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オペラ「オルフェオ」を見てきた

 先日、神奈川県立音楽堂で行われた、モンテヴェルディ作曲の「オルフェオ」を見てきました。

 キャストとスタッフは以下のとおりです。

 指揮:濱田芳通
 演出:中村敬一
 管弦楽:アントネッロ

 オルフェオ:坂下忠弘(バリトン)
 エウリディーチェ:岡崎陽香(ソプラノ)
 ムジカ/プロゼルビナ:中山美紀(ソプラノ)
 メッサジェーラ:彌勒忠史(カウンターテナー)
 スペランツァ:中嶋俊晴(カウンターテナー)
 プルトーネ:松井永太郎(バス)
 アポロ:川野貴之(テノール)
 カロンテ:目黒知史(バス)

 感想として、まず最初に言いたいことは「とても良いものを見せていただき、関係者の方々に対して感謝感謝」です。とにかく、上演機会がまず無い珍しいバロック・オペラのきちんとした実演を見ることができたわけで、たぶん、私の人生では二度と無い経験をさせてもらった事に感謝です。それもなかなか楽しかったわけで、本当に満足です。

 一点、不満を言うなら、私の座った座席が良くなかった(涙)。とにかく、人気の演目のせいか、私が公演に気づいてチケットを購入しようとした時には、すでにほぼチケット完売状態で、私の座席は、大きなホールの3階部分の一番後ろの右端で、他の公演なら、B席とかC席などになる程度の座席だったのです(でも全席同一料金で、この座席と舞台近くの席が同一料金だったので、若干わだかまっています)。

 音はとりあえず聞こえました。ただし、音の方向は分からないので、誰が歌っているのか、どこで歌っているのは、全く分かりません。おまけに舞台が遠すぎて、誰が何やっているのかも分かりません。字幕も大きな画面で出てましたが、それを読むのにも困難を感じるくらいに遠かったのです。ただし、今回は事前に座席が遠い事が分かっていたので、双眼鏡を持っていき、要所要所は双眼鏡を覗いて舞台や字幕を確認したので、舞台の勘所は押さえることができました。広い会場の後ろの席なら、やはりオペラグラスは必須ですね(私はオペラグラスではなく双眼鏡を使用したので、その重さに辟易しました。やはり軽量なオペラグラスぐらい所持する必要はあるなあ…)。

 オペラ最初期のバロック・オペラの実演を日本で見られるなんて、望外の喜びです。もう、それだけでウルウルなのですが、それが高レベルの演奏、かつ、水準を確保した演出だったので、感激してしまったわけです。プロジェクジョン・マッピングを活用した演出は、日本のオペラ公演にありがちな、大道具のショボさを補います。

 歌手の皆さんは素晴らしかったです。特に今回、私が満足したのは、おそらく当時カストラートが歌ったであろう役をカウンターテナーが歌っていた事です。この手の上演の場合、カストラート役をメゾソプラノの歌手が歌う事もある(いわゆるズボンですね)のですが、あれって、ほんと興ざめなんですよ。女性歌手が男装して歌った場合、わずかな例外を除いて、大抵は“チビデブなオカマ”にしか見えないわけで、もうそういう人が舞台に上がるだけで、私はドッチラケ気分になってしまうのですが、今回はそれらのカストラート役をカウンターテナーの方々が歌っていたので、安心して見られました。

 カストラートの性別は男性なわけだし、世の中には性は2つしかないのですから、カストラートが演じた役は、やはり男性歌手であるカウンターテナーが演じる方が受け入れやすいのです。

 あと、モンテヴェルディの音楽性もあるのでしょうが、合唱曲が多く、またそれらの歌唱が見事でした。合唱の人たちが人数は少なめでしたが、実にパワフルだったのです。

 オーケストラは(おそらく)古楽のオーケストラで、指揮者は指揮をしながらリコーダーのソロを吹いていました。リコーダーがソロ楽器として活躍しているなんて、ほんと古楽だなあと思いましたが、たかがリコーダーの音が大きな会場にビンビンに響き渡っている状態に、何とも違和感を感じました。まあ、聞こえないよりも聞こえたほうが良いので、そこはあまり考えないことにします。

 座席が遠くて、人物がよく見えなかった事は、ある意味、幸いだったのかもしれません。日本で生のオペラ公演を見ると、日本人がカツラ等をかぶって西欧人のキャラを演じる事に、いつも変な違和感を感じている私ですが、舞台が遠くて、人物の人種なんて分からない状態で見たので、素直にお芝居に入り込めたような気がします。そこはむしろ良かった点なのかも知れません。特に今回は、オール日本人キャストだったので、ほんと良かったです。キャストの中に外国人が混ざっていると、ほんと、日本人キャストに違和感を強く感じてしまいますからね。骨格の違いは、メイクじゃ誤魔化せないからね。

 それにしても、私はバロック音楽って好きだな。オルフェオはメロディにあふれたオペラなので、もっと多くの人に楽しまれても良い演目だよなあって思いました。でもまあ、ストーリーは、ギリシャ神話だし、登場人物は神様ばかりなので、普通のオペラよりも日本人には心理的ハードルは高めだなあとも思いました(笑)。

 そういう意味で、やっぱりオペラは、日本人には難しい演芸なんだなとも思いました。もっとも、ストーリーは、イザナギとイザナミのお話とほぼ同じなので、人物を日本神話に置き換えたら親しみやすいかも…って、ギリシア神話も難しいけれど、日本神話も、今の日本人には同じくらいに難しいか…(ダメだな)。

蛇足 今回、観客の民度(?)には、ちょっと違和感を感じました。休憩時間にホワイエで大声で揉めている人たちがいたし、上演中に変なタイミングで拍手をしたり騒いだりする人もいたし、全般的にお客さんたちの服装がカジュアルであったり、混雑する会場で“ぶつかりオジサン”にアテられたり…。他所のホールでは信じられないような光景に出くわしました。土地柄(?)なのかしら。それとも古楽のお客さんって、こんな人たちばかりなのかしら? よく分からないけれど、クラシック系の演奏会には珍しく、ちょっと怖い感じでした。

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