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合唱の衰退理由を深掘りしてみた その4 共産主義運動も衰退

 歴史を見ると分かるのですが、日本における合唱ブームって、もともとは共産主義思想の布教運動(オルグと言います)の一部だったのです。

共産主義運動が衰退してしまった

 かつて日本でも、共産主義とか社会主義とかが元気な時代がありました。その頃に、地方から“金の卵”と呼ばれて、集団就職をするために、都会から出てきた若者を中心に流行ったのが“うたごえ運動”だったのです。このうたごえ運動で歌う喜びを知った人たちが、今の合唱界の中心を担っている、高齢者世代なのです。

 当時のうたごえ運動(だいたい“歌声”ではなく“うたごえ”と表記する事からも、左翼臭がプンプンとするでしょ?)とは、そもそも共産主義運動のオルグとして1960年頃から活発になりました。当時は、うたごえ喫茶と呼ばれる喫茶店が各所にあって、そこで若者たちは、ロシア民謡(という名前のロシア軍歌)や反戦フォークとかをみんなで歌い、仲良くなったところで、運動家の皆さんが若者たちに共産思想を伝道していったんだそうです。…だそうですと書くのは、私はそれをリアルには知らないからです。だって、私よりも上の世代の人たちの話だもの。

 で、そうやって若者たちの間に浸透していった、うたごえ運動ですが、安保闘争等で共産運動そのものが頓挫し、大衆の支持が失われしまい、1970年代中頃には、うたごえ運動そのものが衰退してしまい、多くのうたごえ喫茶が閉店してしまったのだそうです。

 しかし、そこで歌の魅力に取り憑かれた、まだまだ歌い足りなかった人たちが、アマチュア合唱団を各地で設立し、それが今の合唱文化につながっていきます。もちろん、これらの合唱団は、共産主義や社会主義とは無縁なのは、言うまでもありません。

 そうやって合唱に目覚めた、うたごえ運動世代の人たちが、今、鬼籍に入り始めているわけです。そりゃあ、合唱に関わる人の数が減るわけだ。

 さらに、そのうたごえ運動世代の下の世代の人は、合唱が政治活動の一部として使われていたのを見ていたので、ノンポリとなり、合唱そのものと距離を取っているわけです。これはオウム真理教を見ていた人たちが、宗教から距離を取るようになったのと同じ構造なのかもしれません。

 ここから言える事としては、そもそも日本の文化に合唱は無かったって事です。つまり、合唱とか、声を合わせて歌うというのは、外国からやってきた風習だったのです。でも、それはとても楽しくて、心を震わせるような体験だったので、ブームになっただけであり、それが政治や思想とつながっていたために、下の世代に継続される事がなかったのです。

 日本の音楽史を振り返ってみると分かるのは、日本人にとっての歌とは、基本的に独唱なんですよ。民謡等の大勢で歌う音楽は存在していますが、それも斉唱であって、みんなで独唱をしているだけなんです。つまり、日本にはハモりを楽しむ文化が無かったのです。日本にはボリフォニックな音楽に喜びを感じるという習慣がなかったのです。かろうじてあるとしたら、それは民謡等における“合いの手”ぐらいじゃないだろうかと思うのです。

 そもそも合唱は我々のDNAには根ざしていないものなので、ブームが去れば、廃れてしまうのは仕方ないのです。

 それでも合唱そのもの、人々が集まって声を合わせて歌うというのは、実は楽しい事です。しかし、現代日本には、合唱以外にも楽しい事はたくさんあります。

 例えば、オジサンたちなら、パチンコかな? パーラー(今の時代、パチンコ屋はそう呼ぶのだそうです)は、全国津々浦々にあります。

 また、競馬競輪ボート等のギャンブル系の遊興施設にも人がたくさん集まります。ウチの近所の競輪場なんて、毎日毎日押すな押すなの大繁盛だし。ああいう人たちに「パチンコや競輪競馬ボートを止めて、合唱をしましょう」と言っても、そりゃあ効果ないです。だって、合唱よりもギャンブルの方がワクワク度が高いのは否定できません。何しろ、ギャンブルには、命よりも大切なお金がかかっているんですからね。

 なので、オジサンには期待できません。むしろ望みは、オバサンたちです。うまく口コミを使えば、女性は合唱に引き込めます。それゆえ、現在活動している合唱団の大半が女性合唱団になってしまうのも、仕方ないのです。

 日本の合唱の未来は、女声合唱にある…と言えるでしょう。

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コメント

  1. 如月青 より:

    私見ですが...
    合唱の原点はやはり教会にあると思ってます。
    教会文化が根付いてない日本で、昭和に限って合唱が隆盛だったのは、
    第二次世界大戦後の貧しい時期に音楽好きが出来る活動がそれしかなかったからかも。

    今も合唱に参加したいとは思いますが、曲が問題です。教会系メインで行きたいけど、
    そういう合唱団は近くにない。いわゆる「ママさんコーラス」系だと、選曲が中学校の
    教科書の延長で歌う気になれない。

    日本語でも優れた詩に良い曲のついた曲集はあまたありますが、そういうのは高校・大学で
    文芸趣味のある団員が時間をかけて練習しないとまとまらないのですね。教会系も詩は単純
    ですが、儀式に付随するヴォ―カリーズだと割り切って歌えるからかえってメロディに集中
    できます。X’mas直前の今、「Ave Verum Corpus」歌いたいですね。

  2. すとん より:

    如月青さん

     合唱の原点は教会で、教会文化が根付いていない日本は、合唱が栄える要素が無いのだろうし、戦後の貧しい時期に合唱が盛んになったのは、たまたまだったのだろうと思います。そういう点では、如月さんに同意します。

     やっぱり、合唱はこのまま廃れてしまうのでしょうね。

    >今も合唱に参加したいとは思いますが、曲が問題です。

     そうなんですね、曲が問題です。幸い、ウチの近所には、教会系の大きな合唱曲をメインで歌う合唱団がいくつかありますので、その気になれば、そういう合唱団に入団すれば良いのでしょうから、私の場合は、まだマシなのかもしれません。

     合唱は、一人ではどうにもなりません。どうしても、地域や人間関係に縛られてしまいます。そこが何とも悩ましいところです。そういう点では、独唱の方が気楽に楽しめると言えないわけではありません。

    >「Ave Verum Corpus」歌いたいですね。

     私はソロバージョンで歌っちゃいますよ(笑)。

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