フルートは、そもそもの横笛までさかのぼれば、かなり古くからある楽器ですし、実際、ルネサンス時代とかバロック時代とかの、いわゆる古楽と言われる音楽がブイブイ言わせていた時期は、かなり人気の楽器だったようだし、演奏人口もそれなりにいたようです。
それだけ人気のあったフルートならば、その後に発生したオーケストラで主役の座を射止めても不思議なかったのに、現実のオーケストラはヴァイオリンを主役としたアンサンブルに発展し、フルートはオーケストラサウンドに彩りを加える管楽器の一角を担う程度の存在に落ち着きました。
なんかなー、なんでかなー。オーケストラがフルートを中心としたアンサンブルになっても良かったのに、なぜなぜどーして、ヴァイオリンが中心のアンサンブルになっちゃったのかなー。
だってね、フルートもヴァイオリンも、楽器としての基本的な音量はほぼ同じ。音域だって、ほぼ同じ。携帯性も同じような感じだし、別にフルートがヴァイオリンと入れ替わっても不思議ないじゃん…って思うわけです。
でもまあ、その一方で、確かにヴァイオリンがフルートに優っている点もないわけじゃないからなあ…とも思うわけです。
例えば、半音演奏や転調の容易さ。ヴァイオリンはどんな調でも容易に演奏できますし転調も簡単にできます。要は、左手の親指をネックに置く場所を変えれば、演奏するフレーズ全体の調を容易に移動できます。でもフルートは…演奏しながら管の長さを変更できるわけもなく、その結果、楽に演奏できる調と、苦手とする調があり、転調も必ずしも容易であるとは言えません。
フルートにはブレスの影響があり、人の息の長さよりも長い音やフレーズの演奏は、原則的に無理です(ま、現代奏法である循環呼吸というテクニックはありますが…)。一方、ヴァイオリンは弓の長さ分しか音は出せませんが、上手に弓を返せば、無限に長い音やフレーズの演奏が可能です。これって、結構デカい違いかも。
アンサンブルにおける、兄弟楽器というか、同属楽器にもフルートは恵まれていません。ヴァイオリンには、ビオラやチェロ、コントラバスといった兄弟たちがいて、彼らとつるめば、実に幅広い音域を支配する事ができます。でもフルートの兄弟楽器ってのは、ピッコロぐらいです。フルートとピッコロのコンビは、なかなか魅力的だけれど、あまりに高音に偏っていて、そんなに心安らぐ感じはしません。と言うのも、肝心の低音楽器がいないからです。
もちろん、今でこそ、アルトフルート、バスフルート、コントラバスフルートという低音フルートが存在しますが、これらの楽器が誕生したのは、近代に入ってからの話であって、古典派からロマン派の時代には、これらの楽器は存在しなかったわけですから、フルートとピッコロだけで、オーケストラの主役を張るには…色々と厳しかったんだと思います。
あと、たぶんだけれど、時代の好み…もあるかも。と言うのも、オーケストラが発展していった、古典派からロマン派の時代って、フルート音楽が徐々に衰退していった時代なんだよね。つまり、フルートという楽器は、古典派やロマン派の作曲家たちの好みとは、少し違っていた…という事です。あの頃、もてはやされた楽器は、ヴァイオリンとかピアノであって、フルートの人気は…その前の時代ほどじゃありませんでした。
そう考えると、フルートがオーケストラの主役になれなかったのは、ある意味、仕方ない話なのかもしれないけれど、一人の笛吹きとしては、残念至極な感じがします。オーケストラがフルートアンサンブルを中心としたアンサンブルだったら…なんかワクワクしませんか?
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コメント
すとんさん、こんにちは。
弦楽器は出番が多いですが、その分ピリピリして疲弊している方が多そうです。それに比べれば、管楽器は一見ヒマそうに見えますが、人間の息を使うという点で、体力的な負荷が大きいため、ピンでしか出てこない、ということなんですね。
私はフルートといえば、何となくフランス音楽を連想してしまいます。
オーボエは、ヴェルディのソプラノのアリアに沢山出てきます。クラリネットはモーツァルト以降でないと出てこないですね。
ファゴットは・・・?まぁ、低音楽器をやる人自体が少ないので、重宝はされるのではないでしょうか?
金管は、おめでたい時だけに思いっきり目立つという感じで、それ以外は待っている感じですね。
ドロシーさん
管楽器には吹奏楽というのがあります。フルートは、人気の割には地味な扱いを受けていますが、トランペットやクラリネット、アルトサックスなどは、ほぼ主役と言っても良いでしょうね。
吹奏楽は、歌とはあまり接点がないので、声楽の人には馴染みが薄い音楽ですが、お好きな方は、たくさんいるし、命かけている人も大勢いるんですね。なので、私などは、管楽器や打楽器と言うと、どーしても吹奏楽のイメージからは逃れられません。
あと、地味ですが、フルート・オーケストラなんて言うものもあるんですよ。フルートだけで構成されたアンサンブルなんですけれどね。
吹奏楽といえば、中高生のイメージです。私の周りでヴァイオリン以外のアマオケで活動している人で、かつ中高で吹奏楽がなかった、という人は大学のオケで始めたという方が多いです。
管楽器吹いているアマチュアの人は、大体音が出せて自信がつくと、独奏曲のテクニックを磨くことを目指すよりもアマオケに行くのではないかと思いますが、サックスだけは、オケにないのでわが道を行くって感じがします。
フルート・アンサンブルなら10人くらいのグループの演奏を聴いたことがありました。
アルト・フルート吹く知人は、弦4やりたいのにヴィオラがいない時に重宝しますが、本人は面白くなさそうですね。
こんばんは
> 残念な事に、オーケストラの主役はヴァイオリンなんですよ
ハイドンの頃は既にヴァイオリン(というかヴァイオリン属?)は楽器として完成されていて、彼が弦楽四重奏曲とか交響曲を作り、モーツァルト、ベートーヴェンがハイドンへのオマージュみたいに(というか別世界ですが)弦楽四重奏曲とか交響曲を作曲し、今もよく演奏され続けている、と独墺中心でかなりバイアスあるかもしれませんが、なんとなくこちらが受け入れている見方です。
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンあたりはピアノソナタも含めて大好きですが、ハイドンはあまり聴いていないような。
> フルートもヴァイオリンも、楽器としての基本的な音量はほぼ同じ。音域だって、ほぼ同じ。
低音ではフルートはヴァイオリンのG線にとてもかないません。Gまでメチャ太い音がでるし、というか競争しようともおもわないし。高音もヴァイオリンのハーモニクス(どこまで出てる?)は普通に聴けますが、フルートの第4オクターブはイベールの協奏曲の最後みたいな一発芸のイメージしかなくてきれいなppの旋律は聞いたことありません。
> フルートにはブレスの影響
弦楽器でもブレスを取って合わせています。無窮動みたいな曲は聞いているこちらは苦しいです。
> 時代の好み
フルートが今の形になったのはベームの1847年の特許で、そのあと変わったのはクローズGis、Aisレバーとブリチアルディキーくらい?で今に至ります。このフルートがドイツで受け入れられるのはメチャ時間がかかっていて当時は多鍵式木管がずっと使われていたようです。ケーラー、アンデルセン、フュルステナウのエチュードはもともとは多鍵式木管用です。こちらは多鍵式木管はキーさえふさがらなくて音もでません。
結局ロマン派の作曲家の時代には間に合わず、交響曲にはパートとしてギリギリ(?)残りましたが、フルート作品はバロックと近代フランスしかありません。
> 一人の笛吹きとしては、残念至極な感じ
こちらはたまたまこの楽器しかなく、新たに弦楽器始めようという気合もなく、某アマオケの片隅で吹いているだけで十分です。
ドロシーさん
おっしゃるとおり、吹奏楽と言えば、やはり中学生高校生の部活というイメージですね。
>管楽器吹いているアマチュアの人は、大体音が出せて自信がつくと、独奏曲のテクニックを磨くことを目指すよりもアマオケに行くのではないかと思いますが
アマオケに限らず、吹奏楽団や各種バンドなど、アンサンブル団体に行きたがるのは、事実だと思います。と言うのも、楽器って、単体では音楽が完成しないから自然とアンサンブル志向になってしまう…のではないかと私はにらんでいます。それは歌も同じで、だから多くの人は合唱に行くんだと思います。
楽器単体で音楽が成り立ってしまうのは…ピアノぐらいだしね。
あと、楽器の練習って孤独だから、自然と仲間を求めてアンサンブルに行く…というのもあるんじゃないかなって思います。
>アルト・フルート吹く知人は、弦4やりたいのにヴィオラがいない時に重宝しますが、本人は面白くなさそうですね。
まあ、アルトフルートとか、ヴィオラとか、色々と訳ありの人が演奏する楽器…って、偏見を私は持っています(ごめんなさい)。
tetsuさん
まあ、ヴァイオリンやフルートに限らず、楽器の持つ音域の両端はあまり使わないので、普段は考えに入れなくていいと思いますよ。確かに、ヴァイオリンのG線の音は強烈ですが、ヴァイオリンって、思ったほど高音は得意ではなく、フルートとほぼ同じ音域と書きましたが、実際は、若干フルートの方が音域が高い方にシフトしています。
とは言え、難しい事を抜きにすれば、ヴァイオリンの楽譜でフルートを、フルートの楽譜でヴァイオリンが演奏できるのは、事実ですよ。実際、私は同じ譜面で、フルートを吹いたり、ヴァイオリンを弾いたりして遊んでますよ。
ちなみに厳密に言うと、ヴァイオリンとほぼ同じ音域なのは、フルートではなく、アルトフルートだったりします。
おっしゃるとおり、楽器が完成された時期の違いというのはありますね。ヴァイオリンは、大昔に完成されたけれど、フルートが現在のカタチになったのは、tetsuさんがご指摘されたとおりです。
>結局ロマン派の作曲家の時代には間に合わず、交響曲にはパートとしてギリギリ(?)残りましたが、フルート作品はバロックと近代フランスしかありません。
そうなんですよねー。そこが残念です。しかし、バロックと近代フランスとは、ほんと、極端なんだよなあ…。フルートのH先生は、ロマン派のフルートを吹きたかったら、オケに入るのが一番って言うしね。