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「劇場版プラシド・ドミンゴ」を見てきた

 正式タイトルは「劇場版プラシド・ドミンゴ~アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭2020~」です。ドミンゴがコロナ禍の2020年8月に、イタリアのヴェローナのサッカー場で行った、スタジアム型のコンサートを映画化したわけです。1万人入る会場に、わずか1000人のお客さんを入れての、まさに“幻のコンサート”を映画にしたわけです。まあ、映画化する事で、本来の1万人分の収益…と言うか、コンサートのもとが取れるんでしょうね。
バリトン:プラシド・ドミンゴ
ソプラノ:サイオア・エルナンデス
指揮者:ジョルディ・ベルナセル
管弦楽:アレーナ・ディ・ヴェローナ管弦楽団
セットリストは以下の通り
1 ヴェルディ「シンフォニア」 歌劇『ジョヴァンナ・ダルコ』
2 ヴェルディ「分かったか?夜明けに 息子は断頭台に(二重唱)」 歌劇『イル・トロヴァトーレ』
3 ヴェルディ「穏やかな夜(エルナンデス)」 歌劇『イル・トロヴァトーレ』
4 ヴェルディ「前奏曲」 歌劇『群盗』
5 ヴェルディ「ジェルモンとヴィオレッタの二重唱」 歌劇『椿姫』
6 ジョルダーノ「間奏曲」 歌劇『フェドーラ』
7 ジョルダーノ「暴徒の手にかかり私の母は殺された(エルナンデス)」 歌劇『アンドレア・シェニエ』
8 ジョルダーノ「祖国の敵(ドミンゴ)」 歌劇『アンドレア・シェニエ』
9 セラーノ「彼が来ない…それが何だというの?(エルナンデス)」 サルスエラ『カーネーション』
10 ペネーリャ「ラファエル、呼んだ?(二重唱)」 歌劇『山猫』
11 ソロサバル「そんなことはあり得ない(ドミンゴ)」 歌劇『港の居酒屋』
 セットリストを見て分かる通り、ドミンゴのコンサートですが、ドミンゴよりも、ソプラノのエルナンデスの方がたくさん歌って、たくさん働いています。オーケストラの演奏も多くて、ドミンゴが疲れないように工夫されています。まあ、当時ドミンゴは79歳ですからね。元気に舞台に立って歌っているだけでも奇跡な存在です。まさに“リビング・レジェンド”っすね。
 往年の名テノールであったドミンゴですが、バリトンに転向して10年近くたった現在、すっかりバリトン歌手になってしまい、今回のセットリストでも、ドミンゴが歌ったのはすべてバリトンのアリアでした。テノール時代から歌っていた「そんなことはあり得ない」は移調してバリトン音域に変更されていました。
 まあ、もはやドミンゴにテノールを求めるのは野暮というものなのでしょうね。テノールのドミンゴを見たければ、山のように発売されている過去の動画で見ろって話なのだと思います。
 それにしても、バリトンのアリアを歌っていても、声色はテノール時代と同様なドミンゴの歌唱です。そういう意味では、ドミンゴファンには(高音が無いので)物足りなく、バリトンファンには(声に深みが無いので)物足りないという、音楽的には全く物足りないコンサートなのだけれど、ドミンゴのお達者な姿がたっぷりと見れて感動するという内容になっています。
 それにしても本当にすごいです。声も歌唱も、ほぼ80歳とは思えないくらいにしっかりしています。孫娘のようなエルナンデスとの二重唱も全然負けてませんからね。
 とにかく、このコンサートは、ドミンゴの“今”を楽しむコンサートだなって思いました。年齢もそうだけれど、例のセクハラ事件もあって、もはやオペラに出演する事は無いだろうと予想されるドミンゴだけれど、こうやってコンサートでお元気な姿と美声を披露してもらえるわけですから、これ以上を望んではいけないのではないかと思ってしまいました。
 ありがたや、ありがたや。

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