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肺を圧縮して、あくびのクチをして…

 声楽のレッスンを受けてきました。

 レッスンの前に軽く雑談をしました。どんな雑談かと言うと『テノールからバリトンに転向したドミンゴってどうなの?』という話題です。まずは比較してみましょう。題材は、ヴェルディ作曲の『椿姫』のデュエットです。

 最初はテノール時代の歌唱です。

 素晴らしいですね。まあ、リリックなテノールにしては、太くて割りと重い声ですが、こういうテノールもアリです。いやあ、むしろ、男性っぽい声でいいじゃないですか?

 さて、次はバリトン時代の歌唱です。同じオペラですが、役が変わって、息子役(テノール)から父親役(バリトン)に変わってます。

 まあ、バリトンだよね。渋みに欠けるけれど華やかな声です。バリトンにしては、キラキラした声だけど、まあ、こういうバリトンもアリっちゃあアリかな…? 

 と思ったところで、今度は両者を聴き比べてみてください。実は、使用している音域こそ違うけれど、ほぼ同じ声なんです(まあ、同じ人なんだから当たり前っちゃあ当たり前)。実はドミンゴって、デビュー前の本当に若かった頃はバリトンでした。で、デビュー前にテノールに転向して、テノールとして世界的に活躍して、年を取って普通なら引退してしかるべき年齢になった時に、今度はバリトンに転向したというわけです。いや、バリトンに戻ったというべきなのかな?

 つまり、彼は元々、テノール的であり、かつ、バリトン的な声の持ち主…と言えるわけで、だから彼がテノールを歌っても、バリトンを歌っても、何も変わらないってわけです。それが良いのかどうか…ここがお好きな方々には気になるところってわけです。

 私はドミンゴ自身が好きだし、彼の声が好きなので、同じ声でテノールもバリトンも歌ってくれるのは嬉しい、、彼の声で聞ける曲が増えて、とてもハッピーです。ですから、これはOKです。でも、Y先生はプロのバリトン歌手ですから、なんか気に入らないようです。ってか“元テノールがバリトンの畑を荒らしに来ている”って感じられているのかもしれないし、実際、ドミンゴはバリトンの畑を荒らしていると思います。それに低声歌手目線で見れば、ドミンゴの声には低声歌手としての旨味が足りないと感じるのも事実でしょうしね。

 まあ、色々と難しいね。

 「さて、今日は筋肉の使い方を学びましょう」と先生がおっしゃいました。筋肉の使い方と言うのは、肺を圧縮するための筋肉の動かし方です。肺を圧縮すると言っても、肺自身を圧縮するのではなく(そんな事をしたら障害者になってしまうでしょう)、肺の中の空気圧を高める事を“肺を圧縮する”という言い方をしているわけです。

 その目的は「高いAをスムーズに出すため」です。私、高いAを出す能力を持っているそうですが、うまく出せません。声がひっかかったり、音が届かなかったりと、まあ色々と、ご苦労な状態なので、それを高いG同様に、すらっと出せるようにしましょうと言うわけで、そのために肺の圧縮ができるようにしましょうという事です。

 まずは正しい肺の圧縮のやり方を確認します。

 1)背筋を伸ばして、スクっと立ちます。
 2)胸を張って、肩をやや後ろに引きます。
 3)腕はダラリとぶら下げ、腕の重さを感じます。
 4)腹筋を軽く後ろに引きます。
 5)腰を上に伸します。

 これでニュートラルの状態です。ここがスタート地点です。

 6)肩が上がらないようにします。気持ち的には肩を下げる気分です。
 7)腹筋を上に持ち上げます。

 以上です。つまり、肩と横隔膜で灰をグイグイと圧縮していく感覚です。うまく肺が圧縮できると、胸郭が広がり胸が前に膨れます。また腹筋を上に持ち上げる際に、背筋をかなり使うので、背筋が膨れ上がります。

 で、やってみましたが、私程度の圧縮では、全然不足なんだそうです。腹筋の動きも悪ければ、胸の動きも悪い。最初は腰がツッても不思議ないのに、全然その気配すらない。あまりに筋力がなさすぎて、お話にならない…というレベルのようです。ダメだな。先生から「筋トレ、よろしく」と言われました。しゃーない、やるか。

 で、肺が圧縮できても、それだけでは高音は出ません。その息をどこを通して外に出すかも大切なんです。具体的に言えば、クチの中を最大限に広げて、後ろを通して発声することだけれど、それを簡単に言うと“あくびのクチ”という結論になります。

 で、せっかく肺を圧縮して、あくびのクチにしても、ノドを鳴らして歌ってしまうと、全部ダメになってしまいます。と言うのも『“ノドを鳴らす”=“喉声”』だからです。喉声はいけませんよね。ではどうするか? 『響きで歌う』わけです。響きで歌えば、声は軽くて大きくなりますが、音程も音質も不安定にもなります。それを安定させるためには、しっかり息を支えないといけません。

 と言うわけで、結局、私が先日書いた『高音発声のコツ(テノール編)』とほぼ同じ結論になりました。つまり、私の場合「分かっていても、できていない」って事ですね。なんか、情けないです。

 なんかなー。

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コメント

  1. だりあ より:

    きょうのブログもなんだかとても考えさせられたことがたくさん書いてありました。

    1.~5であげていられる声楽の第一声の発声姿勢とフルートの発音姿勢ですが。

    声と楽器音のときの構え方って、似ているようでやはり違ってるのかな、と思いました。
    脱力することは大前提だと思います。けど、楽器って物体、特に管楽器は手で支持しなくちゃいけないしそのとき、別の筋肉をしっかり緊張させなきゃいけないので、そのついでに肝心のリラックスさせるべき体幹、特に肩とか腰までが緊張してしまうので困ります。そうすると、そこだけというわけにもいかず、クビだの喉だの唇だの腕だのも、ガチッとかたまりはじめてしまいます・・・。

    今、私はそのことで、とある曲の第一音めの発音に困り果てています。家でなら難なく鳴る第一音が、レッスンのときには鳴らなくなってしまうんです。で、家に帰るとまた気持ちよく鳴るんですよ・・・。レッスンの緊張が筋肉を固める悪いタイプの緊張になってしまってるんでしょうね。
    ほんのちょっと、気の持ちようの違いなのに・・・この音の違いに泣けてきます。っていうか[E:weep]泣いてます。

  2. すとん より:

    だりあさん

    >声と楽器音のときの構え方って、似ているようでやはり違ってるのかな、と思いました。

     だいたい一緒だけれど、細かく見ると違う…って感じかもしれません。まあ、基礎テクニックは共通していると思います。実際、音大の声楽科には、高校時代は吹部でフルートをやってました…という人が結構いるんですよ。フルートとソプラノには、通じるモンがあるんだろうなあって思ってます。

    >レッスンの緊張が筋肉を固める悪いタイプの緊張になってしまってるんでしょうね。

     緊張をほぐすには、無駄な動きが良いんですよ(笑)。よく、演奏中にゆらゆらしている人いるでしょ? ああいう人って、日本人はキライますが、プレイヤー的にはノリノリでいい感じに脱力している人が多いんですね。

     歌の場合は、正装して立ちん坊で歌うよりも、衣装をつけて演技しながら歌った方が絶対にいいんです。演奏に必要ない動きを加えることで、いい感じに脱力して音楽に乗れるんですよ。お薦めしますが…実際にやるかどうかは、だりあさん次第です(笑)。

  3. tetsu より:

    こんばんは。

    ひとことのほうへのコメントです。

    > デノミ

    日本でも戦後に新円切替がありました。
    詳細は知りませんがwikiの記事だけでもメチャ面白いです。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%86%86%E5%88%87%E6%9B%BF
    硬貨や小額紙幣は切替の対象外とされ、新円として扱われ効力を維持した。そのため小銭が貯め込まれた。
    占領軍軍人は所持する旧円を無制限で新円に交換することができた。

    松本清張の小説の「西郷札」のTVドラマを見たことがありますが、こちらも面白くて小説まで読んでしまいました。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E9%83%B7%E6%9C%AD_(%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E6%B8%85%E5%BC%B5)
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E9%83%B7%E6%9C%AD

    金塊ではなくて紙切れのお札がお金として使える、ということはすごいことなのかもしれません。

  4. すとん より:

    tetsuさん

     本当は、日本も2桁切り捨てぐらいのデノミをやった方がいいとは思ってます。一万円札なんて、冷静に考えれば、数字大きすぎですって(笑)。

     特にこれからは電子マネーの時代ですから、データとしてパッと見た時に分かりやすい桁数がいいんだと思います。

     それにしても、デノミって、切り替えのドサクサで、絶対に便乗値上げとか色々ありそうで、なんか不信感をもたざるをえません。少なくとも、wikiを見ていると、色々と混乱があったっぽいし…。

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