ああ~、盗んだバイクで走り出してェー!
映画「うた魂(うたたま)」を見てきました。公式ホームページはこちらです。
いやあ、正統的な音楽系青春コメディー映画でした。それもテーマは合唱ですよ。大いに期待して見に行き、十分満喫して帰って来ました。
私はもちろん、映画関係者ではないし、あまり誉めて『工作員認定』されても不愉快ですが、やっぱり誉めざるをない映画ですね。制作者チームは、本当に合唱が好きなんだなあ…って思いました。デフォルメされていますが、いずれの人物、団体も「いるいる、こういう人、合唱団にいるよねえ…」みたいな感じでおもしろかったです。
主役のカスミちゃんというキャラは、典型的なソプラノ・キャラで笑っちゃいました。ああいう勘違い女王様って、いかにもソプラノって感じ? またコンクール予選に集まってくる団体の様子も、いかにもって感じで大笑い。特にマスクつけてスプレーシュッシュッの団体が出てきた時は「スタッフはかなり濃いめの団体も取材してる…やるな」と思ったものです。
主役の七浜高校の合唱部の練習風景も、あるある、高校の合唱部ってこんな練習してるね、ってな感じです。よく描けています。
コメディーなので、話の内容はふざけてますが、制作者の態度は、とても真面目で真剣なことが分かります。
もちろん、人によっては欠点ととらえる部分もあると思います。例えば、七浜高校合唱部の歌唱力。全国大会に出場する学校という設定ですが、決して下手ではない(むしろ素人のタレントさんたちが歌っている事を考えれば、すごく上手)けれど、全国大会出場?って感じの歌声ですね。なんか、どこかシロートっぽい歌声。でも、私はそこがむしろリアルに感じられていいなあと思いました。
主役の子は美人という設定で、もちろん演じる女優さんも美人なんだけれど、まわりの脇役にもたくさん美人の子がいるので、主役が美人という設定に説得力が感じられない。でも、それは映画なんだから当たり前だよね。
映画の中で一番よかったのは、湯の川高校合唱部の歌う「15の夜」。ジーンときました。そのシーンが主役の七浜高校じゃないところも、映画的にどうかと思う。けど、良いものはよいです。
ゴスペラーズがやたらと大写しになるのも、ストーリーとは全く関係ないわけだけど、歌の背景の絵なんだから、なんでも良いと言えばなんでもよい。
テレビクルーという、全くの他者が出てくるのですから、この人たちにもっとセリフをあげてほしかったなあ、そうすればもっと合唱界のおかしさが表現できるのに…とも思いましたが、これも全体の尺やバランスを考えれば、やむをえないかな。
それらの、小さな欠点は、どうでも良いのです。
若者の成長を描いた映画としては、立派に平均点以上の出来だと思います。音楽面でも、しっかり合唱してます。とりあげた曲は、すべて日本語詩のもので、民謡・J-POP・洋楽・邦人作曲家の合唱曲など多岐にわたっていました。いわゆるクラシック系の合唱曲は記憶にありません。この辺の事情が、日本の合唱はクラシックではないと言われる由縁(それでいいのでしょうネ)でもあるところでしょうね。
出てくる合唱団も、ストーリーの都合、学校の合唱部が大半ですが、たいていが女声コーラスか男声コーラス。混声合唱の団は、妻は「一つだけ混声の団があったよ」と言ってましたが、私の記憶にはありません。混声合唱って、珍しいのでしょうかね…。私は混声合唱こそが、合唱の王道であり、覇道であると信じているのですが…少数派なんでしょうね。
それから、湯の川高校の権藤部長は、実に怖くてカッコいいです。
映画を見終わったあとは、歌いたくなります。ハモりたくなります。そんな映画です。
この映画、ヒットするかなあ…。ヒットして、若者の間で合唱、流行らないかなあ…、流行るといいなあ…。今の日本の合唱界の実情は、高齢化が著しく進み、若い人が合唱を始めないと、文化としての合唱が廃れてしまいそうなのが実情でしょう。なんとか、この映画で、日本の合唱文化が継続されてゆければいいですねえ。
ああ、もう一回、見たいなあ。きっと何度見ても、楽しい映画だと思う。今度は、息子君を連れて見に行こうかな。
コメント
「盗んだバイクで走りてえ」って言うのは、尾崎豊ですか?バイク盗んじゃ、いけません。あはは。
この映画は、ちょっと気になってはいたんですよね。
昔は(独身で若かった頃)仕事終わってから、最終の上映を、見に行っていました。週に一日、お稽古のように日を決めて、新聞見て、見に行く映画を決めるんです。仕事の大きい荷物を持っているのに、ハンバーガー(マックとかロッテとかではなく、ライトバンで売っている、とっても美味しいハンバーガーでした)と、ビールを映画館の近所で買って、至福の二時間。幸せだったなあ。今はもうそんな自由にはできないので、せめて、末の双子と見に行ける物を。先月は、「4分間のピアニスト」を見に行きました。バリバリのドイツ映画でしたが、生きていく姿勢と言うか、過酷な状況でも信じることで救われるって言うか、一生懸命な心は通じるって言うか・・・小学4年だった彼らは、「(話は)分かった」って言いましたけど。
7月に、外山啓介さんのリサイタルを、聴きに行きます。小学生と言っても、入場料は同じなので、財政厳しいです。でも、とっても楽しみ!!
>chikoさん
うた魂は本当に良い映画です。子ども連れで見に行っても何ら問題はありません。無論、DVDになってから見ても何ら支障はないタイプの映画(つまり、音響とか映像とかがウリというわけではない)ですが、「合唱は十分、人を呼べるコンテンツ(つまり合唱をテーマにした映画を今後も作ってOK)である」と、制作者や業界に思ってもらえるためにも、できるだけ映画館に足を運ぶべきだと、個人的に思ってます。
どんなに良い映画でも、客の入りが悪ければ、同じようなテーマの映画は作ってもらえませんからね。
それはともかく、うた魂、お薦めです。
外山啓介さん。不覚にも知らなかったのですが、新進気鋭のピアニストさんですね。7月のリサイタル、演目がなかなか素晴らしいですね。私は歌のないコンサートでは爆睡する人なので、ピアノコンサートなどには行けない人なんですが…。
これ、面白そうですね。吹奏楽熱に火をつけた「スウィングガールズ」(まだ見てませんが)みたいに、合唱熱に火がつくといいなぁと思います。
ストーリーとは関係ないですが、NHKの合唱コンクールを見ていても、混声合唱って少ないです。地域ごとの特性もあるんだろうけど、男子が少ないのはブラスも同じなんですよね~。以前、『学校へ行こう!』だったかな?番組で男子部員が1人しかいなかった合唱部が、部員を集めて混声合唱でも大会に進むというのをやってました。(女声合唱でかなり上位に入っている部だそうです。部長さん女子だったし)
>ことなりままっちさん
学生の場合、混声合唱が少ないのは、彼らが思春期だからでしょうね、必要以上に異性の目を気にするから、一緒に歌なんか歌えねえぜ!(or 歌えないわ!)ってところかな。
合唱に限らず、あの年頃は異性の目があるだけで、萎縮したり、図に乗ったり、媚売ったり、虚勢張ってみたり…男女共学って奴にも、色々と問題あるような気がしますよ、私。
それはともかく、音楽をやる男子の絶対数が少ないというのも問題なんでしょうね。だからブラバンも男子が少ない。男臭い男の子は、たいてい、音楽よりも運動だよね。
日本では、音楽は婦女子のたしなみって文化もあるし、なかなか男子にはキツい部分があります。年を取って、色気が抜けてしまえば、そんなの関係ないのだけれどネ。
一番上の娘が小学生だった頃、相方の転勤で、離島にいました。そこの少年少女合唱団は結構上手で、毎年夏休みの終わりに、定期演奏会をしていました(今でもしています。ホームページもあります)。小学校一年生の時、定期演奏会を見てすぐ入団し、次の週から練習しました。その時は、一年生の入団は初めてのことで(今は、年長からいるようですが)、随分かわいがってもらいました。(本当は、私がしたかったんですよね)長女は、高校でもコーラス部に籍を置き、大学でも、音楽部(混声コーラス!!)です。
中学校で男子の部員がいないのは、声変わりのせいでしょうね。そして高校でも男子の部員がいない、もしくは少ないのは、中学の時に合唱の楽しさを知らずに来たから。長女の高校では、男女比は、半々くらいでしたよ。まあ、全部で10人くらいでしたけどね。
大学も男女比は半々くらいのようですが、定期演奏会では、音楽劇もしているようです。(見に行けないので、ビデオを持ってきてくれました。)
合唱でも、合奏でも、音を合わせるのは楽しいですもんね。
末の双子は、中学校でクラス対抗の合唱祭で、ピアノ伴奏をすることが、目下の目標なんですって。
>chikoさん
へえ、高校で男女半々ですか…。いるところにはいるんですね、私の認識不足でした。もちろん、地域差というのはあるんだろうけれど、歌好きの男子がまだまだいるって、ちょっとうれしいな。
合唱も合奏も、要はチームなんですよね。チームで何かをなし遂げる楽しさって格別です。そういう意味では、音楽もスポーツも何ら変わらないものだと思います。だから、スポーツに行ってる男子の何割かが音楽にも注目してくれたらいいなあとオジサンは思います。
ピアノ伴奏、大切な役目です。コーラスを生かすも殺すもピアノ次第ですからね。その役になれるといいですね、お嬢さん。
ごめんなさい。末の双子が男の子って、書いていませんでしたか。すみません。ママ、ママってまだついてきますが、いつまでなんでしょうねえ。いつまでもそれでは困るけど、早いのも寂しい。男の子のママの悩みですよね。初めてです。こんな気持ちになるのは。
>chikoさん
これは失礼。「音楽をやる子=女の子」っていう偏見が私にもあるみたいです。ウチの息子君も音楽をやる子なのですが…反省。
おもしろそうですね。
他のブログの方も書いていらっしゃいました。
テレビのハモネプも見たかったのですが~。
>Ceciliaさん
うた魂、おもしろいですよ。とびっきりってほどではありませんが、音楽をやっている人、特に合唱経験者なら、大いに楽しめること、保障しますよ。
客もそこそこ入っているみたいなので、暇を見つけて映画館で見ることをお薦めします。
「15の夜」は、泣けます(マジで)。