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金魚の“エサくれ”アピール

 どんなペットであれ、生きている以上、エサは食べます。時間になれば(あるいは、ならなくても)エサをねだるわけで、そのエサのねだり方が可愛かったりするわけです。で、そのねだり方はペットの種類や、その個性ごとにそれぞれなのです。

 金魚はどんな風にエサをねだるのでしょうか?

 まず他のペットと違って、金魚の大きな特徴は、彼らには胃袋が無いという事です。従って、彼らには“満腹”という感覚がなく、常に空腹であり、欠食を感じているのです。ちなみに、胃袋が無いのは金魚だけでなく、フナとかコイなども胃袋がありません。クチから入ったエサは食道を通過したら、直接、腸に行ってしまうのだそうです。

 金魚には胃袋がありませんので、食べたモノを貯める事ができず、一度の多くのエサを食べることができません。ちょっとずつちょっとずつ食べていくわけです。で、食べたモノは胃袋がないので、食べた直後に、すぐに消化されてしまいます。つまりすぐに空腹になってしまうわけです。

 金魚の祖先はフナです。フナって魚は、そんなに良い環境に生息している魚ではありません。彼らは本来、水が汚く、流れも速く、ドロだらけの環境で暮らしているわけです。まあ、昔は田んぼの用水路とか小川とかに棲んでいたようです。だから、エサには恵まれず、せいぜいが藻とかプランクトンとか小動物とかを、必死に探し出して、食べてはエネルギーにし、食べてはエネルギーにし…と生きていたんだと思います。だから、少なくて栄養価の低いエサを、ずっと食べ続けていかないと生きていけなかったわけで、そのために、エサをいつまでも食べ続けていられるようなカラダになったのだと思います。

 実際に、野生のフナとかコイなんて、汚くて、他の魚が住み着かないような場所にいるでしょ? 彼らは本来、たくましい生き物なのです。

 そんなフナがペットになったのが金魚なのです。ペットになったから言って、すぐに上品な生き物に変わったわけではなく、やはり先祖のフナ同様に金魚も悪食なのです。

 金魚は、フナ同様に、ずっとエサを食べ続ける事ができるカラダを持っています。ですから、彼らは常に人に対してエサをねだりつづけます。飼い主の存在を感じたら、即座にエサをねだるのです。

 まず一番目立つ行動は、後追いです。水槽の中で人のいる方に移動して、こちらをじっと見つめています。人が移動して、水槽の前を横切ろうものなら、長いヒレをゆらゆらさせながら、金魚も水槽の中を移動します。可愛いものです。

 やがて、その行動が激しくなってくると、後追いをしながら、水面にクチを寄せてパクパクします。これは水面に浮かぶエサを食べるジェスチャーなわけで、金魚的には身体言語なのでしょうね。エサを食べる動作をしながら「エサを入れてくれよ」とアピールするわけです。

 さらに激しくなると、単にエサを食べる動作をするだけでなく、水音をたて始めます。ヒレでバシャバシャやったり、クチで水を吹き出して、ピューピューやり始めます。結構、うるさいです。やがてガラスにカラダをガンガンぶつけ始めます。必死のアピールをするわけです。そうなると、可愛いを通り越して、ちょっと可哀想に感じます。

 ただ、そこで負けてはいけません。金魚は空腹感がないし、時間感覚が(よほど賢い子以外は)無いので、エサの時間に限らず、人がいれば、常にこんな感じなのです。困ったものです。どんなに必死のアピールをしていても、こちらが無視をしていると、やがて諦めます。そこまでは、人と金魚の根比べになるわけです。

 ちなみに、全員で一斉にエサをねだる事もないわけではありませんが、金魚の中での役割分担があるようで、エサをねだる係の子は常に一匹だったりします。で、その係の子が、上記の行動を取るわけです。

 ただし、誰がエサのねだり係をやるのかは、よく分かりません。水槽の中の王様(格付けが一番上の子)がやる事もあれば、二番目の子がやっていたり、明らかに一番下の子がやらされていたり…その時の金魚の人間関係やらパワーバランスやらで変わってくるようです。

 以前飼っていた、チョコレートオランダのカエデがエサのねだり係をやっていた時は、この子には時間感覚があって(それもかなり正しい)エサの時間になるまでは、結構自由にしていますが、時間になった途端に、激しい水音をたてて、人間にエサをねだっていました。ですから、あの頃は、カエデが音を立てると「お、エサの時間か」と気づいたものです。

 ちなみに、現在のエサねだり係は、主にヤヨイがやっていますが、ヤヨイが寝ている時はシズカが代行しています。

 ヤヨイに限らず、たいていの子は、上記に書いたような、ごく普通のエサのねだり方をします。それに加えて、それぞれの金魚に個性に合わせたねだり方をする場合もあります。

 例えば、ヤヨイはモツモツと水槽の砂利を食べては吐き出し食べては吐き出しという行為を、人がよく見える場所でやります。まるで、食べるものがないから、仕方なしに砂利をしゃぶってます…って感じのアピールをするわけです。またシズカは、葉が無くなって、茎だけになってしまった水草の茎の末端を加えて、ブンブン振り回して、エサをねだります。おそらく「エサも無ければ、水草も無い! さっさとエサでも入れてくれよ」と言っているのかもしれません。

 他にも、とにかくじっと人間を見つめて眼力でエサをねだる子もいれば、タニシの殻を転がしてアピールする子もいます。金魚もそれぞれです。

 問題は、エサを欲しがったからと言って、エサの時間以外は、決してエサをやってはいけないって事です。彼らが食べている金魚フードは、野生のフナたちが食べているエサと比べたら、無闇に高カロリーだったりするわけです。そんな高カロリーなエサを欲しがるからと言って、頻繁にあげていると、、彼らは無尽蔵な食欲を持っているわけですから、いつまでもいつまでもエサを食べ続けて、あっという間に金魚は巨大化してしまいます。

 巨大化すれば、何かと健康被害も出てきます。金魚は小柄でかわいいのが良いのです。
 ちなみに、金魚の主な死因には「水槽の水質汚濁」「ストレス」の他に「エサの食べ過ぎ」があります。金魚はエサをいつまでも食べられるようにできていますが、消化速度は決して早いほうではありません。ですから、一度に多くのエサを食べてしまうと、腸管が詰まってしまい(腸閉塞って奴だ)、それで星になってしまうこともあるので、いくらキュートにエサをねだられて、決して負けてはいけないのです。

 飼い主は、時として、心を鬼にしないといけないのです。

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コメント

  1. 名無し より:

    そうだったのか!!!
    うちの琉金が巨大になってしまったのは、求められるままに餌をあげてしまったからだったのか!
    今後は心を鬼にしようと思います!

  2. すとん より:

    名無しさん、いらっしゃいませ。

     お名前の欄が無記入でしたので“名無し”さんと呼ばせていただきます。次回からは、ハンドルでも結構ですので、お名前をご記入下さい。そうでないと、呼びづらくて…ねえ。

     さて、金魚がエサをねだるに任せてエサを与え続けると、巨大魚になってしまいますが、魚類のカワイソウなところは、人間と違って『ダイエットができない』と言った点です。人間は太ってしまっても、食べる量を減らせば、やせてカラダが小さくなりますが、金魚を始めとする魚類は、一度大きくなってしまうと、エサの量を減らして小さくはなりません。ただ、健康を害して死んでしまうだけです。なので、肝心な事は、決して大きくしない事なのです。

     と思って、ウチもエサの量をコントロールしているのですが、それでもやっぱり巨大になってしまう奴は巨大になってしまうわけで…ウチでも巨大魚の扱いには困っています。

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