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ホセ・カレーラスのリサイタルに行ってきました

 あの3大テノールの一人である、ホセ・カレーラスのリサイタルに行ってきました。カレーラスの歌声は、CDやDVDでは散々聞きまくっていますが、生の歌声は初めてなので、とても楽しみにしていました。
 実はこのリサイタル、チケットを購入したのはリサイタル前日の夜なのでした。無論、カレーラスのリサイタルが日本で開催される事は知っていたのですが、値段が値段だし、情報を入手した当時は「コストパフォーマンスが悪い!」と思ってパスをしてしまったのです。
 実はこの日の私は、久しぶりお休みだったのですよ。なので、全力で遊びに行く予定を立てていました。当初は遊園地に行くつもりだったのですが、それを辞めて『庵野秀明展』に行くことにしたのです。で『庵野秀明展』だけだと、午後~夜の時間が空いてしまうのがもったいなくて、もう一つぐらい予定を入れようとしたわけです。それが『鬼滅の刃原画展』見学だったり、毛利庭園に行ってみようかとか、サントリー美術館に行ってみようかとかだったんですね。
 そこでたまたま引っかかったのが、サントリーホールで行われるホセ・カレーラスのリサイタルだったのです。『庵野秀明展』と同じ六本木で行われるし、時間的にもかぶらないし…。コストパフォーマンスの悪さは気にならないわけでもないけれど「これも何かの縁だ」と思えば、乗り越えられる程度の壁だし…という訳で、思い切って行ってきたわけです。
 前日の夜に買ったチケットでしたので、高くて悪い席しか残っていませんでした。まあ、座席が売れ残っていただけ有り難いって感じですね。お値段は、お一人3万6千円で、場所は舞台の横側の2階席…いわゆるバルコニー席の、一番後ろ。会場的には一番高度が高いです(笑)。舞台を見る角度も結構キツイです。舞台が近そうに見えて、案外、遠いです。この席がS席として販売されている事が不思議でたまりません(他の人のリサイタルだと、A席、あるいはB席扱いの場所だと思います)が、それに文句を言うくらいなら、リサイタルに行かなきゃいいだけの話だし、だいたい前日にチケットを購入できただけ感謝で、座席に文句を言うなんて、罰当たりなのかもしれません。
 痩せても枯れても、3大テノール。リビング・レジェンドのホセ・カレーラスのリサイタルだもの。ご尊顔を直接拝謁できるだけでも感謝感激をしなきゃいけないのかもしれません。
 閑話休題。ファミレスで数時間の休憩を取った長尻の我々は、そこからテクテクと歩いて(笑)会場を目指しました。
 サントリーホールは何時行っても、ハイソでセレブな雰囲気の場所ですね。集まってくる観客の皆さんの衣装も、これでもか!ってくらいにオシャレな感じで、いかにも“お金持ちの社交場”って感じで、なんか客席にいるだけでワクワクしちゃいます。こういう雰囲気が地方の市民文化会館とかでやっているコンサートとは違うんだよね。
 当日のセットリストは、こんな感じでした。
第1部
 トスティ:夢
 トスティ:別れの歌
 トスティ:最後の歌
 コスタ:新月
 コスタ:五月のことだった
 ロッシーニ:哀しいワルツ(ピアノ独奏)
 グリーク:きみを愛す
 ヴェルス:山々の雪
第2部
 ラミーレス:アルフッシーナと海
 ガルデル:想いの届く日
 デレヴィトスキー:心からのセレナータ
 チョッフィ:五月のある夜
 ヴァレンテ:パッショーネ
 ビアソラ:天使のミロンガ(ピアノ独奏)
 クルティス:夜の声
 ガスタルドン:禁じられた音楽
アンコール
 デスポジト:太陽に酔って
 ファルヴォ:彼女に告げて
 トスティ:かわいい口元
 見岳 章:川の流れのように
 カルディッロ:カタリ・カタリ
 アカンポーラ:冬
 ララ:グラナダ
 デ・クルティス:帰れソレントへ
 野鳥観察をしていたわけではありませんが、最初から最後まで双眼鏡を使って見てました。でなきゃ、舞台で歌っているのがカレーラスだか、誰だか分からないくらいに遠かったんですもの。それにしても、カレーラスは老けましたね、まあ当然だけれど…。
 夜の7時に始まって、リサイタル本編である第2部が終了したのが、ほぼ8時半でした。休憩時間を除けば、賞味1時間のリサイタルです。共演者はピアニストだけで、ゲスト歌手もいないのですから、まあこんな感じですね。
 カレーラスの歌唱は、もはや全盛期のようには行きません。でもね、74歳なんだそうです。自分の足で立って、歩いて舞台にたどり着いて、しっかりと歌っているだけでも、有り難いです。そのお達者な感じが感動的です。
 私が感心したのは、高音域はともかく、中音域の声の響きが全盛期と変わらぬ美しい声であった事です。この年齢で、これだけの声をキープしている事が素晴らしいと思いました。全然、声が枯れていないのよ。そういう意味で(中音域主体の)歌曲中心のリサイタルであった事は、上手なプログラムだなって思いました。
 いくらリビング・レジェンドとは言え、老齢の域に達した時、オペラにこだわっていけば、高音域の多いテノールの曲は歌えなくなるのは当然です。ドミンゴのようにバリトンに転向するという手もないわけではないでしょうが、高音域が難しくなったとは言え、声質はテノールのままですから、そのやり方には無理があります。となると、今回のカレーラスのように、歌曲中心のリサイタルで歌い続けていくというのが、常識的なやり方なのかもしれません。
 とにかく、生きているカレーラスを生で見られて、よかったです。その生の歌声を聞けて、ほんと、よかったです。カレーラスがお達者で、うれしかったです。
 セットリストを見れば分かる通り、アンコールを8曲も歌ってくれました。それも高音域がチラホラとある曲も含まれています。ほぼ、3部構成のリサイタルって感じでした。
 実際、このアンコール部分だけで小一時間もあったのですよ。サービス精神が旺盛と言うか、人が良すぎるよ、カレーラスは…。私は4曲目の「川の流れのように」が終わったところで「もう、アンコールをしなくてもいいよ。お腹いっぱいです。お疲れ様」と思ってしまったくらいです。あんな大きな舞台で、お年寄りが歌い続けるって…すごく疲れる体力勝負だという事は、分かる私です。お年を考えれば、ほんと重労働だと思いますよ。いやあ、ほんとに有り難かったです。
 その人柄に、私は感動しました。
 それにしても「グラナダ」はいい曲だよね。私も歌ってみたいです、スペイン語だけれど。

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コメント

  1. 如月青 より:

    カレーラスの生の声、私も聞きたいです。
    「三大テノール」の声では絶対にパヴァロッティが好きですが、カレーラスは歌い方が(人柄が出ているのか?)優しくて上品なのがよろしい。
    勝手に「Je te veux」を練習していて、よく参考にしますが、男声だと露骨にエロになりがちな歌詞をさらりと流して、大人の可愛げを見せているのが素敵です。
    男性歌手の特にラテン系の人は老いてもなお色っぽいというか粋というか、そういう演出が上手、と思います。ゲルマン系だと故フィッシャー・ディースカウの如く老賢者の風格を漂わせるとか。
    女声の、特にソプラノの場合、どういうスタンスをとるかが難しそうです。先ごろ亡くなった我が永遠の憧れ、E.グルヴェローヴァの70歳記念公演の映像をYouTubeで見ましたが、選曲が少し残念。声量は昔ほどではないがテクニックは衰えていない技量に感嘆しつつ、でも外見は年相応になってたので、「ルチア」はちょっと辛い。「夜の女王」だったらいいのに、と考えた次第です。

  2. すとん より:

    如月青さん
     最初こそは「コストパフォーマンスが悪い」とパスをしてしまったカレーラスのリサイタルでしたが、結果的に行けてよかったと思います。というのも、カレーラスの今の状態を見ると、もうそんなに長いこと歌っていられそうもないなあと感じたからです。
     人は老いて死にます。その生物的な死まで考えなくても、引退という芸的な死は免れません。どんな名歌手も、やがて引退し、生物的に死にます。で、歌手の場合は、その人の引退や死によって、我々はその声を聞くチャンスを失うわけです。
     名歌手の声は楽器の銘器みたいなものですから、まだその歌手が元気で活躍しているうちに聞いておけるものならば聞いておくべきだと思うわけです。
     もう、パヴァロッティの歌声も、フィッシャー・ディースカウの歌声も、グルヴェローヴァの歌声だって、生で聞くことはできませんから。
     カレーラスの声は、録音で聞くよりも、ずっと中音域の声に厚みと密度とツヤがありました。録音技術が進歩したと言っても、やはり録音しきれないものがまだまだあるんだなと思いました。

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