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クチビルを柔らかくしましょう

 フルートのレッスンに行ってきました。今回はセッションレッスンでした。記事の最後には録音へのリンクもあります。

 さて、変更した頭部管の向きにも、だいぶ慣れてきました。まだ美しくない音もあるけれど、日々の訓練で美しく磨いていきましょう。とにかく現状の問題点としては、1)最低音ドが低すぎ、2)最高音ドが高すぎ、3)第三オクターブがスカスカ、というのが自覚している三大問題です。

 すべての問題を一度に解決する事はできないので、今回は1)の最低音ドが低い件について、見ていただきました。結論は「息が弱い」という事になりました。音程が低くなるにつれ、無意識ですが、息が弱くなっているそうです。息が弱くなっているので、自然と音程が下がってしまうわけで、低音は“音がひっくり返る直前まで”意識的に強い息を吹き込む練習をして、慣れてしまうのがよいだろうという事になりました。もちろん、それだけではなく、きちんと音を曲げて(伸ばして?)行くことも同時にやらないとダメです。

 もしかすると、2)の最高音ドが高すぎるのも、同様なメカニズムなのかもしれませんね。こっちは、曲げる方は極限まで曲げていますので、あとは意識的に音が落ちる直前まで弱い息で吹く練習をした方が良いでしょうね。

 全般的に音が美しくなかったり、第三オクターブの音がスカスカだったり、スタッカートがうわずったりするのは、私のクチビルが硬いせいなのだそうです。クチビルに力を入れたり、形作って吹くのは御法度で、クチビルは常に脱力気味にして、柔らかくあるべきなんですが、実際はそうではないんです。

 なので、クチビルを柔らかくする宿題が出ました。やり方は簡単で「パ」の音でタンギングをする事。「パ」のタンギングは、実際の曲ではなかなか使えないそうですが、そこは練習と割り切ってやってくるように言われました。たしかにクラシック系では使えない技かもしれませんが、ジャズ等では使えるかもしれない技なので、ちょっと真面目に取り組んでみたいなあと思ってます。

 さて、セッションレッスンです。一曲目は「イパネマの娘(The Girl From Ipanema)」です。ボサノヴァです。なにしろ、カルロス・ジョビンの曲ですから。

 前回、メロディを確認する程度で、今回に持ち込んで取り組んでみましたが…いやあ、難しいですよ、この曲。リズムもメロディラインもコード進行も、なかなか癖が強くて難渋しました。ま、この手の曲は、譜面では難しそうでも、必ずしも譜面どおりに吹く必要はないので、自分なりに崩して吹いちゃっていいのだし、実際、私流に崩して演奏しちゃうわけだけれど、崩すにしても“守るべき一線”と言うのがあって、今回はそこを注意されました。

 この曲における“守るべき一線”と言うのは何かというと、それは“ラテンのノリ”なんだそうです。ポサノヴァはラテン音楽なので、何をどう間違えたとしても“ラテン音楽”に聞こえないとダメだそうです。

 “ラテンのノリ” これを言葉で明記するのは、なかなかに難しいです。先生が一生懸命、お手本の演奏をしてくださるので、それを聞きながら、自分なりに注意点を見つけていくわけですが、私なりに分かった点は三つ。まずは「裏を意識する事」、次は「しっかり食うこと」、最後は「8と6と瞬間に使い分けること」。

 「裏を意識する事」はジャズでもそうですが、ラテン音楽も、オフビートの音楽なんですね。なので、練習の時も、わざとメトロノームを入れて、メトロノームのクリック音とクリック音の間に、音楽の強拍を入れて演奏していきます。ようやく、オフビートでフルートを吹く事に慣れてきましたが、これはなかなかに大変です。

 「しっかり食う」とはシンコペーションのことですが、クラシックよりも、鋭くバクって食っていかないと様になりません。楽譜どおりだとダサいです。ま、この辺もジャズとも通じる点ですね。

 「8と6と瞬間に使い分けること」と言うのはビートの問題です。「イパネマ~」は基本的に8ビートの曲なんですが、時折6ビートになります。クラシック的な4拍子の曲が3拍子になるのではなく、八分音符8個で一小節だったのが、三連符二つで一小節になるようなリズムの取り方です。で、その三連符の頭が飲まれていたり(つまり休符だったり、前小節からのタイだったり)するので、かなりやっかいです。頭の中で8つで刻んでいたリズムを、瞬間的に6つに刻み直さなければいけないのですが、その一瞬の浮遊感がラテン音楽なのかもしれません。おそらくバンドをいれると、8つで刻む打楽器と、6つで刻む打楽器が混在しちゃうのかもしれませんね。

 とにかくメロディラインが難しいので、アドリブもフレーズの頭とお尻に、ちょこっと装飾音符を付ける程度にして、あまりメロディから離れないようにして吹きましたが、これは誉めていただけました。

 二曲目は「悲しき慕情(Breaking Up Is Hard to Do)」。音楽ジャンル的には、小気味いいくらいのポップスですね。なにしろ、ニール・セダカの曲ですから。

 この曲は、オリジナル歌手が男性という事もあって、低~中音域の運指で練習してきたのですが、先生から、その音域だと地味でノリが悪いので、1オクターブを上げて演奏した方が良いといわれて、急遽、オクターブ上げて演奏する事になりました。

 とにかく、曲中で何度も転調を繰り返すし、臨時記号の嵐だし、コード進行もわけ分からないし、結構苦労しました。一通り、ピアノとフルートでやった後、先生からフルートデュエットでやりましょうと言われましたが、即座にお断りしました。だって、こんな複雑なコード進行の曲を初見で伴奏しろって、そりゃあ、私にはムチャというものです。いや、実際、難しいです。

 なので、フルートデュエットは、三曲目でやりましょうという事になりました。

 で、三曲目は「恋はみずいろ(L’amour Est Bleu)」。“いかにも”って感じの、フレンチ・ポップスです。ポール・モーリアで有名な、あの曲です。

 この曲は、最初から、フルートデュエットでやりました。やってみると、結構大変な曲だと分かりました。この曲、譜面は簡単そうに見えます。白い音符は多いし、けっこうスカスカだし。でも、臨時記号はヒョコヒョコ出てきますし、メロディの方は平凡でも、コード進行が転調しまくりだったりして、おもしろいです。それに、わざと、メジャーコードにするべきところをマイナーコードになっていたり、その逆があったりと、凝ったコード進行になってます。さすが、フレンチ・ポップスって感じです。

 この曲は、録音したので、アップします。先生と二人で演奏してますが、当然、手数の少ない方が私です。あまりいい演奏ではないかもしれませんが、成長の記録としてアップします。なにしろ、頭部管の向きを変更して、初めての録音ですから、音を聞くというだけでもアップする価値というのがあります。どうですか、私のフルートの音は。

 演奏は基本的にアドリブです。使っている譜面はリードシートと言って、メロディとコードネームが書かれてるだけの楽譜です。で、それを見ながら演奏するわけですが、メロディを、楽譜どおりに吹くことはあまりなく、自分流に崩して吹いていくわけだし、伴奏はコードネームだけを見て、アドリブで音を組み立てていきます。そういうわけで、同じ譜面を使っていても、演奏者によって、できあがりが全く違います。おもしろいでしょ。

 とは言え、やはり、ポール・モーリアの影響から逃れることはできません(汗)。

 演奏は基本的にアドリブで行うとは言え、レッスンでは、私が選曲しているので、実は、事前に練習をしておきます。練習と言っても、指が転ばないように、メロディをしっかり吹いておく事と、曲によっては、コードを見ながら自分流に伴奏パートを吹いておくこと…くらいですかね。「恋はみずいろ」は、前日に伴奏パートを試しに吹いておきました。なので、当日にフルートデュエットになっても、あわてずに、多少は、スムーズにできているかなって思います。

 メロディはしっかり吹いてきますが、細かなアドリブ部分は、練習をしてきません。なので、今回は直前に「イパネマ~」を誉められたという事あり、「イパネマ~」以上に、元のメロディを大切にして演奏してみました。しかし、メロディを大切にしすぎて、アドリブ箇所は、アドリブをしたのか、単にミスったのか、区別が付きづらくなっています…と言うよりも、なんかアドリブがミスに聞こえるんですよね~。これはダメですね。意図的なアドリブなのに、それがミスに聞こえるようでは、まだまだ修行が足りません。アドリブはやりすぎてもイヤらしいですが、やらなさ過ぎても物足りないです。その割合が難しいですね。もちろん、正直に白状すると、アドリブをやろうとして、うまくできなくって、結果としてミスブローになっている箇所もあります(へへへ~っ)。

 私の音色は硬いですね。おまけに常にfで、強弱もなければ緩急もないわけで、たしかにフルートを習い始めの子どものようなプレイです。でもね、音程は、以前よりも良いでしょ。まだ若干甘い箇所もありますが、なんとかアンサンブルの態をなしているんじゃないかなって思いますが、自画自賛ですか?

 ちなみに、先生はご自分のプレイにあまり納得してらっしゃらないようなので、録音は私の方だけ聞いていただけると感謝です。

 と言うわけで、録音はこちらです。

コメント

  1. はっチャン より:

    イアー、マズマズの演奏でしたよ!
    そのうち、自分も録音器購入して音源をUPします。(笑)
    ブログにもUPしてますが県内アマチュア5ビック・バンドを集めたイベントも終わり一段落しました。28日は吹奏楽団のイベントがあります。(汗)
    フルートのレッスンを一時中断しようと思っています。で、ビック・バンドと吹奏楽団を掛け持ちで、4月からメン募で知合ったギターと自分のフルートでセッションする予定です。出来ればパーカッションを入れてトリオで活動したいと思っています。(詳細はブログにて!)

  2. 紫水 碧 より:

    私みたいなクラシック人間が聴いた感想ですが、ちゃんと曲が流れていて良かったと思います。
    一つだけ気になった事は、ちょっと休んだあとの出だし(そんなのがなかったらごめんなさい)で、頭がはっきりしなかったのが気になりました。それができればもっとメロディにハリが出るのにな、とちょっと勿体ない感じがします。ふわ~っと吹くのではなく、もっとどっしりと構える感じで、こう出ると決めて最初からそう出せるよう考えてから吹くと良いと思います。

  3. すとん より:

    >はっチャンさん

     マズマズと言っていただけて感謝です。まあ、色々とキズはありますし、そのキズを指摘していただくのも、今後の糧になるので、具体的に「ここがちょっと…」と言っていただけるのがありがたい反面、やはり「まあまあですね」とか「マズマズですね」という肯定の返事は、精神的にとてもうれしいです。

     フルートのレッスンを一時中断されるとのこと、残念ですが、でも忙しすぎるのはダメですね。余裕をもって楽しめる程度の忙しさにしないと、体が悲鳴をあげちゃいます。優先順位をきちんとつけてやんないとね。

     ギターさんとのセッションは、すごくうらやましいです。ビッグバンドも吹奏楽もあって、楽しい事だらけで、うらやましいです。あとは、健康と相談しながら、細く長くがんばってくださいませませ。

  4. すとん より:

    >紫水碧さん

     出だしの頭がはっきりしないとのご指摘、感謝です。

    >ふわ~っと吹くのではなく、もっとどっしりと構える感じで、こう出ると決めて最初からそう出せるよう考えてから吹くと良いと思います。

     タンギングが甘いのです、先生からは「ヒューバート・ロウズのタンギングを見習って…」と言われ続けています。言われてもなかなかできませんが、頑張りますよ。音の立ち上がりをよくするように、次からは気をつけて参ります。

     実はその、ふわ~と吹くのが、私、やや癖になりつつあります。こうやって、きちんとご指摘を受けると「ああ、このままではいけない」となりますので、ありがたいです。

  5. アリサ より:

    フルートをはじめて2年程ですか?
    充分楽器で遊べるレベルに行ってるではないですか。

    何十年もフルートを吹いていて、楽器のことをよく知ってるらしく、口は動くのに、実際音を出すとアレレ?な方もおられた(以前所属していた吹奏楽団にいらっしゃいました。)ことを思うと、2年でこれだけできるのは充分すごいと思います。

    ボサノヴァのリズムって、イーブンだから入りやすいようで意外と難しいですよね。
    だって、リズムを出したいんだけど、トリャーッとやるとなんか違う。それだと暑苦しい。
    シンコペーションがミソなんですね。
    メロディーだけど、パーカッションと一緒にリズムで遊んでる雰囲気があったらいいかも。

    ポール・モーリアは鍵盤のイメージが強いので、パラパラと入れたくなりますが、即興で入れるのは難しいですよね。思っててもできないもどかしさ。
    繰り返すフレーズを丁寧に吹くのが第一歩のように思いますが、それだけだど「何もしてないね」って言われそう。
    クラシック風な装飾音を入れるとかどうでしょうか。
    でも、ポピュラーなので全部一緒のフェイクは駄目なんですよね。こういう時のために引き出しをたくさん作っておくのですね。
    しかし、こういう曲は、どう歌えばいいのか私にはわかりません。
    マイナーとメジャーを行ったり来たり。
    メジャーになったところで、ストリングスがバックで盛り上げていたような気がします。
    そっちをフォルテにすればいいのかなあ?

    私は楽器吹いてないけど、こうやって考えるのだけでも楽しいです。
    またセッションレッスンのことを書いてくれると嬉しいです。

  6. すとん より:

    >アリサさん

     たしかにフルート始めて2年弱ですが、まだまだ楽器で遊べるレベルではないですよ。「あ、この曲を吹いてみたい」と思って、楽譜を買ってきて吹き始めて「ダメだ、こりゃ、難しすぎる」と投げ出してばかりですから…。何でも初見でスラスラ吹ける…なんてレベルはもちろん考えていませんが「練習さえすれば、大抵の曲は吹ける」というレベルに早くなりたいものです。

     ボサノヴァって、メロディではなく、バッキングに特徴があるような気がします。リズム的には、オモテとウラが巧みに交代しながら、あの独得のノリがつくられていくわけで、演奏してみると、聞いた感じよりもだいぶ難しいです。

     ポール・モーリア系のメロディはどれもフルートが似合うメロディが多くて好きですが、やはり鍵盤的な発想なんでしょうね。あれで結構、隙間なく、カチっと作られているんですね、ジャズっぽくやるなら、ピアノの方がお似合いかもしれません。

    >またセッションレッスンのことを書いてくれると嬉しいです。

     はーい、また一カ月後に書きます。

  7. 河童 より:

    「イパネマの娘」って並んでいるオタマジャクシだけみると簡単そうですが、リズムが超ムツカシイですね。
    最近(この歳になってようやく)気づいたのですが、その曲が作られた地域の言語のアクセント・リズムそのものが独特のノリなのではと。
    「Time to Say Good By」なんか始まりがソノリテ?って感じですが、サラ・ブライトマンのCDを聴いて初めて雰囲気がわかりました。

  8. ひょっとこ より:

    リズムはたくさん聴かないと、
    そのノリというか「グルーブ感」が
    掴めないかもねぇ。譜面に書けないから…。
    わざわざ譜面の上にBossa Novaって
    書くくらいだから。

    「One note samba」なんて
    Bossaのリズムのトレーニングに良いかも。
    いろんな人が演奏しているし。
    http://www.wichai.net/sheet/one_note+samba.gif

    最初の方は本当に「ワン ノート」なので。
    ワンノートなんだけど、
    だんだん崩していけばよいので。

    あと、リズム的に遅いsambaが
    bossaみたいな雰囲気ではあるけれど、
    ノリ、グルーブ感が違うかな。

    Antônio Carlos Jobimは愛称Tomなので、
    日本以外の検索をする時は、
    Tom Jobimでもやった方が良いかも。

  9. すとん より:

    >河童さん

    >その曲が作られた地域の言語のアクセント・リズムそのものが独特のノリなのではと。

     …ありますね。また演奏者の話す言語によっても、ノリが変わってくると思います。「イパネマの娘」は数多くのカバーがありますが、歌手がポルトガル語で歌うか、英語で歌うかで、使用言語の違い以上に、音楽のノリそのものが違ってきます。あれは不思議。

     結局、音楽のリズムって、言葉のリズムと深い関係があるんでしょうね。クラシック系の演奏家の卵たちが、こぞってヨーロッパに留学するのも、単に音楽の勉強だけでなく、あっちで生活して、あっちのリズムを体の中に入れるために行く、という事もあるのではないかと思います。

  10. すとん より:

    >ひょっとこさん

     結局、りズムって、演奏者の体内にあるものを、引っ張りだしてくるしかないんだろうと思います。こればかりは、理詰めで言っても、どうにもなりません。だからこそ、たくさんの種類の音楽を聞き、それらをじっくりと味わって、自分の体内に取り入れるのが、音楽の勉強の一手段だと思います。

     ん? これはリズムに限らず、音程であれ、和声であれ、同じことか。結局、人は自分の中にあるものしか使えないということですね。

     ジョビンの愛称はトムなんですか? アントーニオ→アントン→トン→トムなのかな? あっちの人は、愛称という別名があって、ちょっとややこしいですね。

     「ワンノート・サンバ」の譜面を見ました。「え? あの曲を譜面にすると、こうなの?」って感じです。耳で知っている曲の譜面を改めて見ると、新鮮な気持ちがしますが、でもこの譜面どおりに演奏しても、あの曲にはならないあーという素朴な感想も芽生えます。あ、だから、みんなが自分流に演奏するんですね。納得。

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