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合唱人の特徴、歌手の特徴

 別に二項対立をしてお互いを対立させるのが目的ではありませんが、主に合唱を中心に活躍する人と、主に独唱を中心に活躍する人の、違いのようなものを比較すると、おもしろいなあと思ったので、やってみました。もちろんですが、ここで取り上げる、合唱人も歌手も、アマチュア限定の話ですからね、念のため。

 まず合唱人から始めましょう。

 当たり前ですが、合唱では音程と発音が重視されます。

 当然、合唱人は音程にはシビアです。活舌が良く、言葉を重視して実に明瞭に歌います。常に集団行動ですから、協調性があります。また、指揮を見て指揮に合わせ、伴奏を聞いて伴奏に合わせて歌います。とにかく合わせモノが得意です。なんか、日本人の気質に近いものがありますね。

 合唱人たち自身は認めたがらないかもしれませんが、歌手(ソリスト)に妙な対抗意識を持っている人が少なくありません。特にキャリアの長い人に、その傾向は強いですね。それだけ意識しているなら、自分も歌手になればいいのに…。

 それでは、対抗意識を持たれてしまう、歌手の特徴はどうかと言うと…

 まず、歌手は声重視(発声・音色・最高音など)かな? 音程を軽んずるわけではないけれど、音程の正しさや歌詞の明瞭さよりも、声の響きを優先する傾向があります。

 性格は、自主性が強いですね。自分を前に出してくる人、多いです。自分大好きだし、音楽も、自分なりに考えて歌います。なので、伴奏はあくまで伴奏であって、伴奏は自分に合わせるべきだと考えている不届きな奴もいたりします。合唱と合わせる時も、大抵は合唱の事など、眼中に無かったりする、唐変木もいます。

 そうそう、一から十まで自分でコントロールしないと気が済まない完璧主義者も、少なからずいます。なにしろ、独唱ってのは、すべてをきちんとやれなければ、音楽が落ちてしまいますからね。

 高音歌手(ソプラノやテノール)に多いのですが、時々、周囲の存在を忘れ、自分の快感に突っ走って、音をのばしたり、記譜よりも高い音程を歌ってしまう、困ったちゃんもいます。その一方で、結構頑固で、なかなか他人に対して譲らない部分を持っていたりします。なんか、こう書いていると、歌手には、やっかいな人間が多いような気がしてきた(笑)。少なくとも、集団行動が苦手そうな人たちが多そう…。

 同じように「歌を歌う」人ですが、合唱人と歌手では、色々と違うところがあります。

 互いの役どころを変えるとどうなるでしょうか?

 例えば、合唱人が歌手に成ってみると? もちろん、何の問題も無い人もいる一方、多くの合唱人は、一人で歌う事に、困惑を感じるでしょうね。

 まずは心理的な問題があります。いつも皆と歌っているので、一人で歌う自信がないとか、一人で舞台に立つなんて恥ずかしいとか、一人でスポットライト浴びるのはイヤとか…まあ、そんなところ。

 技術的な問題もあるでしょう。と言うのも、合唱団と言うところは、合唱は教えますが、発声は教えませんから(当たり前)、多くの合唱人は、発声に問題を抱えている事が多いです。

 声が側鳴りで前に飛ばす事ができなかったり、発声は明瞭だけれど響きが足りなかったり、レガート唱法ができなかったり、自分で音程を作っていけなかったり、伴奏者をうまくリードできなかったりするし、何よりも歌心に乏しかったりします。

 一番の問題は、自分という人間を、うまく表現できない事かもしれません。善かれ悪しかれ、歌うという行為は、自分をさらけ出して表現していくものですが、合唱での表現と言うのは、常に指揮者の表現であって、合唱団員のそれではありません。なので、自分を表現するというのは、合唱人の不得意分野だったりします。

 逆に歌手が合唱に入るとどうなるか? これは一言「つまらない」でしょうね。なにしろ、常に、小さな声で自分を殺しながら歌わないといけないわけですからね。ストレス溜まりますよ。たまに、うっかり普通に歌うと、怒られるでしょうし…。

 あと、歌手は往々にして、音程よりも発声を優先しちゃうし、発音の明瞭さよりも声の響きを優先しちゃいますから、そのあたりでもかみ合わないでしょうね。合唱団によっては、合唱的な美しさを求めて、一般的な歌手の声の響きとは、全く違った音色で歌っているところもあります。ですから、歌手が合唱に入ると「全体の響きを考えて!」とか「叫べばいいってもんじゃないよ」とか言われます。影で「やっぱり、あの人には合唱は無理だね」って言われているかもしれませんよ。

 ううむ、どうやら、両者とも、歌う人である事には間違いないけれど、アマチュアレベルにおいては、合唱と独唱は全く違う、二つの世界なのかもしれません。そういう点では、プロの方で、その両方をうまく渡り歩いてる方もいらっしゃって、そういう所は、さすがプロはプロなんだなって思います。

コメント

  1. おぷー より:

    すとんさんの説明に拠ると、私は歌手ですね、やっぱり。
    合唱団のメンバーも3年大きな顔をして歌っている私に慣れたのか、
    そんなもんと思う様になったらしいです。
    でも、はみ出すことはしませんよ。
    はみ出さない事に命掛けてますんで。(笑)
    合唱はゲーム感覚で出来るので好きです。
    自分を試す、と言うゲームですね。
    声をワザと合唱風の声にしてみたり、とか。
    大分上手になってきました。やれば出来るもんでっせ。

  2. すとん より:

    >おぷーさん

    >はみ出さない事に命掛けてますんで。(笑)

     ここが一番肝心かもしれません。合唱にせよ、重唱にせよ、歌手同士のアンサンブルを聞くと、たとえプロの方であっても、アンサンブルの上手な方々と、???な方々が見受けられますが、それって技術うんぬんではなく、合わせよう、はみ出さないようにしよう、と言う“意思の力”が大切かなって思います。

     自分を前に出す事と、周りとの調和を考えていくこと。ある意味、相反することかもしれませんが、このバランスをうまく取っていく事が、上手に合唱/重唱を歌っていくためのコツのようなものなんでしょうね。

    >すとんさんの説明に拠ると、私は歌手ですね、やっぱり。

     おそらく、本来は、歌手あるとか、合唱人であるとかの、分類自体がナンセンスで、場面場面で使い分けができて、合唱の時は合唱に徹し、独唱を歌うときはそのように振る舞うべきなんだし、プロの方々はそれが上手にできている方が多いなあと思います。私の記事で“アマチュア限定”にしたのは、やはり私も含め、アマチュアって色々と足りなくて、そのために、どうしても“特化”してしまう部分がある、そう、合唱なら合唱、独唱なら独唱に特化してしまうわけです。

     アマチュアの方は趣味ですし、何よりも“楽しさ”優先であるべきですから、それで十分なのです。でも、本当は、おぷーさんのように、両方楽しめるのが、一番良いのかもしれませんね。

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