なんとも不思議な感想のまま、マスタークラスを見終えた私は、昼時と言う事もあって、昼食に出かけました。以前なら「国際フォーラムはレストランが高いし、地上広場のエスニックな屋台は口に合わないし、ほんと、ここじゃ食べるものがない」とかほざいていたのですが、今はサクっと国際フォーラムから離れて、余所で食事を取る事にしています。考えてみれば、国際フォーラムは東京のど真ん中。すぐそばに、いくらでも飲食店があるじゃないですか。
…と言うわけで、テクテク歩いて、京橋まで行って、うどん食べてきました。安上がりな話です(笑)。そのまま、国際フォーラムには戻らず、新しく出来たJPタワーKITTEというビルに行きました。ここでフルートのコンサートを聞くんです。
フルート[フルート:長谷見誠,ピアノ:高山美佳]
ムーケ作曲『パンの笛』
サン=サーンス作曲『ロマンス』
ドンジョン作曲『ナイチンゲール』
ドビュッシー作曲『月の光』
プーランク作曲『愛の小径』
マスネ作曲『タイスの瞑想曲』(アンコール)
この会場は、今年新しくできたばかりの建物で、それもまだオープンしてから、さほど日が経っていないような感じでした。場所は、東京駅のすぐそばで、以前は、東京中央郵便局があった場所です。まあ、どんな会場なのか、分からないので、試しにこの場所でのコンサートを予定に入れてみました。
コンサート会場は一階アトリウムでして、その場所に入った最初の印象は「マルキューブに似ている…」ってところかな? とにかく、周囲を高いビルに囲まれた中庭で、5~6階あたりにガラス張りの屋根があって、とにかく、周囲がうるさくて、その騒音が中でグワングワンに響きあって、とてもとてもうるさくて、音楽を演奏できるような環境ではありません。とにかく、音の逃げ道がないので、どんな音も反響して増幅し合って、中にいるだけで、耳を塞ぎたくなるような劣悪な音環境なんですよ。
商店街的には『騒音=活気』なんでしょうがねえ…。
当然、そのままでは演奏しても、フルートの生音など全く聞こえませんから、P.A.(簡単に説明すると、マイクとスピーカーのシステムの事)が入っているのですが、この装置が、実に簡便なタイプのもので、高校の文化祭レベルの装置なんですよ。ほんと『アチャー!』って感じで「地雷を踏んじゃったなあ…」と思いました。
ほんと、ラ・フォル・ジュルネの本質ってのが、休日に丸ノ内に人を呼ぶためのイベントなんだなあって事が、実に分かりやすいカタチで教えてくれた会場なんですよ。音楽なんて、二の次三の次で『…この場に人さえ集めて商売できれば、それでいい。クラシック音楽のコンサートであれ、ストリップダンスであれ、なんでも良いから、大型連休に人を集めてくれれば万々歳』というのが、透けて見えました。
こんな会場で演奏するミュージシャンさんが気の毒でした。
さて、グチはここまでにして、コンサートの話に入ります。
長谷見さんは、いわゆるイケメン・フルーティストさんですね。持っているフルートは、総銀フルート(ただし、リッププレートのみゴールド)で、スピーカー越しに聞こえる音色は、太くて丸くてボヤっとした、地味でつまらない音でした。軽やかさとか、きらびやかさとは、全く無縁な音で、吹奏楽部の新入生でも、もう少しきれいな音でフルート吹けるぞと思ってしまいました。
もちろん、これはP.A.を通して聞こえた音であって、長谷見さんの生音を聞いての感想でない事は強調しておきますが、でも、私たち客はP.A.越しの音しか聞いていないのですがら、この日の長谷見さんの音は“太くて丸くてボヤっとした、地味でつまらない音”としか言えません。ほんと、P.A.って怖い装置だね。
さらに、このP.A.は、調整がちょっと変で、長谷見さんの演奏音はさほどビビッドに拡声しないくせに、彼のブレス音は、実に見事にリアルに拡声するので、それが実に耳障りで耳障りで…。おまけに、周囲の物音がすごいので、演奏者も無駄に大きな音を出そうとしているのでしょうか? やたらと何度もコマメにブレスを入れるので、気になって気になって…。いやあ、ほんと、ハズレのコンサートでした。
演奏自体は可もなく不可もなくといった感じかな? コンサートの最初の頃は、明らかに不機嫌そうにやっつけな感じで演奏していて、ちょっと感じ悪かったのですが(でも、こんな会場じゃあ、そりゃあ、無理ないよな)、やがて自分の演奏に集中してくると、なかなか良い表情で演奏するようになりました…でも、P.A.越しの音は相変わらずひどかったのですが…。
ちなみに、フルートの音もひどかったけれど、ピアノの音はもっとひどかったなあ。変なエコーがかかっていて、ピアノだかなんだかわけの分からない音になってました。ピアノは、グランドピアノをマイクで集音するのではなく、いっそ、エレピをラインで直にアンプにつないだ方が絶対にいい音になると思うよ。
演奏曲目は、なまじよかったので、ちゃんとした会場で、ちゃんと演奏してもらったら、きっと大満足なコンサートになったはずだと思います。
ラ・フォル・ジュルネの周辺エリアコンサートって、こんな感じの「本当に、ここで音楽の演奏をするの?」って場所でのコンサートが多いので、ほんと残念なんですね。せっかく、いい演奏家が来ていて、ぜひ聞きたいと思っても、場所がひどいと聞く気分になれません。
良いコンサートだと「よかった!」のひと言で終わりですが、余り良くないと、ついグチが出て、記事も長くなってしまいます。まだ記事は初日の昼下がりですが、今日の記事も長くなってきたので、続きはまた明日にします。
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コメント
今年初めてラ・フォル・ジュルネに行った私ですが、
来年も行きますか?と聞かれると・・・ウ~ン? ですね。
地方から2万円の交通費と時間をかけて楽しめる内容か疑問です。
当日は2時間ほど別の趣味に時間を費やしたので、充実した1日でしたが・・
NHK-FMの中継は上手ですね。しっかりと楽しめます。
河童さん
交通費2万円ですか? それは確かに考えてしまうかもしれません。私の交通費は、もう一桁少ないですからね。
ラ・フォル・ジュルネの楽しみ方は人それぞれでしょうが、この催し物は、いわゆる音楽祭であって、単なるコンサートの羅列ではないので、音楽祭の“祭”の部分をどう楽しむかがポイントではないかと、個人的には思ってます(そういう点では、今年のラ・フォル・ジュルネは祝祭感に乏しく、祭りとしてはイマイチだったように感じてます)。
>当日は2時間ほど別の趣味に時間を費やしたので、充実した1日でしたが・・
私も最初は、東京タワーに昇ってみたり、銀ブラをしてみたりと、別のことをして楽しんだものです。なかなかラ・フォル・ジュルネの楽しみ方って、分からないものね。今では、なんだかんだと文句を言いながらも、丸の内界隈を音楽を求めて、忙しく歩き回っています。
>来年も行きますか?と聞かれると・・・ウ~ン? ですね。
そう思う人が増えてきたから、どんどんラ・フォル・ジュルネに人が集まらなくなってきたんだろうと思います。交通費の事を考えなければ、それはそれでリーズナブルな催し物だとは思いますが、わざわざ交通費をかけて(人によっては、宿泊費も用意して)参加するほどの催し物かと言えば…どうなんでしょ?
聴きたい演奏家が出演するなら行く甲斐はありそうですが、そうでなければGWで混雑している交通機関を利用して西日本から行くのはつらいですねー。
今年はお目当ての演奏家はいましたが、GWという事情を考え合わせてやはり行きませんでした。普通の週末に行われるコンサートのときに行くほうが慌ただしくなくて良いかと。
もっともこれは、お目当てが国内の演奏家だから言えることで、海外から来る人目当てだったら、やはり行くのかもしれませんね。
ま、びわ湖や新潟なども含めて、各地で地元のお祭りとして楽しめば良いのではないかと思います。
るきさん
>びわ湖や新潟なども含めて、各地で地元のお祭りとして楽しめば良いのではないかと思います。
私も同感かな? なんでもかんでも東京一極集中ってのは変だし、不便だし。ただ、本当の地方に在住のクラシックファンは、地元には何も無いって事があるし、だから一極に集中している東京に出てきて、色々なことを一度に済ませたいという気持ちは分からないでもないです。
>GWで混雑している交通機関を利用して西日本から行くのはつらいですねー。
どうなんだろ? これって逆方向になるから、案外すいてたりしませんか? GWって、東京近辺から地方に脱出するから交通機関が混む訳で、逆方向は楽なんじゃないの? 違うかな? 宿泊施設もGW中の東京って、空いているようだし。
>普通の週末に行われるコンサートのときに行くほうが慌ただしくなくて良いかと。
お目当てがいるなら、そっちの方が落ち着いていいと思います。ラ・フォル・ジュルネはお祭りですから、何がなくても、誰がいてもいなくても、いいんです。祭りって、参加することに意義がありますからね(笑)。
祭りというのは参加してこそ楽しめると思います。
とすると日本のラ・フォル・ジュルネには参加する部分が抜けていませんか?
各々が楽器(もちろん声も楽器です)を持ち寄って、気ままに楽しむ場も欲しいですね。
河童さん
お祭りにも、自分たちが踊ったり、神輿を担いだりして、自分たちが演者となって主体的に参加するタイプのお祭りもありますが、露店を冷やかしたり、演芸大会を見物して、観客として参加するタイプのお祭りもあります。ラ・フォル・ジュルネは、後者のタイプのお祭りだと思います。
参加型のお祭りって言うと、私は年末恒例の第九演奏会が、それなんじゃないかなって思います。あと、参加した事ないけれど、メサイア通唱会なんかもそうでしょうね。フルート関係でも“フルートフェスティヴァル in ○○”ってのが、そんな感じ。
祭りって、主体的に参加しても、観客として参加しても、活気あふれる祭りじゃないと、ダメだよね。