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耳を開いて笛を吹け

 前回ダメだった、もう一曲とは、第1課の5番の第2変奏。デュエットの3曲目で、先生の一拍後から生徒さんが入る、あの曲。本当は、5番の3曲とも全部ダメなんだろうけれど、全部を宿題にすると、全然進まないので、これ一曲だけにしてくれたんだと思う。先生、ありがとう。

 例によって、ダメ出しを列記します。

 1)演奏中、笛は揺らさない。

 この曲、アウフタクトなんですよ。だからたぶん、無意識に拍を数えてしまったのだと思う。あるいは音楽にノって(?)ノリノリ状態? 本当は和音やリズムの流れを静かに心の中で感じていないといけないのにネ。とにかく私、無意識に笛を上下に動かしていたらしい。その動きが目障りだそうだ。そりゃそうだ。たしかにお客の立場になれば、フルートをブンブン振り回されて演奏されたら、音楽聞けないよね。反省。

 2)休符は休憩じゃない、リラックスしない。いちいち息吸わない。リズムの流れを感じなきゃダメ。

 歌でもキング先生に言われる…。私に限らず素人さんは、たいていこの傾向があるような気がしますが、いかが?

 3)テンポが遅い。

 ごめんなさい。先生に合わせようとして、先生の音を一生懸命聞いてから演奏すると、遅くなります。きっと聞いちゃったら、合わせられないんだよね。

 4)何となく吹き始めないように、きちんと溜めてから吹き始めること。

 吹き始めの注意。溜めるのはもちろん息なんだけれど、むしろ息というよりも気だね、気。吹き始めのところで、ウンと気合を入れて集中して細心の注意で大胆に吹き始めることだと解釈しました。吹き始めの音から、しっかり根性据えて、きちんとした音で吹き始めなさいってことです。何となく吹き始めちゃダメなんです、何となくは…。

 5)ハモりなさい。

 ここが今回の最大の注意点。音程に関する注意です。

 今回から、先生のお許しを得て、サクッと頭部管を抜くことにしました。20mm前後も抜きます。これでとりあえずチャイナ娘もC管のフルートになります。チューナー使ってばっちりチューニングしました。ドレミファソラシド~、どの音でも一応チューナーは『オールグリーン』状態。多少針は左右にズレますが、十分許容範囲! よし、大丈夫だ。

 その状態で先生とデュエットです。とにかく間違えないように、音楽を止めないように、遅れないように、バッチなタイミングで演奏できるように、気を使って吹いたところ、ダメ出しです。「ハモってない」そうです。

 とにかく「一人で吹いているなら、OKをあげてもいいけれど(ありがとうございます!)、これはアンサンブルだからね。ハモってないとダメ」だそうです。楽器でハモる? なになに…? と思ったものの、もう一回と言うので、最初から合わせる。間違えないように、止めないように、遅れないように、注意しながら演奏する。当然ダメ。

 「フルートをきちんとチューニングしたからと言って、それで安心してはダメ。ラの指でチューニングして合わせても、それはラのような音であって、ラとは違う。音を楽器まかせにしてはいけません。ちゃんとしたラを出してください」 ???

 怪訝な顔をしていると「ラと言っても、メロディーの中で現れる時は、その時々で少しずつ高さが違うでしょ。少し高めのラもあれば、低めのラもある。アンサンブルなんだから、その時の和音の中で一番キレイに響く音がある。その一番キレイな音を常に出せるように心がける。そのためには、しっかり耳を開いて演奏してください。」更に付け加えました。「合唱と同じです。細かな音程を丁寧に一つ一つきちんと合わせてください」

 つまり先生は『平均律』で演奏するのでなく『純正律』で笛を吹けとおっしゃっているのだと了解。

 えええ…!

 近代フルートって平均律の音程が出るように設計されているんじゃないっすかあ~! と思いつつも、合唱でカデンツの練習をする時の、あの感覚へつながるスイッチをオンにして、先生ともう一回合わせる。

 あ、そうか。笛をグリグリすればいいんだな。フルートはその構え方で、半音くらいの音の調整は演奏中でも簡単にできる。それを利用すればいいのだな。

 第1音は、先生がドで私がソ。だいたい合ってる。これじゃあダメなの? と思いつつも、ちょっと笛をグリグリ動かして、ジャストなポイントを探す。するとあの純正律っぽい、うねりのないキレイなハモりになる。おお~っと思う間もなく、次の音。演奏は容赦なく進んでいくのだ。

 第2音は、先生がドで私がラ。チューナーでバッチリ合わせたラだね。だいたい合ってる。でも、さっきよりはうねるかな? グリグリする。バッチリになる。

 こんな感じでずっと微調整。時々、グリグリの方向間違えて、大きくハズしてアチャーって思うけれど、音楽は容赦なく進行してゆく。

 一曲終わる。なんかヘトヘト。「さっきよりはだいぶ良くなりました。大切なのは、耳を開いて演奏すること。いつも相手の音を聞いて、そこに音程も音色もリズムも合わせいくこと。では、もう一度」

 え? 音程だけじゃなく、音色も合わせるのですか? 先生の柔らかなフルートの音と同じように、柔らかい音を出せと…。 なんか、地面が一瞬、グラっと動いたような気がしました。

 先生が先行して演奏します。一拍遅れで私が入ります。先生の柔らかい笛の音を聞いて、それっぽくなるように優しくチャイナ娘に息を吹き込みます。もちろん、音程はグリグリ合わせまくりの疑似純正律で…。なんか全身が神経の固まりになったような気がします。

 曲が終わった時は、何がなんだか分かんなくなってました。もしかして、耳が開きっぱなしになったせいで、目は開いていたけれど、何も見えてなかったかもしれない。

 とりあえずデュエットなんだから、お互いのタイミングをバッチリあわせて演奏すればいいじゃんと思ってました。楽器のチューニングはきちんとしたんだから、音程は楽器まかせでいいじゃんと思ってました。だから正直な話、最初は先生の演奏のタイミングに合わせて笛を吹いていました。音程に関しては、完全に楽器まかせで、特に注意をしていませんでした。音色…考えてもいませんでした。でも、それじゃダメなのね。リズムだけでなく、音程も、音色も、バッチリ相手に合わせていくんだ。なんでもかんでも合わせていくんだ。それがデュエットなんだ…。

 レッスンでは何度もこの曲を合わせました。回を重ねるごとに、音程も音色もだいぶ良くなってきたと自分でも分かりました。先生は「音が出たり、指が動くのは当たり前。音楽の練習はそこから始まります。アンサンブルなんだから、いつも相手を聞いて演奏してください。いつもキレイにハモれるようにしてください。まずはしばらくは、耳を開きながら演奏できるように練習しましょう。この練習は家で一人で行なうのは難しいでしょう。でも、いつも相手がいるつもりで、想像しながら練習してください」

 ふう~。

 とにかく『耳を開く』ですね。了解。分かりやすい言葉で説明してくださって感謝です。

 しかし、確かに自宅練習がしづらいなあ…。私は基本的に想像力の乏しい人間だし…、ううむ困った。と、ウチに帰って悩んでいると、そうそう、最近買った、アルテスのお手本CDがあるじゃん。これを鳴らして、その音に合わせて練習すればいいんじゃねえ?

 たしかにお手本の奏者は笛先生ではないから、音程の取り方などは違うだろうけれど、正しい音程を出せるフルート奏者に合わせて演奏するという点は同じだから、自宅で一人でウツウツと練習しているよりはなんぼもマシと言うものでしょ。そうしましょう、そうしましょう。

 それにあのCD、高かった(1万円だよ)んだよなあ。なんとか有効利用をして、元をとらないとね。

 あのCDを持っていなければ、先生のパートをMIDIで入力して演奏するという方法も考えたけれど、機械に合わせるよりも、人の演奏に合わせた方がよっぽど音楽的だと思うし、お手本CDを有効活用しましょう。

 てなわけで、アルテの第1課は2曲、残っちゃいました。一応、第2課は全部練習しておいてくださいと言われてます。次回のレッスンまでに、注意されたところを丁寧にさらって、さっさと第1課を終えて、第2課に入りたいものです。

 とにかく、頭をカラッポにして笛を吹いちゃダメってことだね、大事なのは、常に音を作っていく感覚。音楽を奏でている感覚。特にデュエットの時は、神経の固まりになって演奏するのサ。ハモれ、ハモれ、ハモレ~。

コメント

  1. soran より:

    ホント、大切なのは耳を開いて演奏することですね。
    耳は目や口と違って休むことないですから
    鈍感になりやすいのでしょうか(笑)・・・。
    聴こうとしないといけないですね。

    ピアノは1人でハーモニーが作れるのですが
    そのハーモニーについて「音程が悪い、良い」と言う人がいるらしいです。ピアノは調律されているのだから音程が悪いというのは?ですが、そのハーモニーを構成する音達のバランスが悪いと、音痴に聞こえるということでしょうね。ピアノでも高次倍音を多く含んだ音が多いハーモニーだと破壊的でしょうし…。

  2. すとん より:

    >soranさん

     音程というのは、目に見えないので、確かな音感を持っている人は別でしょうが、私のような人間にはトンと?な部分があります。

     特にそれが、美しい、美しくないと言った、美的感覚とつながった時は、もう私の手に負えません。

     加齢に伴い、記憶力も老化している最中なので、絶対音感はもちろん、すでに相対音感の獲得もあきらめている私ですが、和声感だけは、まだ何とかなるのではないかと、あがいています。なにしろ和声感は聴覚だけで記憶力は不要な能力ですから。

     そんなわけで、キレイなハモった音楽を日々奏でたいと思ってます。そのためにも、いつもきちんと耳を開いていきたいと思ってます。

     ところでピアノの音程についても色々な話を聞きます。ピアノは平均律で調律されているのだけれど、その調律のまま、純正律で弾けるとか、タッチの違いで微妙に音程を操作できるとか…。私の周囲の噂のような話なので、真偽の程はどうだろうかと思いますが、門外漢には???な噂話です。

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