声楽のレッスンに行ってきました。
歌劇団の本番が終了しました。ソリストとして大ホールで歌ってきました。ある意味、一つの修羅場をくぐってきたわけで、私の中で色々な事が変わったような気がします。
そんなわけで、今回のレッスンは“歌う”と言うよりも、先生と色々としゃべってきたレッスンでした。
「大きな会場で歌う」事で色々と得られた事/学べた事があったので、その確認から。
大きな会場では声を押したら声にならない…という事が肌で分かりました。狭い所だと、声を押すと大きな声になるような気がするけれど、大きな会場だと声を押すと、声が汚くなるだけで、全然音にならないことが分かります。これは不思議。たぶん、押して出した声は“側鳴り”の声なんだと思う。だから、狭いところだと、それなりに有効なんだけれど、広いところでは全く効果なし。それどころか、声を押すことで音質は汚くなるのだけれど、狭いところだと音量に誤魔化されて、その音質劣化にまでは神経が回らないのだけれど、広いところだと、音質劣化が目立つのです。
私のように、声を押す癖のある人は、始終、大きなホールで歌っていると、声を押す癖が取れて、よい発声になるのかもなあ…って思いました。そりゃあ、無理な相談なんだけれど。でも、広いところで歌う経験は積んでいかないとダメだなって思いました。
そして、その一方で“声を押さずに歌うとすごく不安になる経験”もしました。声を押さずに、響きメインで歌うと、自分の声は自分の中にはほとんど残りません。もちろん、広い会場だと、反響もあまりないわけで、私が経験したように、歌っても歌っても声がドンドン会場に吸い込まれていくのです。これはすごく不安です。
確かに、歌っていて、自分の中に何も残らず、周囲からの反響もなく、声が会場に吸われていくだけでは、不安になるばかりです。しかし、それは錯覚で、実は声はよく出ているし、客席にもきちんと届いているのです。ただし、歌っている自分に手応えがないだけで、確かに不安になるけれど、もっと自信を持って歌っていいのです。
何しろ、私は音源を聞いてビックリしましたよ。だって、すごくよく声が出ているのだから。歌っている本人には、その事は全く感じられないわけですからね。よく舞台での感覚と客席での聞こえ方は全然違うと言いますが、ほんと、そうですよ。たとえ何も感じなくても、もっと自分を信じて、しっかり歌っていかないとね。そのためにも、そういう不安を乗り越えるためにも、舞台の経験がもっともっと必要なんだと思います。
もっと自分を、そして今まで積み重ねてきた練習を、そこで培った自分の感覚を、信ずるべきなんですね。ま、つまり「習うより慣れろ」って事です。
大ホールで声を飛ばすには、声を押してはダメで、むしろ声を思いっきり後ろに回して歌った方が、よく声が飛びます。これは、弓矢の要領と同じで、矢を飛ばすためには、弓を思いっきり後ろに引かなければいけないのと同様、声を飛ばすためには、声を思いっきり後ろに引っ張って歌わないとダメね。それも感じました。
とにかく、一にも二にも響きです。大きなホールで歌うためには、まずは“響き”優先主義でいかないと。美しい声を求めていく事が、十分な音量の声を確保する事にもつながっていく…そんな気がしました。
たった、5分の本番ですが、練習だけでは学べないような事を、たくさん学んだような気がします。
私は決意をしました。それは、今後は、真面目にソリストとしての勉強をしていく事です。今までは、声楽も合唱もって感じで勉強していましたが、これからは、しばらくの間、合唱に浮気せず、声楽一本で真面目に勉強を頑張る事にしました。もちろん、一山越えたら、また合唱をするかもしれませんが、でも今はソリストの勉強を中心に据えてやっていきます。
それともう一つ決意します。それは、テノールとしての自覚をもって勉強していく事。「高い音がキビシイからバリトンでもいいか…」なんて“逃げ”は、もう考えない。テノールとして歌えなければ死んでもいいやくらいの覚悟で行く事を決意です…と、先生に伝えたところ「まずはAが楽に出ないとね…」と言うことになりました。
つまり、Aの出ないテノールなんてソリストとしてお呼びじゃないわけです。つまり私の今後の目標は「(最低限)Aが楽々と歌える事」になりました。よし、しっかりやったろうじゃないですか。
そして、そのテノールも、今まで漫然と憧れていたパワフルなテノール(例えば、デル・モナコ)ではなく、リリック方面のテノール(例えばタリヤヴィーニ)として繊細な歌唱を目指していきます。そのためにも、先生がおっしゃる通り、高音域をきちんとマスターしないとね。ああ、道は遠くて険しいけれど、目指していきます、頑張っていきます
とは言え、本番後、どうにも調子が悪い私でした。なんか、うまく声は出ないし、歌もロクに歌えませんと言ったら「本番の後って、誰でも、そんなもんだよ」って話になりました。どんな歌手でも、やはり本番では、どうしても無理をするわけで、その無理に応じて、声が壊れてしまうのだそうです。それはプロであっても、アマチュアであっても、程度の差はあれ、そんなものなんだそうです。
そう言えば、笛先生もライブの後はフルートの音が壊れるって言ってたっけ。声と笛という違いはあるものの、似たようなもんなんだな。
だからキング先生を始めてとする歌手の皆さんは、本番の後は、体の疲れを取り、声の調整をし、本調子になるまでは、歌は歌わないものなのだそうです。
人によって、やり方は違うのだけれど、人それぞれに調整方法があって、やはり本番後は、自分の声を調整して、元に戻す作業を誰でもするのだそうです。キング先生の場合も、声の調子を取り戻す自分なりの方法があって、それは自分と相性の良い曲を楽に歌い続けることで、少しずつノドの調子を取り戻すのだそうです。私にも、あと2~3年勉強していれば、そういう曲が何曲ができるそうです。
と言うわけで、自分一人では壊れた声を直せない私のため、今回のレッスンは、私の壊れた声を直すレッスンとなりました。楽器で言えば「本番でムチャをして調子の悪くなった楽器を調整する/チューニングし直す」みたいな感じのレッスンでした。
だから今回は、曲もコンコーネもなし。ひたすら、発声練習でした。気をつけるのは、音程と声を後ろに持っていく事と、後頭部を開く事。絶対に声を押さずに、絶対に声を鳴らさずに、その三点だけに注意して、先生に一声ごとにダメを出してもらって調整しました。そして、調整してもらったら…Aまで出ちゃいました(笑)。ははは、Asで苦労しているのに、先生に声を調整してもらったらAまで出ちゃいましたよ。以下に、丹念に発声をするって事が大切だね。
先生の見立てでは、私は本番終了後、響きのポイントがズレてしまったそうなので、そこを直してもらったところ、いつもの感じに戻りました。「これで歌っても大丈夫だよ」とお墨付きをもらったので、曲の練習ができるようになりました。
しかし、レッスンの回数が増えて、本当に良かった。早い段階で壊れた発声を直してもらえてラッキーです。発声が壊れたままだと、悪い癖が残ってしまいますからね。
そうそう、先生に「すとんさんも、もう初心者じゃないですね」って言われました。『え? 初心者卒業??』…ボケっとしてたら「だって、大ホールであれだけの声で歌えたら、もう初心者じゃないでしょ」…そうですね(汗)。あたふたしている私に「それって、ちゃんと上達しているって事ですよ」だそうです。…かなりうれしいです(涙)。
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