スポンサーリンク

声楽ってのは、歌手とピアニストさんとのアンサンブルなんです

 声楽のレッスンの続きです。

 さて、お次は、デ・クルティス作曲「Non ti scordar di me/忘れな草」です。「郷愁」の方は割とすんなり行きましたが、こっちはなかなかに難しかったです。

 まず最初に先生は「すとんさんは、この曲は普通に歌えます。ただ、歌と言うものは普通に歌っても、つまらないので、その先を求めます」とおっしゃいました。つまり、歌える歌えないではなく、より良く歌いなさいって事なんですね。

 で、歌い始めたら、いきなりストップがかかりました。まだ二小節しか歌っていないんです。

 で、止めた理由は…楽譜が見える歌い方はダメって事です。音が楽譜と同じで、上下に動いているのがダメなんだそうです。楽譜は上下でも、声は前後に動くつもりで歌うのが良いみたいです。とにかく、音の響きをすべて同一線上に持ってくる事なんです。

 で、歌ってみたら、またストップです。今度は、リズムが等分しすぎだって言われました。つまり「いかにもクラシックの曲です」という歌い方になっているので、それがダメって事なんです。

 とにかく、ピアノとは合わせないように合わせるんだそうです。これって、どこもかしこも歌とピアノがぴったりと寄り添っていたのではダメで、ところどころでビシっと合っていたら、あとは緩くズレていた方がいいんだそうです。…うむ、それってビート音楽のように歌えって事かな?

 さらに歌っていたら、またストップです。で、先生がおもむろに歌い始めました。「うまく説明するのが大変なので、こんな感じに崩して歌ってほしい」って言われました。それを聞いた私が思い浮かべたのは、笛先生とのセッションでよく行った、ジャズバーでよく歌っていたSさんの歌唱。もちろん、Sさんはプロのジャズシンガーなんだけれど、あの人の歌い方を思い出しました。元歌を微妙に崩すけれど、決して原曲の味は崩さない、割と端正でオシャレな歌い方をする人でした。あんな感じに歌えるといいのかなって思って、自分がレッスン教室にいるのではなく、ジャズバーにいるつもりで歌ってみました。なかなか良いと褒められたので、この線で本番も行くかな(笑)。

 とにかく、楽譜通りには歌わないこと。ちょっとだけジャズシンガーになったつもりで歌わないといけません。うっかり、クラシック歌手にありがちな“楽譜通りに歌う”とか“見事な発声方法”とかは、脇に置かないといけません。

 この曲もアレコレとアドヴァイスをいただきました。とにかく、歌い崩すこと、声を飛ばすこと。この二つが大切なんですよ。

 また、歌っているうちに、ドンドン熱くなっていく私なんですが、それは厳しくとがめられました。「そこではまだ熱くなっていけません。そこで熱くなると、最後までノドが持ちません」と散々言われました。とにかく、クールにクールに歌わないとダメなんですよ。特に間奏前は、穏やかに歌うんです。

 ピアノの方は…もっとハデに演奏してくださいって言われてました。とにかく、歌え! とにかく派手に! …って感じですね。もっともっと、ダイナミックに、奔放にピアノを弾いてくださいって感じです。で、実際に先生が、ガシャガシャガシャ~とピアノを弾くと、ピアニストさん、目を丸く剥いてました。たぶん、こういう表現を求められる事って、滅多にないんだろうなあ。

 しかし、なんだかんだ言って、先生は私だけでなく、ピアニストさんにも遠慮なく突っ込みを入れまくります。そんなにアレコレ突っ込みいれられたら、ピアニストさん的には、大変なんじゃないかな…って思ったら、それはだいぶ違うようなんですね。

 彼女はよく合唱団の伴奏なども頼まれてやるんだそうですが、合唱の伴奏って寂しいんだそうです。孤独なんだそうです。音楽を作っているのは、あくまでも指揮者であって、その指揮者と合唱団員が一つになって音楽を演奏しているのを、ジャマしないように支えるのが伴奏者としてのピアニストなんだけれど、ソロ歌手と組むと、イチから歌手と一緒に音楽を作っていくわけで、それがとても楽しいんだそうです。だから、私と一緒にY先生のレッスンを受けているのは、彼女にとっては、なかなか充実した楽しい一時のようなんです。

 ま、声楽って、歌手とピアニストのアンサンブルだもんな。二人で一つの音楽を作っていくんだもんね。

 こんな感じでレッスンは終了しました。

 本番当日、会場入りしたら、あちらのスタッフさんに「ピアノのフタはどうしましょうか?」と必ず聞かれるけれど、なんて答えたらいいでしょうかと相談してみました。

 先生曰く「ピアニストさんが大変でなければ、全開」と即答でした。その理由は「ピアノは全開の時が一番音が美しいから」です。もちろん、全開したピアノは音がよく出ますので、その音で歌手の声を隠さないように気を使ってピアノを弾かないといけないのだそうです。もちろん、絶対的な音量が不足している人の伴奏をする時は、それでも追いつかないこともあるので、そういう時に始めて、フタの開け方を少なめにしたり、閉めたまま演奏するのだそうです。まあ、私の場合は、声量に不安はないので、全開にすることに決まりました。きっと、会場入りしたら、スタッフさんに呆れられるだろうなあ。

 ふう、次にピアニストさんと会うのは本番の日だな、よろしくお願いします。

蛇足。ちなみに妻はこれからしばらく声楽のレッスンを休むことにしました。少なくとも年内は無理ですね。なので、その間は、私が一人で、ちょっと長めにレッスンを受けることになりました。歌うって全身作業なので、アキレス腱が切れたままだとロクに歌えないんですよ。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 クラシックブログ 声楽へ
にほんブログ村

コメント

  1. BEE より:

    おはようございます。
    お見舞いが遅くなりまして申し訳ありません。
    奥様、大変ですね。
    怪我もさることながらせっかくの舞台で歌えないのはつらいことでしょう。
    早く回復されるよう祈っております。(-人-)

    忘れな草、好きな曲ですが花自体もかわいくて大好きです。
    すとんさんも忘れな草という花をご存知だと思いますが、
    やさしい園芸というHPにちょこっと由来が書いてあります。

    http://www.yasashi.info/wa_00001.htm

    ルドルフやベルタを思うとやるせないです(;_;)

    今回は先約あって聞きにいけないのが残念ですが、
    思い残すことなく、主役を張ってくださいね!!!

    ※メールアドレス、変更しました。
    gooが無料メールを来年3月で止めると宣言したので、
    シビアな生活に入っている私は他の無料メールに移行しました。(爆)

  2. すとん より:

    BEEさん

     お見舞い感謝です。妻は、歌うはずのステージ(ソロも合唱も)キャンセルし、見たかった舞台や映画は諦め、ただひたすら、家で療養生活をしています。療養生活と言っても、ただ一日中寝てるだけなので、カラダは楽ですが、ココロは苦しいものと思います。

     忘れな草という花はなんとなく知っていましたが、その名の由来は知りませんでした。そういう逸話があったのですね。なんとも、悲しい由来ですねえ…。

     でも、「Non ti scordar di me/忘れな草」という曲、邦題は「忘れな草」ですが、原詩のどこにも「忘れな草(miosotide)」という語はないんですね。タイトルを直訳すると「私を忘れないでください」ってタイトルだし、歌と花は無関係なんですよ。でも、その無関係な二つのものを結びつけた当時の翻訳家さんの腕はすごいなあって思います。

    >今回は先約あって聞きにいけないのが残念ですが、

     気にしないでください。土曜の午後に遠出をするのは、大変な事ですからね。

タイトルとURLをコピーしました