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大学オペラを2日連続で見てきた

 芸術の秋ですね。標題のとおり、大学オペラを2日連続で見てきました。
 まず最初は、東京芸術大学の奏楽堂で上演された、モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」です。こちらは「藝大オペラ」という事で、出演者の方々の経歴は何も書かれていなくて分からないのですが、おそらくソリストは全員、芸大の大学院のオペラ専攻の学生さんたちではないかと思われます。ちなみに合唱は学部の3年生です。
 今回、チケットを購入するのが遅れ、私がゲットした座席は、正面席だけれど、かなり舞台から遠い座席でした。どれくらい遠いのかと言うと、歌手の動きは分かるけれど、顔は目鼻が付いている程度しか分からないほどの遠さです。オペラグラスを持ち込めばよかった…と後悔したほどでした。ですので、オペラも全体はよく見えましたが、細かな演技とかは、まるで見えない…と言った感じです。
指揮:佐藤 宏充
演出:今井 伸昭
フィオルディリージ:山原 さくら(ソプラノ)
ドラベッラ:上久保 沙耶(ソプラノ)
フェッランド:岸野 裕貴(テノール)
グリエルモ:外崎 広弥(バリトン)
デスピーナ:髙橋 慶(ソプラノ)
ドン・アルフォンソ:後藤 駿也(バリトン)
 まず、特筆すべきは、演出の素晴らしさです。広い奏楽堂の舞台を上手に狭く使ってました。モーツァルトのオペラって、舞台が広くない方が良いと、私は常々思っていますが、こんなふうに狭く使うと、本当に良いですね。さらに、この狭い舞台を、手前と奥で使い分けていて、その分、場面転換も素早くて、良かったと思います。この演出は、十分、お金の取れる演出だと思いました。
 歌手の皆さんは、芸大で優秀な成績を修めている方々ですから、悪いはずはないのですが、残念な事に、今回、私はかなり後ろに座ってしまったために、色々と分かってしまいました。
 何が分かったのかと言うと、3人のソプラノさんたちが、極めて素晴らしい歌手である事です。とにかく、歌が上手いだけでなく、発声が実に見事なのです。それに若くて、たぶん美しい(遠目なのでよく分からないのよ)。なので、この三人と共演している方々が見劣りしてしまうのですよ。具体的に言えば、男性歌手たちです。たぶん、この人たちも一人ひとりで見れば、優秀な歌手なのでしょうが、この女性陣と共演すると、あれこれ不足が見えちゃうんですね。とにかく、モーツァルトオペラなのに、アンサンブルオペラなのに、バランスが悪いんですよ。いやあ、残念。
 あと、残念と言えば、合唱がパワフル過ぎたのが残念かも。なんか、モーツァルトと言うよりも、ワーグナーっぽい力強さがあってね。全然、シャレオツじゃなかったのが残念です。ま、これは悪いというよりも、私の趣味に合わなかった…って事なんですがね。一人ひとりが歌えるんだから、合唱の人数は1/3程度で十分だよ。
 翌日は、昭和音楽大学のテアトロ・ジーリオ・ショウワで、モーツァルトの「フィガロの結婚」を見てきました。こちらは、最前列のやや右側の、とっても良い座席で見させていただきました。
指揮:ニコラ・パスコフスキ
演出:マルコ・ガンディーニ
アルマヴィーヴァ伯爵:岩美 陽大(バリトン)
伯爵夫人:肖 昕怡(ソプラノ)
スザンナ:木村 有希(ソプラノ)
フィガロ:田村 洋貴(バリトン)
ケルビーノ:遠藤 美紗子(メゾソプラノ)
マルチェリーナ:下倉 結衣(メゾソプラノ)
バルトロ:王 弘宇(バス)
バジーリオ:佐佐木 雄一郎(テノール)
ドン・クルツィオ:高畑 達豊(テノール)
バルバリーナ:垣生 奈々保(ソプラノ)
アントーニオ:菅生 悠太(バリトン)
 こちらの出演者は多岐に渡り、昭和音大の大学院生もいれば、すでにプロとして活躍されている卒業生や交流している中国の上海音楽学院の生徒さんもいます。私が見なかった日には、韓国の芸術総合学校の生徒さんが出演していたようで、色々なバックボーンを持った人たちが共演していました。ちなみに、こちらの合唱は学部の四年生を中心に、その他の学年の方々も参加しているようです。
 フィガロの結婚って、普通に上演されているバージョンでは、あっちこっちのアリアやレチタティーヴォがカットされているのが普通なのです。でも、今回のオペラでは、勉強のための上演といった側面があるためか、ほぼほぼカットなしでした。だから…正直、退屈です。いやあ、演じる方はレチタティーヴォがあんなに長いと大変なのは分かるけれど、見ている方は、さすがにイヤになります。何度も何度も睡魔に襲われました。
 まあ、普段は聞けない、マルチェリーナやバジリオのアリアを聞けたのは収穫だったけれど、聞いてみれば、別になくてもいいかなって程度の脇役アリアでした。でも、歌うには大変な難曲だよなあ…。苦労の跡が感じられました。
 指揮者さんが外国の方で、おまけにすっごい大柄な人だったので、脇から上がオケピの上にはみ出していました。振り回す腕は丸見えだし、スキンヘッドはピカピカ光っているし…。序曲の間は、指揮者さんが気になって気になって、これはオペラどころの騒ぎじゃないなあ…と諦めていたのですが、いざオペラが始まったら、指揮者さんは視界の外だったので、全然気になりませんでした。でも、指揮者のすぐ後ろの席だったら、すごく気になったでしょうね。幕間の時にオケピを覗いたら、指揮台が何段にも積み重ねてありました。あれ、普段は背の低い日本人指揮者のためにあんな感じで雪舟しているんだろうと思いましたが、大柄な外国人指揮者が振る日は、あれだけの指揮台は取り外しちゃえばいいのに…と思いました。とにかく、指揮者は客席から見えないようにしないと…ねえ。
 こちらも女性歌手の皆さんが素晴らしかったです。特に、伯爵夫人を演じた上海のソプラノさんは、実に素晴らしかったです。
 素晴らしいのに残念だったのは、伯爵役のバリトンさんでした。歌唱は素晴らしいし、演技も文句ないし、イケメンなんだけれど…童顔なんですよ。なので、どうしても、伯爵が小僧にしか見えないんです。容姿だけなら、むしろケルビーノをやった方がお似合いなくらいに、小僧なんです。すごく残念でした。あれだけの高身長でイケメンで若々しいなら、テノールだったら引く手数多だろうなあって思っちゃいました。でも、バリトンなんだよね。テノールならば童顔は、むしろ長所だけれど、バリトンだと演じる役の幅が狭まるよね。あれでは、これからが心配です。才能があるだけに勿体ないですよ。もっと老けメイクを頑張って、イケメンな老け顔にしないとダメだよなあ…って、強く思った次第です。歌手の皆さんは、自分でメイクをするのが普通のようですが、音大では舞台メイクの方法は教えないのかしら? あるいはいっそ、ハイバリトンのようなので、テノールに転向してみるのも、いいかもね(って無責任な発言でごめん。でもテノールなら成功しそうだよね)。
 あと、演出が昭和でした。最近のフィガロの結婚って、かなり演劇的で緻密で細かな演出が流行りじゃないですか? ところがこちらの演出は、私が若い時に見たような、いかにも昭和な感じのする(ごめんなさい)雑な演出でした。さすがに、これはナシだよなあって思いました。学生たちの勉強のためにするなら、そこはきっちりと今どきの演出にした方が、勉強になると思うんだけれどなあ。
 あと、こちらも合唱がパワフルでした。歌う側からすれば、一曲入魂なんだろうから仕方ないんだけれど…ね。
 今年の秋の大学オペラは、この2つしか見られなかったのですが、他の音楽大学でも興味深いオペラ公演がやられているんですよね。ああ、私に自由な時間がもっとあれば、関東地方…と言わず、日本中の音大をはしごしまくって、大学オペラを制覇してやるんだけれどなあ…。ああ、残念。
 大学オペラって、衣装や舞台装置がしっかりしているし、出演もみな上手だし、若くてピチピチしているし、何と言ってもチケット代が安価だし、良い事づくしで私は大好きです。なんと言っても、これから世の中へ出ていこうとする有望な歌手を、いち早く見られる事は、オペラファンとして、うれしい事だしね。これからも頑張って上演し続けていってほしいと思います。

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