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読売交響楽団の第九はすごかった

 新年早々、年末の話題を取り上げます(笑)。ほら、なにしろ、年末年始進行をしていたから(大笑)。

 クラシック音楽界における日本の年末というのは、ベートーヴェンの第九演奏に尽きると言っても過言ではありません。実際、年末になると、あちらこちらの音楽ホールで第九が演奏されますし、テレビでも第九の演奏がたくさん放送されます。また、私のように、第九の演奏会に参加する人もたくさんいます。それくらい「日本の年末」=「第九の演奏シーズン」なんだと思います。

 考えてみれば、人生を通して、一番たくさん生演奏を聞いているクラシック曲って、私の場合、第九かもしれません。

 第九はたくさん聞いていますが、よくよく考えてみたら、オーケストラはプロ団体であったり、アマチュア団体であったり、様々ですが、合唱団は、たいていアマチュア団体のものばかりでした。

 本当かどうかは知りませんが、ベートーヴェンは第九の合唱を『アマチュア合唱団での演奏を想定して作曲した』という話を聞いた事があります。だから、必ずアマチュア合唱団員の助けになるように、合唱パートの音は必ずオーケストラの楽器がどこかで演奏しているので、それを聞けば、歌う時に迷子になる事はないよと聞いた事があります。

 そんな話を信じている私なので、第九の合唱はアマチュア合唱団程度(失礼)で十分、と思っていました。もちろん、アマチュア合唱団と言っても、ピンキリで、臨時編成の市民合唱団から始まって、音大生を集めたセミプロと呼んでも構わない即席合唱団まで色々と演奏レベル的にはありますが、まあ、それでも、アマチュア合唱団向けの曲なんだろうなあと、漫然と思ってました。

 だいたい、N響の第九演奏会ですら、臨時編成の音大生合唱団を使うんだから、そんな扱いがふさわしい作品だと思ってました。

 もちろん、外国レーベルのCDの第九は、プロオケ&プロ合唱団の組み合わせですが、これは「外国だから」「商品だから」という理由で、気にも留めずにいました。

 さて、タイトルの「読売交響楽団の第九はすごかった」に戻るのですが、最初に誤解を招かないように書いておくと、生演奏を聞いたわけではなく、テレビ放送を見ての感想です。

 当然の話ですが、私は今まで、プロの合唱団による第九演奏というのを、テレビやCDで聞いています。もちろん、大半が外国のものです。外国のものだからでしょうね、なんか違っていて当然というか、所詮クラシック音楽は彼らのものだから、上手くて当然って思って聞いてきたので、心にひっかからなかったのです。

 今年は、久しぶりに自分も第九を歌ったという事もあり、気合を入れて、色々な第九の演奏を見聞きしました。その中に、読売交響楽団の第九演奏会のテレビ放送がありました。

 すごかったです。この第九がすごかったんです。合唱団は、新国立劇場合唱団でした。つまり、プロの合唱団の方々で、普段はオペラの合唱を担当している方々の歌唱でした。最初は舞台に乗っている人数も少なめで、これは大丈夫かなって思ったのですが、演奏が始まってビックリしました。

 もちろん、テレビ放送なので、ミキシングなどの補正は加わっているので、会場で聞ける音場とは違うのかもしれませんが、とりあえず、他のテレビで放送された第九演奏と比べて、という程度で話を進めても、やっぱりすごいんです。

 何がすごいのかというと、合唱にダイナミクスがはっきり付いている事。pは本当に優しく、fは本当に迫力いっぱいで歌う事。さらにどんなにfになって、合唱団員は顔色一つ変えずに歌うし、どんな高音になっても常に余裕はあるし、pもfも同じ音色で歌っちゃう事。なんか、今まで聞いていた第九とは次元が違う演奏が聞けました。

 アマチュア合唱団の演奏で聞いても感動的な第九ですが、プロ合唱団の演奏で聞く第九は、さらに感動的でした。やっぱり、プロはすごいと思いました。アマチュア合唱団が歌うと熱心さや必死さが伝わって、それはそれでいいのですが、プロ合唱団の歌唱には必死さはない代わりに、音楽の姿を伝える力強さが感じられました。ベートーヴェンの第九って、こういう音楽だったんだ…と今さらながらの感想なんです。

 …で、恥ずかしい話なんですが、実は昨年も、読響の第九はテレビで拝見しているはずなんですが、去年は今年ほど感動してないんですね。演奏は同じくらい感動的だったはずなのに、聞いていた私はそれほど感動しなかった…。これはおそらく私サイドの問題でしょうね。今年は自分で歌ったので、第九を自分にひきつけて聞けたのだと思いますが、昨年は他人事として突き放して聞いていたので、感動が少々薄かったのだと思います。

 音楽を自分に引きつけて聞けるかどうかで、その感動が違う…考えてみれば当たり前の事ですね。改めて、アナリーゼの大切さを実感です。自分でその曲を歌うためにその曲をしっかり勉強しておく事(アナリーゼ)は、鑑賞する時にもより深く味わいを増してくれるわけです。

 ああ、来年の読響の第九は、ぜひ、生演奏で聴きたいなあ。

コメント

  1. めいぷる より:

    某番組で、第九の歌詞を徹底的に指導したものがあり、興味深く観ました。詩の意味を歌うと言う事。

    対象は国立音大の学生さん(副科で合唱とかあるんだよ)でしたが、最初は四苦八苦されていていたのが仕上がっていく様が興味深かったです。

    シューベルトも詩がそのまま音に直結しているので、歌詞の意味を知っているだけで歌い方が変わりますよね。先日ベルリンフィル首席奏者のマスタークラスで、学生さんがその詩を理解しておらず、最後の一瞬で弱音で音色が曇る意味が判っていない事を指摘されていました。

    元歌の言葉の文法を理解する事により、音楽のニュアンスの付け方がアバウトでも判るようになりますね。
    そー言う意味では、声楽をされているすとんさんはアドヴァンテージがありますよ。
    色々歌えるようになるのも&吹けるようになるのも楽しみですね[E:lovely]

  2. まきりん。 より:

    パソコンからなので、ひとことに反応[E:happy01]

    フジカラーのCMって本当に長いですよね。
    私がはっきりと記憶にあるのは1977年の岡田奈々。
    「奈々の年」っていうカンジでにっこりしていた記憶があります。
    その前は山口百恵だったような…(ちょっと曖昧)

    なんといっても、岸本加代子と悠木千帆(たぶんそのころはこの名前)の
    「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに…」というのがありましたね~

    お正月のCMといえば
    「おせちもいいけどカレーもね」というハウスのカレーが浮かびます。

  3. めいぷる より:

    あ…そーだ、
    機会があったら、、、うぅーん、もう来日しないかな…?

    18世紀オーケストラの第九、聴いてみてください。

    ピリオド楽器&奏法、お嫌いでしたっけ?
    大ホールに室内楽のような人数で凄いベートーヴェンを聴かせてくれます。
    …マイミクさんに団員さんがいるので、あっちに書いちゃ駄目よ(笑)

  4. まきりん。 より:

    おまけ
    先回のコメントで
    「まきりん。」の「。」について、ありましたが、
    ご推察のとおり、まきりん。としています。
    なんとなく、可愛いので←こらっっっトシを考えなさいってば。

  5. めいぷる より:

    横レス失礼。

    まきりんさん、「まきりん。」さんになったの?
    可愛いなぁ~[E:heart02]

    私のHN、ホームページ(ブログじゃないよ!)立ち上げ時代は「maple」だったんですよ。昔々。

    誰かが「メイプル」って書いたり「めいぷる」って書いたりしているうちに、「めいぷる」貰った!と。

    Fgかじった時代に知り合ったFg吹き達には、HNに気合入ってますね…って言われちゃった。素材「メープル」の楽器が主流ですからねぇ…^^;;

  6. すとん より:

    >めいぷるさん

     そうですね、音大には副科があって、たとえ専攻が器楽であっても、多くの方は声楽も学ばれるわけで(でないと、学校の先生になった時につらい:汗)、臨時編成の音大生合唱団はたしかにアマチュア合唱団なんですが、そこらへんの基本部分ができているから、玉石混淆な市民合唱団よりは、だいぶプロフェッショナルっぽいです。

     実際、市民合唱団は、実際の演奏会に行ってその演奏を聞けば、よく分かりますが、実に玉石混淆で、大変なんです。

     別に器楽を馬鹿にするつもりはないので、誤解して欲しくないのだけれど、合唱で“合わせる”と言うのは、単にリズムや音程だけを合わせるのではなく、子音の発音、母音の音色、言語としてのアクセント、言葉としてのニュアンス、歌い手としての感情の高まり、これらまでもきっちり合わせていきます。

     歌って、誰でもそれなりに歌えるだろうけれど、ちょっと真面目にやると、とても奥深い事に気づきます。本当に難しいんです。今回の国立歌劇場合唱団の歌唱は、その奥深さを分かりやすい形で見せてもらえた演奏だったと思います。

    >声楽をされているすとんさんはアドヴァンテージがありますよ。

     えへへ、実はしっかり自覚してます(笑)。共通する部分(テクニック的にも、精神的にも)が多くて「一粒で二度美味しい」状態だなあと思うこと、しばしです。

  7. すとん より:

    >まきりんさん。

     そうそう、フジカラーのCMって、ほんとーに長いですよね。

    >「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに…」

     あはは、あったあった。あれって、ちょっと社会問題になりかけなかったけ?「そうでない方」ってどんな方?とか言って、うるさ型の女性評論家が騒いでいたなあ。私はそれを見て「なんて、ジョークの分からない人だなあ」と言いながら、心の中で「あんたのことだよ」と毒吐いてました。

     やーね、子どもって、正直すぎて、残酷だねっと。

  8. すとん より:

    >めいぷるさん

     18世紀オーケストラの第九は聞いたことないけれど、ピリオド楽器の演奏って、それなりにCDでもライブでも聞いてます。嫌いじゃないです。ただ、あんまり学問学問した演奏は苦手かな? やっぱり客前では、エンタメであって欲しいと思っている私ですから。

    >大ホールに室内楽のような人数で凄いベートーヴェンを聴かせてくれます。

     簡単に想像つきます。ピリオド楽器の演奏会だと、合唱もグッと人数を減らしてくるんですよ。その人数の減った分だけ、パワフルなメンバーで揃えてきますから、私は大合唱団よりも、パワフル少人数合唱団の方が実は好きだったりします。

     理想的な合唱は、ワンパート一人ずつの歌唱だと思いますし、実際、そういう演奏を何度か聞きましたが、すごいよ、すごい。

  9. すとん より:

    >まきりん。さん

     あっ、やっぱり「まきりん。」さんなんだ。

    >こらっっっトシを考えなさいってば

     考えなくてもいいってば(笑)。女性はいくつになっても「夢見る少女」でしょ。男性は「勇ましい少年」だしね。それでいいんだよ、それがいいんだよ。

     時々「。」の位置を間違えちゃうかもしれないけれど、それは勘弁してね。

  10. すとん より:

    >めいぷるさん

     横レスに横レスつける私です。

     Fgってファゴットでしょ。めいぷるさん、フルート吹いて、ピッコロ吹いて、ファゴット吹いて…。もしかしたら、オーボエとかサックスとかクラリネットとかも吹いたことあるの?

     もしかすると、マルチ奏者さんですか? 師匠と呼んでもいいですか(笑)。

  11. はむはむ より:

    遅ればせながら…

    すとんさん、明けましておめでとうございます [E:happy01]

    自分が音楽をどう聴くかによって、その時の感動が違う…
    とっても良くわかります。
    私も去年はPTAのコーラスに参加したので、
    合唱系の音楽を聞くと、自然に耳がダンボになっちゃいます。

    次回のPTAコーラスにも残る事になったので、
    また5月末から11月本番までの数カ月、
    歌とかかわりながらの暮らしになりそうです。
    コーラスの先生は、プロのオペラ(ソプラノ)歌手。
    頑張って、毎回歌のテクニックを盗みま~す [E:wink]

    今年もよろしくお願いします [E:clover]

  12. めいぷる より:

    えへへ…元はオーボエが吹きたかった私です。

    何を隠そう、クラリネット(移調楽器で挫折)もファゴット(師匠の勧めで少しやったら、ミイラ取りがミイラになってはまった)も経験済み。勿論オーボエは会社の先輩に楽器を借りて…(^^)v

    ホルン以外の木5楽器は経験染みで、、、お蔭様で木5をやる時にとても役立っていますよぉ~(^^)v
    他楽器の特性を知る事により、自分の吹き方が変わりますからね♪

    世の指揮者や作曲家に言いたいのは、ウンチクたれるより前に「全楽器修得せいっ!」と言いたいですね。
    そーすれば、ありえない編成や、ありえない欲求は少なくなるでしょうから…[E:smile]

  13. すとん より:

    >はむはむさん

     明けましておめでとうございます

     ほえ~、二年連続のPTAコーラスですか? 良かったじゃないですか。PTAコーラスで合唱に目覚める人って、結構多いんですよ。

    >コーラスの先生は、プロのオペラ(ソプラノ)歌手。

     おお、これはいいね。ぜひ、歌と言うよりも、発声のテクニックをしっかり習うといいよ。

     歌はね、極端な話、ピアニストさんからでも習える。でも、発声は、歌手からしか学べません。声なんて『誰でも出る!』なんて思ったら大間違い。もう、すでに身にしみていてるだろうけれど、ほとんどの人は声なんて出てない。でもそれは仕方のない話で、きちんとした発声の仕方なんて、なかなか習えるものじゃないから、みんな見よう見まねでやって、間違った方向に行っちゃうんだ。

     プロの歌手が先生なら、何をおいても発声を見てもらわないと。それに、きちんとした声楽発声は、フルートにもかなり役立つよ。特に、下腹とか腰とか太股の使い方は、声楽とフルートはかなり共通していると思います。

     発声を習うと、歌とフルートの両方が一度に上手になるよ、いいね、丸儲けだね(笑)。

     今年もよろしくお願いします。

  14. すとん より:

    >めいぷるさん

     やっぱり、すごいなあ。マルチ奏者ですね。ホルン以外はとりあえず征服済みとは、恐れ入りました。ま、ホルンは、たぶん、別格でいいんじゃないかな? 知り合いのホルン奏者の顔を今、思い浮かべてますが、あれってマルチで吹けるような楽器じゃないような気がします。やっぱり、ホルンはホルン専任に任せておいていいんじゃないかな?

    >世の指揮者や作曲家に言いたいのは、ウンチクたれるより前に「全楽器修得せいっ!」と言いたいですね。

     それは私も言いたい。ま、名人級の演奏力は求めないけれど、ひとまずとりあえずはって感じで。あと、“歌えない指揮者”と言うのもガッカリしますよ、さすがにプロではお目にかかった事はないけれど、アマチュアだといるんだ、これが。「ほんとに、今、アンタが歌ったようにやっちゃうよ、それでもいいの?」って、にら見返した事ありますよ(笑)。

     ちなみに、私が好きなタイプの指揮者は、元テノール歌手って指揮者(笑)。だって、テノールの性質とか癖とか考え方がよく分かってくれて、それこそ“かゆいところに手の届く指揮”をしてくれるので、だーいすき。

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