私は高音と戦い、高音発声の修得に邁進している、音楽が趣味のオッサンなわけです。そんな日々高音と格闘している私に、しばしば親切な人が現れて、あれこれアドヴァイスをくださることも多いです。ほんと、感謝な事です。中には、その貴重なアドヴァイスで目が開かれて前に進む事ができたという事もあります。
が、その一方で、見当違いのアドヴァイスをしてくださる方もいないわけではありません。今回は、そんな見当違いのアドヴァイスの一つを取り上げて、どうして見当違いなのかを書いてみたいと思います。
私が高音発声に苦労していると知ると、たまに「ファルセットを混ぜて歌えばいいじゃん」というアドヴァイスをいただきます。ううむ、それって発声方法が違うんだよね。
ファルセットに息をたくさん混じえると高音を柔らかめの声で歌う事ができます。また、このやり方にプラスして、ノドを若干締めると高音でも強めの声で歌うことすらできます。つまり、ファルセットを利用することで、割と簡単に高音で歌えるようになります。
私も、発声練習でならば、この発声方法が使えます…が、実際の曲で使おうとは思いません。なぜ思わないのか? ひとことで言えば、このやり方は、ミックスボイスとかミドルボイスとか言う、日本のポピュラー音楽系の歌手のテクニックであって、クラシック系の独唱歌手では使えないやり方だからです(クラシック系でも合唱の人はよく使います…ってか推奨されたり強制されたりします)。
と言うのも、このやり方ではファルセットを発声のベースにするため、声量に大きく欠けるからです。つまり、ホールに響き渡るような朗々とした声には絶対にならないって事です。
ポピュラー音楽では、歌手はマイクを使用して歌う事が大前提になっています。マイクを使うので、歌手の声量は全く問題になりません。最近はマイクの性能も良くなっていますので、歌手の声がかなり小さくても、あまり問題にはなりません。
一方、私が学んでいるクラシック系の歌は、マイクを使用しない事が大前提になっています。マイクを使いませんから、歌手自身の歌声は大きければ大きいほど良いのです。声の小さな歌手では、歌う場所とか歌える曲とかに、どうしても制約が生じます。
なので、クラシック系の歌手としての勉強をするならば、なるべく大きな声が出せる発声方法を身につける必要があります。
なので、日本のポピュラー歌手のような、単純にファルセットを利用した声で歌うわけにはいきませんし、そういう発声方法を身につけるわけにもいかないのです。
あと、私自身の好みもありますが、私は、この“ファルセットを混ぜた高音”ってのが、実は大嫌いでもありんす。自分が嫌いな発声方法を身につけるなんて、金輪際、ありゃしませんって。ポピュラー系の高音発声で歌うならば、ベルティングですね。わたしゃあ、あれが好き。どうせやるならアレがいいっす。ミュージカルの方々や、洋楽の歌手たちがよく利用しています(ってか、むしろスタンダード?)し、あれは好きな声なんだけれど、やっぱりマイクの使用が前提になるので、私は学べないよなあ…って思ってます。
以上は男声歌手の話です。女声は男声とはカラダのつくりも違うし、発声方法も違うので、ファルセットの扱いが違うという事は知ってますが、それ以上の事は知らないので、この記事では触れません。もっとも、女声だって、単にファルセットを混ぜて歌えばいいってほど単純な話にはならないと思います…というよりも、たぶん女声の方が男声よりもテクニカルな話になってくるんじゃないかと思います。現在の女声の発声には、伝説のカストラートたちの技法が受け継がれているからねえ。
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