おそらく、腹筋に力を入れなくても歌える人は歌えるし、声を(意識的に)支えようとしなくても歌える人は歌える。もちろん、私のように、歌っている時にノドの力だけで歌ってしまい、お腹がピクリとも動かない人は、積極的にお腹を動かさないとロクに歌えない事は事実です。でも、それだって慣れの話で、お腹が意思的に動くようになれば、今のように極端な動かし方をしなくても十分なはず…です。
それなのに、なぜ「腹筋に力を言えて声を支えないといけない」のか?
おそらく大切なのは“腹筋に力を入れる事”ではないのかもしれません。
虫刺されの薬には、たいていメントールが入ってます。メントールってのは、ハッカとかミントとかに含まれているスースーさせる成分を言います。なぜ、虫刺されの薬にメントールが入っているのと言えば、虫刺されのかゆみを、メントールのスースー感でカバーして分からなくさせるためです。つまり、虫刺されはかゆいんだけれど、そのかゆさよりも強い刺激があって、スースーしちゃえば、虫刺されのかゆさを感じなくなる…という人間の感覚の特徴を利用しているわけです。
腹筋に力を入れるのも、実はこれと同じ事が言えるのかもしれません。
腹筋で息を支えるのは、確かに大切なのですが、別に年がら年中入れている必要はないし、高音や低音などの発声が難しい音ではたっぷり支える必要がありますが、中低音程度なら別にそんなに支えを気にしなくても良いのかもしれません。それでも、なぜに腹筋にこだわるのか。
虫刺されに対するメントールなんですよ。
歌手の神経が「腹筋で声を支えよう」に集中すると、他がいい感じにおざなりになるのです。他の代表格が…ノドなんです。つまり、何も考えずに歌ってしまうと、ノドに荷重な力を入れてしまう人(代表例は私)に「腹筋を動かせ」「腹筋に力を入れろ」と意識させると、神経が腹筋に集中して、ノドがおざなりになってしまい、いい感じで脱力するのです。
人間というのは難しいもので「ノドを脱力せよ」と言われて脱力できる人なんて、まずいません。だから「ノドを脱力しなさい」と教える先生がいたら、その先生は素人です。だって、そんな事、ほとんどの人ができるわけないんだから。
ノドを脱力させたければ、その他の部位に神経を集中させれば良いのです。例えば「二の腕に力を込めて、力こぶを浮き立たせなさい」でも良いし「足に力を入れて、思いっきり踏ん張りなさい」でも良いし「指先からビームを出しなさい」だって良いんです。どれであっても、ノドの脱力は出来るでしょうから。でも、どうせ力を入れるなら、力を入れた方がよい部位に力を入れた方が、その力をより有効に使えるわけだから、力を入れる先を、二の腕とか足とか指先ではなく腹筋にしているだけです。だって、腹筋に力を入れて、声を支えるってのは、やっぱり(程度の差はあっても)必要だからね。
だから、ノドの脱力をするために、腹筋に力を入れて、ついでに声も支えている…というのが、正解なんだと思います。
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コメント
こんばんは。
この動画は、支えに関して教えているのか?
それともビブラートに関してか?
何だかためになりそうです!?
https://www.youtube.com/watch?v=hsO_w3S3SpQ
名無さん
動画見ました。これはレッスン風景ですね。パヴァロッティが生徒さんに(学生さんかな?)に「ランメルモールのルチア」のテノールアリア(これがまた、半端なく難しいアリアなんだわ)を教えているところです。
動画の前半は、難しい箇所でのカラダの使い方を、生徒に自分のカラダを触らせて教えているところです。同性同声の生徒さん相手だと、どの先生方もよくやるありふれた教え方です。もっとも、教えている人と教えている曲が半端ないだけです。
後半は、普通に歌い方をレクチャーしているだけです。“in di spelanto”の“la”をどう歌うべきかを教えているわけです。うーん、Y先生が常々私に行っている「高音を前に飛ばして歌え」ってヤツですな。高い音は、いつまでも自分で握っていちゃダメで、突き放すように、吹き飛ばすように歌うのが正しいわけで、それをパヴァロッティが生徒に示しているわけです。
それよりも驚いたのが、パヴァロッティの話し声。歌声とは全く違っていて、女声じゃないかと聞き間違えるほどに、細くて軽いですね。パヴァロッティのインタビュー動画とは滅多に見ないので、彼の普段の話し声に親しみのない私ですが、そう言えば、確かに、数少ない彼のインタビュー動画では、こんな感じに話していたわ。
パヴァロッティの歌声は、彼としては、かなり太く重くしているんだなあ…でも、それでも、あの軽さの歌声なんだなあ…って思いました。やっぱ、私とは、持っている楽器が全然違うわ(当たり前か)。
パヴァロッティの話し声って、グリゴーロの話し声に、なんとなく似ているような気がします。イタリアの男の声って…あんな感じなのかな? 我々日本人とは、根本的に何かが、何もかもが違うような気がします。
こんばんは。
返信ありがとうございます。
そうなんですね、普通の教え方の一つなんですね。
動画の後半でパヴァロッティがピアノの前で
自分のお腹を指差して、揺らしていたので
ビブラートでも教えてるのかと思いました。(^^;)
ところでしつこいですが↓この動画は、
親子だと声が似るのかなあと思わせるものがありますよ?
よかったら(^^;)
https://www.youtube.com/watch?v=PN185BQhEnE
名無さん
ビブラートは教えませんよ。ビブラートは正しい発声をしていると自然に付くものです。ですから、ビブラートを付けない歌い方(ノン・ビブラート唱法)は教えますが、わざわざビブラートを付ける方法は学びません。
クラシック声楽では、ビブラートはあくまでも自然に控えめに付いてしまうものであって、人為的に付けるものではありません。もし人為的にビブラートを付けてしまったら、それはもはやクラシック声楽では無くなってしまいます。別の音楽ジャンルの唱法になってしまいます。例えば…演歌とかね?
パヴァロッティ親子の声は、やはり似てますね。しかし、テクニックが親子とは思えないほど違うので、聞いた感じはかなり違ってます。親父さんもローカル歌手として活躍していたそうですが、世界のトップテノールの息子とは雲泥の差で、息子さんの超人的なテクニックが凄いんだと思うし、同じような素材の声でも、テクニックでこれだけ変わるっていう、見本のようなものだと思いました。
つまり、テクニックがあれば、そのテクニックで美声なんて、いくらでも作れるって事…なのかもしれません。ちょっとですが、希望を感じる動画です。