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実にお見事な生徒さんが登場しました[2013年ラ・フォル・ジュルネに行ってきた:その1]

 例年のように、東京の丸ノ内の東京国際フォーラムで開催されている、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに行ってきました。まずは初日(2013年5月3日)の事から書き始めましょう。

 ラ・フォル・ジュルネ。もちろん、いつものように、楽しみにしていたのですが、今年は私がお仕事の配置転換をくらったため、オールウェイズ、お疲れ気味なせいか、期日が迫ってきても、なんか気分が高揚しません。だって、毎日毎日、仕事に追われていて、ココロとカラダに余裕がないんですもの。

 当日の朝、目覚めても「ああ、疲れた。もう少し寝ていたい…。せっかくチケットは買ってあるけれど、このまま寝過ごしてしまおうか」とまどろみながら、悩んでしまったくらいに、朝、起きるのがつらかったです。

 でもまあ、行くと決めたら、行くんです。疲れたカラダにムチ打って、電車に乗って会場入りしました。

 会場入りをしたのは、9時30分。予定では9時に入るつもりだったので、30分の遅刻です。なぜ、9時に会場入りをするつもりだったのかと言うと…10時半開始のマスタークラスの整理券をゲットするため。マスタークラスは、開演90分前に整理券を配るからで、例年、配り始めると『あっ!』と言う間に整理券がなくなってしまうため、配布時間に間に合うように行きたかったのです…が、お疲れでグズグズしているうちに30分遅れてしまったわけで…まあ、マスタークラスの整理券が入手できなかったら、諦めて、他の無料プログラムを見ればいいかという気持ちで行ってみたら、まだまだ整理券がありました。それもたくさん(笑)。『あれ~?』という気分でした。

 整理券をもらって、時間まで展示ホールでも冷やかそうと思ったら、展示ホール、やってませんでした(涙)。展示ホールがやっていないと言うことは……売店もやっていないわけで…やっていたのは、チケット売り場だけ。グッズも買えないじゃん!

 それどころか、会場にいる人の数が、例年に比べて少なく感じます。あれ、今年は色々と出足が遅いなあ…と思いました。

 とにかく、やる事もないので、仕方なしに、コンビニで缶コーヒーを買って、ベンチで休憩。朝から、ベンチで缶コーヒー片手に読書三昧ですよ。なんか、クラシック音楽を聴く、って気分じゃないね。これなら、もう1時間は、余計に寝れたなあ…(涙)。

 ああ、そうか、だからなんだ。実は、マスタークラスの整理券をもらった時、すでにマスタークラスの会場前には、行列が出来ていて「整理券もらったなら、行列なんて作る必要がないのに…。どうしても前の方でかぶりつきで見たいという人たちなのかな?」なんて思っていたけれど、ほんと、この時間、どこもかしこも始まっていないので、やる事がないんですよ。で、仕方なしに行列を作っちゃったってわけなんですね。なんか分かるような気がします。
 
 
マスタークラス[ヴァイオリン:デボラ・ネムタヌ]

 フランク作曲:ヴァイオリンソナタ第1楽章

 小一時間ほど、ベンチでボーっと本を読みながら待って、マスタークラスの会場に入った私です。遅れて到着した私の整理券の番号も早かったけれど、行ってみたら、実は会場は、満席には程遠い状況でした。例年は、会場は立ち見も含めて、ギッチリお客を入れるほどの人気なのですが、今年は6割程度の入場状況でした。なんかなあ…。

 やがて時間となり、先生と生徒さん、それにピアニストさんと通訳さんが出てきて、マスタークラスが始まりました。先生のデボラ・ネムタヌさんは、まだ若い女性ですが、パリ室内管弦楽団のコンサート・ミストレスと言うわけで、なかなかの凄腕奏者さんのようです。生徒さんは、芸大の1年生と言うわけで、朝から若くて美しい女性たちを見れて、ちょっとうれしい気分になりました。

 生徒さんが、おもむろに本日の課題曲である、フランクの『ヴァイオリンソナタ第1楽章』を弾き始めました。なんか、すごくいいんです。あっと言う間に演奏終了。会場は拍手拍手。先生も「これだけ見事な演奏をされては、言う事ありません」との事で、予定されていたマスタークラス、終了(笑)。

 おいおい…と思ったら、先生「では、2楽章をどうぞ」と言うので、生徒さん、すぐに2楽章を弾き始めました。2楽章は予定に無かったでしょ? 以前にも、予定された曲のマスタークラスが終わってしまったのに、時間があまってしまった…というケースがありましたが、その時は、残り時間は先生のソロコンサートになりましたが、今回は、生徒さんにムチャぶりですか? ああ、可哀相に…と思ったら、第1楽章ほどではないけれど、2楽章もなかなかに聞き応えのある演奏をしてくれました。

 2楽章が終了したところで「1楽章はフランス的に演奏するのだけれど、2楽章はブラームス的な楽章なので、もっと激しく、もっと感情的に演奏した方がいいです」とアドヴァイス。すると、生徒さん、すぐに対応して、2楽章を感情激しく演奏し始めました。この生徒さん、まだ音大の1年生なのに、凄腕だし、先生の要求にもすぐに反応して答えるなんて、ここまでの腕前がないと、芸大のヴァイオリンには入れないのか…って思いました。

 指導は主に曲想的な事を中心にアドヴァイスしていましたが、おそらく、テクニック的な事は、生徒さんにスキがないんでしょうね。また、先生ご自身がまだ若くて売り出し中のようだし、生徒さんが実に上手なので、先生、なんか指導に手こずっているようでした。おそらく、先生ご自身は天才タイプの奏者なんでしょうね。指導の引き出しがあまり無いような感じでしたし、生徒さんも、かなりの腕前ですから、テクニック的な指導はなくなれば、後は音楽解釈って事になりますが、生徒さんの演奏は、それほど的外れな解釈というわけでも無さそうだし、解釈は…人それぞれだから、あまり強くは言えないし…って感じでした。

 おそらく、生徒さん、このクラスの前に、別の先生にきちんと指導を受けて、仕上げてきた上で、ここに臨んだんじゃないかな? そんな気がします。

 それにはっきり言っちゃうと…先生よりも、生徒さんの方が、ヴァイオリンを鳴らす事に関しては、上手かも。少なくとも、私は模範演奏をする先生よりも、それに答えて演奏する生徒さんの演奏の方に、より心惹かれましたもの。

 ああ、フランクのヴァイオリンソナタって、いい曲だなあ。

 先生のデボラ・ネムタヌは、実はなかなかの演奏家で、決して先生がダメなのではなく、生徒さんがそれだけ優秀だったと言う事なんでしょうね。

 予定外の2楽章の指導を終えても、まだ時間が余っていたので「残り時間があるので、3楽章か、4楽章を弾いてください」と先生がおっしゃったので、生徒さんは「では4楽章を…」と言って、4楽章を弾き始めました。これも、なかなか良い演奏で、終わると、会場は、演奏にのまれてシーンとしてしまいました。思わず先生が「この演奏は、拍手モノですよ」と言ったので、あわてて客席が拍手をし始めると言った感じになりました。

 4楽章の指導も、音楽の解釈に関しての指導が中心でしたが、生徒さんは先生のおっしゃる事にすぐに反応してしまうので、サクサク指導が進んでしまいます。

 今回のマスタークラスは、先生の指導を通じて曲を深く知る…という、いつものマスタークラスのようではありませんでしたが、たっぷりと曲が聞けたので、良しです。

 先生がベテランでもっと老獪な人だったら、違ったでしょうし、生徒さんも、もう少し不完全な部分がある人でも違ったでしょうね。マスタークラスは、先生も生徒も、もう少し考えて人選しないと、マスタークラスとして成立しづらいですね。そんな感じのマスタークラスでした。

 ここまでが、初日の午前中の話です。続きはまた明日。

蛇足  毎年、ラ・フォル・ジュルネの連載を始めると、ブログへのアクセスが減り、ランキングへの投票も減ってしまいます。つまり、読者の皆さんからすれば「ラ・フォル・ジュルネの記事は…つまらない」って事なんだろうけれど、いいんです。この、ラ・フォル・ジュルネ関係の連載は、私のための記録記事なんだから、たとえ不人気でも、例年通り、完徹させるぞ! おー!

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コメント

  1. 河童 より:

    私も9時50分頃についたのですが、アレッ?て感じでしたね。
    まだ売れ残っていた席を買ってから、時間まで有楽町駅前の本屋に向かいました。
    知らない人だとイベントに気付かず通り過ぎてしまうでしょうね。
    街のあちこちから時折音楽が流れてくる・・・てな感じとは程遠いですね。
    昼時はアンプが飽和していて何を言っているのかわからないアジの車が通るし・・
    丸の内界隈では路上パーフォーマンスの規制があるのですか?

  2. おざっち より:

    私は地元、びわ湖ホールで行われたラ・フォル・ジュルネに行ってきました。東京より一足先に終了したのですが、三日間とも自転車で通いました。今年はフランスとスペインの音楽ということで、昨年のロシア音楽がテーマの時より、フルート演奏が多く、また他の音楽も楽しめました。期間中はずっと天気も良く、過去最高の入場者数を記録したようです。
    東京はびわ湖とは比較にならないほど多くの多彩なプログラムがあるようで、一度東京のラフォルを聞きに行ってみたいものです。今年はフランス音楽を中心としたプログラムだったようですね。

  3. すとん より:

    河童さん

     確かに初日のラ・フォル・ジュルネは、なんか閑散としていましたね。私は最終日にも行ったのですが、最終日は、初日よりは人出が多かったような気がします。しかし、かつてのような活気はありませんね。色々な意味で落ち着いてしまったのかもしれません。確実に、規模も縮小していますしね。

    >丸の内界隈では路上パーフォーマンスの規制があるのですか?

     丸の内に限らず、日本国内ならば、路上パフォーマンスがしたければ、警察に届け出を出さなければいけません。私有地ならともかく、公の道路や広場などのパフォーマンスには、そのような場所を使用するための許可が必要です。出さないでやっているのは、モグリです。モグリは取り締まりの対象になっても仕方ありません。それに、丸の内は陛下のお膝元ですから、余所よりも警備がきびしくて当たり前です。

    >昼時はアンプが飽和していて何を言っているのかわからないアジの車が通るし・・

     以前は右翼の車と相場が決まってましたが、最近は、右翼はメッキリ減って、左翼系の市民活動家の車が演説をぶっている事が多いですね。私もアベノミクス反対と唱えている街宣車を見かけましたよ。

  4. すとん より:

    おざっちさん

     びわ湖はうらやましいですよ。丸の内は、確かにびわ湖よりも規模は数倍も大きいのですが、フルート演奏は本当に少ないんですよ。あと、声楽もね(涙)。こっちは、ピアノとオケばかりです。ま、ここ数年、規模縮小を続けていまして、真っ先に無くなったのが、フルートなどの管楽器系のプログラム。そして声楽なんです。たぶん入場者数も、今年は、例年になく少ないんじゃないかな?

     ただ、ラ・フォル・ジュルネ単体の規模は小さくなっても、周辺地域でのプログラムは充実してくる一方なので、ここ数年の私は、周辺プログラムも積極的に見に行くようにしています。というのも、歌もフルートも周辺プログラムでないと、やってくれないからです。

     世の中、なかなか、自分の気に入ったようには動いてくれないようで…。

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