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チェット・ベイカーも目指すべき高嶺の一つ

 チェット・ベイカー(Chet Baker)と言う人をご存じですか…とジャズ関係者に言ったら、きっと殴られますね(汗)。それくらい、基本中の基と言うべきビッグネームです。特に名演として名高いのは「マイ・ファニー・ヴァレンタイン(My Funny Valentine)」です。

 チェット・ベイカーはジャズの歌手であり、トランペット奏者でもあります。つまり、歌と楽器の両方を巧みにやりとげる、マルチなミュージシャンなわけです。歌とトランペットの両方が得意と言うと、ルイ・アームストロングも思い浮かびます。

 ウィキペディアによれば、ジョアン・ジルベルトが、ベイカーの歌い方にインスパイアされた結果、誕生したのがボサノヴァなんだそうです。となると、ボサノヴァの父の父ってわけで、チェット・ベイカーはボサノヴァの祖父なのかもしれません。

 当然の話ですが、私はこんないい年になるまで、これほどに有名なジャズのビッグスターを知らずに生きてきました。お恥ずかしい。で、つい最近、ベイカーの代表曲「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を聞いて、やっと知って、そして驚いたわけです。

 これが彼の歌唱です。

 たしかに、ボサノヴァに通じる歌い方です。でも、ボサノヴァ歌唱よりも、ずっと憂いを含んでいて湿った歌です。そして、ある意味、クラシック声楽の対極にあるような歌です。迫力はないけれど、実に味わい深い歌です。ポピュラー音楽って、こういうふう歌うものだよって、なんか言われているような気がします。

 さて、これだけ味わい深く歌うベイカーですが、彼のトランペットの演奏はどうかと言うと、同じ「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を歌ではなく、トランペットで演奏しているビデオがありました。

 これが彼のトランペットです。

 実に味わい深い。そして、歌かトランペットかと言う、使用楽器の違いこそあれ、同じ人間が同じように音楽をやっているんだと言う事がよく分かります。これがよく言われる「歌うように楽器を演奏する」の見本なんだと、気がつきました。そうです、あの歌が歌えるから、この演奏があるわけなんです。この演奏があるから、あんなふうに歌えるんです。こうなると、玉子と鶏のようなものです。大切なのは、歌とかトランペットとかではなく、彼の願い、つまり「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」という曲は、こんな風にやるのが一番カッコいいんだよ、彼の自信とそこからわき出る、やむにやまれない表現欲を感じます。

 つまり、彼は音楽をやっているのであって、歌とかトランペットを単に歌ったり演奏していたりしていたわけではないのです。

 ああ、かっこいいなあ、チェット・ベイカー。

コメント

  1. はっチャン より:

    チェットは、ドラックが元でトラブルに巻き込まれて前歯総て無くしています。でも後年ディジー・ガレスピーのおかげで再復帰したもののドイツで謎の死を遂げました。凄い生き様と超破滅型ジャズ・マンです。でもいいペットの音を出してます。
    「君とチェット・ベイカーと僕の3人で、「ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー」を永遠に歌い続ける想像上のヴォーカル・トリオを結成しよう」とジョアン・ジルベルトが、アストラッド・ジルベルトに言った口説き文句です。受け売りですが・・・[E:coldsweats01]。

  2. すとん より:

    >はっチャンさん

    >「君とチェット・ベイカーと僕の3人で、「ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー」を永遠に歌い続ける想像上のヴォーカル・トリオを結成しよう」

     ちょっと想像してみました。ううむ、あの声できれいにハモれるなら(たぶん無理)、かなりいい感じになるなあ。それに、ああいう声のコーラスグループはなかなかいないので、実現できたら、おもしろかったと思いますよ。

     しかし、トランペッターなのに、前歯を全部なくしちゃったの? ボコボコに殴られたのかしら? きっと、あれだけステキな音楽を奏でる人だから、人生はグダグダだったんでしょうね。もしそうでなければ、世界の英雄になれているはずだもの。

  3. アリサ より:

    日本人だと、フリューゲルのTOKUもヴォーカルしますね。

    ライブで「じゃあ、歌いますう」と言って、さりげなく、「Fly me to the moon」を歌いました。
    MCは、「こんばんはあ〜」とけだるい感じですが、歌はかっこよかったです。

    James Moody(サックス&フルート)も、スキャットとかしてました。
    けっこう癒し系(かわいい系?)な声。

    歌える人っていいですね。

  4. すとん より:

    >アリサさん

     フリューゲルホルン(なんですか、私はトランペットだと思ってました)のTOKU氏は、以前はよくテレビに出てましたから、ちょっと分かります。

     実は、チェット・ベイカーを始めて聞いたときは「あれ、これはTOKUじゃないの?」って思ったくらいです。あんまり似てないかもしれないけれど、私の中では一緒なんです(笑)。

     James Moodyは検索したら、私のiPODに入ってました。この人も、歌とサックスの感じが似ているね。そう言えば、ルイ・アームストロングも音域はだいぶ違うけれど、やっぱり歌とペットの感じが似ているよね。やっぱり歌う人が楽器をやると(楽器をやる人が歌うと…と書くべきかな?)、似た感じになるみたいです。

     おもしろいですね。

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