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2012年 ラ・フォル・ジュルネに行ってきたよ その2…周辺エリアコンサートには、当たりハズレがあるようです

 ラ・フォル・ジュルネのマスタークラスは、今年は少なくて、一日に三講座しかやらない(例年は五回ぐらいやっていたと思います)のですが、その二回目の講座の見学をパスした私は“丸の内周辺エリアコンサート”に行く事にしました。ちょうど、ラ・フォル・ジュルネの時期に、三菱さんを中心とした丸の内界隈に本社を構える企業さんたちがタニマチになって、丸の内周辺でクラシック系の無料コンサートをあちらこちらでやっているのです。そちらのコンサートにも、なかなか魅力的なものが多いのです。

 ちょうどその時のタイミングにふさわしい感じで、東京国際フォーラムのすぐ隣にあるTOKIAというビルでピアノコンサートが開催されていたので、整理券をゲットできなかったマスタークラスの代わりに、そちらを見に行く事にしました。
 
 
伊賀あゆみピアノコンサート

 私が見に行ったのは、伊賀あゆみ氏のピアノコンサートでしたが、このピアノコンサート、ちょっと変わっていて、前半はソプラノ歌手である野宮淳子氏をゲストに迎えて、ラフマニノフの歌曲を演奏し、後半は、山口雅敏氏を迎えて、ピアノ連弾のコンサートという、変則的なピアノコンサートでした。

 会場のTOKIAは、なかなか素晴らしい演奏会場でした。オフィスビルと商用ビルの二つのビルをつないだ、吹き抜けっぽい場所で、場所的に広くて天井も高くて、静かな場所でした。深めの残響が心地よい会場で、クラシック音楽の演奏をするには、うってつけの場所でした。まるで、古い教会のような深い残響です。そこに私は、時間よりも早めに到着して、着座して演奏を聞きました。

ラフマニノフ歌曲より
  「ここはすばらしい」
  「彼女たちは答えた」
  「歌うな、美しい人よ」
  「春の流れ」

ピアノ連弾
  ガブリーリン作曲:バレエ音楽「アニュータ」より
     「ワルツ」
     「陽気な散歩」
  ローゼンブラット作曲:二つのロシアの主題によるコンチェルティーノ

アンコール(ピアノ連弾)
  ハチャトリアン作曲 「剣の舞(ピアノ連弾版)」

 このコンサートはピアノの伊賀さんの企画だそうで、主催者から「ロシア音楽を…」と言うオファーをいただいて「ラフマニノフの歌曲をやりたい!」と思って、すぐにソプラノの野宮淳子氏に声をかけてたのだそうです。で、後日、ラ・フォル・ジュルネおよび周辺エリアの他の方々の演目を知った時に、あまりに声楽のコンサートが少ない事にビックリしたのだそうです。「おかげさまで、ちょっと変わったコンサートになりましたが…」と話していましたが、そうだよね、ラ・フォル・ジュルネは声楽に冷たいよねえ…。

 ちなみに、この伊賀氏は、リットーミュージック社刊の「フルートのしらべ」の伴奏ピアノ部分を録音されているピアニストさんです。お世話になっているアマチュアフルーティストさんは大勢いらっしゃる…よね。私も結構、お世話になってます。

 ソプラノの野宮氏は、キレイな声でなおかつ力強い歌唱をしていました。野宮氏は、ラフマニノフの歌曲は、音域が広いし、伴奏のピアノが美しいし、ロシア語歌唱のせいか子音が豊かなので、好きなんだそうです。ラフマニノフの歌曲は、彼のピアノ曲ほどメロディが素直ではなく、ちょっと捻ってあって、かなり現代音楽っぽい曲だなあと、私は聞いていて思いました。

 ピアノ連弾の方は、わざと馴染みのない曲(ガブリーリンとローゼンブラットの事ね)を選んだそうです。おそらく、両曲とも“日本初演”じゃないかって言ってました。明らかに現代曲で、高尚な部分と俗っぽい部分が妙に混じった、おもしろい曲でした。

 でも、アンコールで弾いた「剣の舞」は素直におもしろかったですよ。

 コンサートを楽しんだ後は、時間的にお昼になったので、お昼ごはんを、丸の内のイタリアン・レストランで食べました。お洒落でしょ。いかにも“OL飯”って感じの味付けでございました。妻は大喜びでしたが、私的に…なんか物足りなかったです(爆)。

 昼食後は、丸ビルの七階にある丸ビルホールに移動しました。そこではチャイコフスキー展が行われていたのですが、その会場の一角でソプラノコンサートが開催されるので、それを聞きにいきました。
 
 
福成紀美子ソプラノコンサート

 会場は展覧会の片隅ですから、実にこじんまりとした小さな会場でした。座席の一つもなく、すべて立ち見。その狭い会場の狭い舞台は、グランドピアノを一台置いたら、それでいっぱい…って程度の広さでした。そんな、狭い会場での声楽コンサートって…いいよねえ。

 コンサートは、福成氏とピアノの岸陽子氏がメインで、中間部分にゲストの山中歩夢氏のピアノ独奏が入る…というコンサートでした。

  チャイコフスキー:お前に何も言うまい
  チャイコフスキー:狂おしい夜々
  チャイコフスキー:窓辺に見え隠れするのは亜麻色髪の乙女
  チャイコフスキー:6つの小品より第3番“アルバムの綴り”&第4番"夜想曲”[ピアノ曲]
  チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ イ長調“くるみ割り人形”[ピアノ曲]
  チャイコフスキー:「エフゲニー・オネーギン」より~タチアナの手紙のアリア“もう破滅してもいいわ”

 まず、福成氏のドレスがすばらしいかったですよぉ。いやあ、歌手たるもの、あれくらいハデでキラキラな衣裳を着るべきです。私は、そう思いましたね。歌は、もちろん、すばらしかったです。前半の歌曲はおしとやかな歌唱でしたが、最後のオペラアリアは、役に入ってしまったのでしょうが、前半とはまるで違った歌唱でした。声の張りも輝きも全然違いました。きっと福成氏は、オペラ歌手さんなんでしょうね。実にすばらしい歌唱でした。声が(良い意味で)心に突き刺さってきました。それを至近距離で聞けるんですから、ありがたいことです。

 ゲストの山中氏のピアノも良かったですよ。チャイコフスキーの音楽って、実に乙女チックと言うか、ホモっぽいと言うか、そういう、誇張された可愛らしさがうまく表現された、メランコリーで切ない演奏でした。ううむ、そうそう、チャイコフスキーって、こんな感じの音楽だよね。

 良いコンサートでした。で、さっそく、同じビルの一階のマルキューブで行われるコンサートを聞くために、移動しました。そのコンサートは、周辺エリアコンサートで、私が一番楽しみにしていた、ピアノのフィリップ・ジョジアーノ氏のコンサートでした。

 コンサートは座って聞きたかったので、早めの移動を心がけていたのですが、色々とあって、移動開始に手間取ってしまって、私たちが一階に下りた時には、ギリでアウトで、すでに立ち見になってしまいました(残念)。それにしても、今年は、会場の座席数が極端に少なかったです。昨年も少ないなあと思ったけれど、たぶん昨年の1/3程度の椅子数しか用意されていませんでした。その代わり、すぐそばのオープンカフェの座席スペースがとっても広くなっていました。つまり「座りたかったら、カフェに入れ」って事なんですね。まあ、三菱さんも商売でコンサートやっているわけですから、それもアリですわな。でも、そのオープンカフェもすでに満席じゃん(涙)。

 前のソプラノコンサートが立ち見だったので、二つ続けて立ち見は、腰痛夫婦に厳しく、かと言って、楽しみにしていたコンサートだったので、諦めきれず、ちょっと場所的に離れてしまうけれど、エスカレーターを登って、3階のテラス部分に移動しました。ここなら、多少距離はあるけれど、これくらいの距離なら、コンサートホールでもよくある遠さだし、何よりピアノの真正面だし、マルキューブはPAが入っているのだから、何とかなるだろうと思いました。それにテラス部分には手すりがあるので、立ち見とは言え、その手すりにカラダを預けれる事ができるので、ただ立っているよりは、カラダが楽になります。よし、見物場所は確保したぞ…。
 
 
フィリップ・ジョジアーノ ピアノコンサート

 やがて、時間になり、ジョジアーノ氏が登場しました…なんの紹介もなく。ちょっと会釈をして、すぐに曲の演奏を始めました。ピアノに向かって、手を振り下ろすと…

 き、聞こえない…。

 そうなんですよ、肝心の演奏がロクに聞こえないんです。その理由ですか? 周囲がウルサイんです。まずは、このマルキューブ、変な残響があって、楽音よりも、周囲のテナントの物音を拡声しているみたいなんです。だから、会場全体が高レベルのホワイトノイズの弾幕に包まれているような感じがします。なので、いくらピアノの音をPAで拡声しても、周囲の騒音にかき消されてしまって、たかが3階のテラスにも、ロクに音が届かないってわけです。

 音楽を聞くなら、PAが入っていても、椅子席か、そのすぐ後ろで立ち見…までですね。3階に上がったら、騒音地獄です。

 そういう意味では、このマルキューブは音楽鑑賞には、はなはだ向いていない会場です。しかし、周辺エリアコンサートの目玉的な演奏者は、必ず、ここで演奏するんですよね。だから、演奏者目当てで、この会場に来てしまうのだけれど、ここは色々な意味で、音楽を聞くには厳しいわ~。

 ジョジアーノ氏の一曲目の演奏が終わりました。何のアナウンスもなく、すぐに二曲目に入りました。その後も立て続けに演奏していましたが。私は四曲目の途中で「もう、いいや」って気分になりました。

 だって、聞こえないだもん。何しろ、ジョジアーノ氏の演奏よりも、すぐ後ろにいる外人と日本人カップルの会話の方が大きいんだもん(しかし、なんで、あの人たち、あんなに大きな声で、どーでもいいような会話をするんだろ?…あ、マルキューブ自体がウルサイからか…)。周りの人も「うるさくて、何も聞こえない…」とか言って、立ち去っていく人も結構いたし…。それに曲目紹介もなく(曲目は当日発表って事で、プログラム配布をしていたようですが、そんなもの、3階のテラスの人の分まであるわけないし…)、ジョジアーノ氏による客いじりもなく、なんか、見ていて、むなしい気持ちになりました。こんなところで、悲しくて無駄な時間を費やしているなら、次の会場へ、さっさと移動した方がマシって思ったわけです。それに腰が痛くて、素早い移動は無理だしね。

 と言うわけで、楽しみにしていたコンサートでしたが、悲しい気持ちで、途中リタイアをしました。残念ですが、仕方ないです。これだけたくさんのコンサートがあるんですから、ハズレなコンサートもあるわけですよ。

 マルキューブで音楽を聞くなら、座席席に座るか、すぐ後ろで立ち見をするところまで。そこにも入れなかったら、あっさり諦めるのが肝心です。来年からは、マルキューブの演奏は、なるべく予定に入れないようにしないとなあ…。ただ、ここには、良い演奏者が立つんだよなあ。ああ、痛し痒しだ。

 では、続きはまた明日。

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コメント

  1. おざっち より:

    仕事で、私の隣に座っている女性に、ラフォルジュルネのことを教えてあげたら、早速行ってきたようです。そしてすっかりハマってしまったらしく、この連休中にはわざわざ東京のラフォルジュルネにも行ってきたとかで、びわ湖に比べて、その規模や内容がいかにすばらしいかを語ってくれました。Wで行く人もそうそういませんよね。
    話を聞いてるうちに、私も来年は東京へ行ってみるかな、って気になってきました。

  2. すとん より:

    おざっちさん

     確かにダブルで出かける人は珍しいかも…。もっとも、同じラ・フォル・ジュルネと申しましても、開催地ごとのローカル色と言うのがありますから、どの地のラ・フォル・ジュルネもそれぞれに面白いと思います。

     東京は…規模は大きいけれど、声楽に冷たいのが欠点です。フルートは、工藤重典氏が孤軍奮闘って感じだし…どうしても周辺エリアコンサートに足を運ばざるを得ません。ま、その周辺エリアコンサートまで含んで、東京のラ・フォル・ジュルネなんでしょうね。

     そうそう、冷たいと言うと、東京は吹奏楽にも冷たいですよぉ~。やっぱ、東京は、オケや弦やピアノ中心なんです。吹奏楽を楽しみたければ、地方のラ・フォル・ジュルネの方がいいですよ。

    >話を聞いてるうちに、私も来年は東京へ行ってみるかな、って気になってきました。

     いいですね。ただ、東京でラ・フォル・ジュルネを楽しむなら、カラダが一つでは到底足りませんよ。行きたいコンサートが同時多発ですからね(涙)。ほんと、カラダが三つくらい欲しいです。

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