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これからフルートを買おうと思っている人へのアドバイス その2

 前回の続きです。

情報は集めても、情報に溺れてはいけない

 ウィンドウショッピングは楽しいものです。買い物の前にカタログを見ながらの品定めはウキウキワクワクしますね。その気持ちは大切にしてください。でも、情報だけでフルートを選んではいけません。

 確かにメーカーによる癖とか傾向はあります。それらを知っておくことは無駄ではないでしょう。私の独断と偏見と思い込みを無責任に書いてみると…

 例えば、サンキョウは……私の感じでは、普通の人がイメージするフルートの音、“小鳥の歌声”のような音のイメージのメーカーですね。さすが老舗って感じだと思います。

 ミヤザワのフルートは軽くて明るい音色のイメージを私は持っています。若いソプラノ歌手の歌声にどこか通じるようなみずみずしい印象があります。

 ヤマハは入門者向けでは敵なしのメーカーでしょう。安心安全、日本の良心って感じ? そうそう、吹奏楽のフルートってイメージも強いです。全国に販売店があるので、どの地方に住んでいても、リペアの問題が比較的簡単にクリアできるところが心強いですね。ちなみに音色は落ち着いた感じです。

 何と言っても、ムラマツはフルート界の大ブランド。プロ奏者や音大生はまずこのメーカー品でしょう。ゴールドフルートを購入するなら、真っ先に検討すべきメーカーだと思いますよ。とにかく、ここのフルートは、現代フルートの一つの基準だと思います。

 パールは実に吹きやすいし、なんと言ってもコストパフォーマンスが良い。音色もかなり優しい感じで、いかにも木管楽器って音で鳴ります。

 アルタスは、何と言ってもすとんさんのお気に入りです(笑)。

 その他工房系のメーカーは丁寧な仕事っぷりがウリです。外国製は大音量がウリだったり、繊細な音色が売りだったり、様々です。

 てなわけ(笑)ですが、その情報がどこから出ているか、知っておく必要があります。

 楽器屋さんなら、売りたいメーカーというのが必ずありますので、まずそのメーカーをプッシュしてくるでしょう(商売の常識です)。

 フルートの先生も、メーカーとか楽器販売店と、決して無縁な存在ではありません。分かった上で(言葉は悪いですが)利用するならともかく、そうでないなら、あなたの純粋無垢な気持ちが結果として裏切られることになるかもしれませんよ。

 また、趣味でフルートを吹く人に尋ねると、十中八九、自分の愛機のメーカーを薦めますよ。例えば私が「どこのフルートメーカーを買ったらいいの」と尋ねられれば、即座に「アルタスしかない!」と断言します。

 だって私は、アルタスが世界最高のフルートメーカーの一つだと信じてますもの。だいたいアルタスのフルートは、概ね音色が美しいし、造りも丁寧で、ピッチも正確。特に総銀フルートを検討しているなら、絶対にリストからハズしちゃダメだと信じてます。ここは、とりわけ総銀フルートに力を入れてますので、総銀フルートの購入を考えているなら、まずはここから検討するべきだと思ってます。だってね、何はともあれ、何しろ、私のアゲハを作ってくれたメーカー、いわば、アゲハの実家ですよ。世界一のフルートメーカーに決まっているじゃないの!

 …ま、そんなもんです。

 それとプロが使っているフルートに悪いものはありませんので、あの憧れのプロと同じ楽器をセレクトというのは、あながち間違っているわけではありません。しかし、プロの使用する楽器は、バカでかい音量のモデルだし、何より高価。それに、重いし、吹きこなすのにはパワーや肺活量が必要なものがほとんど。そこんところを検討に入れておかないと、せっかく買った高価な楽器も死蔵されるだけになってしまいます。

 そういうバイアスは排除しなければ、冷静に買い物はできません。そのためには、どうすれば良いのか? 情報は情報として頭の片隅に入れておいて、まずは実際にお店に出かけて、公平な態度と気持ちで試奏をしてみることです。情報よりも実物を優先。そして、お気に入りのフルートが見つかれば、それを買えばいいのです。簡単な話です。くれぐれもインターネット通販でフルート買っちゃダメよ。

中国製のフルートについて、どう考えるべきか

 とにかく安いですね。同じグレード(のよう)なら、国産の1/3程度の値段でしょうか? とにかく安さで目がくらみます。

 中国製ということで、イメージが悪いですが、私が思うに、市場というものは正直なものですから、楽器としての品質は値段相当だと思います。過大な期待をしないで購入するなら問題はないと思います。

 むしろ中国製の問題はどこでリペアをするかじゃないでしょうか? とにかく“売りっぱなし”が中国製の特徴だと思います。

 中国製を買うなら、まずそのお店できちんとメンテをしてもらえるかを確認しましょう。「メーカーに送ります」なんて返事が来たら(チャイナ娘がそう)、その店で買っちゃダメですよ。「ウチのリペアマンが面倒みますよ」というお店なら検討してもいいんじゃないかな? リペアの問題さえクリアできれは、案外、お買い得品も見つけられるかもしれませんよ。

 その際はリペアの費用も聞いた方がいいですね。だってリペアをするよりも新品を買った方が安いなら(まさにチャイナ娘はそう)、リペアなんかしないで、次のフルートに買い換えた方がいいからね。

 それと台湾は中国ではないよ。よく台湾と中国をゴッチャにする人がいるけれど、工業製品の品質という点では、台湾と中国では雲泥の差があるからね。だいたい、台湾製品は、中国ほど人件費も安くないので、驚くほど安くはないし、技術レベルも比べるのが失礼なほど違う(もちろん、台湾の方がきちんとしている)。

 その他の外国製のフルートも基本的には同様。リペアさえしてもらえるなら(大抵はOKのはず)、あとはあなたの好きにすればいいと思う。

 ま、とにかく、惚れたフルートが中国製で、どうしても欲しければ買えばいいし、そうでないなら、無難に国内産のフルートをお薦めします。

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コメント

  1. くろねこ より:

    お店に行くと、色々なメーカーの楽器がたくさんあって目移りしますよね。
    ネットで「これは?」と思って行っても、実際に吹いてみると想像と違ったり・・・
    百聞は一見にしかずだなぁ~と思いました。
    すとんさんも沢山試奏されましたね(^^)
    私も結構吹きましたが、パールの楽器は未体験。
    先生が使っていて、とても綺麗な音がするので、機会があったら吹いてみたいです♪

  2. すとん より:

    >くろねこさん

     所詮、情報は情報に過ぎないのです。特にネットの情報は、私が書いていることも含めて、あくまで“個人の感想”なんです。ネットを読んでいる方で、時折、その点を忘れてしまっている方がいるので、そういう方は要注意ですよ。情報というものを鵜呑みにしてはいけません。

     でもホント、くろねこさんもおっしゃるとおり、フルートって、百聞は一見にしかずですよね。見ると吹くとでは大違いです。実際に手にとってから品定めをする必要があると思ってます。

     パールはいいですよ。柔らかい音がお好きな方には、結構たまらないものがありますね。私的には、アルタスの次にお薦めのメーカーです(笑)。

  3. くろねこ より:

    このフルートを使えば誰でもランパルやガロワと同じ音が出せる!
    というフルートがあったら・・・それがネット情報であっても飛びつきたいです(^^)
    どこかにないかな、そういうフルート。。。

  4. すとん より:

    >くろねこさん

     だれでも、ランパルやガロワと同じ音…技術的には可能ですね。サンプリングという手法を使えばいいのです。つまりデジタルシンセサイザーね。

     誰かがランパルやガロワのところに行って、生音を録音させてもらって、それをシンセサイザーにぶち込む。で、そのシンセサイザーをフルート状のコントローラーで演奏するわけ。これで、誰でもランパルやガロワと同じ音で演奏できる…けど、私はそんなの欲しくないなあ…。

     デジタルでなく、アナログで…というなら、同じ楽器を使うという手があるけどね。特にランパルはヘインズから彼が使ったフルートの復刻版(つまりレプリカ)が発売されているから、それを買うという手がある。ガロワは若い時のゴールドフルートも現在の木管フルートも両方とも特注品だそうだから、彼の方はあきらめるしかないかな。

     じゃあ、ランバルのレプリカを使えば、ランバルと同じ音が出るかというと…どうですか? 私は出ない方に100カノッサかけてもいいと思ってます。フルートなんて、そんなものでしょ。

  5. くろねこ より:

    あらら。真面目に受け取られてしまった。。。
    ごめんなさい。ちょっとした冗談のつもりだったんですよ。
    さら~っと軽く流していただきたかったんですが・・・(^^;

    でも、ちょっと真面目にお話するなら。
    そんなアナログ楽器が存在しないのは100も承知。
    デジタルはもともと考えてもいません。
    だって、自分が吹いて楽しみたいんですから・・・
    そして同じ楽器を使っても同じ音が出ない事もこれまた100も承知ですよん。
    判っているけど、そう思う事(ないものねだりですね)ってあるんだなぁ。

    ランパルの音はランパルが吹くから、
    ガロワの音はガロワが吹くからあの音なワケで。。。
    同じ楽器を使ったって、私が吹けば私の音になるのでしょう。
    だから同じ楽器が欲しいということでも無いのです。

    だから私がどらえもんのポケットから出したい笛とは・・・
    歌口のカットや管体の作りで誰が吹いても彼らの音を再現するべく作ってあるフルートという事ですね。
    もしそういうフルートがあったら・・・才能のない初心者が普通に吹いてどこまで彼らに迫る音が出せるのか、試しに吹いてみたいという事なのです。
    ムラマツを吹けばムラマツトーン、アルタスを吹けばアルタストーンという感じで、吹いた音が笛の個性で99%決まっちゃうような私みたいな凡人は、もしそういうフルートがあったら限りなく彼らに近い音が出せると思うのだけど。。。
    ま、本当にあったとして、実際に吹いてみてその笛が気に入るかどうか?というのはまた別の問題ですが・・・(^^;

    文章では上手く表現できないのですが、要は「そんなモンこの世には無い」ってのを承知で、ちょっと言ってみたかっただけって事です。
    気にしないで下さい(笑)

  6. すとん より:

    >くろねこさん

     軽いジョークと思ったので、ジョークにジョークでノッかっただけですから、こちらこそ失礼。

     実はデジタルフルートとしては欲しくない私ですが、単純にデジタル音源としては、あったらおもしろいなあと思ってます。現在のmidi音源のフルート音源って(メーカーごとに多少違いはありますが)あんまりいいなあって思いません。一流奏者の生音を音源にして入れたら、多少は違うかな…っ思っただけです。

     midi音源は楽器によって音色の出来不出来が激しいくてね…。おそらく技術者の楽器による思い入れの多寡が音源としての完成度の違いに出るのだと思いますが…フルートは愛されていない楽器だと思ってます。

     あとそれに、有名奏者と同じ音色で吹きたいという発想がおもしろいなあと思った事も事実。フルート系ブログを読んでいると、その手の話題ってたまにありますよね。楽器の人ってそうなんだと、思うわけです。

     私は、一流奏者の素晴らしい音色を参考にして、そのいいところを盗みたいという気持ちは、もちろんあります。リファレンスとして、一つの理想形として、めざしてゆきたい音色というのはありますが、だからと言って、彼らと全く同じ音色で演奏したいとは思いません。それよりもむしろ、私は自分の音を極めてゆきたいと思う人です。

     それはおそらく、私が歌も歌う人だからでしょうね。なにしろ声は自前でどうにもならないものですから。憧れの歌手の声色をまねたら…歌の世界ではノドを壊してお終いです。憧れは憧れ、自分は自分で行くのが大前提の歌の世界から見ると、あの名奏者と同じ音を追求…って発想自体が「楽器だなあ…」っ思うわけで、新鮮に思いました。

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