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“合唱声”に関する私見

 ネットを見ていると、いくつかのサイトで“合唱声”という言葉を目にします。これは「合唱をする人に特徴的な歌声」の事を言っていると思うし、実際、合唱で重宝にされる歌声と、独唱をメインにする人の歌声の特徴は違います。ただ、その言葉の使用法に、やや侮蔑的な香りを感じる事があり、そこは「わざわざ敵を作らなくてもいいのになあ…」と思わないでもないです。
 私も合唱声と独唱声には違いがあるとは思いますが、それはあくまでも違いであって、そこに格の違いとか、どっちが偉くてどっちが偉くないとか、貴族的か庶民的かなどの“差”は無いと思ってます。あくまでも違いね。イヌとネコは違うけれど、どっちもペットだし、どっちも十分可愛いって程度の違いです。
 と私が思っていても、世間はそうは思わないという事も知っています。そこは難しいね。合唱の人たちは独唱声の人をいじめるし、独唱の人たちは合唱の人たちを視野に入れないしね。他人を受け入れるってのは、難しいんだな。
 で、ここから私見だけれど、私も便宜上“合唱声”という概念を使いますが、実のところ“合唱声”という声は、特別存在しないと思ってます。
 合唱の人たちに怒られそうで、ちょっと書くのに気がひけるんだけれど、いわゆる“合唱声”ってのは「(フィジカルには)鍛えられているけれど(テクニカルには)訓練されていない声」だと思ってます。つまり「鍛えられている普通の人の声」が合唱声だと思っているので、別に特別な声だとは思っていないわけです。
 声って訓練すればするほど、個性的になってくると思うんですよ。声質であれ声域であれ、その人の持っている声という楽器の個性が磨かれていき、楽器としての特徴が強まっていくと考えます。実際、プロのオペラ歌手さんって、話し声からして、すでに異質で美しいじゃない? とても普通の人間の声とは思えないわけで、それくらいに声を訓練すると、声が変わってしまい、個性が尖ってきます。
 でも声が個性的になりすぎてしまうと、合唱では使いづらいよねえ。合唱では「声を合わせて歌う」必要があるし、特に日本の合唱界で美しいと評価される声は「まるで一人の人が歌っているかのように聞こえる」教会系の声だからね。歌声に個性は求められません。あくまでも普通の人(というロールモデル)の声の集合体が良しとされるわけで、ヨーロッパのオペラ合唱のような劇場系の訓練された個性的な声が塊となって響くような声は評価されないんだよね。
 音楽の種類が違うんだし、声の用途が違うんだから、求められる声が違っていて当然でしょ?って私は思うし、器用な人なら、合唱も独唱もそれぞれに器用に対応して歌えるかもしれませんが、多くの人はそんなに器用では無いから、それぞれに特化していくしかないだろうし、自分とは違う道を選択した人を異物として排除するのではなく、他人として受け入れられれば、それで良いと思う私なのでした。
 そもそも、合唱をやっている人たちは、自分たちを“歌手”であると認識しているのかしら? その辺の意識の違いから考えるに、実のところは声の違いうんぬん以前に、両者のメンタルが違うのではないかとも思うんです。

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コメント

  1. 如月青 より:

    私はどちらも好きでどちらもやってます。
    合唱と独唱の差って結局は団体競技と個人競技の違いとしか言えないような気がします。
    どちらも一流のプロなら声もテクニックも質的には差がない。バイオリンでソロ向きとオーケストラ向きは、多少難があっても華やかか素直に上手かの差だと言いますが、それと同じかな、と。
    ただ、ソロでは経験できないのが、音域のキツさと音程の難しさが反比例する、ということでしょうか。男性合唱や女性合唱の中声部って、低めの中音域で奇っ怪な音の並びが延々続くのを、同じパートで声合わせて、他のパート聞いて、指揮者見て、だから華やかなことが好きな人にはつらいようです。
    ただ、これが楽しめる人は音楽センスがある、ということなので、指揮者や作曲家はこのパートの出身が多いようです。

  2. すとん より:

    如月青さん
    >だから華やかなことが好きな人にはつらいようです。
     そうかも…。私なら、たぶんそういう箇所は、ひたすら無心になって、通り過ぎるのを待ってしまうかもしれません。ピャーって歌える箇所に全力を注ぐだろうし(笑)。
     結局、如月さんがおっしゃるように、団体競技と個人競技の違いの側面は、かなり強いと思います。で、どちらもできるのが理想だし、その方が色々楽しめるわけだけれど、なかなかそういかない、不器用な生き方しかできない私のような人もいるわけです。
     私の場合は、おそらく、自意識過剰なんだろうなあって思うわけです。

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