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ではなぜ、私はクラシック声楽を歌っているのか?

 歌が好きだから…では答えになっていないですね。歌が好きならば、なぜ流行歌を歌わないのか、演歌を歌わないのか、民謡を歌わないのか、詩吟を、義太夫を、新内を…って話になりかねません…ってか、義太夫や新内はクラシック声楽よりもニッチか。

 なぜ私が、歌が好きなのに、わざわざクラシック声楽という、愛好者の少ない音楽ジャンルの歌を好んで歌うようになったのか?という問いに答えるべきなのだと思います。

 うーむ、学校の音楽の授業などで、クラシック声楽やその類似音楽には無自覚的に触れていたと思いますが、私が意識的にクラシック系の歌に触れたのは…就職して、私の教育係になった方がマリア・カラスのファンだったので、その方の影響でクラシック系の声楽に親しみを感じるようになった…というのが、そもそもの始まりだと思います。

 私は、おそらく、この世代としては、平凡で平均的なつまらない音楽遍歴をしてきたと思います。思春期前は、普通にテレビから流れてくる流行歌を好み、思春期の頃は邦楽暗黒時代だった事もあったので、洋楽に親しみ、カーペンターズを同時代のスターとして好んでいました。そこからアバも好きになって、ビリー・ジョエルに親しみ、マイケル・ジャクソンやプリンスに夢中になったわけです。もちろん、古典音楽として、ビートルズやウィングス、ジョン・レノン、ビーチボーイズも大好きでした。

 ああ、つまらない。ごくごく平凡な音楽遍歴だこと。

 それで就職して、マリア・カラスを知って、そこからマリオ・デル・モナコを知って、オペラ&テノールに目覚めたのです。

 そう、ターニング・ポイントはモナコだったわけです。

 モナコを始めて聞いた時に思った事は、不遜ながら「同じだ!」って事です。不遜と言うよりも、不謹慎とか身の程知らずというべきかも(笑)。とにかく“同じ”だと思ったのですよ。

 何が同じなのかと言うと“声”が同じだと思ったのです。もちろん、モナコと私では、声そのものは“月とスッポン”ほどの違いはあるけれど、声の方向と言うか、ジャンルが一緒だと、一瞬でピーンと理解したのです。

 私が若い時って、日本の流行歌って、特に男性の歌って、キーが低かったんですよ。歌っている歌手もバリトン~バスぐらいの声域の人が多かったと思います。だから、私には当時の流行歌って、歌いづらくてね…。当時の流行歌には、私の気を引くような歌もあまりなかった事もありますが、洋楽の方が男性歌手のキーが高くて(洋楽の男性歌手は、たいていテノール音域です)無意識に親しみを感じていたのかもしれません。

 そんな素地があったので、モナコを聞いてピーンと来て「ああ、私はテノールという人種だったのか(納得)」となったわけです。

 で「テノールなら歌える!」と根拠もなく思い立って、市民合唱団の扉を叩いたわけです。「なぜモナコを聞いて合唱を?」と思うかもしれませんが、私の音楽趣味の入り口はカーペンターズでありアバであったわけで、当時はオペラの朗々とした独唱よりも、美しいハーモニーの方が好物だったからです。

 ちなみに、今でもハーモニーは大好きですよ。自分がハーモニー向きの声で無いだけで、ハーモニーは大好物です。合唱は、特に上手な合唱は大好きなんですよ。

 で、1年間合唱をやってみて「君の声は合唱じゃなくてオペラ向き」と言われて(体よく追い出された?)クラシック声楽の先生を紹介されて、その先生の元でさらに1年間勉強したところ、先生の都合で、門下生全員が破門されるという事件が起こり(今考えると、ヒドイ話だし、ヒドイ先生だったと思います)私は破門のショックで、そこから15年ほど音楽から距離を置いた生活をしたわけです。

 その後の音楽の再開も、合唱からです。私は当時、地元の音楽協会の幹部だったのですが、そこで昔所属していた合唱団の幹部さんと再開して、合唱団への復帰を誘われたのです。

 以前は、誰でも参加可能なオープンな合唱団だったのですが、あれから月日が経ち、その頃までには、入団には簡単なオーディションが課せられるようになり、私はそのオーディションに落ちてしまい、合唱団への復帰が叶いませんでした。落ちた理由は単純で「声が強すぎて合唱に向かない。あなたが歌うと、合唱団全体の声が、あなたの声になってしまう」という、実に残念な理由でした。ソリストの道を薦められ、先生もご紹介していただけそうだったけれど、断って、自分で先生を探すことにしました。

 だって、先生をご紹介されたら、どんなに遠くの先生であっても、どれだけ謝礼が高価な先生であっても、断れないじゃない? 当時の合唱を歌いたかった私は、独唱の勉強に時間やお金をかける気になれなかった…という事もないわけじゃなかったのです。

 そして見つけたのが、キング先生だったわけです。安かったし、近かったし、当時の私の条件にはピッタリの先生でした。で、ここから先の話は、このブログに書いてあります。

 ではなぜ、私はクラシック声楽を歌っているのか?

 一つには、出会ってしまったから。マリオ・デル・モナコという歌手の歌声を(CDだけれど)聞いてしまったから。クラシック声楽と出会わないまま、人生を終えてしまう人だって大勢いるなか、私は幸せなことにクラシック声楽と出会うことが出来、そこから歌うことに目覚めたのです。

 もう一つの理由としては、声が独唱向きだったから。私が本来目指したのは合唱あり、合唱団員として学び続けて上達していく事を願ったのだけれど、神様からいただいた声が合唱向きではなかったため、やむをえず、当時的にはイヤイヤ、独唱を始めたわけです。実際、キング先生に入門した時も「独唱ではなく合唱で歌えるようになりたい」と言って、ちょっと嫌がられた事(キング先生は合唱の先生ではなく独唱の先生だからね)を覚えています。で、キング先生の元で学んでいるうちに、独唱の楽しさと素晴らしさを教えていただき、今に至るわけです。

 結論。私が今、クラシック声楽を歌っているのは、デル・モナコとキング先生のお二人に出会ったから…という事になりますね。

 人との出会いが、人生を左右する事もあるのです。

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コメント

  1. tetsu より:

    こんばんは。

    こちらは、幼い頃FMで流れていたランパルの「忠実なる羊飼い」が刷り込まれ、その後当時オールドヘインズ吹きの元師匠と出会って、今に至ります。
    バブルの頃は株の儲けで14K買ったこともありますが、ここしばらく楽器の売り買いはなくなりました。
    何故今もフルートを吹いているかというと、吉田雅夫曰く「自己修復」です。

  2. すとん より:

    tetsuさん

     フルートが自己修復というのは、私にも分かるような気がします。フルートの音色がささくれだった心を柔らかくしてくれるような気がします。

     ちなみに、歌は自己拡張かな? 声を出して歌うことで、自分が広がっていくような気がします。これはこれで、やっぱり癒やしなのかなって思います。

  3. アデーレ より:

    昔からカラオケ行くと普通の歌?が歌えない。
    地声が出ないし、カラオケも歌のお姉さん的な声になる、はたまたキーをグーンとあげないとキーが合わず、友人といくと嫌な感じがするらしく。それから数年後、声が普通より高い事に気がつく。他のきっかけもあり、声楽を習う。今までの疑問に答えが。どちらかというとハイソプラノ系でした(笑)だから五線の上からが楽です!どうりでカラオケはあまり歌うのがないのだっ(笑)。。。

  4. すとん より:

    アデーレさん

     女性の場合は、カラオケとクラシック系の音楽では、使う声が全く違うので、そういう事も起こるのでしょうね。合唱団などにいるソプラノさんも、カラオケ苦手って人はたくさんいますからね。

     そういう意味では、男性以上に女性の方が、ポピュラーソングを歌うのが苦手って人が多そうです。

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