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吹奏楽とオーケストラの魅力の違い

 吹奏楽は、しばしば『弦楽のないオーケストラ』あるいは『安価なオーケストラ』と言われる事があり「所詮は、オーケストラの劣化コピーじゃないか」と悪口を叩く人もいないわけじゃありません。でも、それらの悪口には悪意しかなく、吹奏楽の姿を正しく理解しているとは言えません。

 もちろん、吹奏楽で演奏する曲は、ほぼすべてのオーケストラで演奏できるでしょう。だって、オーケストラの編成から弦楽器を抜いて、足りない打楽器や管楽器はエキストラで賄えばOKでしょ? 実際、アマチュアオーケストラだと、吹奏楽用の音楽を定期演奏会でかける事もしばしばあります(まあ、管楽器の多い団体が主ですが…)。でもやっぱり、オーケストラが演奏する吹奏楽曲は、吹奏楽団が演奏するのとは、ひと味違います。その風味の違いが、オーケストラの魅力であり、吹奏楽の魅力であるのでしょう。

 オーケストラと吹奏楽団、似ているようで、その音楽スタイルというか、バンドとしての個性はあれこれ違います。

 一番の違いは…音量へのこだわりでしょうか? とにかく、吹奏楽は音量が命と言うか、音量を味わう演奏形態だと思います。そこへいくと、オーケストラの場合、音量にはやはり限界があります。ストラヴィンスキーの楽曲などは、かなり音量的に吹奏楽に近いものも無いわけじゃないですが、アマオケなどで頻繁に演奏される、モーツァルトやベートーヴェン、ハイドンの交響曲など、吹奏楽と比べると、その音量なんて可愛いものです。むしろ、吹奏楽の音量の大きさは、オーケストラよりもロックバンドと比較した方がいいくらいです。

 二番目の違いは…音楽ジャンルへのこだわりの無さ…でしょうか? まあ、アメリカあたりに行きますと、オーケストラにも“ポップス・オーケストラ”というものがありますが、やはり我が国日本のオーケストラは、そこまで砕けてはいません。

 日本ではオーケストラが演奏するのは、オーケストラ用に作曲された、18~19世紀の古典作品ばかりです。一方、吹奏楽は、吹奏楽が得意とする行進曲はもちろん、オーケストラが普段演奏している古典作品(もちろん、吹奏楽用にアレンジされてます)も演奏すれば、流行歌やポップスの吹奏楽バージョンも演奏します。つまり、古典作品も演奏すれば、今時の作品も演奏するわけで、自分たちが演奏したい曲を演奏するという、音楽ジャンルへのこだわりの無さ…と言うよりも、間口の広さは、吹奏楽の楽しみの一つでしょう。ごく普通の一般人にとって、オーケストラが演奏する曲は、なにやら小難しい曲ばかりで親しみを感じられない事が多いですが、吹奏楽団のリストセットは、身近で知っている曲ばかりが並んでいたりするわけだしね。

 三番目の違いは…吹奏楽団って、案外、身近な存在である事かな? やはりオーケストラの演奏者はプロアマ問わず、音大卒業生がほとんどで、なかなかアマチュア演奏家がオケのメンバーになるのは容易な事ではありません。一般の人たちから見れば、オーケストラって、エリート集団なんですよね。一方、吹奏楽団は、音大卒業生と言うよりも、ブラバン経験者がバンドのメンバーの多く占めているわけで、それだけ一般人にとっては身近な存在と言えるでしょう。

 まあ、音大にもプラバンには縁のなかった人には、どうでもいい事かもしれませんが…ね。

 日本における音大卒業生と、ブラバン経験者の数ってのは、考えるまでもなく、圧倒的にプラバン経験者の方が多いわけです。音大卒業生はプロの演奏家はもちろん、音楽関係の職業に就いている人が多いですし、我々一般人がオケのメンバーと知り合うなんて事は、そうそうある事でばありません。

 その点、ブラバン経験者って、ブラバンをやっていたという事以外は普通の人だし、別に音大に行ったり、音楽関係の仕事に就いていたりする事も多くなく、また吹奏楽団のメンバーはアマチュアが圧倒的に多くて、我々の知り合いがバンドのメンバーだったりする事も案外多くて、知り合いを応援する…と言った感覚も吹奏楽を聞く際にはあります。

 オーケストラと比べると、やっばり吹奏楽は身近なんだよね。

 四番目の違いは、オーケストラは、プロアマ問わず、やはり都会にあるものですが、吹奏楽は演奏者の裾野が広いせいもあって、結構の地方に行っても演奏団体があるわけで、地方の人間にとっては、本格的な器楽音楽は吹奏楽でしか聞けない…なんていう環境もあるわけで、それだけ吹奏楽の方が広く行き渡っていると言えるでしょう。これには、吹奏楽が学校の部活動に根ざしているといった事情もあるわけです。オーケストラの主役である弦楽奏者たちは、教師不足もあって、地方ではなかなか生まれないですからね。

 とまあ、結論を言っちゃえば、オーケストラと比べた時の吹奏楽の魅力ってのは、身近である事。音量的に迫力があって、よく知っている曲を演奏してくれる事。知り合いが頑張っているのを応援する事でできる事、地方でも楽しめる事…こんな感じでしょうかね。
 逆に言えば、身近にオーケストラを始め、ロックバンドやジャズバンドやあらゆる音楽ジャンルのバンドが聞けるような環境にあると、なかなか吹奏楽を身近に感じる事が難しくなってくる…とも言えます。

 私が住んでいる地域だと、中学ではそこそこ吹奏楽部も人気がありますが、高校あたりになると吹奏楽よりも軽音楽部の方が元気があったりするわけで、中学で吹奏楽をやっていた子が高校では軽音楽部に移動するというケースも多々あったりするようで、そういう地域だと、なかなか吹奏楽も盛んにはなりづらいのかなあ…なんて思ったりします。

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コメント

  1. Hiro.MTB より:

    すとん様、こんにちは。

    吹奏楽団は、「劣化」かどうかは別として管弦楽団の代替品なのは事実ですね。
    近代的な吹奏楽の編成が出来るきっかけとして、フランスで音楽に触れる機会のない地方(まあ、田舎という意味でしょうけど)に最新の音楽を届ける為に、吹奏楽団が発達したと言われています。

    地方には大きなコンサートホールはなく、屋外での演奏が基本となります。屋外での演奏には弦楽器の使い勝手が悪かったため、管弦楽団の代用として吹奏楽団が派遣されたわけです。

    また、同じ理由で木管楽器も使い勝手が悪かったため、アドルフ・サックスが木製のクラリネットを改良して金属製のサクソフォンを、オーギュスト・サリュスが木製のオーボエやファゴットを改良して金属製のサリュソフォンを製作するのもこのころです(残念ながらサリュソフォンは廃れてしまいましたが、サクソフォンは生き残りました)。

    サクソフォンは、ある意味で「吹奏楽団が管弦楽団の代用であった歴史」の生き証人と言えます。

    じゃあなんでクラリネットやオーボエやファゴットが(吹奏楽団で)生き残ってるの?といえば、コンサートホールが整備されて、大音量の必要性や、直射日光で木が割れる心配をしなくてよくなったからなんですけどね(笑)。

  2. すとん より:

    Hiro.MTBさん

    >大音量の必要性や、直射日光で木が割れる心配をしなくてよくなったからなんですけどね(笑)。

     野球の応援(ボソッ)…。

     まあ、吹奏楽…ブラスバンドは、ブラス(金管楽器)と打楽器で構成されたバンド(楽団)なわけで、弦楽器はもちろん、本来は木管楽器も入るはずのないバンド編成だと個人的には思ってます。

     最近の子たちは、吹奏楽部の事を『ブラバン』ではなく『スイブ(吹部』と呼ぶようですが、木管楽器も大切なメンバーであるという現状を反映している呼び名だと思います。ブラバンだと、ウィンド(木管)の立場がないものね。

  3. Hiro.MTB より:

    >野球の応援(ボソッ)…。

    あ、上の事例は吹奏楽が発達する過程の、今から100年前のフランスでの事例なので・・・さすがに100年前のフランスでは、現代の日本の高校野球の楽器事情を予見して楽器の開発はしていなかったと思いますよ(笑)。

    100年前のサリュソフォンが現代の日本に普及していれば、野球の応援にもオーボエやファゴットの代わりに持っていけて楽なんですけどね。あと、メタルクラリネットも。

    >ブラスバンドは、ブラス(金管楽器)と打楽器で構成されたバンド

    プロ野球応援の「鳴り物」は金管と打楽器(ブラスバンド)なので、まだ合理的なんですけどね…木製の木管楽器は日差しに晒しちゃダメですよ。

    野球の応援は、大変ですね。私も高校在学中に甲子園で応援しましたが、指揮を担当したので、応援団長と私の2名だけ、グラウンドに背を向けて肝心の試合を観ていないというオチです(笑)。

  4. すとん より:

    Hiro.MTBさん

    >木製の木管楽器は日差しに晒しちゃダメですよ。

     いやいや…。野球応援とコンクール出場のチームを分けられるような吹奏楽強豪校ならともかく(コンクールと違って人数制限がないから)大半の学校は吹奏楽部全員で野球音縁参加だし、当然、木管も参加です。そこで出たくないとか、そんなわがまま通じるはずもありません。で、日光に散々さらして楽器の調子がおかしくなったところで、夏のコンクールが始まるわけです。なんて、GOODな日程なんざんしょ。

     メタル製の木管楽器は廃れてしまったかもしれませんが、その代わり、ABS樹脂製のモノがありますよね。野球応援なら、グラナディラの楽器ではなく、ABS樹脂製の楽器で十分なんだけれどね。ABS樹脂の楽器、なかなか普及しないんだよね。

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