これは先日書いた「声は見たところに飛ぶ」とちょっとだけ関係があるかもしれない。
先日のレッスンの時に、耳を手で覆いながら歌っているお姉様がいて、先生から注意を受けていました。お姉様が言うには、耳を手で覆いながら歌うと、声がよく聞こえて歌いやすいのだそうです。確かに往年の歌手でそんな事をしていた人いましたね。それに書名は忘れましたが、そんな事を書いてあるボイトレ本もありますね。
しかし先生がおっしゃるには、そんなことをすると、音程が下がるし、声も響かなくなるから、今すぐに止めるべきだそうです。もちろん、お姉様もすぐに止めました。
ここのブログでは何度か書いてますが、体の中の音は、外で鳴っている音よりもだいぶ高いそうです。その程度は人によって違うそうですが、激しい人は1/4音程度高く聞こえるそうです。その原因は、体の中が空洞でないから。体の中には肉とか骨とか血液とか体液で充満しているから。
細かい話はここでは省きますが、音は波であって、その波を伝える媒体となる物質が違うと、当然、音の伝わり方や伝わる速度、減衰の仕方やエネルギー分布まで変わるのが、原因となります。
とにかく、なんであれ、絶対に体の中から聞こえる音を聞いてはいけないのです。体の中の音を聞いて歌うと、どんな人でも音痴になってしまうそうです。
では、どうするべきか? はい、それは外から聞こえる音、空気中に存在する音を聞くようにするのです。その方法は…外の音を聞くようにこころがける…です。
え? と思われるでしょう。理屈になってないと思うでしょ。でもいいんです。「声は見たところに飛ぶ」と同じで「人は聞きたい音を選んで聞ける」のです。だから、外で鳴っている音を「選んで」聞くようにすればいいのです。
そう言えば、大学院の時、狂言の先生(実は院では、ちょっとだけ狂言をかじってました)に、同じようなことを言われた事を思い出しました。芸事の先生って、ジャンルが違っても、同じような事を言うなあ…と感心することがありますが、これもそのひとつですね。
キング先生は、どうせ選んで聞くなら、同じ外の音でも、壁から帰って来たばかりの音でなく、色々と跳ね返って、部屋に残っている“残響音”を聞くようにしましょうとも言いました。
残響音を聞く様に心がける…こういう一つ一つの積み重ねで、美しい声ができていくのだそうです。
しかし、自宅の練習部屋は狭い(六畳程度)なので、残響もへったくれもない。これはレッスンに行った時にこころがけるしかないな。はあ…。ホールとは言わないまでも、広い部屋で練習したいです。
コメント
うお~、狂言ですか!!
「ややこしや~」(笑)
>Ceciliaさん
狂言師の教授がいらっしゃったので、2年間毎週毎週ワークショップやってました。しぐさや動作、発声法まで純日本風な体の使い方を学びました。最後はちょっとした舞台で、発表会までやりました。今となってはいい思い出です。
すとんさんの書いておられることと似ているようでちょっと違う意味になりますが、私はギターの先生から鏡の前で練習しなさいと言われました。これは、自分のギターが出している音を録音ではなく、即、客観的に聞く方法なのです。ギターはタッチや演奏法により音色が色々出ます。今必要な音、自分が望んでいる音が出ているかのチェックには鏡はかなり役に立ちました。鏡の前というのは、ほんとに近距離で、座っているひざがほとんどくっつくくらいの近さです。すると自分のギターの音が正直にはねかえってきます。
声楽では、レッスン室が時々リトミック用の広い部屋になることがあります。たまたまリトミックがお休みの日にはこちらに移ります。ここは広いお風呂場状態で、とっても反響がよく、気持ちよく歌えます。いつもここならいいのになあと思います。音程の為というより、私の場合は気持ちよくなって開放されるので高い声が出やすいように思います。まあ、それでも結局は身体全体の準備が出来てない場合はノドが締まりますけどね。
この部屋で練習を始めてした時に先生は「反響を聞いて歌ってください。」とおっしゃいました。きれいに反響すると乗ってきますね。
ギターでも、『自分がどういう表現をしたいかを考えて、ギターを弾いて、それが出来ているか耳で確認する』というフィードバックの意味で反響(鏡ですが。ギターは前に音が出ると自分には全然聞こえないのです。)を使います。『考える』という部分に、声楽では音程も入っていると思います。聞いて調整するというよりは、頭に音が入っていることが大切じゃないかと思います。声楽の先生には音程のことは考えないで~と言われました。
>ticoさん
鏡の前での練習は、ギターとは多少意味が違うでしょうが、私も先生によく言われます。「家で練習する時は、できるだけ鏡の前で練習しなさい」ってね。
なんか鏡で自分の顔を見るのって、女性は平気なのかもしれないけれど、私は照れます。たぶん、多くの男性は照れるでしょうね。本当は照れるので、やりたくないのですが、最近は一応、毎回鏡を見ながら歌ってます。目の開け方、口の開き方、眉間の脱力とか色々…。顔のチェックをきちんとするだけでも、声が変わるのが分かります。
ただ、ギターと違って、音が鳴っている部分を直接見れるわけではないので、なんとも歯がゆい感じはします。
音程の件は、キング先生も「考えるな」と言います。「考えないでイメージする」と言います。きちんと頭の中でイメージできれば、正しい音程で歌えると言います。音を外すのは、ちゃんとイメージできていないからだと言います。確かにそのとおりだと思います。このイメージするが、ticoさんの「頭に音が入っている」ということと同じなのだろうと思います。
鏡で歌ってる自分を見なさいとは言われましたが、やっぱり恥ずかしくってやってなかったのです。そしたら、先生にアゴが動いてるとか肩が動いているとか言われて、アチャーと思いました。先生の言われる練習はやっぱり大切なんですよねえ。
ところで女性がお化粧するなどで、鏡を見ている時って結局パーツを見てるだけなのです。男性がひげを剃る時の鏡の使い方と同じ。
パントマイムのかなり最初の頃の練習では鏡の中の自分の目を見て、こちらの私とあちらの私があたかも違う人間のように見つめ合ってくださいという練習がありました。かなり照れました。でもこれは自分を認める=好きになるということと、お客さんの目をきちんと見るという意味になります。よく美容院でもお客さんと鏡の中で目を合わせて話せたら一人前って言いますよね。鏡って色んな意味で恐ろしく、且つ有効な手段だと思います。
> ただ、ギターと違って、音が鳴っている部分を直接見れるわけではないので、なんとも歯がゆい感じはします。
すとんさんのおっしゃる意味は理解していますが、(声楽は身体の中のことですしね)ギターも音が見られるわけではないのです。音が聞こえやすくなるのです。で、他の芸でも同じですが、今自分のやってることをしっかり身体の感覚で受け取ることができることが大切です。パントマイムでも今自分の足のつま先がどっちを向いているか手の指先がどんな形しているか自分の顔がどんな顔かいつもわかるように練習せよと言われました。パントマイムと声楽は身体をあやつる点でよく似ていますよ。イメージすることも同じだしね。(ギターも勿論イメージするのですが、長々となるのでどの芸も同じということで終わります。)
フルートも似てますね。
デッドな所で練習するメリットもありますが、遠鳴りを意識するにはある程度のホールで練習するのが最適なんだそーです。…反響や残響がある所で演奏する事を計算された楽器ですから、当たり前と言えば当たり前なんですケド。。。。
あと、耳栓をして吹くこと。
これ、すっごく危険なんで(オーバーブロウする悪癖が就きやすい)すが、骨伝導で聞いている自分の音の方が良く聴こえるので、アンサンブルとかで合わせるタイミング、音の立ち上がりのタイミングが捉えやすいんですよね。その状況を普通に吹いた時に活かせる様にすると良いと聞きました。
私は今、耳の病気で、体の中に響く音と耳から聴こえる音に「音量差」があるんです。
でも、すとんさんの書かれているように「音程差」を極度に感じないので何とか吹いていられるのですが、「音程差」を感じてしまうと気持ち悪くて吹けないそうです…そういう症状の出たプロの方から聞きました。
>ticoさん
>ところで女性がお化粧するなどで、鏡を見ている時って結局パーツを見てるだけなのです。男性がひげを剃る時の鏡の使い方と同じ。
知りませんでした、勉強になりました。私は、てっきり女性は毎日自分の顔を鏡で見て、うっとりしているものだとばかり、思っていました。偏見ですね。
ちなみにひげを剃る男性でも、案外、鏡を使わない人って、いますよ。私もそうだし、そういう人を数人知ってます。電気カミソリ派の人は、鏡を使わない人が相当数いると思います。
>ギターも音が見られるわけではないのです。音が聞こえやすくなるのです。
言われてみれば、そうですね。フレットをおさえる指とか弦を爪弾く指は見えますが、音そのものが見えるわけじゃないですものね。ま、振動している弦は見えるけれど、弦を見たからと言って、音が見えるわけでもないし。
音を出す操作をしているところを見ることで、より音を感じやすく、聞きやすくなるのでしょうね。
そういう意味では、楽器も声楽も音そのものは見えませんね、見えるのは、程度の差はもちろんあるけれど、音を出す、その周辺作業(言葉遣いが音楽的ではなくてすみません)だけで、その周辺作業を上手にできるようにチェックすることが大切で、そのためには、自分の様子を鏡で見た方がよいわけなのでしょう。
>今自分のやってることをしっかり身体の感覚で受け取ることができることが大切です。
まさに、そこが結論なんだろうと思います。その身体の感覚にするまでに、それなりの量のトレーニングが必要なんですよね、そこにいく前に、めげちゃダメなんだ、と自分に言い聞かせること度々です。
>めいぷるさん
私にはまだまだ未知の世界なのですが、フルートでも、自分の体を使って音鳴らすようですね。無料体験レッスンの先生が、フルートでは(人間の)頭部共鳴を上手に使って響きを作るだという話をしてくれたのを思い出しました。
フルートの振動を一度人体の中に入れて、胸や頭で響きを作って、それを再度フルート経由で観客に届けるのです、みたいな事を言ってました。
めいぷるさんがお書きになった、プロの方は、おそらく、たくさん楽音を体内で響かせる奏者なんでしょうね。私たちの体内には基本的に空気は極少量しかありませんから(肺ですら、その大半は組織と体液でできていて、空洞なんてほんのちょっとですから)、体に響いた音は必ず、音程が変わるものらしいです。それを聞きながら笛を吹くなんて…想像したくないです。
>あと、耳栓をして吹くこと。
これ、歌の世界じゃ考えられませんが、楽器の世界でどうやらあるみたいですね。めいぶるさんのおっしゃっている事とは違うかもしれませんが、ピッコロは耳栓をして練習する方が大勢いるみたいですね。
所変われば品変わるじゃないですが、同じ音楽と言え、歌と楽器は、やはり違う部分は違うということですね。
>音を出す操作をしているところを見ることで、より音を感じやすく、聞きやすくなるのでしょうね。
いやあ~、すとんさんは声楽の練習の意味と混同しておられます。ギターの場合は指など外的に見える物を見る為に鏡を使うのではないのです。ただ単に純粋に音を反射させる為です。反響のよい部屋で練習するのもいいのかもしれませんが、もっとダイレクトに自分の出した音の確認が出来ます。音というのは音程や押さえている場所のことではなくて、感情を含めた音色のことですが。また長くなりますが、ついでに言うと、舞台では音は客席の方へ出ますので、自分ではあまり聞こえないのです。あ、これは声楽も似ていますね。自分によく聞こえるということは、つまり「そば鳴り」ってことで、遠くまで届いてないということです。そういう遠くまで届く音の確認も鏡を使うことでできますので。色々な分野にあっちチョロチョロ、こっちチョロチョロと首をつっこんでると、結構共通点が見つかるので面白いです。
>ひげそり
あ、そうなんですか。これも手の感触ですよね。手のひらで触るとどこが残ってるかわかるということですね。
>ticoさん
今度はたぶん分かったと思う(汗)。つまり、鏡は効率のよい反射板なのね。
>音というのは音程や押さえている場所のことではなくて、感情を含めた音色のことですが。
うん、音波としての音ではなく、音楽の音ですね。どこまで分かったか自信ないけれど、一応分かったと思います。
>いやあ~、すとんさんは声楽の練習の意味と混同しておられます。
ですね、申し訳ない。
でも、こうやって誤解を解いてもらう過程で、多くのことを学んでます。この年になって、毎日色々と学べるのは、ホント、幸せだと思います。ありがとうございました。