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レチタティーヴォは難しい

 声楽のレッスンの続きです。

 曲の練習に入りました。今回から新しい歌に取り組みます。

 まずは、トスティ作曲の「Penso!/僕は思っている」からです。

 この曲、実はすごくテンポの速い曲です。なにしろメトロノーム的に言えば“152”が基本テンポです。約2秒に5拍の速さです。三拍子の曲ですから、1小節が約1秒で演奏されるわけで、これはかなりの速さです。で、それがどれくらいとんでもない速さなのかと言えば…“プロ歌手であっても、この速度で歌う人はほぼいない”ぐらいの速さです。

 プロの方々も、ほぼ“120”ぐらいまでテンポを落として歌われる事が多いです。もろん、理想的には、楽譜に書かれているとおり“152”で歌うのが望ましいのです。それにかなりの速いテンポで歌われる事が想定されて作曲されていますので、テンポを落とすと、実は却って歌いづらくなります。それでも皆さんテンポを落として歌うには理由があって、それはこのテンポで歌うのが、単純に難しいからです。

 速くてクチが回らない? はい、私はそうですが、プロの方々は違います。プロの方々がテンポを落として歌う理由は、実は、テンポが速すぎて、あれこれ発声が間に合わないために、やむなくテンポをおとして歌うのだそうです。

 実は“声”という楽器は、比較的反応が遅い楽器なのです。反応が遅いとは、息を吹き込んでから、実際の音が鳴り始めるまでにかかる時間が長い…っ事です。もちろん、音域によっても反応速度は違いますから、男声と女声を比べれば、女声の方が反応が速いですし、女声の中でもソプラノが、ソプラノの中でもコロラトゥーラが、反応が速いです。だからコロラトゥーラの方々は、あんな真っ黒な楽譜の曲を歌えるのです。

 でもトスティを歌うのは、主に男性歌手、とりわけテノール歌手が多いですが、テノールって、そんなに反応が速い楽器じゃないのです。もちろん、あれこれ犠牲にして歌えば、速いテンポでも歌えるのかもしれませんが、声の美しさを優先して歌うならば、テンポは、ある程度抑えないと歌えないのです。

 とりわけ、私のような未熟者の場合は、テンポに振り回されて、あれこれぶち壊してしまうこともあるわけで、私もテンポは“120”ぐらいに落として練習をする事にしました。もちろん、可能ならば、最終的には“152”のテンポに上げて歌いたいと思ってます(きっと無理だけれど…)。

 と言う訳で、さっそく通して歌ってみたところ、声に滑らかさがなく、全くレガートとは縁遠い歌い方をしてしまいました。明らかに曲のテンポに振り回されているわけです。おまけに、滑舌が悪すぎて、歌詞を噛みすぎています。反省です。

 それと、基本テンポを“120”に決めた事は良いのだけれど、この曲は、結構めまぐるしくテンポチェンジをする曲なので、部分部分をどれくらいの速度で歌うを決めておく必要があります。無論、プロの中にはほぼテンポチェンジをしないで歌いきってしまう人もいますが、私は(勉強のためにも)なるべく大きくテンポチェンジをして歌いたいと思います。

 この曲の最高音はG♯です。この音を出す時は、勢いで乱暴に出すのではなく、フレーズの流れの中で、ごく自然に「出ちゃいました」という感じで、楽に地味に出す事が大切です。絶対に、狙いを定めて出してはいけないのです。だって歌曲だもん。高音発声が目的ではないのですからね。気をつけないと。

 次は、ヴェルディ作曲の歌劇「椿姫」の中で歌われている、テノールの代表的なアリアである「De’miei Bollenti spiriti/燃える心を」です。

 この曲は、プロ歌手はまず楽譜通りには歌いません。リズムもメロディーもテンポも、皆さん、それぞれの歌いまわしがあるわけです。ですから、まず大切なのは、今まで聞いてきた歌手の皆さんの歌は、一度忘れて、拍子を取りながら、楽譜に忠実に歌うことです。とりわけ、レチタティーヴォの部分は、楽譜が細かくて真っ黒ですが、それにめげずに、まずは楽譜通りに歌えるようにします。自分なりの歌いまわしを加えたいとしても、まずは楽譜通りに歌えるようになってからの話です。

 しかしそれにしても、レチタティーヴォは難しいです。昨年の「ラ・ボエーム」でレチに関しては、かなり練習を重ねましたが、それでもやっぱり難しいです。

 私が思うに、プロ歌手とアマチュア歌手の力の差が一番出るのが、このレチタティーヴォの歌唱部分でしょうね。ほんと、プロの方々のレチタティーヴォは(全然楽譜通りではないけれど)見事です。それこそ名人芸ですよ。一方、アマチュアは楽譜通りに歌う事に苦労するわけです。自分の個性の表現なんて、まだまだずっと先の話です。

 まあ、これには仕方のない部分もあって、アマチュア歌手は、オペラを歌うことはまずないし、歌ってもアリアだけってケースがほとんどです。一方、ちゃんとしたプロはオペラを丸々歌うわけだから、そりゃあレチタティーヴォ能力に大きな差があって当然と言えば当然です。

 まあ、言い訳はそれくらいにして、私はレチタティーヴォに苦労しました。とにかく、細かい音符の一つ一つにまで神経を行き届かせて歌う事が大切です。

 一方、アリア部分は、息の流れを大切にして歌うように注意されました。また、全編を歌うのでなく、しっかり歌う部分と、語ってノドを休める部分を明確に分けて、ノドを休ませながら歌うことを注意されました。オペラは長丁場です。声にもメリハリをつけて歌っていかないと、とても持ちません。全力歌唱なんて、もってのほかです。

 私は常に全力で歌ってしまうからね。反省です。

 この曲の最高音はA♭です。実は「Penso!/僕は思っている」と同じ音程なのですが、アリアでは「Penso!/僕は思っている」よりも頻繁にA♭が登場するし、そうでなくても高音安定の曲なので、「Penso!/僕は思っている」よりも高音に苦労してしまいます。

 このように高音安定の曲の場合、最高音であっても、声は常に開けっ放しで歌う方が歌いやすいのだそうです。近視眼的に見るならば、高音は声を閉じて歌った方が楽なのですが、一度声を閉じてしまうと、次はもうその音程では歌えなくなってしまうからです。高い声で歌い続けるためには、声を開きっぱなしにする必要があるのです。でも、声を開きっぱなしにして高音を出すのは、ほんと難しいです。難しいので、ついついガツンと出してしまいがちですが、それをすると、ノドには悪いし、音程もぶら下がりがちになるので、極力避ける必要があります。高音は、楽に下からひょいと軽く持ち上げる感じで出すのです。…難しいのだけれどね。

 カデンツァの部分は、楽譜はあっても自由に歌うことが大切です。楽譜に縛られちゃダメなんですね。たとえ休符が書かれていなくても、休むべき所はしっかり休む事が必要です。ああ、それにしてもカデンツァは難しいです。今回はヴェルディ自身が書き込んだカデンツァで歌う私ですが、ああ、難しい難しい。楽譜で見る以上に難しくて、イヤになってしまうかも(でも、たぶんならないでしょうね)

 とにかく、両曲とも、もっと歌い込まないと…ね。

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