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さあ、高い音で歌おう![後編]

 男性が高い音にチャレンジする時に、ついてまわるのがチェンジの問題です。

 何しろ、チェンジは難しいです。まるで眼前にそそり立つ巨大な壁のように感じられます。その壁の高さに恐れをなし、チェンジを諦めてバリトンとして生きるという選択肢だって、実際にありうると思います。

 かく言う私も、チェンジには苦労しています。なにしろ要注意箇所ですし、やはり高音と中音の音色の統一は今だ大きな課題であります。ですから、もう、まるでバカになったように「高音の一点突破」をめざして、日々、練習をしております。

 私のように、チェンジがうまくいかないアマチュア歌手は、音程の上昇に伴って「低い声(普段使っている声)→チェンジの箇所(うまく出ない)→高い声(ヘナヘナ声または裏声、叫び声、おかまヴォイス、まれに頭声)」って感じになりがちです。

 以前の私は、チェンジの箇所とそれより高いところは、すべて叫び声で歌っていたと思います(恥)。

 高音が出ないと言う人は、チェンジはもちろん、それよりも高いところが出せない、または出したことがないのではないかと推測します。

 では、なぜ出せないのか、出したことがないのか…それは「自分にはそんな高い音なんか出せるはずないじゃん」って思い込んでいるからではないかと思います。

 と言うのも、実際に高い音を出そうとしても、その手前のチェンジの箇所がうまく出せないし、頑張ってゆくと、なんかのどが絞まっていく感じがして苦しいし、声がかすれてくるし、ヒリヒリ痛むし…。そんなこんなで、高いところは最初から出すのを諦めてしまって「自分にはそんな高い音なんて…」と思い込んでしまうのです。

 なぜ思い込みかと言うと…どんな人でも悲鳴って大抵甲高いものでしょ。悲鳴が上げられるのに、高い声が出ないって変だよね。少なくとも、自分で上げられる悲鳴程度の高さの声は必ず出るわけだ。

 女性の場合、悲鳴は裏声だろうけれど、男性の悲鳴は、基本的に表声。歌の声と同じでしょ。ハードウェアの性能として、悲鳴程度の高音は出せるはずだよ。悲鳴が絶望的に低い人ならともかく、そうでなけりゃ高音はバッチグーってわけ。

 「女なら悲鳴もありだろうけれど、オレは男だし、悲鳴なんかあげないぜ」という男子諸君。本当にそうかな?

 実は私も、普段の生活の中では悲鳴なんてあげないけれど、やはり全く悲鳴をあげないってことはないわけで…。

 少し古い話になりますが「リング」って映画知ってます? ハリウッド製作の奴ではなく、日本映画の方で、貞子が出てくる「リング」。私はあの映画を最初の封切りの時、(間抜けな話ですが)ホラー映画だとは知らずに映画館で見てしまい、ラスト近くのシーンの(今思い出すだけでも身の毛がよだちますが)「白い布をかぶった人が指さすシーン」で思わす、悲鳴を上げてしまったという恥ずかしい過去があります。あと「テレビから出てきた貞子の顔がアップになったシーン」でも悲鳴。一本の映画で二度も悲鳴…。だって怖かったんだもん。

 あと、ぎっくり腰をやった時も思わず…悲鳴?…はい、あげました、ウオーーッてね。ははは。

 男子諸君、本当に君は悲鳴を上げたことはないかな? 恥ずかしくって隠しているだけじゃない??

 「いや、自分は絶対に悲鳴なんてあげた事はない!」と断言するならば、百歩譲りましょう。気分が高揚して、何やら分からぬ感情のままに、叫んだことはありませんか? 「ウオー」とか「ガオー」とか「オリャー」とか…。気合とか、雄叫びとかいう奴です。

 それはあるでしょ。では今度は、それを思いっきり高い声でやってみれば? BGMはB’Zなんかがいいと思いますよ。B’Zをバックに流して、思いっきり叫ぶ。

 J-POPは聞かないって。だったら、LED ZEPPELINはどう? もしくは、シャウト系のハードロックなら何とかなると思うよ。

 そうやって出した声は、悲鳴ではないかもしれないけれど、かなり悲鳴に近い感じになってくると思う。そこだよ、その声だよ。

 以前のレッスンでキング先生がボソッと「頭の固い人(頑固って意味ね)は高いところをうまく出せないんだよね」とおっしゃってました。頭の固さなら人後に落ちない私ですが、先生のおっしゃる事はなんとなく分かりました。

 高音がうまく出せないとお悩みの諸君、さあ、恥ずかしがらずに悲鳴をあげてみよう! それがダメでも、B’ZをBGMにして叫んでみよう。少なくとも、君は悲鳴や叫び声の高さまでは出せるはずだ! 後は、そこまでの音をきちんと『正しい方法』で『充実した声』で出せるように訓練あるのみ。

 お互いがんばってゆこうぜ!

 さあ、みんな揃って、高い音で歌おう

コメント

  1. Cecilia より:

    悲鳴に加えて「腹話術」はいかがでしょうか?(笑)
    我が家ではもうブームになっています。

    それからすとんさんはおうちではどのような発声練習をなさっていますか?

    他人の発声練習ってとても気になります。

    大抵そうだと思いますが、中音域の出しやすいところからはじめますよね。
    ・・・で出しにくいところはやっぱりあきらめてしまうし、私の場合どんなに高くても裏声だけ・・・ということはないので、純粋に裏声だけで高い声を出してみたいのですが・・・。(Y場メソッドで。)

    それと正統派ベルカントメソードでは高音のことを”アクート”と言うそうですが、私が受けたレッスンでは聞いた事のない言葉で、初めて知った時焦りました。
    自分が誰でも知っていることを知らなかったような気分でしたね~。

  2. すとん より:

    >Ceciliaさん
     他人の発声練習って、やはり気になりますよね。私も気になります。

     私の発声練習に関しては、コメント欄に書くには、長文になりすぎてしまうので、記事にして、明朝アップしますので、そちらをご覧ください。

     アクートの件について。Ceciliaさんはソプラノだから、アクートの事を知らなくても不思議ないです。アクートは辞書的にはベルカント系の高音発声のことで、すべての声種に備わっていることになっていますが、現実的には、テノールの輝かしく力強い高音のことを指します。

     元々は、エンリコ・カルーソーが起こした発声革命によって生まれた(当時的には)新しい発声法によってもたらされた高音のことをアクートと呼びました。このアクートは、カルーソーからジーリ、デル・モナコ、ベルゴンツィ、パパロッティと、代々イタリアン・テノールたちによって引き継がれてきたものです。

     イタリア系の歌を歌うテノールには今や必須の技巧ですが、それ以外ではどうなんでしょう。例えば、コロラトゥーラ・ソプラノの高音をアクートとは呼びませんからね。

     それに宗教曲系のテノール(具体的にはメサイアあたりを思い浮かべてください)の高音もアクートとは呼ばない。もちろん、合唱歌手には不要なテクニックだと思いますし(アクートで合唱パートを歌われたら、すごい迷惑だよね)。

     そんなわけで、アクートはかなり声種及び用法が限定された、テクニックなので、声楽を勉強しているのに知らなくても、別段、どうということないと思います。

     ちなみに、私は、チェンジを克服して、アクートの獲得を、もちろん、目指しています。

  3. Cecilia より:

    それがですね~、この言葉を知ったのが、私と交流あるソプラノの方のブログなんです。
    現在イタリア留学中の方なんですが。
    ”アクート”が得意って以前記事の中でおっしゃっていました。
    私が思うに彼女の出身音大、所属歌劇団・・・などはイタリア系です。

  4. すとん より:

    >Ceciliaさん
     だとすると、そのソプラノの方は、ソプラノと言っても(声が)重量級なのでは? イタリア・オペラのヒロインを歌うようなソプラノの方の高音を[俗称かもしれませんが]ソプラクートと呼ぶのを聞いたことがあります。ソプラノ+アクートでソプラクートなんだと思いますが。

     それにしても、ソプラノの高音も(テノール同様)アクートと呼ぶとは…。いい勉強になりました、感謝です。

     もっとも、ソプラノのアクートって、どんな声をイメージすれば良いのでしょうね? マリア・カラス? まさかね…。カバリエとか、マルトンとかの高音かな?

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