どんな人であれ、何かしらの癖というか特徴というのが、あります。本当に昔の人は良い事を言ったと思います。
無くて七癖。
そう、どんな人でも七つくらいは癖があるものです。日常生活における“癖”はともかく、歌う時の“癖”は、クラシック系の歌を歌うなら、無いに越した事はありません。ちなみにポピュラー系の人は、その癖をいかに魅力的にしてゆくかを考えるので、ちょっとクラシック系とは方向が違いますなあ…。
さて、みなさんはどんな癖がありますか? 今回は私の“癖”を書いてみたいと思います。
まずは喉声。大抵の人が真っ先に言われるのが、この「喉声」ですか? 日本人のほとんどは、歌うときの声が喉声だと言う人もいます。喉声とは(私の理解では)喉にむやみやたらと力の入っている人で、絞り出すように声を出す人のことです。こういう人は歌うと、適度な疲労感と達成感があります。自分の中で声がより良く響くそうです。高い声を出そうとか、張りのある声を出そうとかすると、喉声になる方が多いそうです。ドイツ語では「肉団子声」とも言うそうです。
私が一番最初に声楽を習った時に、やはり「喉声」と言われました。で、何をしたかと言うと、スプーンを口の中に突っ込まれました(驚)。裏向きにしたスプーンを突っ込まれて、舌根を抑えられたままの態勢で歌うことを強要されました。ま、舌が喉を塞いでいたんでしょうね。いわゆる肉団子状態だったのかもしれません。
なんか中途半端なままで、その先生から離れてしまったので、そのやり方で結果が出ていたかは、ワタシ的には定かではないのですが、まあ、そんな感じです。
次によくある声楽発声の癖と言えば…「怒鳴り声!」または「叫び声!」 比較的男性に多い“悪い癖”だと思います。私もご多分にもれず、そのクチだったりします(嘆)。フォルテとか、高音とか、感情の高まりとか、なんかそういう箇所に来ると無駄に力が入ってしまって、当人はそのつもりではないのですが、結果、怒鳴り声になってしまいます。そしてキング先生に「そっちの方向に行くと、絶対にできないんだけどなあ…」と言われてしまいます。
声が薄べったいというのも、よく聞く話です。若い女性に特に多いような気がしますが、あれも一種の可愛らしさの表現なんでしょうが、クラシック系の歌には似合いません。と言うか、あの声ではうまくハモれません。かくいう私はオジサンですが、実は普段の声はかなり“薄べったい”人です。別に可愛らしさは狙っていませんが、薄べったい声で話す人です。ここからの脱出方法はただ一つ!「アッチョンブリケ」あるのみです。
音程も癖が出やすい分野ですね。ここによく書きますが、私は音程がずり下がるタイプ。これは体の中の音を聴きすぎるのが原因。逆に音程がうわずる人もいるそうですが、私も色々と考えてみたんですが「緊張しい」なんじゃないかなあ…。どんな人も緊張すると声ってうわずるものでしょう。歌う時に緊張するタイプの人は、きっと知らず知らずのうちに声がうわずってしまい制御不能に陥るのではないでしょうか? ずり下がり癖のある私の場合は、もう少し緊張して声がうわずると、ちょうどいいのでしょうが…、オジサンになると、心臓に毛が生えるみたいで…一向に緊張しなくなりますです。
歌いだしはいいけれど、すぐに声がダメになってしまうという癖と言うか悩みと言うか、そんな方も大勢いらっしゃますね。すぐに声が枯れてしまうとか、すぐに高音が出なくなってしまうとか。実は以前の私がそうでしたが、これって今思えば、単に喉声なんですよね。喉がすぐに疲れてしまうので、枯れたり届かなくなったりするわけ。で、その状況を常に根性で乗り越えていると、ハスキーボイスが獲得できるそうですが…。ちょっとそれは勘弁かな、私の場合。
声がすぐに裏返る!という人もいます。だから、高い音が不安でしょうがないと言いますね。そういう人は、いつ、どのタイミングで声が裏返るか、自分でも分からないので、本当に怖いのだそうです。私はそういうタイプではない(一応、健康で体調が良ければ、どこへどんな状況で突入すると声が裏返るか把握しているつもりです)ので、よく分からないけれど、いつ自分の声がひっくり返るか分からなかったら、確かに怖いねえ…。他人と一緒にカラオケにいけないよねえ…。でも、規模の大きな合唱団だったら大丈夫だから、歌うのをあきらめる必要は全くないと思うよ。
しかしそんな事言ってる私も、体調次第では、声が思わぬところで裏返ります。これは癖と言うよりも、調子が悪いという部類に入るかな…と思ってますが、裏返ることには変わりないですね。
私にとって一番注意しないといけない“癖”が「鼻声」。実はキング先生に言われるまで自覚がなかったのですが、確かに以前の私の声は「鼻声」だったと思います。鼻声ってのは、無駄に鼻にかかった声のこと。まるで風邪ッ引きのような声ですね。私も普段から鼻声ってわけじゃないのだけれど、高い声を出そうとすると、鼻声になっていたようです。いわゆる鼻腔共鳴を使おうと無意識にしていたのだろうけれど、その使い方が分からないものだから、へんな脇道に入っていたようです。
しかし鼻声って自覚、なかったですねえ…。先生に「試しに鼻をつまんで、アーって声を出してみてください」と言われて、全く声が出なかった時は唖然としました。鼻声の人は、鼻が塞がれると、声が全然出ないのよ。不思議でしょ。だから直し方も簡単で、鼻をつまんでも声が出ればいいわけ。鼻声ってのは、声が鼻を経由して出てくるものだから、鼻を経由しなければ問題ないわけだからね。
この鼻声って奴は、結構根が深くて、とりあえず直したつもりでも、発声の迷路に入って、試行錯誤すると大抵再発するんです。で、先生に注意される。注意されれば、2~3日で癖が取れるのだけれど、油断するとすぐに鼻声になる。無理に高音を出そうとすると、鼻に入る傾向が私の場合はあるから、無理でなく自然に高音を出せるようにしないとネ。
今日は「無くて七癖」ってことで、思いつくままに、私の声楽発声の癖を七つばかり列記してみました。列記してみると、私は悪い癖だらけなので、ちょっと落ち込みます。
みなさんは、どれくらい癖をお持ちでしょうか? たまには、落ち込まない程度に、自分の癖を見つめるのも、発声上達のためには、必要なことでしょうね。
癖が分かれば、対処もできると言うものです。がんばって参りましょう。むしろ問題なのは、うまく行かないけれど、どこがどうして悪いのか分からないって方ですからね。
コメント
私が一番初めに指摘されたのは、立ち方でした。クラシックバレエとか新体操のように重心が上の方へ行っていて、お腹をぎゅっと絞っているのでお腹の容積が狭かったのでした。その立ち方はバレエでよく言われるように「頭の上にひもが付いていて、そのひもを上へ引っ張り上げられているように立つ」という方法です。で、声楽の先生は「その頭に付いているひもをはさみで切ってください。」と。ストンと身体がゆるく落ちます。そう言われた時は声楽家は猫背なのかって思いましたが、ずっと練習していくうちにそういう意味じゃないとわかってきました。バレエの方が身体に無理をさせて美しく見せているのですね。声楽の立ち方は身体に負担のない、一番楽な姿勢だと思います。出来るようになってきた時にやっとパントマイムの先生がおっしゃっていた意味がわかってきました。こちらも肩の力を抜いてストンと楽に立ってくださいと言われました。なかなか意味がわからず、バレエの立ち方が一番きれいのだと思っていました。バレエは身体を見せる芸ですからね。向かう方向が違うのだと思います。
くせではないですが、私は普通の女性より地声が低く、小学生くらいから音楽の時間の歌の時に地声から裏声へどの音で変えるかを悩んでいました。声楽を習ったのは、そういう私の悩みについて相談できる人がほしかったことも理由の一つです。先生は「どこで裏声にするか、考えるより、できるだけ低い音までずっと裏声でいけるように練習した方がいいです。」と言われ、安心しました。世間には地声で歌うことをよしとし、裏声は卑怯みたいな風潮もありましたので、私はどうしたらいいのかさっぱりわからず困っていました。クラシックの声楽を習って悩みも解決、安定しましたのでよかったです!
To Ston
「無くて七癖」に関する記事を掲載しました。
http://blogs.yahoo.co.jp/matsuoatsuoki/13381118.html
お目通し頂ければ幸いです。
松尾篤興
>ticoさん
立ち方もなかなか難しいですね。「自然に楽に立てば良い」と私の先生もおっしゃいますが、なかなかどうしてうまくできません。如何に普段の姿勢が不自然で無駄に力の入った姿勢なのかということが身にしみます。「自然」とか「楽に」ができないというのは、本当はそれこそおかしい話ですね。
バレエの立ち姿も鍛え上げてしまえば、あれはあれで自然になってしまうのでしょうが(バレエをやっている人って、普段の姿勢がむやみに美しいですかね)、私などには想像だにできない世界の話です。
今回の七癖に姿勢は入れませんでしたが、実は私、姿勢にも癖がありまして…結構悩んでいたりします。これも時間をかけて体をつくってゆくしか解決方法はないものと、覚悟を決めております
>松尾さん
さっそく拝見しました。とても分かりやすく説明なされていて、問題のありかについて納得しました。もっとも、問題のありかが分かる事と、即座に解決できるかはつながりませんが、解決の方向は見えましたので、時間をかけてじっくりと練習に励んでゆきたいと思います。ありがとうございました