はい、いよいよトスティの歌曲の登場です。イタリア系歌曲で、テノールが歌う歌曲と言えば「1にトスティ、2がイタリア民謡、3、4がなくて、5に…ええい、歌曲なんてまどろっこしいモノが歌えるかー! オペラアリアを持ってこいー! アリアだ、アリアだ!」の、トスティです(笑)。
これもまた、私の大好きな曲であり、いつかは歌ってみたいと願いながら、あまりの難しさに、未だにチャレンジできずにいる曲なんです。とりあえず、聞いてみてください。
音声の録音状態は良くないですが、歌唱は最高でしょ? 歌っているのは、テノールのファン・ディエゴ・フローレスです。彼はロッシーニ歌いと呼ばれる種類のテノールですが、トスティもなかなか良いでしょ?
歌詞はこんな感じです。今回の訳詩は、私の翻訳ではなく、ウィキペディアの当該ページよりいただきました。この歌は…まだ歌ったことがないので、勉強が足りなくて訳せなかったりします(汗)。
L’alba sepàra dalla luce l’ombra,
夜明けは 光から暗闇を分かち
E la mia voluttà dal mio desire.
私の欲求から 逸楽を分ける
O dolce stelle,è l’ora di morire.
おお 愛しい星よ 滅び行く時だ
Un più divino amor dal ciel vi sgombra.
さらに神聖な愛が空からお前たちを取り除くPupille ardenti,O voi senza ritorno
燃えさかる瞳よ おお二度と戻らぬお前たちよ
Stelle tristi,spegnetevi incorrotte!
悲しき星たちよ 清らかなまま姿を消してくれ
Morir debbo. Veder non voglio il giorno,
私も死のう 昼など見たくないのだ
Per amor del mio sogno e della notte.
私の夢と、そして闇への愛ゆえにChiudimi,O Notte,nel tuo sen materno,
私を包んでくれ、おお夜よ、お前の母なる胸に
Mentre la terra pallida s’irrora.
蒼ざめた大地が露に濡れている間に
Ma che dal sangue mio nasca l’aurora
さもなくば 私の血から暁が生まれ
E dal sogno mio breve il sole eterno!
私の短い夢から永遠の太陽が生まれてほしい
E dal sogno mio breve il sole eterno!
私の短い夢から永遠の太陽が生まれてほしい
この曲は「アマランタの4つの歌」という歌曲集の中の一曲で、トスティの代表曲の一つです。この曲だけ見ている分かりづらいかもしれませんが、これは恋に苦しむ男性の心情を吐露した曲なのです。恋に苦しむ…というか、欲情にかられるというか、性欲に身悶えるするというか(笑)。まあ、そう言った、肉欲的なドロドロしたオスの歌なんです。この曲は音程の平均値がすごぶる高い曲で、それゆえに音域的にはソプラノ歌手向けの曲のように思われて、実際、キング門下では女性がよく歌っていましたが、歌詞の内容を見ると、これは女性が歌うべき内容では、全く無いですね。ってか、女性に歌わせるのってセクハラになるんじゃないの?と言うくらいに、男臭くてプンプンするような曲です。
これはぜひ、絶叫するテノールの声で歌われないといけない曲です。絶頂を目指して咆哮しないといけないのです。
昨日も書きましたが、歌曲は基本的に誰が歌ってもいいのですが、それでも作曲家が作曲する際に、特定の歌手や特定の声種を念頭に置いて作曲されている場合は、想定されてる声種で歌うべきだと、私は思います。
まあ、一流の作曲家と言うのは、たいてい男性で、男性故に女性が大好きで、女性歌手と言えば、花形はソプラノ歌手ですから、たいていの歌曲はソプラノが歌うことを想定して書かれているわけですし、実際に多くの歌曲は、ソプラノが歌った時が、一番映えるモノなんです。これはソプラノ以外の歌手にとっては、残念な事実なんです。
しかし、そんな中にあっても、ソプラノ以外の声種のために曲を書いている作曲家も若干はいます。
例えば、ロッシーニはメゾソプラノのために美しい曲をたくさん書いています。と言うのも、ロッシーニの奥さんはメゾソプラノ歌手だったからです。なので彼は“メゾラブ”なんですが、そんな作曲家は、残念ながら、少数派なんですね。ほとんどの作曲家はソプラノ歌手のために曲を書きます。少なくとも、オペラや歌曲で成功した作曲家の多くは、ソプラノ歌手を妻に迎えている事が多いので、どうしたってソプラノ向けの曲を量産するわけです。
で、トスティです(笑)。実はトスティは、ソプラノ向けの曲をあまり書いていません。トスティが書いた曲の大半と言うか、そのほとんどはテノール向けの曲なのです。なぜなら、トスティ自身がテノール歌手であり、テノール歌手というのは、ほぼ例外なく“自分大好き人間”だし、基本的に“大馬鹿者”でもあります。そんな“自分大好き”で“大馬鹿な”テノール歌手が作曲家になって、バンバン歌曲を書けば、そりゃあ、そのほとんどがテノール向けの曲になるのは、火を見るよりも明らかですね、はい。
当時、オペラ全盛の時代にオペラを1曲も書かずに、歌曲ばかり書いていたのだって…絶対に、自分大好きで、自分が歌うためだけに曲を書いていたから…に違いありません。ま、テノールなんて、所詮、その程度の人間ですから(笑)。
なので、世界の名曲のほとんどはソプラノのモノだけれど「トスティの歌曲と、イタリア民謡だけは、テノールのもの」であると、私、固く信じております。
ビバ! トスティ! トスティのおかげで、我々テノールはレパートリーに困る事がないのでありました、感謝。
↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村
コメント