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フルート吹いていて、息が足りなくなるのは、なぜ?

 …と思った事、ありませんか? 私はただいま練習中のガリボルディのミニヨン・エチュードの20番を吹いていて、時々そう思います。当然足りなくなったら、そのまま音が貧相になってしまうか、途中で吸い直してしまうわけですが、どちらをやっても、先生に叱られるわけです。

 それで、いい加減同じ失敗を繰り返して、先生に叱られ続けるのもオトナとしてどうなの?と思ったので、きちんと息を足らしてフルートを吹きましょうと、心に決めました。そのためには、まず、何故、息が足りなくなるのかを考えてみました。原因が分かれば、対処法も自ずと分かるというものです。
 
 
ブレスがいい加減 その1

 まず最初に頭に思い浮かんだのが、これ。具体的に書けば「楽譜にきちんと指定されたブレスの箇所を守ってブレスをしていない」って奴です。実は私、これがたまにあります。

 もちろん、ブレス記号のない箇所でブレスはなるべく取らないようにしています(取ると、先生に叱られます)。ですから、私の場合、本来ブレスをしないといけないところで、ブレスを省く…という事が“いい加減”な事ってわけです。なにしろ、ブレスをしてはいけないところでブレスをすると、先生は叱りますが、ブレスをするべき場所でブレスを省いても、先生は叱りませんからね。ただし、心の中では「おや、ブレスを飛ばしましたね。その息でどこまで持つんでしょうね…」と思っているそうで、結果、私の息が足りなくなると「ほう、やはり息が足りなくなりましたね」と哀れんでくださいます(涙)。

 なので、ブレス記号を見かけたら「まだ息を吸う必要がないかも…」と思っても、とりあえず、律儀にブレスをしましょう。楽譜校訂者も考え無しにブレスを書き込んでいるわけではないはずだし、必要だから、そこにブレス記号が書かれている…わけですから、ブレス記号を見かけたら、まずは律儀にブレスですよ。
 
 
ブレスがいい加減 その2

 ブレスを省略する以外にも、私はいい加減なブレスをしている事があります。それは「テンポに追われて、いい加減なブレスをしてしまう」という状態です。分かりやすく書くと「せっかくのプレスポイントだけれど、そこでじっくりとブレスをしている暇がないので、いい加減にブレスしちゃう」という事ですね。

 これは曲のテンポが速い時に、たまに見られます。「このテンポでは速すぎて、息を吸う暇がありません」とグチった事がありますが、そう言ったら先生「だって、あなたは、ブレスの前の音符の拍が長すぎるんですよ。そんなに長く吹いたら、誰だってブレスできません。音符はきちんと指定された長さだけ吹けばいいんですよ」と注意されました。

 つまり、私の場合、楽譜を見て、どのタイミングで音を吹き始めるかには注意していても、楽譜を見て、どのタイミングで音を吹き終えるかには注意していなくて、そのあたりがいい加減すぎるので、ブレスのタイミングを逃している…って事ですね。はい、きちんと音符は指定された長さだけ吹くようにします(涙)。
 
 
呼吸が浅い

 これは上の問題とも関係しますが、呼吸が浅くて息が十分に吸えないために、ブレスが足りないというケースもありそうです。まあ、私は声楽をやっているので、呼吸が浅いという事自体は、まず無いのですが。
 
 
腹筋が弱く、息がダダ漏れ

 腹筋とか腹式呼吸とか言うと「いかに呼吸を吸うべきか」と考えるわけですが、実は腹式呼吸の要諦は「吸った息をいかにキープし、一定の速度強さで吐き続けられるか」なんですね。だから、腹筋が弱いと、せっかく吸った息が、あっと言う間にダダ漏れなんですね。私がしばしばオーバーブローを注意されるのは、この“息ダダ漏れ”が原因です。私の場合は、絶対的な肺活量が多いので、息がダダ漏れ状態でも、それなりの時間はフルート吹けますが、肺活量が標準量しかない人だと、息ダダ漏れでは、あっと言う間に息が足りなくなってしまいますね。

 腹筋が弱く、息がダダ漏れの人は、地道に腹式呼吸の練習をするしかないです。私も、もっともっと呼吸の練習に精進しないといけないようです。

 腹筋が弱くて、息がダダ漏れだと、“息が足りなくなる”以外にも、合併症として、アンブシュアに気持ちが行ってしまうと言うのがあります。

 アンブシュアなんて、作るものではなく、出来るものなんです。理想のアンブシュアってのはありますが、それはあくまでも目指して作るものではなく、きちんと吹いていれば勝手に出来るものなんですね。

 なので、アンブシュアを意識しちゃダメなんです。と言うのも、アンブシュアって奴は、意識するとダメになるからです。クチビルは常に脱力気味で柔らかくしていないといけません。そのためには、クチビルを意識から外しておく事が必要です。

 アンブシュアを意識して、アンブシュアを固めるのは良くないです…が、腹筋が弱くて、息がダダ漏れだと、アンブシュアが最後の砦になるので、そこに意識を集中しせざるをえないのも分かります。そして、アンブシュアを固めて、音色が汚くなって…ね、ロクな事にはならないのです。

 でも、初心者ほどアンブシュアを意識して、あれこれしたくなるモノです。でも、大切なのは、実はそこじゃないんですね。

 笛吹きは、キャリアを重ねるほど、アンブシュアを意識しなくなるようです。フルートを持ったら、いきなりクチビルに当てて吹き始める…そんなもんでしょ。アンブシュアなんぞに注意を払っている暇もありませんが、それでいいんです。腹式呼吸がしっかりしていれば、クチビルなどは、ただの息の通り道でしかないのですから、意識せずとも良いのです。
 
 
必要以上の音量を期待している

 フルートと言うのは、元来、小音量楽器です。室内のサロンで吹かれる楽器です。もちろん現代フルートはベームの改良により、それなりの音量も出るようになったと言うものの、元々野外での演奏で活躍していた金管楽器類とは、出自が違うのです。あんな音量、出るわけないんです。

 それを忘れて、金管に追いつけ追い越せと、息をたくさん楽器に吹き込んでも、音量なんて増えるわけないのですが…それでもついつい息をフルートに必要以上に吹き込んでしまうわけですね。で、結果として、息が足りなくなるわけです。

 フルートって、大音量では勝負するのでなく、繊細な音で勝負する楽器でしょ? そこはかとなく、かそけき音が、真骨頂って奴ですし、そういう方向で勝負していれば、息が足りなくなる事はないんです。

 楽器の特性に応じた、効果的な演奏を心がけたいものです。
 
 
ミスブローが多くて、吹き直しが多くて、結果的に息が足りなくなる

 はい、これ、ずばり、私の事です(笑)。

 ミスブローをして、やり直す時に、うっかりブレスをせずに吹き直せば…そりゃあ息も足りなくなるよね(大笑)。一番良い解決方法は、ミスらない事だけれど、ミスをして吹き直さなければいけないなら、しっかりブレスを取り直すようにしましょうね。
 
 
奏者が鼻声

 これ、どうやら日本人に多いパターンのようです。

 日本人…と言うよりも、日本語の特徴らしいのですが、普段から鼻声、あるいは鼻にかかった声で話す人が多いんですね。日本語は口腔内の響きをあまり利用しない言語なんですよ。でも、全く響きのない声は美しくないので、足りない響きを補うために、鼻声にして声を柔らかくして話す…らしいのです。

 ま、声のプロやしゃべる事を職業としている人、私のように歌う人は、鼻声を矯正しているので、そういう事はありませんが、ごく普通の日本人だと、程度の差はあれ、ほぼ鼻声がデフォルトと思っても良いそうです。

 で、鼻声がデフォルトだと、フルート演奏に支障があります。と言うのも、鼻声がデフォルトだと、息が鼻から抜けてしまうのも日常茶飯事なので、フルートを吹きながら、息が同時に鼻からも漏れてしまうわけです。そりゃあ、フルートを吹いていて、息が足りなくなるのも道理です。

 さらに言うと、鼻声の人って、つまり鼻の共鳴が使えていないんですね。

 たとえば声の話をすると、鼻声ではない人は、鼻に声を響かせられるので、その声は倍音豊かで美しい声になります。鼻声の人は鼻から息が抜けてしまうので、声に響きがなく、どこか詰まった感じの声になります。声がそうなら、フルートでも同じことで、フルートの音を美しくしたいと願うなら、鼻の響きを利用すべきなのですが、鼻声の人は、鼻の響きを利用できませんから、音がいま一つ、フニャとしているんですね。

 もっとも、日本人に鼻声の人が多い理由は、実は、日本人が元来、鼻声が好きって事実のに起因しています。皆さん、猫なで声って…お好きでしょ? なので、フルートを鼻声っぽい音色で吹いても、案外「いい音だなあ…」と感じている人、大勢いらっしゃるような気がします。ま、ご本人がそれで良いなら、私ふぜいが言うべきことではないのですが。

 ちなみに、私がフルートを吹いていて、音色を誉められる事が多いのは(ってか、音色以外を誉められた事はありません:キッパリ!)、声楽をやっていて、口腔内のデフォルトの響きが、常人よりも豊かだからでしょうね。
 
 
 
 と、まあ、息が足りなくなる理由をつらつらと書き並べてみました。ま、解決のためには、その原因を突き詰めることって大切でしょ。原因が分かれば、問題は解決したも同然です。あとは、その原因を取り除けるように頑張るだけです。

 時折、ブレスが足りないからと言って、循環呼吸の練習に励む人がいらっしゃいます。循環呼吸は現代奏法の一つなので、ぜひ習得したい技術ですが、それはあくまでも、呼吸を無視したフレーズ(作曲家が特殊効果を狙って、そういう曲を書く事があります:主に現代音楽で使用されています)を吹くためには必要ですが、通常の曲を演奏するには、循環呼吸は不要です。

 と言うのも、演奏を聞いているお客さんって、奏者と一緒に呼吸をしているんだよね。なので、奏者が循環呼吸などを利用して、息をするタイミングをお客さんに与えないと、お客さんは息苦しくなってしまうし、演奏者とお客で息のタイミングが違うと、お客さんは音楽にのめりこめなくなるしね。循環呼吸はあくまでも特殊奏法なので、普段は使わない方が良いと思います。

 ってか、循環呼吸を練習する暇があったら、普通にブレスの練習をしましょうよって話です。

 ちゃんちゃん。

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コメント

  1. だりあ より:

    歌好きな人や声楽をしていた人がフルートを演奏するようになると、喉が自然に「歌のノド」になっているので、早い時期からフルートが歌うようになるんだそうですね。すとんさんと同じで私も歌育ちなのでフルート吹きとしての最初の難関、「笛をフーフーと吹く」でなくて「笛を息の流れで鳴らしてノドは歌う」はなにげに意識せずとも半分はクリアできちゃっていたのでしょうか。なんの楽器をするにしても根本にあるのは歌心っていいますけど、管楽器はノドが直結して楽器の一部なので歌の基本がある人とない人のスタートラインの差は大きいと思いました。

  2. tetsu より:

    どうもです。

    ブレスはこうやってみるとけっこう大変ですね。音楽表現のひとつでもあるし。声楽のリサイタルでブレスが気になる、ことはめったにありませんが、フルートのリサイタルではブレスのときのヒーみたいな雑音が気になった、とか意外と鬼門かもしれません。

    > アンブシュアを意識しちゃダメなんです。

    元師匠の師匠の芸で、歯で吹く、というのがあります。直接見たことはありませんが、上唇をかぶせずに上歯を出して、吹いても音が出るとか。元師匠のお勧めはあひる口でした。吹いたときに自然に唇がノレンのように前で出て邪魔しない感じです。

    > そこはかとなく、かそけき音が、真骨頂って奴

    イギリスに留学した元師匠の話では、トレバー・ワイの本にあるhollow tone(うつろな音)は日本人は得意で誰でもできるけれど、欧米ではそうではない、らしいです。普段使っている言葉でも、特にイギリス英語とかドイツ語では子音の発音が炸裂していて、息の早さも違うようです。管楽器もwind instruments「風の楽器」ですから。

  3. すとん より:

    だりあさん

     たぶん、歌は、全ての音楽の基礎なんだと思います。もちろん、息を使う管楽器は歌との共通点が多いですが、ヴァイオリンも歌との共通点が多くて、私はヴァイオリンを習っていた時に、よく「このフレーズを歌ってご覧」って言われました。で、歌ってみせると「なぜ、そのように弾けないの?」って言われて、ダメ出されてました(笑)。「ヴァイオリンは、歌うように弾く事」って、よく言われてましたよ。「元々歌えるんだから、歌うように弾くのは簡単でしょ」って言われてましたが…私の場合、ヴァイオリンの演奏技術的な問題があって…(冷汗)。

    >なんの楽器をするにしても根本にあるのは歌心っていいますけど、

     たぶん、その事をヴァイオリンの師匠は言っていたんだと思います。

    >管楽器はノドが直結して楽器の一部なので歌の基本がある人とない人のスタートラインの差は大きいと思いました。

     逆もまた真なりで、音大の声楽科に毎年多くの新入生が入るのですが、実は新入生の中に、高校時代はブラバンでフルートをやってましたという人が結構いるんだそうです。管楽器をやっていると、歌を始めるにしても、スタートラインが違うんでしょうね。

  4. すとん より:

    tetsuさん

    >フルートのリサイタルではブレスのときのヒーみたいな雑音が気になった、とか意外と鬼門かもしれません。

     うーん、これってたぶん、ノドがきちんと開いていないんでしょうね。で、息を吸う時に、摩擦音がしてしまうんだと思います。意外とプロの方でもヒーヒー言いながらフルートを吹いている方がいますから、これって結構根深い問題なのかもしれませんね。

    >元師匠のお勧めはあひる口でした。

     え?っと思って、自分のアンブシュアを確認してみました。…あひる口かも(笑)。確かに吹いた時に、自然に上唇がノレンのように前に出ています(テヘッ)。

    >日本人は得意で誰でもできるけれど、欧米ではそうではない、らしいです。

     言語による違い…って奴なんでしょうね。たかがフルートですが、奏者の使用言語でその音色が大きく違うってわけで、これはこれで面白いですね。きっと我々日本人は、欧米人が聞くと、いかにも日本っぽい音で吹いているように聞こえるんでしょうね。

  5. はる より:

    こんにちは。
    はじめまして。
    下手っぴなアマチュアフルート吹きです。

    私もブレス、とっても苦手です。
    自分の演奏を録音してみたら、
    びっくりしました。
    いまもブレスは下手なのですが、私の先生は
    あまり怒らないのです。
    注意されるのは、しなければいけないところで
    しない時と、いい加減な取り方をした時です。

    最近、『ちょうどの息の量』で吹くことを
    何度も教えてもらい、少しわかってきました。
    実践すると、驚くくらい息がもちます。
    今までどれほど無駄な息を吹き込んでたのか、
    と目からウロコです。

    小さい音でも鳴るポイントに、息があたる事が大事
    と聞いてます。
    なので、ストンさんが書いてらした事も、
    そうだそうだ、と感心して読ませていただきました。

    なかなかこうしてコメントを書く勇気がなかったのですが
    今回、思い切って書いてみました。

    これからも、ブログ楽しみにしてます。

  6. すとん より:

    はるさん、いらっしゃいませ。

     ブレス、難しいですね。私もまだまだですが、それでも日々精進して、少しずつですがマシになっていると思います…ってか、そう思わないと、やっていけませんね。

    >、『ちょうどの息の量』で吹くことを何度も教えてもらい、

     そうなんですよね、フルートって、息が多くても少なくても、うまく鳴らない訳で、その“ちょうどの息”ってのが、一番よく鳴るんですね。私は、オーバーブロー、つまりは息を入れすぎてしまう癖があって、ついうっかり、気を抜くと、息をたっぷり入れて、先生に叱られます。毎度毎度叱られているうちに、少しずつはマシになっているようで、やがてそのうち、気を抜いていても、ちょうどの息の量で吹けるようになるんではないか…と願ってます。

     それが、キャリアってか、経験ってやつだろうと思ってます。

     ガンバるぞ。はるさん、よろしくね。

  7. うさぎ より:

    息の問題、私も5年習っていた先生の時は、ついつい、色んな所で息を吸ってしまっていました。三ヶ月前に新しい先生に代わったのですが、息をあまり気にしていない事に気づきました。先生のアドバイスはまじめに吹きすぎないこと!音は鳴るに任せていれば息はあまり要らないといわれました。今はまだ本当にその言葉の意味は理解できていないかも知れませんが、まじめに吹き過ぎないって所は何となく分かってきました。曲に没頭すれば、息はとるべき所でとれるようになるのかも知れません。その前に私、間違い減らさないと・・・。えへっつ。

  8. すとん より:

    うさぎさん

     先生によって、優先順位が違うと言うか、何からマスターさせるかという目標が違うわけで、だから先生を変わった時に、その力点の違いに苦労をしたり、新鮮味を感じたりするわけです。

     私の場合、前のフルートの先生は、ブレスの位置についてはやかましい事は言いませんでした。ミスブローも見逃してくれました。その代わり、一瞬でも音楽が止まることは許してくれませんでした。吹き始めたら、何が起ころうと、絶対に音楽を止めちゃいけないわけで、それを優先するためには、ブレスがいい加減であろうと、ミスブローやミスタッチがあろうと、気にせず、音楽を前進させることを優先していました。

     今のH先生は、楽譜をきちんと再現することに力点をおいてます。ブレスのみならず、楽譜に表記されている事をおざなりにすると注意されます。吹き直しだって強制します。

     おそらく、両先生とも、最終的な目標は同じなんだと思います。ただ、そこに至る過程が違うわけで、それって富士山の山頂でご来光を拝みに行くにしても、吉田口から昇るか、御殿場から登るかで、見える景色が違うのと同じことだと思ってます。

     …私は、もう少しマジメに吹いた方がいいんだろうなあ…。

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