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「おはなしオペラ」を聞いてきました

 当ブログは一日一記事アップをルールとしていますので、時折、他に優先すべき記事(特にレッスン関係など)があると、後回しになってしまったり、お蔵に入ってしまう記事が、実はいくつかあります。今回の記事は、そんな『お蔵にしちゃおうかな…』と思いながら、やっぱり遅れたけれどアップしておこう、と思いなおした話をします。

 当地の美術館では現在「川上音二郎・貞奴展」というのをやっています。その関連イベントとして、ソプラノ歌手の塩田美奈子氏を招いて「おはなしオペラ『蝶々夫人』と大正ロマン」という特別演奏会を、先日、無料でやっていたので、テクテク出かけて見てきました。演奏曲目は以下の通りです。

 恋はやさし野辺の花よ
 宵待草
 パイのパイのパイ
 おはなしオペラ「蝶々夫人」
 私のお父さん(アンコール)

 無料のミニコンサートでしたので、コンサート自体は約1時間程度の短いものでした。会場がホールではなく、美術館のエントランスだったので、本当に手の届くような近さで塩田氏の歌声を聞くことができました。

 それにしても、塩田氏のナマ歌を聞くのは…ううむ、約二十年ぶりかな? まだ彼女が売り出し中の新人歌手の頃にパイジェッロ作曲の「奥様女中」を聞いて以来…じゃないかな? 久しぶりに聞く塩田氏の歌声は、若い時よりもむしろ良い感じになっていました。以前よりも力強さが増し、安定した感じの声になったのに、若い時同様にキラキラした部分もあって、いい具合に声が熟成してきたなあと思いました。年を取って、声をダメにする歌手も多い中、キャリアを積みながら、声も磨いてきたわけで、そういう点では、まさにホンモノのプロ歌手なんだなあって思いました。

 ちなみに、歌はナマ歌でしたが、おしゃべりはマイクを使っていました。また、ピアノは(美術館ですから)エレピ[カシオのプリビア]を使ってました。プリビアの音色は、それほどナマピアノっぽい音ではなく、どう聞いても“エレピ”って音でしたが、ピアノソロならともかく、歌の伴奏ならば、音色的に歌のジャマをする事もなく、きちんと歌をひき立てる音で奏でられていました。演奏者的にはどうかは分かりませんが、観客的には、エレビでオペラアリアの伴奏ってのも、アリかもしれませんね。

 プログラムの前半は、大正時代の浅草オペラの曲でした。浅草オペラの曲…ま、ずばり言っちゃえば、当時の流行歌ですね。もっとも、今でも、こうしたカタチで歌われる昔の流行歌なんですから、すでに“日本のスタンダード曲”って言ってもいい曲たちかもしれません。しかし、こういう曲をクラシック風に歌うのって、人を選ぶのですが、塩田氏は、この手の曲が得意な方なんだと思いました。ググッてみたら、塩田氏、浅草オペラの曲でCDを吹き込んだ事があるんですね。そりゃあ上手なはずです。すでに廃盤になってますが、現役盤だったら購入していたと思います。

 さて、メインプログラムは後半に控えている「おはなしオペラ『蝶々夫人』」です。「おはなしオペラ」? 興味津々ですよね。

 これは何かと言うと、塩田氏一人(とピアニスト一人)で、抜粋版の「蝶々夫人」をやっちゃおうという試みです。

 塩田氏のお子さんがまだ小さかった時に、彼女は母親として、お子さんが寝る時に、毎晩、絵本を読んであげていたそうです。絵本を読みながら、歌手のサガなのでしょうか、ついついストーリーの合間合間に歌を歌いながら、絵本を読み進めていたのだそうです。

 そんな感じでお子さんに絵本を読んであげるのと同じ手法で、オペラを、まるで絵本を読んでいるかのように、オペラのストーリーを説明しながら、その合間合間に歌(原語歌唱)を入れてみたら、どうだろうかというアイデアを実現してみたのが、この「おはなしオペラ」というものなのだそうです。

 現在のところ、持ちネタ的には『蝶々夫人』の他に『椿姫』と『まほうのふえ(魔笛)』の三つがあるそうですが、今回は『蝶々夫人』をやってくださったわけです。

 あの長い長いオペラである「蝶々夫人」を、スズキを語り部役にし、彼女が語るという体裁で、オペラ「蝶々夫人」を約30分の“歌語り”にしてしまいました。アリアも途中に5曲ほど入っていました。もちろん原語歌唱なのですが、歌う前に歌の意味を説明してくれていますので、おはなしはおはなしとして、歌は歌として、結構楽しめました。

「おはなしオペラ」って、意外におもしろいかもしれません。私は気に入りました。他の二つもぜひ聞きたいです。

 この「おはなしオペラ」って企画は、塩田氏とピアニストさんだけで演奏可能ですから、学校巡業や老人ホームの慰問演奏会などに最適なプログラムかもしれません。塩田氏は、良い演奏プログラムを見いだした…って感じです。

 それにしても、蝶々夫人って、15才でピンカートンのところに嫁に行って、16才で捨てられて、17才で出産して、19才で切腹自刃ですか? 私は今まで、そんな彼女の年齢など気にせずにオペラを聞いていましたが、この人、20才前に死んでいるんですね。なんか、それを思うと、虚構の世界の登場人物とは言え、なんかカワイソウです。

 そうそう、最後の「私のお父様」はアンコール曲でしたが、この曲、すごく良かったです。

 私がこの曲をナマで聞く時って、たいていアマチュアの方の歌唱なんですよ。それも割と初歩の方が歌うケースが多いのですが、アマチュアの方が歌えば、歌の出来は…やはり、それなりな感じになります。そんな、いつもいつも“それなりな感じ”の仕上がりでこの曲で聞いていたのですから、そこへプロである塩田氏のきちんとした歌唱でこの曲を聞いたら、そりゃあゾクっとしますよね。…この曲、こんなにいい曲なんだな。そして、プロはやっぱりすごいな。分かっちゃいるけれど、やっぱプロはすごいです。

 短いコンサートでしたが、なんか、これを無料で聞いては申し訳ない気がしました。

 コンサートが終わったあと、私はそのまま美術館の展示を見ていましたが、そこに私服に着替えた塩田氏がやってきました。すでにプライベートモードに入っていたので、声はかけませんでしたが、塩田氏のソプラノオーラって、すごかったですよ。とにかく、塩田氏がそばに近づくだけで、彼女が視界に入っていなくても「え、もしかしたら…」って分かるくらい、なにやら凄まじいエネルギーを発散していました。…やっぱり、スターなんだなあ…。ちなみに、プライベートの塩田氏も、当然ですが、すごい美人でナイスバディでした。やはり人目にさらされる職業の方は、色々と違いますね。妻に「声をかけてあげれば、きっと喜ぶよ」って言われましたが、あれだけの美人に声をかけるのって、そりゃあ勇気がいりますよ(汗)。

 昔からファンでしたが、年を取った今、改めていい歌手になられたと思います。

蛇足 でもやっぱり「おはなしオペラ」の抜粋版じゃあ、物足りないです(笑)。その日の晩は、やっぱりDVDを取り出して、きちんと全曲聞きました。私が聞いたのは、ちょっと古い演奏だけれど、ミラノ・スカラ座で行われた、浅利慶太演出、林康子主演の“チーム・ジャパンに”よる「蝶々夫人」。このオペラって、我々日本人が見ると、目を覆わんばかりのひどい演出のものばかりなのですが、そこへ行くと、この浅利慶太氏の演出は「こういう時代劇もあるよね~」程度の奇異さに抑えられていて、我々日本人が見ても、なんとか受け入れられる範囲の、エキゾチック・ジャパンな仕上がりの演出です。蝶々夫人をDVDで見るなら、この演出が一番いいかなって思います。ただ、演出はお薦めですが、画質はビデオ程度なのが、ハイビジョン時代の今となっては、残念ですね。

コメント

  1. グレッチェン より:

    おはなしオペラですか?楽しそう[E:note]舞台という額縁の中のオペラ鑑賞も良いですが 歌い手さんがすぐそこにいて その呼吸を感じながらというのも魅力ですよね オペラって本当は文部省が祭り上げたほど高尚なモノではなくもっと庶民的で楽しいのだと思います。おはなしオペラのような試みがどんどん増えて もっと身近になってくれると良いですよね[E:note]でも蝶々夫人って私はあまり好きではなかったんです。だって白人が東洋人を弄んで挙句に捨てちゃう話でしょう?子供だって取り上げられてしまうわけだし[E:angry] それに西洋系の方が演じると振り袖着てバタバタ走り回ったりして違和感あるし(アチラの人が日本人丸出しの椿姫みるのと一緒かな) それはともかくトゥーランドットのリウにしても あまりにも報われないキャラですもの[E:heart03] ところで すとん様とプリロゼ様の お申し出すごく嬉しいです(きゃ[E:happy02])ただルチア歌うといってもアマチュアだし たかだか4分の演奏時間の為にお運び頂くのも気が引けますが 時間等はっきりしましたら 一応情報として すとん様にメール入れておきます。ちびまる子ちゃんがトシ取って背伸びしてルチア歌うとこんな感じかなーってところだと思います。それから どんなに演奏がひどくても慰謝料とか交通費の類はお支払い出来ないのて…m(_ _)m

  2. すとん より:

    グレッチェンさん

     オペラって劇場のものですからね。確かに元々の発祥は王侯貴族らの宮廷だったかもしれないけれど、やがては庶民のものになっていったわけで、高尚なだけでなく、楽しい興行的な側面もあったのだから、そんなに肩に力をいれるほどのものじゃなく、気楽に楽しむ事も大切かなって思ってます。そういう点では、グレッチェンさんと同意権です。

    >でも蝶々夫人って私はあまり好きではなかったんです。だって白人が東洋人を弄んで挙句に捨てちゃう話でしょう?

     そうです、現地妻の話です。悲しいですね。どうしても、蝶々さんの目線でしか物語が見れませんので、ピンカートンを罵りながら、見る事になってしまいます。

    >すとん様とプリロゼ様の お申し出すごく嬉しいです

     いえいえいえ…。実際、スケジュールの都合で、どうなるかは分かりませんから。でも、可能であるなら、ぜひお伺いしたいと思いますので、ご連絡の方、よろしくお願いします。

    >どんなに演奏がひどくても慰謝料とか交通費の類はお支払い出来ないのて…m(_ _)m

     それを言いだしたら…私は今まで、私の発表会などに来てくださった方々に、莫大な慰謝料を支払わないといけないです、おお、怖!(笑)

  3. いちか より:

    私もこのコンサートに足を運びました。素晴らしい歌声に身体がぞくっと震えたのを覚えています。なんて綺麗なんでしょう!なんて透明な声なんでしょう。塩田さんそのものがとっても存在感があって凛とした姿がまぶたに残っています。おはなしオペラも引き込まれていくのがわかりました。もっと、もっと聞きたい!って思いました。

    こちらのページを拝見して思わずコメントしてしまいました。
    あの会場で、塩田さんの歌声に魅了された方たちがたくさんいたと思います。
    他の、おはなしオペラも是非聞いてみたいですよね♪

  4. すとん より:

    いちかさん、いらっしゃいませ。

     ナマの塩田氏の歌声、よかったですね。それと、歌はもちろん、語りも所作にも、品の良さがにじみ出ていました。

     ぜひ、チャンスをあれば、他のおはなしオペラも聞きたいです。私は特に「まほうのふえ」に興味深々です。あのオペラは、登場人物も多いし、筋も複雑怪奇ですし、有名な曲もたくさんあるし、それらをどう料理しているか、楽しみです。

    >あの会場で、塩田さんの歌声に魅了された方たちがたくさんいたと思います。

     でしょうね。でも、それはある意味、当然の事です。

  5. プリロゼ より:

    グレッチェンさま♪

    わぉ! ぜひお知らせくださいね~!!
    あまり遠すぎると行けないかもだけれど、成功を念じて差し上げられるものぉ!!
    ワタクシ、勝手にグレッチェンさまをお親しいお友達のように感じておりますのぉ。

    ついでに、すとんさま♪(笑)
    やっぱり『なま』はいいわよねぇ。
    しかも美人でナイスバディ!! いいなぁ、美人でナイスバディ(涙)

  6. すとん より:

    プリロゼさん

     私は『ついでに』!ですか(爆)。ま、“ついで”でもいいけど(笑)。

     『なま』は良かったですよ、ライブならではの楽しみって奴です。美人でナイスバディは…あの方の場合、人前に出る職業ですから、美人である事も、ナイスバディである事も、商売道具の一つですよ。プロとして、いいお道具を持ってらっしゃるってわけです。

     でも(失礼だけれど)あのお年で、あれだけの美貌と体型を維持するって、並大抵の努力じゃできないと思うよ、それってすごいと思いますよ。

  7. プリロゼ より:

    ひめさまもまけませんことよぉ!おやすみなさいですわ・

  8. すとん より:

    プリロゼさん

     はいはい、プリロゼさんも、タイプは違いますが、確かにお美しくてナイスバディですからね。それは私は保証します。だからと言って、プロ相手に宣戦布告しちゃダメですよ。オトナゲナイぞぉ~。

  9. プリロゼ より:

    ワタクシが美しいかナイスバディかは、お好みがあるからなんとも・・・[E:coldsweats01]
    でも、うれしいわ~[E:heart01] 単純ねぇ。

    だけれど、舞台映えするお顔立ちとお体が羨ましいのよぉ[E:shine]

  10. すとん より:

    プリロゼさん

    >舞台映えするお顔立ちとお体が羨ましいのよぉ

     なるほど、あの舞台映えする美貌は、才能の一つですからね。単に美しいだけではないですし、あと、記事にも書きましたが、オーラと言うか、カリスマ性がすごいですよ。その点は、一般人のプリロゼさんは、足元にも及びません(って、比較しちゃいけませんね)。

     でも、あれはあれで大変だと思いますよ。だって、雑踏の中にいても、雑踏に紛れることができない…と言うのは、プライベートライフでは、何をするにも面倒でしょう。群衆の中にに風景として溶け込めるってのも、実は立派な幸せなのかもしれません。

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