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すとんが薦める、脱初心者向けのオペラ その5 ドン・カルロ

 さて、今回お薦めするのは、ヴェルディ作曲の『ドン・カルロ』です。

 このオペラのストーリーは、実話を元にしたもので、かなり重いです。

 スペインの王子ドン・カルロは、許嫁のフランス王女エリザベッタと相思相愛です。しかし、政治の都合で、エリザベッタは王子妃ではなく、王妃としてスペイン王フィリッポ二世(カルロの年老いた父)の元に嫁ぎます。

 エリザベッタを諦めきれないカルロ。彼を励ます親友のロドリーゴ。ロドリーゴは、スペインが弾圧を加えているフランドール地方の事を耳打ちします。単純なカルロは父への反発もあって、すぐさまフランドールに飛び、彼らをまとめて、スペインからの独立運動の先頭に立ちます。その行動はスペインに対する反逆とみなされ、カルロは逮捕されて牢屋にぶちこまれます。

 フィリッポ二世は、行きがかり上、仕方なくカルロを牢屋に入れたものの、本当はカルロの事が可愛くて、悩ましくて、彼の処遇を悩みます。また、彼の反発の原因が、自分とエリザベッタの結婚にある事も知っているわけだし、そのエリザベッタは、どうも今でもカルロの事を愛しているのではないかと邪推する(実はエリザベッタは、とうの昔にカルロの事を忘れていて、今は身も心も王妃なのですが、それがうまく王に伝わっていない)わけです。

 カルロを心配するロドリーゴは、何とか彼を逃がそうと画策し、その最中に暗殺されてしまいます。何とか牢屋から逃げ出したカルロは、フランドール地方に落ち延びる前に、祖父のカルロ五世の墓で身を隠していると、やがて追手が迫ってくる。危機に落ちるカルロ。その時、墓の中から死んだはずのカルロ五世が現れて、ドン・カルロを墓の中に連れて行ってしまう。

 と、まあ、ストーリーを単純に書いてしまうと、こんな感じになります。でも実際の舞台は、もっとドロドロとしているし、結構ストーリーもきちんとしていて、演劇的なオペラなんですよ。

 このオペラの代表曲と言えば、『我らの胸に友情を』という、有名なテノールとバリトンの二重唱があります。この曲はいつか、Y先生と二重唱できたらいいなあと、心に秘めている曲なんですよ。

 このオペラが脱初心者向けなのは、実は色々な版(つまり楽譜)が存在するからです。と言うのも、このオペラ、元々はフランス語の台本に作曲されたフランス語オペラだったのです。ちなみにこの時はフランスのグランド・オペラの形式に準拠して、バレエ入りで5幕だったんです。今でも、このフランス語5幕版で演奏されることは多いです。

 その後に台本をイタリア語に書き換えて、大幅に場面を加除し、バレエも省略し、新しい曲もバンバン加えて、フランス語版にあった第1幕を丸々カットして、全体を4幕に圧縮して改訂しました。これが現在、一番多く使われているイタリア語4幕版と言われるものです。

 さらにその後、4幕版ではストーリーの流れが分かりづらいという評判がたったので、ヴェルディ自身がカットした第1幕を書き直した上で復活させて、更に台本と音楽に手を加えたものを作りました。これがイタリア語5幕版です。

 一応、完成形は最後のイタリア語5幕版なのですが、割りと多くの歌劇場で(様々な理由から)イタリア語4幕版が愛用されています。また、それに飽きたらず、各歌劇場ごとに、色々と手を加えた形で、この『ドン・カルロ』というオペラは演奏される事もあるので、実に様々な版がこの世に存在します。

 例えば、アメリカのメトロポリタン歌劇場の場合は、イタリア語歌唱で、内容的には5幕版とほぼ同じにして、全体を3幕版として構成しなおした楽譜を使ってます。ですから『ドン・カルロ』を見る場合、1)何語で演じられるのか? 2)何幕で演じられるのか? 3)バレエシーンはあるのか?に注意すると面白いと思います。

 ま、つまり、演じる歌劇団ごとに、色々なバージョンがあって、それぞれが違っていて、それぞれが見ものとなるオペラが『ドン・カルロ』ってわけです。

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