さて、声楽のレッスンの続きです。曲の練習に入りました。
まずはローザ作曲の「Star vicino/側にいること」からです。
この曲は、とにかく歌詞の“i”の部分が割と高音に来ることが多いのだけれど、そこでクチを狭くすると、音程が届かなくなるし、声も美しくないので、とにかく“i”になっても、クチは閉じずに縦開きのままでこらえて歌うのです。そのためにも、腹筋でしっかり声を支えないといけません。
クチを縦開き…というのは、俗に言う“あくびのクチ”の事です。で、なぜ、単純に“クチを開く”ではなく“あくびのクチ”という言い方をするのかと言うと、大切なのは、上アゴを開くかどうかなんだそうです。私たちが単純に“クチを開く”と言うと、口先を大きく開き、結果としてクチの中はむしろ閉じてしまうのです。しかし“あくびのクチ”は、単純にクチを開くのと違って、クチの中や奥までも大きく開くのです。で、クチの中とか奥を開くとは、上アゴを開くことなんだそうです。“あくびのクチ”というイメージがなくても、しっかり上アゴを大きく開くことができるなら、問題はないのだけれど、上アゴは下アゴと違って、どう開いていいかイメージが湧きづらいでしょ? それで“あくびのクチ”なんです。
肝心なのは上アゴを開くことなんだけれど、私が歌っている時、暗譜をしているわけではないので、譜面台に置いた楽譜をガン見しています。で、私が見ているレッスン室の譜面台がかなり低いんです。いや、正確に言えば、譜面台が低いのではなく、私がデカイだけなんですが(笑)。で、どうしても譜面台が低いので、目線が下になりがちです。それもかなり下になりがちです。こんなに下を向いていては、アゴが上にも下にも開かないわな。そう思って、楽譜を持ち上げて目の高さに持って行ったら、かなり歌いやすくなりました…でも、いつもいつもそんな事はしてられないよね。
ちなみに、自宅練習では譜面は目の高さにセッティングしてある譜面台(パソコンデスクの屋根の部分に卓上用の譜面台を置いているんです)で歌っているので、こういう問題は生じません。なかなか難しいよね。
次は、ベッリーニ作曲の「Vanne, o rosa fortunata/お行き、幸せなバラよ」です。この曲は今回が初めてのレッスンです。
先ず最初に歌い始めたところ、私と先生のテンポが全然違っていました。この曲は、バリトンのレパートリーにはないようで、先生、この曲に馴染みがないようでした。ですから、先生、ゆっくりとピアノを弾きだしました。私は…と言うと、そのテンポに合わせるようにしながら合わせずに、どんどん速いテンポで歌って、私が考える標準テンポに持っていきました。この間のやりとりが、ちょっとばかり面白かったです。でもまあ、この曲を歌い終えるまでには、先生、この曲の事をしっかりと把握されたようです。
で、自宅では、とりあえずなんとかカタチにして歌っている曲なんですが、レッスンにくると、最高音が届かなくて、かなり無様なカタチになってしまいました。なんか本日は、この曲を歌っていても、高いAが出る気がしないんですよ。
先生は出ないAに関しては何もおっしゃいません。しかし、普通に出るGに関しては「もっと楽に。放り投げるようにポーンと出してください」とおっしゃいます。さらに腹筋の動きには「腹筋は絶対に固めないように。腹筋を入れて歌い終えたら、必ずリセットしてください。(腹筋を)入れる、リセット。入れる、リセット。この繰り返しです」とおっしゃって、何度かトライさせます。やるたびに「まだ足りない」「まだ足りない」「まだ足りない」の繰り返しで、もうこれ以上は出来ないというくらい、激しく腹筋を入れた時に、意図せず高いAが出ちゃいました。それも楽々、朗々と。よもやそんな声が出るとは思っていなかった私は、自分でビックリしちゃいました。
「今は筋力が足りなくて、必死にやらないとAは出ないけれど、筋力が付けば、それくらいはたやすく出るようになるはずだから…筋トレ、頼みますよ」と言われました。はははは、つまり私に高音が欠如している理由は、やり方に熟知していないと言うこともあるけれど、それよりもなによりも筋力が足りないという事だね。
私、格闘技をやってましたから、腕力とか脚力とかには自信がありますし、腹筋だって固めるだけなら得意ですが、体幹そのものは、どうも弱いんですね。体幹の強い人って、姿勢がいいですよね。バレエダンサーさんなんて、いつもピリッとしているわけです。私は猫背とまではいかなくても、いつもなんか姿勢がダラっとしているわけで…弱点は体幹にありって事です。体幹を鍛えないと…。
その他に注意された事は、同じ音程の音が続く時は、どんどん響きを増してゆくと、音程が下がりづらいという事。後、歌の途中で、一度でもノドを鳴らしてしまうと、そこで声が終わってしまうので、決してノドを鳴らさないように気をつけて歌う事…かな!
ああ、この曲、やっぱり難しいなあ。K先生は「パッサージョの連続で難しい」とおっしゃっていましたが、私の場合は、パッサージョも難しいけれど、それ以前の問題点にあっちこっちひっかかっております。
ベッリーニって、モーツァルトほどではないけれど、難しいですね。考えてみれば、この二人、案外、活躍した時代が近いんだよね。ベッリーニって、モーツァルトの次の世代の人だし、音楽様式的には、ロココ派と初期ロマン派だものね。通じるものがあるんでしょうね。
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コメント
こんにちは
歌うための筋肉トレーニングですね。ウエイトトレーニングでの筋トレとこれは違うんですよね。大学時代の合唱団での体作りは、腹筋を鍛える運動として、二人組で一人が寝てもう一人が足を上下する運動・みぞおちに拳骨を当てて押し返す運動、背筋を鍛える運動として船漕ぎなど、練習前には必ず体を動かしていました。かなりハードで、朝からどんぶり飯でも今より25キロほど少ない体重でした。中には、ソリストで来てくださった声楽家が教えてくれた運動もありましたので、全くピント外れとも思いませんが、ちょっと方向が違うような・・・
歌うための筋トレは、体幹を固めずに鍛えろといわれています。ヨガやエアロビクスなどが良いと言われたました。ヨガはDVDを持っているのでやってみようかなと思っています。
合唱団では、よく「自然に」「力を抜いて」と言われますが、どういう筋肉をどのように使うのかという説明はありません。
歌うためにの体作り・筋トレって大事ですよね。
genkinogenさん
これは私の私感ですが、筋肉を鍛えると言っても声楽の場合は、スポーツとは違って、筋力をつける方向の筋トレではなく、俊敏な動きを可能にするための筋トレを行うべきでは無いかって思ってます。筋肉は鍛えるとチカラを増しますが、一方で重くなります。ですから、必要な筋肉は鍛え、不必要な筋肉や拮抗する動きの筋肉はなるべく鍛えないという事が必要かなって思ってます。
声楽家は格闘家ではありませんからね。
おそらく、歌うための筋肉は、歌うことで鍛えるのが一番良いのだと思ってます。問題は、歌うための筋肉を鍛えるためには、正しく歌えるって事が前提となる事かな(笑)。
歌うための筋肉は歌うことでしか鍛えられない。筋力がなければ正しく歌えない。正しく歌えなければ筋力がつかない。このことが声楽を学ぶ者にとっての大問題ですね。健闘を祈ります。
昔、プログラミング言語COBOLの入門書を読んだとき、その本はCOBOLがわかっている人にとってはとてもわかりやすくて良い本だと思ったことがあります。初心者にはちんぷんかんぷんだと思われますが、初心者は理解できようができまいがとにかく最後まで読むことが肝心なのでしょう。
こうじさん
そうなんですよ、まるで卵と鶏のような関係で、実に悩ましいんです。
物事を学ぶにあたり、私たちはついつい“理解する事”が大切でと勘違いしがちですが、モノによっては理解の前に、とにかく“出来る事”が大切な事もあります。理屈抜きに、とにかく出来なきちゃダメって感じの事がらです。例えば、漢字の書き取りとか、九九の暗唱とか、タイピングなんかもそうですね。たぶん、発声もその手のモノなのかもしれません。