つまるところ“古賀サウンド”であって、子供時代を朝鮮で過ごした古賀政男が、作曲家として世に出る際に、幼い頃に耳にした朝鮮音楽を自分流に咀嚼して創りだした音楽であって、当時の日本の音楽とは異なったニューサウンドだったわけです。まあ『日本人作曲家によるK-POP』って感じだったんだと思います。とにかく、当時の演歌ってのは、新しい音楽だったんです。

 そんなわけで、だんだん、軍歌を耳にする事が減り、街中に、演歌が響くようになりました。私の子ども時代は、ちょうど、軍歌から演歌に切り替わる時代でした。あの頃はよく「演歌は日本人の心の音楽だ」という言葉を耳にしました。考えてみると、演歌って、朝鮮出自の音楽であって“日本人の心”とは程遠い音楽なんだけれど、当時はそんな事、毛ほども思わなかったんですね。

 まあ、やがて演歌も古びてしまい、当時のニューサウンドであるJ-POPに飲み込まれてしまうのだけれどね。こうして、世の中は繰り返されていくわけです。

 と言うわけで、軍歌って、私にとっては懐かしい子どもの頃の音楽なんです。小学生の頃なんてクラスメートと一緒に耳で覚えた『月月火水木金金』とか『同期の桜』とか『露営の歌』とか歌ってたよ(笑)。…たぶん、今でも歌える(大笑)。

 だいたい、子どもの頃、夢中になって読んだ漫画は『のらくろ』のカラーの単行本(たぶん、復刻版だったんだろうなあ…)だったりするし、アニメでも『のらくろ』見てたし、今でも軍隊の階級は、二等兵,一等兵,上等兵…と『のらくろ』が出世した順番で頭に入っているし…。だから現在の自衛隊の階級を言われて「それって、昔で言うと、どの階級?」とか尋ねちゃったりします。

 たぶん、日常生活の中で軍歌と親しんでいたり『のらくろ』に夢中になったのは、私が最後の世代じゃないかなって思います。だから、今の若い人たちにとって、軍歌が新鮮に感じるのは理解できます。

 『軍歌は危険だ!』と思っている人は、21世紀を生きる現代人の耳で聞き直してみると良いと思います。歌詞は、今となっては、全くリアリティーがありません。だって70年も経っているだもの。当時は国威発揚のために作られた曲だったでしょうが、今、これを聞いて国威が発揚するかって言うと、そりゃあ無理だよね。国威発揚どころか、なんともレトロなサウンドに、癒やされちゃうかもしれません。国威発揚だったら、軍歌よりも、サッカーの国際試合でサポーターさんたちが歌っている歌(よく分からない曲ですよね)の方が、よっぽど国威発揚しちゃってますよん。

 と、何をどう言っても、人間、年を取ると頑固になってしまいますから「軍歌はダメ」と思い込んだら、誰がなんと言ってもダメなんでしょうが…。まあ、ご本人に軍歌に対するアレルギーがあったとしても、若い人たちの楽しみに、目くじらを立てるのは、老人として正しい行いとは思いません。いいじゃないですか、若者たちが喜んで楽しんでいるなら…。やがて彼らも軍歌に飽きるし、飽きたら次に行きますから(笑)。

 で、若者たちにとっては、軍歌なんて、ただの流行りモノでしょうが、私にとっては、とてもとても懐かしい音楽なので、これを機会にCDを買っちゃいました。なんか、最近は軍歌ばかり聞いてます。いいですね~。ちなみにこのCDでの「出征兵士を送る歌」は林伊佐緒バージョンではなく、伊藤久男氏によるカバーバージョンです。

 軍歌は、主にキングレコード、コロムビアレコード、ビクターレコード、テイチクレコードなど、古くからあるレコード会社に音源があって、それらの会社から発売されています。音がクリアでステレオ録音されているのは、いわゆる“戦後録音”と言われる奴で、今の人にも普通に聞ける音質です。一方“オリジナル音源”とか“戦前・戦中音源”と呼ばれるのは、作曲された当時の音源で、当時の人々が聞いていた音源なんですが、たいていはモノラル録音であったり、SP録音だったりするので、現代人の耳には厳しい録音が多いです

 それにしても、軍歌を聞いていて思うのは、これって、やっぱり、基本的には“吹奏楽”なんですよ。ブラスバンドのサウンドなんですね。とは言え、昔々の吹奏楽なんでしょうね。最近の学生さんたちが演奏する吹奏楽って、みっちりしていて、こってりしていて、ジイサンの耳には色々と厳しいのですか、軍歌程度の密度の吹奏楽なら、心地よく聞けたりします。このくらいのサウンドなら、吹奏楽が苦手な私でも積極的に聞けるんですがねえ…。あと、軍歌って、演歌以前の日本の流行歌ですから、声が実に伸びやかなんですよね。この点も良いです。

 数ある音楽の一つとして、軍歌を楽しむのも、良いんじゃないかなって思います。

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コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    私、アメリカならば、ガチガチ民主党支持の、リベラル派、
    戦争には絶対反対の立場でして、
    日本では、まあ、自民党支持ですが、

    現在の集団自衛権問題に関しては、
    いくらなんでも、憲法違反だろう、と思っておりますが、
    しかし、そういう、現実に対する思想・思考とは別途に、

    軍歌、うんうん、懐かしい気がしますね。
    私も戦後生まれ、戦後育ちですが、
    祖父母の世代は戦争に行った世代、
    父母の世代は戦争をリアルに覚えている世代。
    そういう祖父母・父母を持つ私の世代には、
    軍歌は懐かしいもの。

    現実の戦争には絶対反対ですが、戦争映画は大好きです。
    異色の戦争映画を、勝手ながら、ここに書かせていただきますと、
    スターシップトゥルーパーズ。
    人間同士の戦争ではなく、巨大昆虫軍団 VS.人間。
    SF仕立てですが、戦争映画です。

    努力・友情・勝利、といった、なんというか、
    戦争の素晴らしさを、これでもか!これでもか!これでもか!と強調することで、
    戦争の愚かしさを伝える、という映画です。

    軍歌も音楽。音楽は音楽として、楽しめばよいと思います。
    が、現実の戦争はいけません。
    そんなことを思った、本日のすとん様エッセイでした。

    おしまい

  2. こうじ より:

    私は昭和31年(1956年)に山奥小学校に入学しましたが、乞食はへーと(ほいと)と言われていましたがほとんど見たことはありません。
    運動会は国旗掲揚、国歌斉唱で始まりリレーの音楽は軍艦マーチ、君が代行進曲、黒田節行進曲などでした。マスゲームは『昭和の子供』(昭和、昭和、昭和の子供だ僕たちは…というやつ)など。今考えるととても不思議です。きっとレコードを買うお金がなくて昭和初期のレコードを使っていたのではないかと思います。練習時は手回しの蓄音機でしたよ。
    それで最初は張り切って歌ったり行進したりしていたのですが、ふと周りを見ると大人も子供もしらけた様子で君が代なんかを歌う人はいなくて、ああ、みんなこの歌は好きじゃないんだと思ったものです。
    大人が軍歌を歌うのは聞いたことがないように思います。戸口に遺族の家という札がある家が結構あって、そういう家は生活が苦しそうでした。そういう歌を聞くのは皆つらかったのかもしれません。

  3. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     記事に書くのを忘れましたが、私も戦争反対、平和大好き人間です。ただし、反戦を貫く余り、敵が攻めてきたら国を明け渡そうとか、相手が望むなら財産も捧げるし、女子供も差し出しても良いとか言う、左翼とか売国奴とか中韓のスパイではありません。この豊かで安全な日本という国を、さらに良くして、子孫たちに引き渡したいと思う、平凡な日本オジサンの一人です。

     まあ、武力を用いる戦争は20世紀のスタイルであって、21世紀の戦争は武力じゃなくて情報戦だろうと思うし、そういう点ではすでに我が国は、開戦状態にあるのかもしれないなあって思ってます。マイナンバー制がいよいよとなったら、いきなり官公庁のコンピューターがハッキングされて「マイナンバー制度は危険だ!」と叫びだす一方で、外国人登録法が廃止された事には文句を言わないという事は、敵国はあの二国のうちの親玉の方って事で決まりって事でいいんでしょうね、ああ、分かりやすすぎ(笑)。

    >スターシップトゥルーパーズ。

     あの映画は私もよく覚えてます。ぜひ、もう一度見たいかも。ほんと、戦争を通して戦争の愚かさを伝えるという点では、よく出来た映画だと思いますよ。

    >軍歌も音楽。音楽は音楽として、楽しめばよいと思います。

     そうでないと、ワーグナーも楽しめません。私、ワーグナー大好きですが、それをもって好戦主義者と誤解されたらイヤですって、ワーグナーはあくまでも音楽として好きなのであって、戦争を賛美しているわけじゃありません。しかし、ユダヤ系の人やフランス系の人がワーグナーを嫌うのは分かりますし、そういう人には配慮する必要はあると思ってます。

  4. すとん より:

    こうじさん

     音楽は嗜好品だし趣味のモノだと思いますので、軍歌が嫌な思い出とつながっている人は聞かなくてもいいと思います。誰にだって、触れてほしくないモノってありますからね。

     でも一方で、若者の向学心とか、好奇心とかは大切にしてあげたいと思うし、レコード会社にとっては、ひさしぶりのヒットのようですが、それを応援してあげたいという気持ちはあります。あと、軍歌って、音楽的にも面白いと思うし。

     私の周囲は、元軍人のジイサンたちが、やたらと元気だったんですよ。特に、元将校だったジイサンたちは、本当にインテリで、なかなか面白い話をたくさんしてくれました。当時の私は若くて生意気で左翼だったので、そういうジイサンたちを、ただの人殺しだと思ってました。ああ、バカですね。今なら、敬愛の気持ちをもって、お付き合いする事ができるのですが、そう思った時は、ジイサンたちはみんなあの世に旅だった後でして、ほんと、後悔先に立たずです。

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