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陽気なイタリア声が失われました または ステファーノを偲んで

 ジョゼッペ・ディ・ステファーノが亡くなられて、10日ほどになります。

 元々は、2004年にケニアの別荘(ケニアってところが凄いね)で、強盗に襲撃されて、意識不明のままイタリアに運ばれて入院。その後、3年以上の年月を、昏睡状態のままで過ごし、事件以来、一度も目覚めることなく、2008年3月3日に自宅でお亡くなりになられたそうです。86歳でした。

 ジェゼッペ・ディ・ステファーノと言えば、三大テノールの一世代前のテノールですね。デル・モナコやベルゴンツィ、クラウスなどの時代の歌手です。しかし、クラオタには「マリア・カラスの相棒」と言った方が通りが良いでしょうか? 実際、マリア・カラスのスタジオ録音の相方は、レコード会社との契約の関係でしょうが、大抵ステファーノでしたからね。

 ステファーノと言えば、ダメな発声の歌手としても有名でした。元々は民謡歌手だったこともあり、どれだけきちんと声楽を学んだのでしょう。私には、それを聞き分けるほどの耳がないので、よく分かりませんが、ステファーノの声は典型的なアペルトな声だと言われます。

 アペルトな声とは、いわゆる「開きっぱなしの声」と言うやつで、アマチュア・テノールに比較的多く見られる発声です。大抵の場合、素人くさい声と言われて、バッサリ切り捨てられます。何しろ、チェンジを克服せずに、ファルセットにも逃げずに、気合と根性だけで高音を発声するという、まあ、ノン・テクニカルな発声です。

 そう言う私も、キング先生と出会う前は「よく開きっぱなしで、そこ(五線の上のラ)まで出せるなあ」と、色々な団の指導者の方々に感心されたっけ。以前の私もアペルトな声だったんだろうなあ。で、まだそのアペルトな感覚が残っているから、ステファーノの声のどこがヘンだか、よく分からないのだと思います。

 ただ、今言えることは、アペルトな発声だと、高音が不安定だし、消耗も激しいから、若い時はともかく、年いったら止めた方がいいねえ。

 でもね、ステファーノの場合、いくらアペルトだろうが、あれだけの美声なら、すべて帳消しだと思う。

 ステファーノの曇りも陰りもない、澄みきった声が私は好きだったなあ。ストーリーを背負うには、あまりに能天気で、特にカラスとの共演だと、二人の声楽的な方向性がだいぶ違うこと(カラスは演劇的、ステファーノは美声主義)が目立っていたけれど、ステファーノにはステファーノの良さというか、いかにもテノールって声が素敵でした。

 ステファーノはパバロッティのアイドルだったと話を聞いたことがあります。真偽のほどは分かりませんが、なんか納得できる話です。

 「声が良ければ、それでいいじゃん」そんなテノールがステファーノでした。

 さて、ステファーノのCDを紹介しようと思いましたが、彼のアリア集などの日本盤はことごとく廃盤のようです。まあ、カラスのCDを買えば、自動的にステファーノの歌唱も付いて来るのですが…。

 以前、イタリア民謡(ナポリ民謡)については記事にし、お薦めもしましたので、今回は輸入盤だけれど、オペラアリア集をご紹介します。幸い輸入盤なので試聴もできます。ステファーノと言ってイメージのわかない方はぜひ「試聴する」をクリックしてお聴きください。ちょっと年いってからのアリア集なので、少し声が太めで以前のような輝きも少し陰ってきてますが、それでもステファーノの美声が楽しめます。

コメント

  1. Cecilia より:

    偉大なテノールが又しても亡くなりましたね。
    ジュゼッペ・ディ・ステファーノ・・・と言えば、昔自称ジュゼッペ・ディ・ステファーノという男性が電話の向こうでよく歌っていた・・・という思い出が・・・。
    セレナーデのつもりだったのでしょうけれど、アペルトな声でした。(笑)

  2. すとん より:

    >Ceciliaさん
     アベルトな声…やはり、ステファーノじゃないですか(笑)。いや、笑っちゃ失礼かな?
     いやしかし、電話で歌ね…。私はないなあ、そんなこと。私の場合、声がデカいから、電話口で歌ったら、電話壊れるし、だいたい、相手に一発で嫌われるだろうなあ…。愛の言葉はささやくものであって、歌は窓辺で歌うものでしょう、どっちが電話向きかって…ネ。

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