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2020声楽発表会 その4 反省

 数日経って、冷静になってから、当日の録音をじっくりと聞き直してみました。
 今回、何がダメだったのかと言えば“発声”がダメでした。まるで、キング先生のところで勉強していた頃のような声で歌っているのです。ううむ、呪縛だな。
 私の発声の基礎基本は、なんだかんだ言っても、キング先生のところで学んだ“キング式発声”なんだろうなあって思いました。キング先生のところを辞めて、Y先生のところに移って、数年掛けて、キング式発声を忘れて、普通の声楽発声に直してきたのですが、それでもやはり根っこのところには、最初に学んだ発声方法があって、今回のように調子が悪いと、その最初の姿が現れてしまう…という事が起こったようです。
 キング式発声方法は、ちょっと世間一般の普通と思われている声楽発声とは違います。ただ、違うだけであって、必ずしも間違っているとは言い切れないかもしれません。突き詰めて学べば、それはそれでひとつの発声方法なんだろうと思います。
 ただ、私は突き詰めて学ぶ前に、ノドが壊れかけてしまったために、中途半端な形でしか身についていません。途中で先生に追い出されてしまったって事もありますが、たとえそれがなくて、ずっと門下に残っていたとしても、おそらく私では、キング式の発声方法を学び終える事はできなかっただろうと思ってます。それくらい、私には合わない発声方法だと思ってます。
 でも、真剣に学んだんだよ。ある意味、今よりも真面目に真剣に愚直に学んだんですよ。ノドが壊れる直前まで、自分を追い込んで、前向きに取り組んだんですよ。そんなふうに最初に学んだ発声方法だから、本当にカラダに染み込んでいるんです。
 で、Y先生について、キング式の特徴の一つ一つを潰して、普通の発声方法に変えていったのだけれど、ついうっかりすると、慣れ親しんだキング式の発声になってしまうわけです。
 キング式の発声方法は、ノド声ではないのだけれど、ノド声とは紙一重な感じで、かなりノドを酷使する発声方法です。腹筋も鼻腔も積極的には使いません。メインはノドから口腔にかけての空間で、ここを十二分に利用して発声します。マスターすればカツーンとしたヌケの良い声になりますが、私はそこまでの習得はできず、いつもいつもノド声でしか歌えていませんでした。なので、私のそもそもの発声は、未熟なキング式発声方法…つまり、ほぼほぼノド声歌唱なのです。
 寝不足でカラダがほとんど使えなかった私は、そんなキング式発声方法由来の“ほぼほぼノド声歌唱”に先祖返りしてしまったわけです。
 この“ほぼほぼノド声歌唱”の欠点は、まず音色が悪い事です。聞いていて、聞き苦しい声になってしまう事です。でも、それは歌っている本人には分からないのです。むしろ歌っている本人は「いい声で歌えているなあ~」と思っているのだけれど、後から録音などを聞くと、ほんと、泣きたくなるようなひどい声になっているんです。シクシク。
 さらに“ほぼほぼノド声歌唱”は、音程が全体的に下がり気味になり、聞いていて気持ち悪いのです。さらに決定的な欠点として、高音を出そうとすると、声帯が固くなって全く声が出なくなります。
 今回の発表会での歌唱が、まさにそんな感じだし、これは実に懐かしい感覚でもあったわけです。
 Y先生のところで声楽を学びなおして、約8年経ちますが、この8年間は一体何だったんだという思いです。Y先生から学んだ事が全くできなくなり、昔々に習った、違う系列の発声方法で歌ってしまうなんて、ほんと、Y先生に申し訳ないやら、自分が情けないやら…腹かっさばいて死んでお詫びしたいくらいです(ってのは、さすがに言い過ぎだね、ごめんなさい)。
 最近の私は、ちょっと調子に乗っていたんだろうと思います。高音Aが常用音域の音になり、手順さえ正しく踏めば、高音Bですら歌えてしまうようになったわけで、なんか天狗になっていたんだろうと思います。
 音楽の神様は、そこまで甘くはないわけで「アンさん、そんな有頂天になっていると、えらい目にあいますよ」って警告してくれたんだろうなあって思います。
 たかが寝不足ぐらいで、たかが体調不良なぐらいで歌えなくなるようでは、まだまだ未熟者だと思い知らされたわけです。もっともっと練習して、体調が悪いくらいではびくともしないくらいに、自動運転的に、いつでも、響きのある声で、脱力した豊かな声で、のびのびとした高音を駆使した歌が歌えるように、自分を鍛えていかないといけないんだなあと思い知ったわけです。
 だいたい「手順さえ正しく踏めば」という条件が付いている時点で、ダメなんだと思いました。手順なんて、無意識のうちに正しく踏めないとダメで、それ以前に、ノド声で歌ってしまう事自体もダメダメです。
 そのあたりが無意識で解決されているくらいに、練習をして、正しい発声を身に着けないとダメなんだと、今回の失敗から私は学んだわけです。
 やるべき事は「いつでもしっかりと腹筋を使って、支えた息と声で歌っていく事」と「声帯を自由に引っ張って楽に歌う事」です。前者はY先生から常に注意されている事です。注意を受けないくらいに自然にできるようにしないといけません。後者はまだまだ難しいです。ノドの脱力はもちろん、声帯周りのノドの筋肉をもっと自由に意思を以て動かせるようにしていく必要があります。
 でも、これらをきちんと身につけない限り、また同じような目に合うかもしれないのです。今回の件から、これらをしっかりと学んで、身につけて、自分のモノにしないといけません。

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 あ、最後に、発表会で歌った二重唱、ドニゼッティの「Verranno a te sull’aure/そよ風にのって」をアップします。「ランメルモールのルチア」の第1幕のフィナーレで歌われる名曲なんですよ。

 聞き苦しくてごめんなさい。でも気持ちは“全身全霊全力”で歌っているのですが、全然カラダが付いてきてないですね。ああ、情けない。

コメント

  1. カント より:

    すとんさん、お久しぶりです。
    去年もアップされたのを聴かせていただいて、書こうかなどうしようかな?と迷ったんですが、今年も変わってないので、大きなお世話でしょうが敢えて書かせてもらいました。
    録音されたものを聴かれて自分でもお分かりだろうし先生からも指摘があってると思いますが、すとんさんのような歌い方、フラットシンギングというんですよ。伴奏やデユエットの相手方より♭で歌ってるでしょう。ピッチが低いですよね。
    原因は喉声にあると思います。全身全霊全力で歌うのがいけないんですよ。それとチエンジしないでそのまま高い音に上がるからますます音程が下がり完全に喉に落ちてますよね。
    以前書いたように、ファルセットを混ぜる練習をされたらどうでしょうか。
    いらぬお世話をしてしまいました。すみません。

  2. すとん より:

    カントさん、お久しぶりです。
     そう、フラットシンギング…、よくよく理解しています。ご指摘、感謝です。
     それこそ、キング先生のところで学んだ歌い方がまさにそれでした。で、そこからの脱却がY先生とのレッスンなんですよ。
    >原因は喉声にあると思います。全身全霊全力で歌うのがいけないんですよ。
     ノド声がいけない事は、少し前から身に沁みて分かるようになりました。全身全霊全力で歌うのがいけない事は、割と最近気づきました。ただ、理解したり気づいたりしても、そこから逃れることは容易ではないし、ちょっと気を抜けば、あっという間に戻ってしまうという事です。
     ほんと、意識やらメソッドやら、あれやこれやを変えていかないといけないわけですが、そう簡単にはできません。今年こそは、もっと良い音程で良い歌い方ができる…と思っていたのですが、結果はダメでした、残念です。
    >以前書いたように、ファルセットを混ぜる練習をされたらどうでしょうか。
     単なるダメ出しだけではなく、建設的なご意見感謝します。今後もよろしかったら、ご意見くださいますよう、お願いします。

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