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ラ・フォル・ジュルネに行きました(最終日:5月6日の話 その1)

 もうみなさん、すっかり通常モードに戻り、ゴールデン・ウィークは遠い想い出になったのではないでしょうか? しかし、このブログはまだまだゴールデン・ウィークです。
 さて、ラ・フォル・ジュルネ、最終日のご報告がまだでしたね。簡単に書きます。

 4日に参加し、5日は休息日にして家でゆっくりしていました(年なので、連チャンでの参加は体力的に無理)。息子君も祖父母の家から帰って来て、最終日は親子三人でラ・フォル・ジュルネに参加です。

 今日は息子君も一緒なので、おとといのような強行軍では行動できません。私自身も疲れ切ってしまい体調不良です。食欲が湧かず、朝食はダイエット・ゼリーで済ませてしまいました。普段の私なら考えられない!

 何事も余裕をもって、ゆったりと行動です。朝もゆったり、10時すぎに到着。色々とフラフラとして、ミサ6に備えました。いくら体調が悪かろうと、コンサートは楽しまなくっちゃネ。

ミサ曲第6番(ミシェル・コルボ&ローザンヌ声楽アンサンブル)

 さて、本日の一発目がコレ。有料コンサート、指定席です。演奏者は御大、ミシェル・コルボです。ある意味、今年の白眉がこれ。前々から聴きたかったんだよなあ、ローザンヌ声楽アンサンブル! そう、私の興味感心は合唱団。別に指揮者やオケは誰でも何でもいいのです、ただCDでおなじみの、この合唱団の歌声を生で聴きたかったのです。

 場所はマイヤーホーファー[Hall C]と呼ばれる1490人入る大きな会場。大きな会場とは言え、音楽専用ホールだし、舞台にのる人数も多いし、オケは室内管弦楽団だし、まあ、バランス的にはちょうど良い感じかな? と考えて、こちらの会場で押さえてみました。

 と言うのも、この曲はここよりも大きなシュバウン[Hall A]という5004名も入る考えられないくらい大きなホールでもやったそうです(なつめさん、お元気?)が、さすがにいくら舞台上に人が大勢のっても、そのホールではクラシック音楽は厳しいかな…と思いまして、私はマイヤーホーファーの方をチョイス。実は昨年、そのホールで「展覧会の絵」などという、金管が炸裂するような曲を聞いたにも関わらず、音、拡散しまくりで、不満足だったからです。あれだけ広いと、音も反響できないって。あそこはロックコンサートのようにPAが入らないと厳しいなあ…、生音前提のクラシック音楽には不向きな会場だと(私は個人的に)思ってます。

 私は、基本的にクラシック音楽は(もちろん程度はありますが)会場が小さければ小さいほど良い音で聴ける…と個人的に考えてます。良い音で聴ける事は、良い演奏を聴くための最低条件だとも思ってます。特に声楽が入ったら、広い会場は致命的。いくら訓練したって、所詮は人の声。限界ってものがあります。またオケなどの器楽曲と違い、声楽系のコンサートは残響は必須。無論、程度問題ですが、残響はありすぎて困ることは無いです。ですので、声楽系のコンサートでは、会場の狭さと残響の多さをセレクトのポイントとしてます。

 というわけで、今年のセレクトではシュバウンは最初からないものとして考えてました、だって私のセレクトのバイオスとは真逆なホールなんだもん。…なんて書きながら、来年のバッハでは、Hall Aに通い詰めだったりして(笑)。

 さあ、ローザンヌ声楽アンサンブルだ!と合唱目当てで会場入りをして、演奏をワクワクしながら待ってました。始めて入るホールです。座席は一階フロアのほぼ中央。音楽聴くには一番良い場所です。

 椅子は木製で、背中のクッションは薄目。床も木製。客席は広めで前後の間隔も十分に広いし、天井も高い。ここまでは良し。本当は木よりも石の方が残響が出るのでうれしいのだけれど、まあ、木なら文句を言ってはいけないかな? ちょっと気になったのは、壁。人の身長を越える高さ辺りから、壁が木壁から金網になり、金網の向こうは何やら黒い部材に変わってます。吸音材? ううむ、残響の量をあれで調整しているのか? 良い方向に調整してくれてるなら歓迎だけどなあ…。

 ちょっとだけ不安な気持ちを抱えたまま、演奏が始まりました。秒殺です。思わず心の中で「やられた~!」と叫びました。感動した…わけではありません。むしろ逆。ガッカリしました。「やっちゃったよ、ハズしちゃったよ、ヘマったよ」と心の中のもう一人の私が叫んでます。

 遠い! 広い! 合唱聞こえない! 歌に必要な残響はほぼ無し! わざわざシュバウンを回避してこの会場を選んだのに、この人たちにはまだ大きいんだよ、この会場。うわあ、やっちゃったよ。

 結論。ローザンヌ声楽アンサンブル(以下、ローザンヌと省略)を聴くなら、東京国際フォーラムのホールは避けた方が良いです。彼らを聴くなら、教会とか音楽専用小ホールがいいですね。例えどこの音楽専用ホールでも大ホールは止めた方がよいです。

 と言うのも、聴いたところ、ローザンヌは典型的な横広がりの合唱をする団体です。声は軽く精密で各パートの声の溶け合いを重視する、そんな日本人好みの室内楽的な合唱が、彼らの演奏スタイルでした。教会のように残響たっぷりのところで演奏すると、男声は迫力をもって床を這い、女声は天上からふりそそぐように美しく響くことでしょう。また声質も細めなので、音もこもりが少なく、マイクのりもよく、録音も得意な団体でしょう。だから、CDで聴くと素晴らしいのだと思います。

 そんな残響頼りの姿勢は、構成メンバーを見ても分かる。なにしろアルトパートは男女半々よ。男声アルトと女声アルトが同数です。これって、ウチの団は教会音楽に特化してますって宣言しているようなものじゃない。ウチは教会で演奏するための団ですって宣言しているようなものじゃない。ウチは…(以下、省略)。

 だからと言ってはなんだけれど、ホール演奏は苦手と見た。なにしろ、声が舞台の上に溜まってしまって、全然客席まで届かない。届かないどころか、内声(アルトとテノール)は歌っているフレーズすらオケ(室内管弦楽団だよ、小編制だよ)にかき消されて、十分に聞こえない。しかし、会場そのものが全くクラシック演奏に向かないわけではない。その証拠にソリスト、特にソプラノとテノールは十分に堪能できた。一人の声が聞こえて、30名(ローザンヌのメンバーのおおよその数)の人間の声が聞こえないというのも不思議なもの。おそらく太めの音質でボリュームたっぷり、声を前に飛ばす巨人集団のカペラ・アムステルダムが合唱を担当していたなら、何の不足もなかったと思います。ただ、音楽性はちょっと違った方向になるでしょうが…。

 でも人気指揮者に率いられている団だからなあ…あんまり小さな会場に入れるわけには、商業的な理由から無理だよなあ。でもこれは、奏者にも観客にも不幸だなよな。合唱のソプラノなんか時々叫んでたもんなあ…。あのスタイルの合唱なら普段は絶対に叫ぶことはないだろうに…。あの会場に彼らなりに対応しようとしていたんだろうなあ…。

 ローザンヌの名誉のために書き添えておくと、おそらく彼らの演奏は耳にさえ届けば、かなり感動的なものだったろうとは推測できます。ただ、彼らの持ち味とホールの規模がミスマッチだと思ったので、私はガッカリしてしまっただけです。ホールの前の方でかぶりつきで聴ければ、おそらくこんな感想は出なかっただろうと思います。

 ではこのコンサート、全部ダメと思ったかと言うと、実は違う。テノール(もちろんソリスト)の二重唱が、なんとも天国的に美しかったのよ。私はイスに座ったまま、腰が砕けてしまいました。ああ、幸せ。これが聴けたので、合唱が期待外れでも料金分(なにしろ、ラ・フォル・ジュルネはお安いのよ)は楽しめました。至福、至福。

 まあ、至福半分、がっかり半分だったので、演奏終了時の拍手はおざなりにして、さっさと会場を出ました。お昼ごはんだよ。例によって、ネオ屋台村です。

 この頃になると、アドレナリンでも出たのでしょうか、体調も少し良くなり、私はインドシナ料理のナシゴレンとインドシナ・カレーのセット料理を食べました。例によって美味いんだかマズいんだか分からない味でした。お店の人が激辛だよって言ってたけれど、全く辛味を感じませんでした。もう辛味の感覚がマヒしてるのかしら(涙)。最終日のせいか、ネオ屋台村も少しすいているようで、アーチストさんたちがネオ屋台村のあたりをあっちこっち散歩してます。フランス語を聞きながら東南アジア系のエスニック料理を食べるというのも、ある意味、植民地っぽくって、レジャーとしては悪くない感じです。

フランク・ブラレイ&コレギウム・ヴォカーレによる男声合唱コンサート

 食事が終わったら、すっかりなじみになったテレーゼ・グローブでの有料プログラムです。ブラレイ先生(我が家ではフランク・ブラレイ氏はブラレイ先生と呼称します)に一年ぶりで会える!と家族全員で楽しみにしていました。そのブラレイ先生が男声合唱とガッチリ、ダッグを組んだコンサート、楽しくないはずがないではないですか! さっきのガッカリ感は忘れて、前向きにコンサートを聴こう!

 プログラムはオール・シューベルト。男性合唱曲ばかり10曲。その間に2曲、ブラレイ先生のソロピアノ(「3つのピアノ曲より 変ホ長調 D946-2」と「即興曲 変ト長調 作品90-3 D899-3」)が挟まります。幸福とはこの事。

 いやあ、よかったよかった。なんと言っても、コレギウム・ヴォカーレはいいね。男声合唱はいいね。舞台上は男だけ。今時じゃない風景で、なんかイメージとしてはむさ苦しいけれど、音楽は天国だね。なにしろ、トップテナーは並の女声ソプラノ程度の音域をカバーして歌っちゃうから、男声合唱と言えども、音の密度と広がりは混声合唱並。さらに全員男声だから、その声の溶け具合たるや、熱を加えたチョコレートのよう。甘さと適度の渋みと芳醇な香りでグーッです。女声と違って男声って元々倍音が豊富だから、これが合唱になって声が溶け合うと、響きがすごく厚くなるんだよね。いやあ、感激。

 それに加えて、ブラレイ先生のピアノだよ。もうチケット安すぎ!って感じです。

 ブラレイ先生のピアノは、もう最高。いいね、彼は。でも、ブラレイ先生の良さは生演奏でしか伝わらないのが残念。彼の素晴らしさは録音には全くと言っていいほど入りません。だからCDを聴いて「こんな感じのピアニストか」と判断したら大間違い。録音と違い、実演で奏でる音楽は、美しすぎるほど美しいのです。

 とにかくピアノをとても美しく響かせるピアニストなんです。それにテクニックは完璧だし、ソロもよければアンサンブルも良し。おまけにイケメンで、どこに欠点があるのだろうかと言いたくなるくらい、素晴らしいピアニストです。あ、欠点はあった。録音向きのピアニストではないってことかな? だから(録音中心で評価される日本の)音楽系のメディアにはあんまり登場しないけれど、生演奏のラ・フォル・ジュルネでは大人気のピアニストさん。一度でも彼の演奏を聴けば、その良さは分かるし、分かったから、ラ・フォル・ジュルネでは圧倒的な人気を誇っているのだと思う。ラ・フォル・ジュルネのローカルスターだもんね、ブラレイ先生は。

 また来年もブラレイ先生の演奏が聴けたらいいな。

 アンコール付きのコンサートが終わったら、ブラレイ先生はスタッフに取り囲まれてラチされてしまいました。出待ちをしてサインをゲットしようと、内心たくらんでいた妻はちょっとがっかり。仕方がないので、グラーベン広場に行くと「あれ、先生だ」。そう、広場入り口でブラレイ先生と一緒になりました。なんでもこの後、すぐにブラレイ先生はシューベルト市場でサイン会だそうです。そりゃ、スタッフにラチされるわけだ。

 いいなあ、サイン会。どーしようかな…と迷っていると、ドヤドヤと見た顔に囲まれました。お、コレギウム・ヴォカーレだ。なんでも、トラウトでサプライズライブだそうだ。サイン会もいいけれど、そっちもいいなあなんて迷ってしまったけれど、やはり心は決まっている。行こう! 青島広志氏のコンサートへ行こう!

 今日はここまで。時間的には5月6日の午前11時から午後2時半までの話でした。とにかくクラシック音楽を楽しんで聴くためには、演奏団体の特性と演奏されるホールの特性の両方を念頭においた上で、自分の趣味をチェックしてからチョイスしないと、演奏者も観客も不幸になってしまいますって事だ。しかし音楽としての指向と大衆性の両立というのは、資本主義の我が国では、ほとほと難しいものですな。では、続きはまた明日。

コメント

  1. なつめ より:

    元気です♪(笑)

    確かに国際フォーラムはどの会場でもクラシックにはあまり向かないかも。
    Cホールはまだいけるけれど、他のクラシックホールに比べると劣る部分は多いですよね。

    LFJはお祭りなので、普段聴けない(聴かない)曲を安価で楽しむことがいいのかなと私は割り切っています。
    本当は都内の著名なホールでやっていただきたいんですけどね。。。

    コレギウム・ヴォカーレ、素敵だったんだろうな。
    私は気づいたら結局器楽曲ばかり聴いてました。
    来年のバッハこそ、声楽曲中心で聴こうと、早くもリベンジ宣言です!!

  2. すとん より:

    >なつめさん

     お元気でなによりです(笑)。

     確かにお祭りなので、どこかで割り切りが必要だとは私も思ってます。だいたいチケット安いし…。

     ラ・フォル・ジュルネは知らないアーチストや知らない曲を知ることができるのが、何よりの楽しみ。実際私は、この音楽祭で、好きになった曲やアーチストがたくさんあります。

     来年はバッハです、バロックです、私は声楽曲も聴きますが、古楽器の演奏というのにも興味があります。実はまだ生で古楽器を聴いたことがないのです。ああ、古楽器演奏での四季とか、王宮の花火とか、ブランデンブルグ協奏曲とか聴きたいです。

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