JPタワーKITTEでのコンサートに不平不満タラタラになった私は、その足で、次のコンサート会場に行きました。次も…始めての場所。今度は大丈夫かな?と一抹の不安を抱えながらの移動です。
次の場所は…人材派遣会社のパソナの本社。丸の内ではなく、日本橋にあるビルです。東京駅の日本橋口から出れば、すぐ目の前とは言え、JPタワーKITTEとは、東京駅をはさんで真反対の位置にあります。東京駅って、すごく大きい駅なんだよね、それをグルっと廻って、一番遠いところに行かなきゃいけないわけで…ちょっと気が滅入りました。今回はKITTEからだから、それでもマシ。ほとんど有楽町の駅前にある東京国際フォーラムからパソナ本社に移動って考えたら、ゲンナリしちゃうほどの遠距離です。まあ、それでも私は歩き慣れているので、時間をかけてでも移動しちゃうだろうけれど、普通の人なら、十分タクシーを呼ぶ距離だよ、これはもはや。
というわけで、パソナ本社ビルに行きました。パソナそのものは、そんなに古い会社ではありませんが、ビルはかなり古めでした。入り口から中に入って、すぐ右の部屋が会場だったのですが、そこはなかなか変わった部屋でした。“水上ステージ”と呼ぶ部屋でしたが、部屋そのものは、小さめの体育館程度の広さでバスケットコートを1面、楽々取れそうな感じの部屋でした。天井も高めで、音楽をやるのにも良さ気な部屋だったのですが、部屋の基本構造が実におもしろかったです。というのも、この部屋、ほぼ全面が“池”なんです。で、その池の中心に木製の床が張ってあって、そこがステージになり、池の周囲をぐるりと通路が囲っているのですが、その通路にイスを置いて客席としているのです。つまり、部屋の9割方がステージであって、客席は奥から詰めて座っていくという感じになってます。で、会場の広さの割に、客の収容人数は少ない…とまあ、こんな感じです。
池はビオトープ風であり、錦鯉がたくさんいました。金魚好きにはたまらない空間です。
フルート[フルート:青山季里子,ピアノ:植野愛]
シャミナード作曲『フルートとピアノのためのコンチェルティーノ』
ゴーベール作曲『マドリガル』
デュティユ作曲『フルートとピアノのためのソナチネ』
ショパン作曲『序奏とポロネーズ』
会場には、例によって、安っぽいP.A.が設置してあって「ここもP.A.を使うのか!」と思ったけれど、このP.A.は、しゃべり用であって、音楽は生音でした(よかった)。会場の天井は吸音タイプだし、池は常に水が流れていてせせらぎの音(これが結構大きい…)だし、壁は二方にしかなく…という、フルートの演奏するには、少々きびしい感じがした会場でしたが、それでもまあ、なんとかなりました。バッチリとは言えませんが、楽しめる程度にはフルートも聞こえました。ピアノも似たような感じだったので、音楽演奏するなら、簡易の反射板を用意するとかすると、なお良いかなって感じがします。
演奏は…とりたててスゴイという感じはしなかったけれど、とても品のある演奏で、私は楽しめました。少なくとも、直前のフルートコンサートの条件が悪かっただけに、ここでの演奏で、ほっと一息ついた…というのが本音かな? 曲目は、少々趣味に走っているけれど、まあまあよかったです。最後のショパンの曲は、本来はチェロ曲で、それをフルート用にアレンジしたレアな曲目です。使用フルートは、総銀でした。かなり黒ずんだいい感じのフルートでした。ピアノはヤマハのグランド。それこそ、絵に描いたようなヤマハの音がして、すっごく安心しちゃいました。私はヤマハピアノの音に慣れ親しんでいるので、ヤマハピアノを聞くと安心するんですよ(笑)。
ソプラノ[ソプラノ:岩下晶子,ピアノ:宮崎真利子]
サティ作曲『あなたが欲しい』
ラヴェル作曲『3つのシャンソン』より
『第1曲:ニコレット』
『第2曲:楽園の3羽の美しい鳥』
『第3曲:ロンド』
プーランク作曲『ルイーズ・ド・ヴィルモランの3つの詩』より
『第1曲:リエージュの少年』
『第2曲:極楽だ』
『第3曲:白衣の天使様』
フォーレ作曲『ネル』
フルートコンサートの後は、そのまま会場を移らずに、パソナ水上ステージで、ソプラノのコンサートを聞きました。フルートの時は「よく聞こえないなあ…、音響、良くないなあ…」と思った水上ステージでしたが、ソプラノの歌声はよく聞こえる(笑)。結局、ちゃんとした発声法なら、歌声って、かなりの大音量になるって事ですね。少なくとも、フルートやピアノでは勝負にならないほどの大音量を無理なく使えるのが声楽ってわけで、この水上ステージでも、なんの不足もなくコンサートをしてくれました。
美しい歌声、幅広いデュナーミクス、表情豊かな演技。歌って、いいなあ…。満足、満足。ああ、フランス歌曲も歌ってみたいなあ…。
ピアノ[ピアノ:武内里和,植野愛]
フォーレ作曲『ドリー組曲』より
『子守歌』
『ミ・ア・ウ』
『ドリーの庭』
『キティー・ヴァルス』
『優しさ』
『スペインの踊り』
ガーシュイン作曲『パリのアメリカ人』
ソプラノコンサートの後も、まだ居残り続けて、そのままピアノの連弾コンサートを聞きました。ピアノの連弾と言っても、いわゆる4手ピアノってやつで、一台のピアノに二人並んで座って、高音部と低音部をそれぞれ弾くというパターンの奴。
演奏は悪くなかったのだけれど、客席に小さな女の子たちがいて、この子たちが結構大きな声でしゃべったり叫んだりしてました。周りのお客さんたちも、あからさまにイヤな顔をしてしまうくらい、女の子たちが傍若無人だったわけです。どうやら、この子たち、三姉妹だったみたいで、それを若い両親が連れてきたようなんですが、両親は、あまりこういうのには慣れていないみたいで、女の子たちが騒ぐたびに「シーッ!」とかやるんですが、それをやると、逆に女の子たちが喜んで騒ぐって感じで、私も『なだめるのは無理! サッサと子ども連れて会場を出ないと、大変な事になるかも…』とハラハラしてしまいました。だって、私の隣の年配女性が舌打ちを始めて、足が震え始めていて、我慢の限界に来ているようでしたもの。
無料コンサートだし、入場には年齢制限はないし、小さな子どもだからと言って、全部が全部騒ぐわけではないし、だから一律「未就学児のご入場はご遠慮ください」とやる必要はないけれど、この子たちは、明らかに無理。音楽とは遠い世界にいる子たちです。見れば、この三姉妹、おそらく一番上の姉さん(小学校低学年?)がピアノを習っていて、両親はその子にプロの演奏を聞かせたくて、ここに連れてきたようなんだけれど…だったら、ここじゃなくて、ホールAの“赤ちゃんでもOK”のコンサートに連れて行くべきじゃないかな? あそこなら、どんなに子どもが騒いでもOKっていうコンセプトのコンサートなんだから。
確かに、無料コンサートってのは、誰でも入場可能なんだけれど、だから、何をしてもいいってもんじゃないでしょ。
やがて、パソナの人に何か言われて、一番上のお姉ちゃんを残して、両親と下の妹たちが退室して、ようやく落ち着きました…が、残ったお姉ちゃんが目をキラキラして演奏を聞いていたかというと、それは違って、明らかに「ああ、退屈だな~」って感じで、まるで死んだ魚のような目で演奏を見ていたのは、かわいそうでした。きっと、この子、根はいい子なんだろうと思います。でも、好きでもないのに両親にピアノやらされて、楽しくないのに演奏会を聞かされているんだろうなあって思いました。
そうやって、この三姉妹は、音楽嫌いに育っていくんだと思います。ああ、残念。
そうそう、このパソナの演奏会ですが、出てきた音楽家の方々、全員がそうとは限りませんが、少なくともピアノの方は(自分たちで言っていたの、そうなんでしょう)パソナのミュージックメイトの方なんだそうです。
ミュージックメイトってなんだろうと思いましたが、パソナの若い音楽家向けの人材派遣業務のようです。詳しくは、こちらを見ていただければOKなんですが、ああ、こういうやり方もあるんだなあと思いました。いわゆる芸能事務所のように、音楽関係の仕事も探してくれるけれど、芸能事務所とは違って、音楽の仕事がない時は、一般の仕事も斡旋してくれるわけで、まあ、こういう生き方も選択肢としてはアリなんだなって思いました。世の中には、色々な生き方があるものだなあ…って思いました。
パソナ本社でのコンサート三連チャンは、あっと言う間に終わりました。なかなかよかったです。東京国際フォーラムからは遠くて、不便と言えば不便だけれど、結構、穴場かもしれません。
そろそろ夕方にもなってきたので、長い道のりをテクテクと歩いて東京国際フォーラムまで戻った私でした。
続きはまた明日。
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コメント
子どもの騒音問題、ありますよねえ。
似て非なる話ですが、ちょっと前に、
飛行機の中で、赤ちゃんが泣きやまなくて、
同乗していた漫画家が怒っちゃって、
ガミガミ言って、それを自分のブログに書いたら、
逆にバッシングされちゃって、という事件もありました。
飛行機の件は、まあ、置いといて、
演奏会に関しては、すとん様のおっしゃる通りで、
静かにできないお子様に関しては、
「子どもが騒いでもOKっていうコンセプトのコンサート」
が、ちゃんとあるのだから、
そちらに連れて行ってくださいませ、ですよね。
おしまい
operazanokaijinnokaijinさん
子どもと言えども、本当に音楽が好きな子は、たとえ未就学児でも、おとなしく、目をランランに輝かせて聞いています。だから、私は一律に子どもをコンサート会場から排除するのは、反対なんです。
でも、その一方で、音楽に何の興味も無い子もいます。そういう子は、未就学児はもちろん、小学校の中学年ぐらいまでは、結構騒ぐものです。そういう子は、当人のためにも、音楽から遠ざけてあげるべきだと思ってます。
また、子どもはともかく、親自身が聞きたくて、ムリヤリ子どもを連れ出してくる家族もありますが、そういうも、子どもはいい迷惑です。ベビーシッターを雇うか、さっさと託児に預けるか、それが無理なら諦めるべきだと思います。
ちなみに、ウチは、結構託児サービスを利用しましたね。託児って調べてみると、案外安いんですよ。ラ・フォル・ジュルネにも、当然、託児サービスはあります。それらを利用して、見るのもいいのでは?
我が家の場合、以前は息子は託児に預けてましたが、さすがに中学生にもなると託児は無しです(笑)。で、最近は、生意気にも一緒にオペラを見たがるのですが、オペラの入場料の方が、託児料金よりも高いんですよね。なので「自分で稼げるようになるまでは、学生席が我慢しろ」と言って、一番安い席を買い与えてます。良い席に座りたかったら、自分の稼ぎでチケットを買えって事です(笑)。
先日、私たちの定期演奏会を行ったのですが、前回の反省を踏まえ、プログラムにこう書きました。
「幼児を同伴の場合、むずがる場合は、すみやかにホール外へ退出してください。」
やはり一律に子どもを排除するのはどうかと思いましたので。
しかし、なによりも大人がそういう意識を持ってもらうことが必要ですね。ゴミを捨てない、列に割り込まないなどと同じように、それも民度のひとつかと思います。
おざっちさん
>「幼児を同伴の場合、むずがる場合は、すみやかにホール外へ退出してください。」
…いいですね。子どもが騒いだり、むずがっている時は、子どもがその場(演奏会)を拒否しているわけです。拒否しているのに、その場に静かにさせて居させるなんて、そんな無理強いは、ある意味、児童虐待ですね。親のエゴを子どもに押し付けてはいけません。
逆に音楽が好きな子で、マナーを守れる子は、きちんと音楽を聴けますよ…って事になるわけだし、やっぱり、いいですよ、このひと言は!