もうすでに御承知おきだと思いますが、アルタス系のフルートブランドである“あずみフルート”が、ついに日本でも発売となりました、パチパチパチ…。これで、アルタス系フルートブラントは、本家アルタスフルートと、分家あずみフルートの二つになったわけです。
まあ、今回、あずみが発売になった理由は…察するに、アルタスフルートの値上げと、低価格フルートの補強のためじゃないかと、私は思ってます。
アルタスフルートは、また(と言っては失礼ですが)この春から値上げをしました。現在の新価格は…ドルチェ楽器さんのページで分かるので、リンクを張っておきますが、ううむ、だいぶお高くなりましたねえ…。私のアゲハことA1307が63万円ですか? 実にダイナミックな値段設定ですね。私がアゲハを購入した頃は、まだアルタスと言うと“お値段が庶民的なメーカー”さんだったのだけれど、その当時から比べると、同じモデルなのに、グングンお高くなっているわけです。それにしても、私がアゲハを購入した当時のお値段だと、今ならアルタスでは管体銀しか買えないんだなあ…。(ちなみに、まだ価格が庶民的なパールだと、カンタービレという総銀モデルに手が届きます)
現在のアルタスでは、一番安いリップ銀のA807ですら、約18万円です。頭部管銀のA907が約22万円ですが、これはムラマツEXとほぼ同じ値段で、サンキョウのエチュードよりも高価格です。またアルタス1307がムラマツDSと、アルタス1507がムラマツSRとほぼ同じ価格帯になりました。ちなみに、アルタスの1307と1507は、Ag958モデルで、ムラマツはAg925モデルですから、銀の含有量の高さが、アルタスのアドヴァンテージになっているわけです。
どうもアルタスは、販売価格をグングン上げて、高級フルートブランド化を目指しているようです。
繰り返しますが、アルタスと言えば、ほんの少し前までは、パールと並んで、お手軽な価格のフルートメーカーという印象でした。それが、いつのまにか、ムラマツ並の高級フルートメーカーになってしまったわけです。
いくらアベノミクスだからと言って、フルートは低価格品ほどよく売れます。だって、高級品は、モノが分かる人しか買いませんし、そういう人は多くはいませんし、目も肥えています。値段だけ高くしても誰も買ってくれません。高級品で商売をするのは、実に難しいんです。
それにフルートが一番売れるのは、吹奏楽部に新入生が入る春~夏の時期なんですが、ここで売れるのは、やっぱりスクールモデル(つまり、低価格品)なわけです。この価格帯での勝負ポイントは、品質でもなければ、ブランドイメージでもなく、価格が最優先ですから、メーカーも作業行程を減らし、材料費と人件費を削って、さらに利幅を少なくしても、出来るだけ低価格で市場に提供しないと、一番売れるスクールモデルでは商売できないわけです。
しかし、スクールモデルでは、所詮、薄利多売がモットーですし、不況の影響も受けやすく、決して安定した商売ができるわけではありません。ましてや、少子高齢化の時代で、先細りは必定です。企業自体に体力がないと、続けられません。
ですから、メーカーの本音としては、安定している上に、利幅の高い高級品で勝負をしたいでしょう。しかし、高級品で勝負するために、良い製品を安定して供給できるだけでなく、ブランドイメージも大切ですし、老舗感だって必要です。ですから、日本では、フルートメーカーとして老舗である、ムラマツやサンキョウは高級ブランドイメージで行けますが、その他の後発参入組は、体力勝負の薄利多売の道を歩むか、企業として成長することを諦めニッチな市場で細々と生きていくかの道を選択するしかないわけです。
アルタスだって、少し前までは、多少、ニッチ傾向が強いメーカーでしたが、やはり薄利多売メーカーの一つでしかなかったわけです。それを、舵を切って、今は高級ブランドに方向転換をしたというわけなんでしょう。
しかし、だからと言って、本当に高級ブランド化して、低価格品の販売を止めてしまったら、あまりにリスクが高いわけで、そこで考えたのが“あずみブランド”の投入なんだろうと思います。
“あずみブランド”は、元々アルタスが海外展開していた、初心者向け低価格フルートのブランドでした。アルタスは当初より、海外では、高級フルートはアルタスブランドで、初心者向けの低価格フルートはあずみブランドで展開していました。ですから、日本では、アルタスブランドのイメージを守るため、あえて、あずみフルートを国内投入して来なかったわけですが、今がその時期だと判断したのでしょう、ついに、あずみフルートの国内販売に踏み切ったわけです。
低価格フルートの王者はヤマハです。
あずみフルートの頭部管銀のAZ-Z2なら、約13万円。これなら、ヤマハの頭部管銀のYFL311とほぼ同価格だし、パールの頭部管銀のドルチェの約14万円よりも、わずかにお手軽です。さすがに、ヤマハの最低価格品であるYFL221(総洋銀製:約7万円)とは勝負できませんが、あずみの最低価格品であるAZ-Z1は、リッププレート銀モデルで9万円ですから、ヤマハの下から二番目のYFL211とは同価格帯になりますし、総洋銀のYFL211と比べて、リッププレートだけですが銀を使っている部分が、あずみのアドヴァンテージになります。
最低価格品に飛びつく人もいるけれど、最低価格品だけはイヤという人も少なからずいますから、そういう層にはアピールできますね。また、安くても良いモノが欲しいという層にもアピールできます。
つまりアルタスは、アルタスブランドでムラマツと、あずみブランドでヤマハと勝負していこうと考えたわけなんだと思います。
アルタスユーザーである私としては「がんばれ、アルタス!」と、アルタスに心情的に味方をしたい気分です。
ちなみに、あずみフルートの宣伝塔となっているアーティストは、トレバー・ワイです。初心者にもなじみのあるフルート教則本をたくさん出しているトレバー・ワイが、あずみフルートのイメージアーティストなわけで、ここにもアルタスの本気が見えますね。
また、あずみフルートの安さの秘密は、国産品ではなく、台湾製作品だからなのですが、今のところ、フルートの最終チェックは、国内で(それも頭部管はなんと田中会長自らでチェック…らしいです)行っているので、品質的にも妥協はしていないようです。ま、安くて良い品なら、なお良いですね。
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コメント
マーケティングの大御所、フィリップ・コトラー先生のアイディアで、
産業界における、
リーダー・チャレンジャー・フォロワー・ニッチャー、
という4分類がありまして、
例えば(私個人の分類例ですが)、
自動車業界なら、リーダーはトヨタ、
リーダーに果敢に挑戦しているチャレンジャーが日産とホンダ、
それらの後を、フォローしている三菱自動車、
上記の自動車メーカーとは異なり、
自社の得意分野に特化しているニッチャーが、軽専門のスズキ、
いや、ほんと、私個人の、大まかな分類例です。
楽器業界、というか、フルートの世界では、
リーダーはヤマハとムラマツ、
(両社の目指すところは、だいぶ異なりましょうが)
チャレンジャーがサンキョウ、
それらを追うフォロワーが、さて、色々?
ニッチに独自路線を行くメーカーは、個人工房系で
これもたくさんありましょう?
さて、アルタスは、今?
えっと、ちょっと議論を吹っ掛けてみました。
違う、違う!と、お叱り、お怒りにならないでくださいませ、
すとん様、読者の皆様。
おしまい
すとんさんへ
値段、びっくりです。
かなり気に入ってるんでこのまま長く使いたいですね。
あと、アルタスが木管ピッコロ作ってくれたらなあ。
アルタスさん、お願い。
operazanokaijinnokaijinさん
その四分類で言うと、たぶんアルタスは、ニッチャーだったと思いますよ。と言うのも、アルタスのこれまでのウリは『銀の含有量の多いフルート』とか『独自のベネットスケール』とか『(今のフルートの流れはアメリカンフルートだけれど、あえて古くさい)フレンチフルートを目指している』とか『お手軽モデルでもポイントアーム採用』とか、他のメーカーとはちょっと違う…がウリだったと思います。それが、どうやら、チャレンジャーを目指しているのかもしれません。
だから、ムラマツやヤマハと同じ土俵に上がろうとしているんでしょう。とは言え、ムラマツやヤマハがの二社が、それぞれ違う高みを目指しているように、アルタスもまた別の高みを目指しているんだろうとは思います。そういう意味では『第三極のトップ』を目指しているのかもしれないですね。
su_zanさん
お値段、びっくりでしょ? ほんと、立派な価格のフルートになりました。これから購入する人は大変かもしれませんが、私などは、比較的安い時期に買った人ですから、自分のモデルの販売価格が高くなると、なんかうれしくなりますよ。ああ、自分はこんな高価なフルートを使っているだ…とか思ったりしてね(爆)。
>あと、アルタスが木管ピッコロ作ってくれたらなあ。
マジレスすると、木管を作るためには、自社で良い材木を持っていないと作れません。ヤマハのように、クラリネットやオーボエも作っている会社なら、すでに良い材木も確保済みでしょうが、今まで金属管しか作っていない会社には、良い材木がありません。さらに、木工と金工は加工技術が違いますから、木管を作るなら、木工の職人さんを雇わないといけません。
それ以前に、アルタスは今までピッコロを作っていませんから、まずは木管ピッコロの前に、ピッコロ作りのノウハウを貯めるところから始めないといけないわけで、隠し玉でもない限り、アルタスから木管ピッコロは厳しいですよ。
とは言え、私はアルタス製の木管フルートってのがあったら、きっと心がグラグラゆれ動くと思います。
こんばんは。
いやぁ、マジでアベノミクスに貢献してますね(笑)
高級ブランドですね…自分尾なんか130マソですよ、びっくり!もはや買わない…買えない領域です。
目指すのはブランド化…新宿のムラマツみたいな店舗かまえるのかなぁ?
ま、利幅が大きくなるし、出荷本数アップが望めない分野ですから、正しい洗濯かも?
アズミでエントリーユーザーをアルタス方向に誘導できればベターですし。
アズミフルートの音も聞いてみたい…吹いてみたいです♪
ぼーさん
私もあずみフルートを吹いてみたいです。都会のお店では、フルートフェアなどを開催しますから、その時に出てくるので、その時が試奏のチャンスかも。私も、機会があれば、ぜひ試してみたいです。
>新宿のムラマツみたいな店舗かまえるのかなぁ?
そうすると、オーバーホールが安くなるから、歓迎です。とは言え、アルタスは製造だけで、販売などはグローバルに丸投げだからなあ…独自店舗は難しいよね(涙)。でも、自社ブランドで都会にショールームの一つや二つ開いてこその“高級ブランド”だよね。銀座の一等地…とは言いません。東京なら、山手線の駅そばにショールームができたら、立派なものです。
>ああ、自分はこんな高価なフルートを使っているだ…とか思ったりしてね(爆)。
ああ、わかるわかる。ますます気に入りますねえ。
やっとこさみつけた楽器でしたから、買えかえる必要がないみたいな。
ああ、もう買えない領域に行ってしまったわ。
そうよねえ。それでなくても最近のグラナディラ、質がわるいそうな。
そうなると銀のピッコロ?高そうよねえ。笑
>私はアルタス製の木管フルートってのがあったら、きっと心がグラグラゆれ動くと思います。
ああ、欲しい!木管ほしいなあって思っていたの。
パウエルは無理だから 笑、国産かなあ。メンテ考えると。
あずみフルート、こないだの調整会であったんだけど、吹くの忘れてしまったわ。
今度、楽しみにしておきましょう。
su_zanさん
銀のピッコロ…たぶん、木管よりも安価だと思いますよ(笑)。それにアルタスが、作ったら、絶対に面白いピッコロができるんじゃないかなあ…って思います。
私は、オーバーホールに出してしまったので、今年の春の調整会はパスなんですね。せっかく、あずみフルートを吹くチャンスがあるのに、参加しないというのは、実に残念無念でございます。
>アルタスが、作ったら、絶対に面白いピッコロができるんじゃないかなあ…って思います。
でしょう? なにか変な期待をしてしまうんです。笑
アルタス産はびっくりさせられる事ばかりで、良い意味で大好き。
わたしの学生時代にはありませんでした。
昔はM、Sだけってイメージ。
最近はたくさんあっていいですねえ。
>オーバーホールに出してしまったので、
そうでしたね。残念。
でも、吹く機会はたくさんありそうですよ。お店に常にありそうですから。
金額、いろいろあるんですねえ。807より高いのがあったり。
今年、フルートコンヴェンションがあるのでいけたらいいなあ。
木管のフルート吹けるかな。
su_zanさん
アルタスって、なんか変わったメーカーだと思います。そこを嫌う人もいるけれど、そこを面白がってくれる人もいるわけで、私は、面白がっている人なんじゃないかな? だから、アルタスがピッコロを作ったら、絶対に一風変わったピッコロが出来上がると思うんです。それを面白がりたい私なんですね。
たぶん、あずみフルートも十分面白いフルートなんじゃないかなって期待している私なんですね。
>アルタスって、なんか変わったメーカーだと思います。
ハッハッハ。ぴったりなわたしって。???
ムラマツさんにはもうしわけないけど、わたしはもう吹かないメーカーでしょうねえ。
わたしが吹くと全然鳴りません。
アルタスかパール、もしくはヤマハが身体にあっておりました。
サンキョウさんは好きですが、気分を変えたかったので。
シルバーで良い楽器、が欲しかったんですよ。ほんと個人差、かなりありますよねえ。
ゴールドの音は年取るとつらいわあ。
>あずみフルートも十分面白いフルートなんじゃないかなって
期待しましょう。
su_zanさん
日本には、ムラマツ、サンキョウを始め、世界的に見ても、良い楽器を作ってくれるメーカーがたくさんあって、本当にフルーティストには恵まれた国なんだなあって思います。
だって、フルートの世界は、王者ムラマツに対して、サンキョウとヤマハが二番手グループとして追いかけ、その後にダンゴになって、ミヤザワとかパールとかアルタスとかが続いているわけだけれど、そのダンゴ集団の中でも、新参者でドンケツを走っているのが、正直な話、アルタスなわけです。そんな、ダンゴのドンケツって書いちゃうと、とてもダメなメーカーのように感じるけれど、実はダンゴのドンケツでも、メーカーとしては素晴らしい楽器を世に送りだし続けているわけで、それを考えると、ダンゴのドンケツでも、世界水準に達している日本のものづくり力ってすごいなあって思いますよ。
そして、ダンゴのドンケツだからこその“遊び心”って奴もちゃんとお持ち合わせているのが、アルタスの魅力なんだろうと思います。
やっぱり“シルバーで良い楽器”というなら、アルタスは選択肢から外せませんって。
フルートの世界、とりわけアマチュアフルーティストにとっては「いつかはゴールド」というのが本音でしょうし、メーカーだって、そこが分かっているからゴールドフルートの製作を頑張っているわけです。アルタスもゴールドを作っていないわけではないけれど、あくまでも主力製品はシルバーでしょ? アルタスのシルバーを使っているプロはたくさんいるけれど、アルタスのゴールドを使っている人って…プロにいるのかな? それくらいシルバーに特化したフルートメーカーってわけで、そこもダンゴのドンケツゆえの面白さなんじゃないかなって思います。