「キング門下を離れた事だし、久しぶりに第九を歌おう!」と思ったのは、それこそキング門下を辞めて、しばらくしての事でした。言うなれば「失恋したので髪を切ってサッパリしよう!」ぐらいのノリです。第九を歌うことで、自分を見つめなおしてみる…って感じでしょうか?
実は、私にとって第九って、結構、人生の節目節目で歌っているので、ある種の定点観測みたいなものなんです。
前回の第九が2009年で、キング先生と蜜月だった頃に歌ってます。その前が2006年で、キング先生に師事する直前です。その前が2004年で、合唱に復帰しようと思った年です。その前は…合唱を熱心にやっていた頃に二年連続で歌ってます、という具合に、歌人生の節目節目で、私は第九を歌ってます。さしずめ2012年の今年は、Y先生に師事した最初の年に歌う…というわけです。
さて今回、第九を歌うことで、私自身、どんな風景が見えてくるでしょうか? 楽しみです。
もちろん、第九を歌うにあたってY先生には相談をしました。先生は「どうぞ、どうぞ」と言ってました。生徒のやりたい事は全力で応援をするY先生ですから、止める事などはしません。その代わりの注意として「ノドは壊さないでね」とは言われました。
第九(の合唱)を歌うと、ノドを壊す人が続出するのだそうです。と言うか、第九(の合唱)を全部真剣に歌ったら、ノドを壊さない方が不思議なくらいに、第九(の合唱)は難しくてハードで体力勝負の曲なんだそうです。ま、私は第九程度じゃ、ノドなんて壊しませんが…注意は一応しておきます(笑)。
ちなみに、第九を申し込んで、しばらくしてから、同じ練習日程で、オペラ「椿姫」の地元での上演のための合唱団員の募集がかかっている事を知りました。ううむ「椿姫」の合唱も歌ってみたいぞ。しかし、第九やりながら椿姫は、練習日程的に、ちょっと無理。私の予定はすべからく“先約順”って事にしているので、今回は第九に専念しますが…ううむ、すごく残念です(涙)。
とにかく三年ぶりの第九です。第九合唱団の役員の方々は変わっていませんでした。使用する楽譜もベーレンライター版で変わりありません。合唱指揮者の先生も変わりませんし、ピアニストさんも変更ありません。だけど、副指揮者の先生が変わってました。ま、それくらいは変わってないと、新鮮味がないよね(笑)。
練習場所もいつもの体育館のオーケストラ練習室です。広い部屋のはずなんですが、200名の団員が入ると、もうそれだけでいっぱいいっぱい。で、折からの節電ブームのためでしょうか、クーラーはさほど入ってませんから(たぶんお役所仕事で28度設定でしょうね)、もう場内は熱気でムンムン。部屋にいるだけで、汗がダラダラ出ます。
地元の第九合唱団は、毎年、夏に団員募集をかけ、秋(今年はスタートがちょっと早い)から練習を開始し、12月の本番が終われば団を解散する、という潔い団体です。まあ、大半の団員は毎年参加しているし、私のように2~3年置きに参加する人もいます。でも、団員募集から始めるため、毎年、全くの新人さんもチラホラと参加します。今年は、男性には新人はいないようですが、女性の方に子どもも含めて10名前後の新人さんがいます。彼らには頑張ってほしいものです。
それにしてもすごいなあって思います。第九の合唱だよ、ドイツ語だよ、本格的クラシック曲だよ。その合唱を、若い人も若干はいるとは言うものの、メンバーの大半は老人ですよ。老人パワー、おそるべしです。
さて、今回の練習ですが、副[合唱]指揮者の先生が担当でした。私にとっては始めての先生なんですが、一昨年から連続で来られている先生なので、他の団員さんとは、結構ツーカーな感じでやりとりをしてらっしゃいました。
今年の初回練習なので、まずは音取りからです。ダイヤモンド[練習記号のDの箇所]とイングランド[練習記号のEの箇所]をやりました。
全くの新人さんもいるし、子どももいるのに、練習の進行方法がちょっと厳しかったかなって思います。と言うのも、まだ音取りの段階なのに、ソプラノ・アルト・バスはドイツ語歌詞をいきなりリズム読みさせ、ピアノでメロディを一回聞かせただけで、すぐにパート全員にピアノに合わせて歌わせてました。大半がベテラン団員だから、それでもなんとかなりますが、歌えない人や始めての人は、呆然とするだけです。
多少はまどろこっしいでしょうが、ドイツ語の発音の仕方(スペルと音の関係とか、母音や子音の発音の仕方)などの説明ぐらいあっても良かったかなって思います(ってか、私自身、ドイツ語の発音の仕方、モヤモヤ~ってしているもんで…)。
ちなみに、テノールだけは(新人もいないのに)丁寧に指導してましたよ。まず歌う順番が一番最後だし、歌詞のリズム読みも丁寧にしてたし、ピアノを聞かせた後はもいきなり言葉は載せずに「パパパ」とか「マママ」とかでメロディを確認した上で、歌詞付きで歌わせて、その後も、あれこれ発声の指導やら響きの指導やらを丁寧にしてました。何故かテノールだけ特別扱いでした。休憩時間に妻に「テノールだけ特別扱いみたいだけど、どう思う?」と尋ねてみたら「仕方ないんじゃないの、だってテノール、全然歌えてないもん」だそうです。まあ、そうかもね。
そう言えば、昨年だか、一昨年だか、本番でテノールが崩壊したって噂があったっけ? その年の本番は見に行けなくて、後からそんな話を聞いた事がありますが、その時の事がトラウマになっているのかしら?
私もテノールの中で歌っていて、色々と感じるものなあ。
例えば、音程が人によってマチマチ(笑)だから、どこに合わせていいか分からなかったもの。「そういう時はピアノに合わせればいいじゃん」と言う人もいるでしょうが、私、テノールのパート集団のど真ん中の席にいたという事もあって、ピアノの音なんて、全然聞こえないのよ。その上で、周りの音がみんな違うから、歌いだす前に弾いてくれるピアノの音の記憶から、自分の中で音程に見当をつけて歌っているのだけれど、あれだけ音程が違うと、私も絶対音感を持っているわけじゃないから、色々と釣られて、変な音程になってしまいます。
音符の長さも人それぞれ。特に語尾の処理が人によって違うので、なんかうるさい。一応、副指揮者さんからは、語尾の処理についての指導は入るけれど、そんなのお構いなしな方が多くて…ねえ。
テンポも人それぞれでね。つまりは、指揮者を見てなければ、周りを聞いてもいない人が多いって事ね。もっとも、この件に関しては、私も他人の事は言えません。実はダイヤモンドを最初に歌った時に、テンポを崩壊させたのは私だからです(自覚あります:汗)。
いやあ、第九、久しぶりだし、歌詞もメロディも忘れてた私は、最初に歌った時は楽譜をガン見しちゃって、指揮者を見なかったんですよ。で、ピアノも聞こえないわけだけど、耳を便りに、周りに合わせて、いい感じで歌っちゃったんですが…どうやら、それは指揮者の棒とは合っていなかったらしく、指揮者の棒に合わせて歌っていたグループと、指揮者の棒に合わせずに歌っているグループの二つのグループが同時に歌い、そりゃあもうグチャグチャになって、思わず女性陣から笑い声が聞こえてくるという始末。私は、その女性陣からの笑い声が聞こえるまで、真剣に楽譜を見ていたわけですが…。
妻が言うには、どうも私が勝手なテンポ(副指揮者さんよりも早めのテンポ)で歌っていて、それにひきづられて、かなりの人たちが私の声に合わせて歌っていた…らしいんですね。渦中にいる私は、周りと一緒に声を合わせて歌っているわけだから、テンポが違うとは思ってないし、何よりも第九は久し振りだったので、楽譜から顔を上げられなくって…だったんですが、その結果、指揮者とズレて、指揮者に合わせて歌う人と、私に合わせて歌う人に分かれてしまったようです。
ううむ、罪深いことをしてしまいました。
一応、それは一回こっきりで、二度目からは、きちんと指揮者を見て、指揮者のテンポに合わせて(私は)歌いましたよ。そんな事をやっちゃったので、ちょっとテンポについては、エラそうな事言えません(涙)。
ま、ヘマったのは、それ一回きりで、後はおとなしくしていたつもりです。妻に「私は(その一件以外で)練習の邪魔をしてないだろうか?」と尋ねたところ、私よりも(色々な意味で)すごい人がたくさんいるので、私の事は全然気にならない、のだそうです。
…なんて書くと、第九合唱団のテノール諸氏がヘッポコのように聞こえますが、私を除いて、他のテノール諸氏は、普段は決してそうでもないんですよ。皆さん、自分たちの合唱団では、それぞれ団を支えるテノールさんたちなんですが、なぜか第九合唱団に来ると、いつもと勝手が違うせいか、なんか色々とあるみたいなんですね。
まあ、ベテランさんたちは、やがて修正してくるでしょうから、当日は問題ないと思いますよ。
ちなみに、今回の私の、第九での個人目標は「常に響きのある声で歌うこと」です。
声量に関しては、今回は無理に減らさない事にしました。と言うのも、ムリヤリ声量を減らしてしまうと、結局ノド声になってしまうでしょ? ノド声ってノドを痛めつけるし、聞いていても不快でしょ? なので、まずは、脱ノド声で、響きのある声で歌うことにしました。もちろん、大声で歌うつもりはありません。無理せず響く声で、楽に楽に歌う事を目標にしました。その結果として『多少は声が突き抜けてしまっても、しゃーなし』で行きます。本当に声が突き抜けて迷惑かけそうなら…そこは音量を落とさずに、いっそ“歌わない”という選択肢を行使しようかなって思ってます。合唱だもの、ソロじゃないんだもの、必ずしもすべての音符を歌わないといけない、って事ないから、自分に合わない箇所は歌わない方向で、今年は、対応する事にしました。
とは言え、第九ですし、周囲のテノールはほぼ例外なく叫んでいます(笑)から、私の声が突き抜けても、特に問題はないはずなので、大半の箇所は歌っちゃっても大丈夫だと思ってます。
それにしても第九合唱団には色々な人がいます。
今回、私のすぐ隣に座った方は、すべてのパートを自分流に(大きな声で)歌う人です。これは結構ツライものがありますよ。例えば、ソプラノの音取りをやっていて、みんなでピアノを聞いている時に、大きな声でソプラノパートを自分流で歌っているんですからね。ピアノを聞きたいのに、彼の独唱を聞いちゃうわけなんです。彼の歌声でソプラノパートを覚えてしまったら大変な事になります(だいたい正確ではないし、1オクターブ低いし…)。
副指揮さんは、本来はそういう人を止めないといけませんね。でも副指揮さんには副指揮さんの立場があるわけで、なかなかそうはいかないのかもしれません。あるいは、隣に座っている私が、それとなく注意するべきだったでしょうか。でも下手な注意をして、初回からトラブルを起こしたくないのは、本音です。それに、彼は極端な例ですが、似たような感じの人は、実は団のあちこちにチョボチョボいるんです。
歌詞の発音の練習のために、他の人に聞こえないように、小さな声でボソボソと歌っている人はよくいます。他の人の迷惑にならない程度なら、もちろんOKです。むしろ奨励するべき行動かもしれません。でも、他のパート練習に、勝手にオクターブを移動して自分流で参加するのは、迷惑だよねえ。そういう事をする人は、たいていは高齢者の方だから、聴力の問題があるのかもしれません。と言うのも、他人に迷惑をかけないように、自分的には小さな声で歌っているつもりなのかもしれないけれど、その小さな声が、実はかなり大きな声になっている…補聴器愛用者だと時々そういう事があるので、そういう可能性もないわけじゃないですね。実際、隣の方は、話し声もウルトラ級にデカイ人でした。
あるいは、単純に、退屈しのぎとか? と言うのも、合唱って、歌っている時間よりも、ただ座って待っている時間の方が長くて、退屈なんですよ。その退屈しのぎをどうするかも、合唱での過ごし方の一つなわけです。
その人の場合は『すべてのパート練習に参加する』という退屈しのぎをしていたのかもしれません。もっとも、たいていの人は、他のパートの練習を素直に見学して退屈をやり過ごすのだと思いますが、人によっては、妄想にふけ込むとか、自分の譜読みをするとか、読書をするとか、いたずら書きをしているとか、ゲームをしているとか、寝てるとか…まあ人それぞれです。
妻の側では、発声練習の時は勇ましかったのに、歌になると、だんまりになってしまう方々が、数名ほどいらっしゃったそうです。おそらく、ドイツ語が難しかったんでしょうね。
例年いるようですが、テノールパートを一オクターブ下の音で歌っちゃう人がチラホラいるみたいです。当人は自分が1オクターブ下で歌っているという自覚は…たぶん無いでしょう。
それにしても、合唱の練習って、イスに座ってボケーとしている時間が大半なんです、場所が狭くて、身動きがとれず、エコノミー症候群になってしまいそうです(涙)。休憩時間になると、皆さん、体操を始めるもんなあ(笑)。かく言う私は、休憩時間になると必ず、練習場を飛び出して、周囲を軽く歩いて、血行を回復しています。
そんな、色々な人間模様がかいま見られる、第九練習ですが、この調子で(笑)、12月の本番を目指して、頑張ります。
…問題は、暗譜なんだよね。すっかり忘れちゃっているから、暗譜もやり直さないと…。それにしても、ドイツ語って、発音が難しいよね。
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コメント
お疲れさまです。
外国語の発音については、一度座学的な時間を作って総論を教える(教わる)といいですよね。他の曲にも生かせますし。
先日、メサイアの関係で、歌唱における英語の扱いの講習会に参加したのですが、かなり頭が整理され、良かったです。
……シングインメサイア、いかがですか?(笑)
おはようございます~
私は高校生の時に一度だけ地元のそういう集まりに応募して教えていただいたことがあります。
高校生ですから、ドイツ語なんて全然、分からないわけで、とにかく指揮者のどこそこ大学の先生に教えてもらった通りに発音してみて、一生懸命覚えました。
私と友人だけが高校生で、後はご年配の方ばかりだったかなぁ。
なんでまた、第九だったかというと、父が第九が大好きだったからです。
私がよちよち歩きの頃、父が大切にしていたレコードを割ってしまって、ことあるごとに、「お前が割っちゃったんだよなぁ…」と言われたものです(^^;
ちゃんと歌ったのは、この時だけで、私は今は歌いません。ちゃんと発声とか教えてもらっとけばよかったなぁ…
本気で歌ったらノド壊しちゃうんですか…
知らなかった…
ほとんど忘れました。
ちなみに、中国語で、こういう状態を「習ったことをすべて先生にお返しした」というようないい回しがあります(^^;
椎茸さん
イングインメサイア、いいですね。でも、ホント、仕事の状況が見えないので、参加するとしても、直前の申込みか、申込無しの当日券って奴で行っちゃう事になると思います。私はいきなりの当日参加では、入場できないかも…とちょっと心配してますが、妻は「平気平気」と結構タカくくってますので、現在は『行くにしても、限りなく、当日券』って感じです。でも、ちゃんと事前に参加表明しないと参加できないなら『不参加』にして、別の予定を入れちゃいます(笑)。
>外国語の発音については、一度座学的な時間を作って総論を教える(教わる)といいですよね。
ですよねえ…私はいつも、耳学問ですから、正確なところはよく知らない。実は毎日歌っているイタリア語もフィーリングで歌ってます(爆)。耳学問のフィーリングでも、数を重ねると、なんとなく応用力が付いて来るから不思議です(爆)。
でも、ドイツ語は、ほんと、苦手なので、やっぱり座学が必要かな? 大学時代の教科書をひっぱりだすかな?(ドイツ語は第三外国語として勉強はしているんですよ:笑)。
游鯉さん
>本気で歌ったらノド壊しちゃうんですか…
全パートの音程が高めだし、声量を要求されるフレージングばかりですし、マジメに付き合ったら、かなりタフな人でないと歌いきるのはキツイとは、私も思います。まあ、実際の話、大半の人は、ノドが壊れるほどは歌えませんから、大丈夫です。
第九は、合唱初心者の方が多く参加される“合唱の入り口”的な存在ですが、実は合唱曲としては、かなりのヘビー級の曲なんですよ。合唱に詳しい人ほど「私は第九は歌いません」って人が多いのは、それほどカラダに負担がかかる曲だからです。それに、技巧的にも難しいしね。つまり、入り口として親しみやすく、ちゃんと歌えるようになるまでは時間と努力が必要ってパターンで奥深い合唱曲なんですね。
だから、毎年毎年、第九を歌い続ける人がいるのも、分かる気がします。
>私がよちよち歩きの頃、父が大切にしていたレコードを割ってしまって、ことあるごとに、「お前が割っちゃったんだよなぁ…」と言われたものです(^^;
私が父親でも、ずっと言い続けますよ(たぶん)。大切なレコードって、キズつけられる事だってショックなのに、割られたら…そりゃあ、しっかり心に刻まれます。昔は、それくらい、音楽とかレコードって重い存在だったんです。なので、言われ続けることは…諦めてください。
それにくらべ、今じゃ、配信ダウンロードでしょ? 音楽の存在も、お手軽になったものです。
>ちなみに、中国語で、こういう状態を「習ったことをすべて先生にお返しした」というようないい回しがあります(^^;
実にオシャレな言い回しですね。今度使ってみようかな? でも、先生から「返品不可!」って言われそうだけれど。
はいっ!!!
「私は第九は歌いません」な人です!(笑)
楽譜を見ただけで貧血になりそうです ^-^;
普段はソプラノを歌う人でも、第九はアルトで参加する人などもいらっしゃるかもしれませんね。それも楽しそうです。
二度目のコメント、失礼いたしました。
椎茸さん
第九の各パートは高いですね。
>普段はソプラノを歌う人でも、第九はアルトで参加する人などもいらっしゃるかもしれませんね。それも楽しそうです。
いや、実際、第九のアルトは、邦人合唱曲のソプラノと、どっこいどっこいか、多少なりとも高い音域だと思いますよ。なので、普段ソプラノを歌っている人が第九のソプラノに挑むとか、大変な思いをする事になると思います。
実は、男声でも同じ状況なんだろうと思います。だから、自分の合唱団を支えているようなテノールのお兄様方が、第九で苦労しているんだと思います。第九の合唱のテノールパートって、本当に難しいんですよ。だから、どうしても、叫んじゃうんでしょうね。私も、昔は叫びまくっていましたから(笑)。
今年は叫ばずに、美しい響きのある声で歌うんだい! そう決めたんだい!