美しき水車小屋の娘をどんなふうに歌うべきか
声楽のレッスンに行ってきました。
まずはハミング練習からです。鼻の中がかゆくなるくらいに、鼻に響きを入れて歌いました。
次に、発声練習では、しっかり息を支える。たっぷり息を流す、吐く。その上で、息に蓋をしないように気を使う。常に息を上に貫くように吐いて歌う…など、息の支えと流れに注意しながら、行いました。息、大切です。
さて、まずはシューベルト作曲「美しき水車小屋の娘」の第1曲「Der Wandern/さすらい」です。
レッスンのポイントは…メロディ歌唱よりも、まずはドイツ語です。ドイツ語は、歌うのに難しい言語です(涙)。
お経のように、ゆったりしたテンポで、すべての母音と子音をきちんと発音しながら、音程変化を入れずに歌ってみました。ドイツ語の発音そのものも難しいけれど、それ以上に難しいのは、子音をしっかり正しい音程にして歌っていく事です。
本来、子音はノイズですから、音程など気にしなくてもいいはずです。しかし、歌ともなると、音程があるものですから、ただのノイズである子音も、しっかりと音程を付けて発音しないといけないわけです。子音をノイズとして扱い、子音の音程がいい加減だと、いくら母音の音程が正しくても、歌が音痴に聞こえてしまうので、子音にまで神経を行き届かせて歌わないといけません。
プロの歌唱でも、ドイツリートだと音痴に聞こえてしまう人は、この子音の扱いがうまくいっていないからなんだそうです。
ドイツリートは、イタリア歌曲以上に、メロディーが動きますので、それだけ音程にはシビアにならざるをえません。そこで子音の音程に気をつけるわけだけれど、このやり方は、フィッシャー=ディスカウの歌い方に端を発します。日本人はフィッシャー=ディスカウが大好きなので、このやり方でリートを歌っていくのが王道と言えば王道なのです。
もちろん、フィッシャー=ディスウとは別のアプローチもあります。子音を単なるノイズとして扱い、発音よりも感情などその他の要素を重要視して歌っていくやり方です。このやり方は、どうかすると音痴になりやすいのですが、それでも母音にたくさん響きを載せて歌うと、歌(子音+母音)の音程が多少甘くても、聞いていて許せてしまうのだそうです(ただし、ちゃんと聞くと安定の音痴なのが分かっちゃいますが:笑)。
つまり、ドイツリートをきちんと歌うためには、1)子音に気をつける 2)響きに気をつける 3)その両方を行う、があるわけで、私としては、1)に軸足を置きながら3)を目指していこうというわけです。
まあ、この件に限らず、リートという種類の歌は、10人いれば10通りの歌い方があるわけで、そこがオペラのアリアとは違うわけです。オペラアリアは“配役”の歌であり、その役柄のキャラクターは、台本作家によって、きちんと決まっているわけで、乱暴な言い方をしてしまえば、誰が歌っても大きく変わらないのが理想です。つまり、オペラアリアなんて誰が歌っても一緒…でないといけないわけです。だから、我々ファンは、やれ高音がどうのとか、あそこがパワフルだとか、感情のこもった歌であるとか…、そういう枝葉末節の部分の違いに着目するわけです。
そこへ行くと、ドイツリートの場合、歌の主人公には決まったキャラクターがあるわけではありません。歌の主人公に血肉を通わせるのは歌手の歌い方であり、歌手がその主人公をどんな人物として設定していくかで、そのリートの歌い方が変わってくるわけです。
私が今挑んでいる「水車小屋の娘」に出てくる、若い粉挽き職人の彼は、一体どんな人間なのか? ネクラなのか、チャラ男なのか? 都会の出身なのか、田舎モノなのか? どんな生育歴なのか? 今までの女性経験はどうなのか? カラダは大きいのか小さいのか? 腕っぷしは強いのか弱いのか? 自信にみちあふれたタイプなのか、劣等感に悩まされている人間なのか? そう言ったキャラ設定をきちんと決めると、自然と歌い方も決まってきます。
確かに、勉強のために、色々な歌手の「水車小屋の娘」を聞きましたが、どの歌手、それぞれに違いました。「良いなあ」と思った歌手もいれば「なんか違う」と思った歌手もいました。
私はどんなふうに歌っていこうか…まだ歌い始めたばかりなので、何も決めていないけれど、歌っていく中で、見えてくるものがあるだろうから、それを大切にしていきたいと、今はそう思っています。
それにしても、ドイツ語。難しい(涙)。ちょっと前の時代まで、声楽を学ぶと、まずはドイツリートから始めたそうです…が、こんなに難しい言語の歌を初心の段階でやらなきゃいけないなら…私なんかは、早々に挫折してしまったかもしれません。ああ、ドイツ語、難しい。
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