スポンサーリンク

共感と感動

 世の中には二種類の音楽があると思います。

 一つは、さほど難しくない音楽をとても大変そうに演奏する音楽です。もう一つは、とても難しいはずなのに難しさを感じさせずにサラっと演奏してしまう音楽です。

 前者はアマチュアの演奏によく見れられるものだし、後者はプロの演奏です。

 アマチュアがダメで、プロなら良し…と単純に話は進みません。

 ネタが古くて申し訳ないけれど、なぜ長島はスーパースターと成り得たのでしょう? それは簡単なサードゴロであっても激しいアクションで拾っていたからだと言われています。“平凡なゴロをファインプレイにする男”という人もいましたし「長島ってサア~、ありゃあ本当は野球、ウマくないんだよねぇ~」とか訳知り顔に言ってたオッサンもいたようなあ…。

 そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。私などは、長島選手って人は、野球にエンタメの要素を持ち込んだ人…なんじゃないかなって、思ってます。言葉を代えて言えば“魅せる野球”ね。まあ、単にゴロを処理するだけなら、ササッと捕球して、パパッと送球すればいいだけだけれど、そこはエンタメなんだから、ギリギリのタイミングで捕球して、体勢を崩しながらも送球すれば、客は喜ぶわけよ。もちろん、走者をアウトにできれば、教科書通りのアクションであれ、ヒヤヒヤドキドキのファインプレイであれ、チーム的には関係ないわけだしね。

 要は、共感と感動、なんだよね。

 長島選手のプレイは、ある意味、演奏で言えば“さほど難しくない音楽をとても大変そうに演奏する音楽”のようなものかもしれません。プロであるにも関わらず、アマチュアのような姿勢でプレイをしていたから、長島は単なるプロではなくスーパースターに成り得たと言う人たちがいます。

 それはそうなのでしょうし、おそらく正解だろうと思います。

 プロの演奏を聞けば、その卓越した技術力と演奏力に感動します。一方、アマチュアの演奏を聞けば、そこに至るまでの努力に共感します。

 共感と感動の両立。プロであっても、アマチュアリズムは必要なのだと思います。また逆も真なりであって、アマチュアであっても、難しいはずの曲に難しさを感じさせずにサラっと演奏できるように技術向上を常に目指していないといけないと思います。

 アマチュアの熱さと、プロの安定性。それらが共感と感動を私たちに与えてくれます。
 アマチュアとプロの違い。これはスタイルの違いであって、善し悪しとは関係ない事だと思います。あえて言えば、お互いに足りない部分を補いあっていく事で、完璧を目指すべきでしょう。プロはアマチュアの持つ熱さを、アマはプロフェッショナルの持つ安定性をこそ、望むべきでしょう。

 なので、たまに見かける、プロもどきを目指すアマチュアさんってのは、、ある意味、正しい存在なのかもしれないって、今回改めて思いました。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村

コメント

  1. wasabin より:

    すとんさん、こんにちは。

    最近騙されたましよ~。
    バレエですが、youtube見て余りにも簡単そうに踊って居る、これなら行けるかも、
    とクリスマス会用に選曲したのですが、大変!だったんです。

    流石プロだな~と感心した次第です。

    「本当は難しい」を見破るのには肥えた目や耳が必要だと思いますね。
    歌も余力を残して歌いたいものです。

  2. すとん より:

    wasabinさん

     そうなんですよね、プロの演じる姿を見て「簡単そう、私でも出来そう…」なんて思ってトライしてみると、エラく難しくて断念せざるをえない…なんて経験、私もあります。やせても枯れてもプロはプロ。彼らはやはり違います。お金の取れるパフォーマンスをするってのは、本当に才能に恵まれた上に、見えない努力をたくさん積まなきゃできないんだなあって思います。

     でも、そのプロのすごさが分かるってのは、それも本当はすごい事なんですよ。

     本当のシロウトは、プロがどうすごいのか、それも分かりませんから(笑)。おっしゃる通り、…

    >「本当は難しい」を見破るのには肥えた目や耳が必要だと思いますね。

     …だと、私も思います。その目と耳を養うために、音楽を学んでいる…という部分が私にはあります。

  3. 小実昌 より:

    プロという言葉が流布しすぎです。クライスラーはアマチュアでしょ。トニー・ベネットは私が好きな歌手ですが、あれが本当のプロ。フィル・コリンズはまあ我慢しましょう。フルートは、音が奏者で全然違います。モィーズ、ランパル、ベネット、ゴールウェイ、その他大勢、その他のその他大勢。
    一番尊敬しているのはピアノのルビンシュテインです。かれは45歳くらいに一旦公開活動をやめ、10年間毎日練習したそうです。このままじゃせいぜい一流だ、超一流になるには日々同じようなコンサート曲目をやっていてはダメだ。ひたすら練習あるのみ。ということがその動機です。今はなんとかコンクールで一番になったから、得意になってCD出したりするけど集中的に練習しないから後が続かない。そんなのばっかり。ピアノのポリーニっくらいです。まじめなのは。
    ちなみに、プロは一日に8時間は最低練習時間だそうです。超がつく人はもっとでしょう。死ぬ気でやってます。そういうプロとアマチュアを比較はできません。グレン・グールドは51歳で死んじゃったけど、あまりにも疲れちゃったのでは。

  4. すとん より:

    小実昌さん

     一流のプロはよく練習する。それは私もそんなモンだろうと思ってますし、実際に演奏活動をメインにしているプロは、一流二流を問わず、よく練習しているようです。結局、練習をしていないと、あっと言う間に引き出しがからっぽになってしまうそうなので、いつもいつも引き出しの中身をたっぷり詰めておかないといけないんだ…と聞いた事があります。

     まあ、少なくとも器楽のプロはよく練習しますね。

     一方、声楽の方は、そんなに練習しないみたいです。と言うか、練習をたくさんしないと力量を維持できない人は、そもそもプロになれないようです。練習量よりも、才能とテクニックがモノを言うみたいですね。まあ、それでも最低限の練習はするようですが、その最低限をクリアすれば、後はできるだけグータラしているのが良いんだそうです。

     面白いですね(笑)。

タイトルとURLをコピーしました