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某国際音楽コンクールに関する、素朴な疑問

 先日…と言うか、先月の話になります。私、某国際音楽コンクールの声楽部門の予選を見てきました。日頃、素人さんの発表会ばかり聞いている私からすると、技術的に完璧な演奏ばかりで、十分お腹いっぱいになったわけで、たまには、こういうプロを真剣に目指している人たちの演奏も聞かないといけないなあ…と思ったわけです。

 で、このコンクールでのパフォーマンスについては、何の問題も無い私ですが、それ以外の部分で、色々と不思議に思った事があったので、それを何となく書き上げてみたいと思いました。

 まず、このコンクールは、声楽部門以外にも、各種楽器ごとに部門が分かれています。その中に、アマチュア部門(?)というのがあり、ここはすべての楽器が“演奏者がアマチュアである”という括りでまとめられている部門のようでした。今回、私は時間の都合もあって、アマチュア部門を見なかったのですが、アマチュア部門にも歌手の方々が何人かエントリーしていました。つまり、アマチュア(専門教育を受けていない人)たちのためのコンクールがアマチュア部門だなあ…と了解したわけです。

 しかし、アマチュアである事だけが共通項で、楽器も違えば、年齢も経歴も全然違う人たちを集めてコンクールなんて、出来るのかしら?

 次の疑問。声楽部門の方ですが、こちらも、下位が部ごとに分かれていまして、中学生の部、高校生の部、大学生の部、一般Aの部、一般Bの部と分かれています。まあ、中学生と高校生は音大を目指している方々、大学生とは現役音大生の事でプロを目指している方々であろうと思われます。一般Aと一般Bは年齢で分けられます。Aの方が35歳まで、Bが年齢制限無しというわけで、共に音大卒業生が出演されていたようです。

 …ようです、と言うのは、コンクールなので、出演者の経歴はおろか氏名や国籍など、すべて伏せられていたので、よく分からないのです。

 それはともかく、学生の部は…まあ分かります。一般Aは音大卒業生でプロをめざしている方々…というのも分かります。でも分からないのが、一般Bという部門です。これって何だろうと思いました。

 コンクールですから、プロを目指す方が出場されているわけで、プロの方は出場されていないはずです。35歳過ぎてプロを目指す…?って、普通はないわけでしょ? 他のコンクールでも、声楽はかなり高齢になるまでコンクールの出場が可能なモノが多いですが、それでもだいたいは30歳、せいぜいが35歳までです。コンクールで優勝して、プロとしてデビューをして、活動を始めて…って考えると、このあたりが上限ギリギリでしょうね。と言うのも、声楽は引退も早くて、50歳前後で一線を引きますから、デビューが遅すぎると、デビュー即引退となるわけで、それじゃあシャレになりません。

 ところが、一般Bの部門には、かなりの年配者も出場されていました。ですから、これからプロを目指す方々が出場しているわけは無いわけで、じゃあ、このB部門は何のために用意されているか、私には全く分かりませんでした。B部門の人たちは、プロではないわけだし、プロを目指しているわけでもないのなら、間違いなくアマチュア歌手さんなんだから、アマチュア部門に出場するのがスジなんじゃないのかな…なんて思うわけです。

 次の疑問。事前審査と言うのは、無かったのかな? と言うのも、クラシック系のコンクールなのに、ポピュラーソングをアカペラで歌っていた人がいたもの。これは上手い下手の問題ではなく、場違いでしょう? 少なくとも、音源審査をやっていれば、こういう場違いな方の出場は避けられたと思いますよ。

 次の疑問。予選出場者の大半は、本選に出場できるのですが、これだけ多くの人が本選に行けるなら、予選なしでもいいんじゃないのか?って話はなりませんか?

 次の疑問。予選と本選で、別の曲を歌う人も若干いますが、全く同じ曲を歌う人が過半数なわけで、私は予選が面白かったので、本選も見に行こうかなっと思ったけれど、本選の曲目を見て、やめた次第です。だって、予選と本選で、曲も同じ、争うメンバーも同じでは、本選としての面白さなんて無いものね。

 次の疑問。どうして、客席はガラガラなの? これじゃあ、素人の発表会の方が、よっぽどお客さんを動員しているよ? 仮にも“国際音楽コンクール”なのに、どうしてお客が少ないのだろう? そしてお客が少ないのだから、仕方ないとは言え、プログラムぐらい主催者が用意してくださいよ。当日プログラムが無いものだから、私は壁に貼られたプログラム(壁には貼ってくれるんだよね)を写真で写してそれを見ていました。だって、歌っている曲目ぐらい知りたいじゃない。

 次の疑問。一人ひとりの時間制限があるのは当然として、それなのに、平気で時間オーバーをする曲目を選ぶ人がいるのはなぜ。それも一人じゃないんだよ。演奏中に、ベルが鳴るのって、イヤじゃないのかしら? 音楽なんて、演奏前から、だいたいの演奏時間って分かるわけで、制限がある以上、そこに引っかからないように選曲してくるものじゃないの?

 次の疑問。いや、疑問ですから無いなあ…。演奏者の7割はソプラノさんでした。聞いても聞いても、ソプラノばかりが続き、ああ、日本の歌手のほとんどはソプラノさんだなって思ったわけです。残りの3割のうち、2割はバリトンさんでした。つまり、日本の声楽界はソプラノとバリトンで成り立っているわけです。残りの1割がメゾとカウンターテナーだったわけです。

 そう言えば、テノールって、今回のコンクールにかぎらず、他のコンクールでも滅多にお目にかかれません。テノールって、そもそもの人数が少ない上に、コンクールに頼らなくても生きていける種族なんだなあ…とつくづく思った次第です。

 次の疑問。これも今回のコンクールに限りませんが、バリトンさんって人数少ないのに、みんなコンクールだと同じアリアばかり歌いますね。バリトンって、どうして曲を被せてくるのかな? あれって、互いに相談して、曲目を合わせて来ているのかしら?

 次の疑問。基本的に伴奏ピアニストさんは、歌手が持ち込むようでしたが、幾人かの歌手さんが同じ方にピアノを弾いてもらっていました。あれはなぜ? 同じ門下の歌手さんが揃っていて、それで同じピアニストさんに頼んだのか? 実は売れっ子伴奏ピアニストさんなので、仕事が重なっただけなのか? ああ、よく分からないけれど、歌手は変われど、ピアニストさんが同じで「また、出た!」と、心の中で叫んじゃった私です。

 まあ、この他にも、あれこれあれこれ疑問を感じた私でしたが…それでも演奏自体中々面白かったです。

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コメント

  1. ドロシー より:

    すとんさん、こんにちは。
    憶測も含まれますが、答えられそうな所は答えますね。

    >このB部門は何のために用意されているか、私には全く分かりませんでした。
    「プロ」の定義を「音楽大学卒業」とするのならアリでしょう。
    例えば、音大卒だけど演奏活動でブランクがあるからとか、演奏活動が現役プロでも、もう一度審査員の講評を聞きたい方とか、プロフィールにハクをつけたい方とか。

    >少なくとも、音源審査をやっていれば、こういう場違いな方の出場は避けられたと思いますよ。
    >予選出場者の大半は、本選に出場できるのですが、これだけ多くの人が本選に行けるなら、予選なしでもいいんじゃないのか?
    本選料というものを取らないと、金銭的に困って運営できないから、時間的制約がない限りは通すのでしょう。

    >本選としての面白さなんて無いものね。
    まぁ、粗のなさを競うのがコンクールですから、冒険したがらないでしょう。

    >客席はガラガラなの?
    収益源は、審査料ですので、問題ないのでしょう。

    >一人ひとりの時間制限があるのは当然として、それなのに、平気で時間オーバーをする曲目を選ぶ人がいるのはなぜ。
    >バリトンさんって人数少ないのに、みんなコンクールだと同じアリアばかり歌いますね。
    自分が一番上手く聞こえる曲を選ぶことを最優先するからです。

    >演奏者の7割はソプラノさんでした
    大体、日本の声楽人口ってそんなものではないですか?

    >幾人かの歌手さんが同じ方にピアノを弾いてもらっていました。あれはなぜ?
    すとんさんのおっしゃる通り、同じ門下で先生が同じ人を紹介したといケースもありますね。
    他にはコンクールによっては「公式伴奏者」という方がいる場合があります。
    事務局が、伴奏者を用意できない人のために別料金で確保しています。
    合わせの回数は限られているけど、個別に頼むよりは安いことが多いです。

    まぁ、こんな所かと思います。

  2. tetsu より:

    こんばんは。

    こちらは実際に聴いた(参加できるはずもない)ことがあるのは神戸国際フルートしかなくて、この記事は読めば読むほど意味不明のことばかりです。
    ここで2つテキトーにキーワード拾ってググったら、おそらくすとんさんが行ったであろう某コンクールのサイトにあたってしまいました。
    あたりかはずれか不明ですが、このサイトの参加要項には課題曲に指定は一切ありません。
    今年ではなくて去年の審査結果では35歳以上の方も経歴は音楽大学卒でした。
    世の中厳しいですね。

  3. すとん より:

    ドロシーさん、色々解説感謝です。色々と分かって、すっきりしました。

     音大卒業していたらプロなのかというのは、私的には疑問ですが、そういう世界なのでしょうね。医師免許だけ持っていて、インターンも経験せず、医療関係にも就職しなかった人が、もしもいたとして、そんな人を(プロの)医者として世間は認めるのかと言えば、私は脈だって取らせないよ。学校出ただけで実務経験のない人なんて、プロ(職業家)とは言えないと思ってます。

     …って、道をはずれたね。ごめんね。

    >収益源は、審査料ですので、問題ないのでしょう。

     あ、納得。そう言えば、この国際コンクールは入場料を取られなかったよ。他のコンクールだと、たいてい入場料が必要なんだけれどね。そうか、そういう事か(笑)。

    >自分が一番上手く聞こえる曲を選ぶことを最優先するからです

     ふーん、それで、時間をオーバーしたり、他人とカブってもいいんだ。でもそんな戦略した立てられないのなら、職業人としては、かなりダメだと思うし、マーケッティング的にはどうなんでしょうね。

     公式伴奏者さんっているんだ。歌なんて生きるも死ぬも伴奏のさじ加減一つなのに、それを主催者側の人を使うなんて…最初っから勝負を投げているようなものだな…って私は思います。甘いよ、アマすぎる。

     それにしても、色々と分かって、本当にすっきりしました。ありがとう。

  4. すとん より:

    tetsuさん

     器楽のコンクールは、たいてい課題曲が決まっていて、その中から選んで演奏するのが普通ですが、声楽のコンクールには課題曲ってのがなくて、制限時間内なら、基本的には何を歌ってもいいんです。

     ただ、コンクールによっては、ゆるい条件が決まっていて、オペラアリアを必ず一曲入れないといけないとか、決勝はオーケストラ伴奏の曲じゃないとダメとか、必ず一曲は日本歌曲を歌わないといけないとか…ね。

     声楽の場合、歌手たちの声のバラエティがありすぎて、課題曲なんて決められないってのが、本当の話だと思います。器楽と違って、歌手って万能ではないので、歌える歌と歌えない歌が声によって、ばっちり決まっているんですよ。

  5. アデーレ より:

    このコンクールは恐らく、レベルはどうなのかしらん、と思う。音大卒が資格の枠ならば大変な争いかと思うが、アマチュア枠はもしかしたらハードル意外に低い?そもそも音大出てない全く趣味の、それもコンクール受けたいなんて、費用もかかるし、人数的に少数派でしょうからね。ならば、ハクづけに参加してみるのよいかもね!うん、良いかも。目標を決めて勉強する!これは上達の秘訣ね(笑)

  6. すとん より:

    アデーレさん

     アマチュアも出場できるコンクールって、結構たくさんあるみたいですよ。それも都会ではなく、ちょっと地方の方が充実しているっぽいって話を聞いたことがあります。

     以前、コンクールによく出場する(ってか毎年出場する)某アマチュアさんに「アマチュアで、プロにもなる気がないのに、どうしてコンクールに出るの」と尋ねた事があります。そうしたら、その答えは「立派なホールで歌えるから」なんだそうです。つまり、コンクールに出場すると、ちゃんとした音楽ホールで予選本選をするわけで、だからホールで歌いたいためにコンクールに出るんだという話を聞きました。

     だったらコンクールなんていいや…と正直思いました。だって、音楽ホールで歌うなんて、私、コンスタントにやっているもの。

     でも今は、ハク付け? と言うか、自分を試してみたい気持ちも無いわけじゃないので、どこかのコンクールに出場してもいいかなって気持ちが、正直、ちょっぴりあったりします。伴奏者も手配できるし(笑)。

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