この問題に関して、本来ならば「無理です」と答えるのが正しい答えだと思います。
その理由は、歌はあらゆる楽器の中で一番簡単(で一番難しい)楽器だからです。その一番簡単な楽器である歌も歌えないヤツに楽器の演奏なんて、無理に決まっているだろうというわけです。
これ、おそらく、日本以外の国では大正解なんだろうと思いますが、我が国日本では、そう簡単に断言できない現状があります。
と言うのも、日本には音痴な音楽家というのがたくさんいるからです。
今の若い世代はだいぶ改善されていますが、基本的に日本人は歌えない民族なんだろうと思ってます(特に男性)。別にこれは才能的にうんぬんではなく、幼少時から歌う体験が極めて少ないのが原因だろうと思います。
クラシック音楽にせよ、ポピュラー音楽にせよ、基本的には、あれらはヨーロッパの民族音楽であって、ヨーロッパ人たちの生活の中から生まれた音楽です。で、彼らの生活の基本にはキリスト教があるわけですが、残念ながら日本人の生活の基盤にはキリスト教がありません。そこが歌える人と歌えない人とを大きく分けていくのだろうと思います。
キリスト教では、皆さん、バンバン歌いますからね。老いも若きも男も女も、日曜日に教会に行けば、みんな大声でガンガン歌いまくるわけです。そういう文化にいるわけですから、みんな普通に歌えるわけです。簡単にハモっちゃうわけです。逆に言えば、歌えない人なんていないわけです。
でも日本は違うでしょ? 基本、歌わない文化だもの。幼少時にピアノ等の音楽英才教育を受けた人以外は、せいぜい幼稚園のお遊戯とか、学校の音楽の時間で歌うくらいです。ヨーロッパ人たちとは、そこのところが大きく違います。
外国人の先生の楽器のマスタークラスを見ていると、多くの先生が「まず歌ってごらん」と言います。歌わせてから楽器の演奏をさせるわけです。きちんと歌えなければ、まず歌を直していきます。そういう教え方なんですね。で、歌を直せば、楽器もうまく演奏できるようになるわけです。
でも、それを日本の生徒さんに向かってやると、たいてい失敗します。と言うのも、日本の生徒さんって上手に歌えないんですよ。マスタークラスの生徒さんって音大卒がほとんどですから、歌えない人なんていないはずですが、それでも歌は上手ではないのです。あんまり歌が下手なので、先生が諦めて、楽器の演奏をさせると、びっくりするくらいに上手だったりするわけです。つまり、日本人は、歌と楽器演奏が全然連動していないわけです。
歌えなくても楽器が演奏できるし、楽器が上手に演奏できたとしても、歌はからっきしだったりするんです。これって、実はかなり歪な事なのですが、日本ではごく普通の出来事だったりします。
なので「音痴に楽器は無理なのか?」に対しては「日本人なら、必ずしも無理とは言えません」となります。
でもね、歌はもちろん、多くの楽器では、奏者が音程を作って音楽を演奏するわけです。フルートだって、運指が正しくても、奏者がきちんと意識しなければ、音程は微妙な感じになりますが…歌えば音痴なのに、楽器の音程はバッチリしている日本人奏者って、外国人から見ると、奇妙な音楽家に見えるんでしょうね。
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