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クラシック曲とポピュラー曲、難しいのはどっち?

 さて、どちらの方がより難しいでしょうか? 歌とフルートでは、事情が違うので、分けて考えてみたいと思います。

 まず歌の場合。歌の場合は、比較が難しいと思います。と言うのも、使われるテクニックが全然違うからです。クラシック曲…オペラアリアにせよ、ドイツリートにせよ、マイクを使わずに歌うのが大前提となります。ですから、ある程度の音量が出せる発声でなければいけませんし、その上で広い音域を駆使して歌うわけです。言葉にすると単純な事ですが、実際にやってみると、これがまた難しいんです。

 一方、ポピュラー曲は、マイクの使用が前提となりますので、音量に関しては無視できます。大声でも歌えるし、ささやき声でも歌えます。音量を考えなくていいので、音域にしてもテクニックにしても、かなり自由な発声で対処できます。むしろ、クラシック音楽で使われているよりも、複雑な和音とリズムに対応する必要があり、そこが難しいと思います。

 ですから「クラシック曲とポピュラー曲、難しいのはどっち?」と尋ねられた場合、歌ならば「クラシックとポピュラーでは、歌のジャンルが違うので比較できません」と答えるのが適当だと思います。実際、クラシック歌手が歌うポピュラー曲は、かっこ悪くて聴けたもんじゃない歌唱が多いですし、ポピュラー歌手が歌うクラシックは下手さが目立つんですよね。ですから、同じ歌手というくくりにはなるけれど、別物と考えるのが妥当かと思います。

 ただし、むりやりに比較するならば、クラシック曲とポピュラー曲のちょうど中間的な存在である、ミュージカルのソングを題材にして考える事ができます。

 ミュージカルのソングの場合、クラシック系歌手が歌う場合と、ポピュラー系歌手が歌う場合がありますが、概ね、クラシック系歌手が歌った場合の方が、歌唱としての出来が良いという傾向があります。そこから考えるに、歌唱力としては、クラシック系の歌手の方がポピュラー系の歌手よりも平均レベルが高いことが考えられますし、もしもクラシック系歌手の方が歌唱レベルが高いのならば、それはおそらく、クラシック曲の方がポピュラー曲よりも難しいので、自然と歌手たちの歌唱力のレベルが高くなるのではないか…と言えると思います。

 次に、フルートの場合。クラシック曲の演奏に際しては、細かく複雑に記載された楽譜を間違いなく演奏できる事が要求されます。

 一方、ポピュラー曲に関しては、初学者のうちはクラシック音楽同様に、楽譜通りに演奏できる事が要求されます。吹奏楽やビッグバンド系だと、クラシック曲同様に複雑な楽譜を演奏できる力が要求されます。

 しかし同じポピュラー曲でも、ジャズや一般のポピュラーバンドの場合、セッションやジャムに参加するレベルになると、楽譜通りに演奏できるのは当たり前であって、さらに楽譜に頼らずにアドリブで作曲をしながら演奏できる事が要求されます。

 それらの音楽の場合、渡される楽譜は、歌詞にコードが振ってあるだけのコード譜であったり、メロディしか書かれていないメロディ譜(リード譜とも言う)だったして、自分のパートの音符なんて、一つも書いてなかったりするわけです。いやいや、ヘタすると楽譜も無しで、音源聞いてキーだけ指定されて「後はよろしく」のひと言で演奏する事もあります。そんな状況で、きちんと前奏を演奏して、伴奏を演奏して、間奏も後奏も演奏するんです。そうなってくると、オリジナルの演奏をなぞれる高い“耳コピー能力”が必要とされますし、アドリブ力も必要になりますし、新曲の場合は、自分のパートは自分で作曲して演奏できる能力も必要になります。

 ある意味、クラシックでは作曲家の意図通りに演奏できる高度な演奏力が必要ですが、ポピュラー曲の場合、どんな曲でも自分に引き寄せて自分なりに演奏できる力が必要となります。つまり、同じ演奏でも、そのアプローチや必要とされるテクニックや能力に違いがあります。

 こうなってくると、フルートは、入口付近は同じであっても、上達するに従って、歌以上にジャンルの違いが際立ってきます。だって、歌なら、余興などの軽いノリで、ポピュラー歌手がクラシック曲を歌ったり、クラシック歌手がポピュラー曲を歌ったりという事もあるけれど、フルートの場合、クラシック系のフルーティストがジャズバンドに参加するなんてありえないし、多くのポピュラー系のフルーティストたちの腕では、クラシック曲の演奏に必要なテクニックが不足しているのが現実ですから。

 ただ、これもむりやり比較するならば、ポピュラー系フルーティスト(と言うよりも、ジャズ系フルーティスト)の中には、現代的な解釈も加えつつも、素晴らしいクラシックアルバムをリリースしている方が少なからずいます。一方で、クラシック系フルーティストの場合は、いわゆるポピュラー曲を演奏しても、譜面通りにしか吹けないので、実につまらない演奏しかできなかったりします。そういう意味では『トップのポピュラー系フルーティストは無敵である』という言い方ができます。

 ただし、クラシック系フルーティストに、凄腕アレンジャーが付くと、話は別になります。クラシック系フルーティストの欠点は、楽譜通りにしか演奏できない事ですから、その楽譜をポピュラー対応にしちゃえば、全然問題ありません。もちろん、アドリブなどには対応できないので、セッションやジャムに参加するのは無理ですが、バックバンドもクラシック系の人々で固めたコンサート(つまり絶対にアドリブはしないという前提)でのポピュラー曲の演奏ならば、問題なくなります。

 いやあ、歌以上に、フルートのジャンル違いって深刻なのかもしれません。

 そういった点では、クラシックにもポピュラーにも対応しちゃう、吹奏楽上がりのフルートちゃんたちって、案外すごいのかもしれません。楽譜通りにもガンガン演奏できちゃうと、アドリブもお茶の子さいさいだもんね…って、それは言い過ぎ?

 「楽譜通りにガンガンなんて無理だし、アドリブもできないもん」

 たぶん、それはまだ未熟だから。未熟だから、まだ、できないだけ。きちんと練習をして、上達して、成長して、一人前の吹奏楽のフルート奏者になれば、クラシック曲にもポピュラー曲にも、対応できるはずだし、そうでないと困るはず…。

 おそらく吹奏楽プレイヤーの演奏上の最大の問題は、多くの奏者が、3年なり6年なりで部活を引退してしまうため、多くのプレイヤーたちが、一人前レベルに成長する前に音楽そのものを辞めてしまう事かな? そのまま続けていれば、素晴らしいプレイヤーになったかもしれない人が、たった3年とか6年とかで音楽を辞めちゃうんだよ。実にもったいないと思うし、吹奏楽という音楽ジャンルでは、常にニューフェイスだけで音楽を作っている…なんて考えると、すごいよね。

 いわゆるクラシック界にもユース・オーケストラと呼ばれる、若者たちによるオーケストラがあるけれど、そんなユースたちだって、楽器キャリアそのものは、少ない人でも10年はあるからね…ってか、キャリア10年でやっとユースなんだよ。キャリアが3年とか6年とか、それで人前での演奏をするなんて…ありえないわけです。

 それを考えれば、吹奏楽ってユース以前のプレイヤー集団なわけで、その若さって、音楽的に見ると、すごいんだと思います。

 話題が脱線したままだけれど、今日はこれで終わります(笑)。

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