スポンサーリンク

藤沢市民オペラの「ボエーム」を見てきました

 厳密に言えば、市民オペラ主催の藤原歌劇団公演の「ボエーム」です。藤沢市民オペラは3年サイクルで動いていて、1年目は藤原歌劇団の公演を上演する。2年目は演奏会形式でオペラを上演する。3年目は舞台形式でオペラを上演するというやり方です。で、今年は1年目にあたる年なので、藤原歌劇団の公演だったわけです。

 で、これが実に良かったのですよ。

 スタッフ&キャスト等は、以下の通りです。

 指揮:園田隆一郎
 演出:伊香修吾

 ミミ:中村恵理(ソプラノ)
 ロドルフォ:樋口達哉(テノール)
 ムゼッタ:横前奈緒(ソプラノ)
 マルチェッロ:大西宇宙(バリトン)
 ショナール:池内 響(バリトン)
 コッリーネ:デニス・ビシュニャ(バス)

 管弦楽:テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
 合唱:C.ヴィレッジシンガーズ

 実は先日、ここには書いてませんが、別の団体による市民オペラ(ソリストは当然プロ歌手)を見てきたのですが、そこと比べちゃいけないほどの高水準オペラでした。プロのオペラ歌手と言っても、やっばりピンキリなんだな…と思ったわけです。

 とにかく、歌手もオケもきちんと自分の仕事を高水準で行っていました。生演奏に付き物の演奏のキズは…多少はあったけれど、まあ分かる人にだけ分かるというレベルのものでした。私はテノールなので、ロドルフォが二重唱の最後でヘマった事は分かりましたが、その他の人の失敗は(きっとあったのだろうけれど)気づきませんでした。そのレベルの演奏でした。

 ところで、今回のボエームは、実に珍しい演出でした。これにはさすがに触れないわけにはいかないだろうなあと思います。大きく2つの点で際立った演出だったと思います。

 まず、最初の特徴としては「合唱は常に舞台裏で客前には出ない」という演出です。これは第2幕の、ある意味、合唱が主役のように演出されがちな場面においても、合唱は舞台裏にいて、声だけしか聞こえません。あの、パルピニュールですら、舞台に登場しないのですよ。賑やかなクリスマスシーンが、全然賑やかではないのです。まるでホラーなクリスマスなんです。

 でも、それはそれでおそらくいいのでしょう。と言うのは、次の演出との関係で、そうなったのだろうと思うのです。

 この演出の最大の特徴は、ヒロインのミミが地縛霊である事でしょう。ミミは、あのパリの屋根裏部屋の幽霊なのです。ですから、オペラの最初から最後まで、あの屋根裏部屋に居続けるのです。決して、あの部屋から出ていきません。そして、オペラそのものは、幽霊であるミミが我々観客に見せつける怨念なのです。

 いやあ、恐ろしいですね。そして分かりづらいです。

 さすがに私もすぐには演出意図が分かりませんでした。なぜ、ミミが冒頭シーンから屋根裏部屋にいるのか? なぜ彼女は部屋から出ていかないのか? そして、そこにいるミミに誰も気が付かないのか? なぜ幕が変わっても、舞台転換はせずに、ずっと屋根裏部屋のままなのか? で、その屋根裏部屋の中が、なぜレストランモミュスになったり、雪の積もる野外になったりするのか? なぜ舞台上はいつもいつも暗いのか? そして、オペラ冒頭のシーンが、長椅子で死んでいるミミのシーンから始まるのは、なぜか? いやあ、恐ろしい恐ろしい。実に設定が凝りすぎです。あんまり設定が凝っていたせいか、私のそばに座っていた子どもたちが、あっという間に飽きてしまって、遊びだすくらいに、何とも訳が分からない演出でした。

 おそらく、オトナであっても、最後まで演出意図が分からなかった人がいたと思いますよ。それくらいに、謎演出でした。

 私も(録画が多いけれど)それなりの数の「ボエーム」は見てきたつもりだけれど、ミミを地縛霊にした演出は、これが始めてです。いやあ、びっくりです。賛否両論だろうなあ。トンガリ過ぎな演出だったと思います。

 まあ、いくら謎演出であっても、演奏は良かったので、目をつぶってしまえば無問題でした。ですから、私も途中から、心の目を塞いで、オペラを楽しみました。それくらいに、音楽が素晴らしかったボエームなのでした。

 いやあ、それにしても、オペラ初心者には、極めてハードルの高い公演だったと思いますよ。だいたい、ヒロインのミミが、何とも気持ち悪いのよ…。つい、普通のオーソドックスな演出でボエームを見直したくなるくらいに、トラウマ的な演出でした。

 ホラー、大嫌いなんです、私。うへー。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 音楽ブログ 大人の音楽活動へ
にほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました