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高音への跳躍

 声楽のレッスンの続きです。

 発表会の相談でレッスン時間を使ってしまったので、今回はハミングは省略。でも、発声練習は割りと丁寧にやったかもしれません。事前に、まだ医者通いをしている事と、数日前まで寝込んでいた事などを伝えたので、先生なりに気を使ってくださったようです。一つ発声練習するたびに「ほう」とか「へえ」とか言いながら、何やら確認しながら進めてくださいました。おかげさまで、歌うのがだいぶ楽になりました(状況として、ダメな部分は相変わらずダメなので、無理はしませんが)。

 発声練習も終わったので、さっそく曲の練習に入りました。

 まずは、ボノンチーニ作曲の「Per la gloria d’adorarvi/お前を賛える栄光のために」です。で、レッスンを開始しようとしたところで、先生からひと言。「今日は“愛の妙薬”の楽譜を忘れずに持ってこようと思ったら、他の曲の楽譜を全部忘れてきてしまいました…」と言うので、私の使っている楽譜をピアノに置いて、一つの楽譜を先生と一緒に見ながら歌うというスタイルでレッスンをしました。

 ピアノはアップライトです。私はそのそばに立っているわけです。楽譜をピアノに置くと、ピアニストは楽譜が見やすいでしょうが…私は楽譜が見づらくて仕方ないです。だって、楽譜の高さが腰の高さぐらいなんですよ。おまけに、距離的には1メートルぐらい離れているわけだし…、私は老眼だし、視力も弱いし…。楽譜を見ようと深々としたスタイルになれば、もちろん歌うのは無理だし…ううむ、かなり大変だな。

 という訳で、基本的に暗譜で歌いました。暗譜が怪しいところだけ楽譜を見たのですが、やっぱりきちんと楽譜が見えないので、あれこれデタラメに歌ってしまいました。特に歌詞は壊滅的にダメでした。

 そんな状態でのレッスンでした。まあ、それでもやればできるわけです。

 今回注意されたのは、メロディーが上下に動いても、それにつられずに、息は常にまっすぐに出して歌いなさいという事です。まあ、これは気をつけていれば、すぐに改善される点なので、私の心がけ次第てっ感じです。で、この曲は今回で終了です。

 次は、発表会でも歌う、モーツァルト作曲の「コジ・ファン・トゥッテ」のテノールアリアである「Un’aura amorosa/恋のそよ風」です。

 この曲は、声の良し悪しとか強さとか感情とか情念とか勢いとか…そういうイタリア・オペラ的なノリではなく、あくまでも冷静にしっかりカッチリ歌わないと歌えないんだそうです。ある意味、声楽的な曲ではないんだそうです。だから、声楽的なノリは通用しないのです。この曲は(モーツァルトの曲全般に言えるそうですが)器楽的な曲なんだそうです。ですから、声も一つの楽器として扱えないといけないのです。

 で、この曲のモチーフは“高鳴る恋心”なわけで、それを音楽的には上行跳躍で表現しているわけです。つまり、やたらめったらに、高い音符への跳躍があっちこっちで使われているわけです。だから、このアリアは“高音への跳躍”が得意ならば、何てこともない曲なんです。

 “高音への跳躍”…楽器だって難しいよね。うっかりすると、音がひっくり返ってしまいます。アマオケなんかだと、ベートーヴェンの第九の四楽章のホルンの独奏部分なんて、上行跳躍のところで、たいてい音が裏返っているわけだしね。フルートだって、1オクターブの跳躍とか、やっぱり難しいわけです。

 楽器演奏でも難しいのに、それを声楽で、それもバンバン連発するのが、このアリアなわけです。こりゃあ大変だ。

 で“高音への跳躍”ですが、天才的な歌手ならば、何も考えずにピャッと出来てしまうのでしょうが、そうでない凡才は、きちんとテクニカルに歌わないとできません。まあ、1回とか2回なら、勢いでどうにでもなるかもしれませんが、このアリアぐらい連発されると、テクニカルに歌わないと、いずれ破綻して、結局歌えなくなってしまうのです。

 今回のレッスンでは“高音への跳躍”をするためのテクニカルな練習をしました。それはいわゆる“息を回して歌う”という歌い方です。

 よく、アマチュアの声楽発表会で、自分の前に手を出して、それをグルグル回しながら歌っている人がいるでしょ? あれは一生懸命、声を回そうとして、イメージの力を借りて行っているわけです。あのテクニックを着実に身につけましょうってわけです。

 “高音への跳躍”をテクニカルに行うために、息を回して歌うことは大切ですが、別に腕をグルグル回す必要はありません。あれはあくまでもイメージ的な事であって、しっかりポイントを押さえて歌えば、それでOKなんです。ただ、そのポイントを押さえるための手助けが、例の腕グルグルなわけです。

 まず息を回すためには…

 1)喉仏をしっかり下に下げる。
 2)腰部の背筋をしっかり膨らませて、一度横隔膜を下に引っ張る。
 3)その状態をキープしたまま、さらに背部の背筋を外側に引っ張る。
 4)ノドの奥を広く開き、口蓋垂を思いっきり上に引っ張る。
 5)腹筋を絞込み、息を思い切り吐き出して声にする。
 6)声はしっかり息に乗せ、低音から高音に向かって、ポルタメントをかけるように音程を上げていく。
 7)最終的に、声は前に向かってビームのように出す。

 これが“息を回す”というイメージの中で、実際に行われる身体活動です。ですから、成すべきことが分かった上でイメージを使うのなら、とても有用な方法ですが、やるべき事が分からずに、ただただイメージだけで歌うと、あれこれ抜けてしまいそうですね。

 とにかく、このようなやり方を用いる事で“高音への跳躍”を安定して行えるようになるわけです。

 だから、今回、私がこのアリアを通して学ぶべきことは、この“息の回し方”って奴です。息の回し方をって奴を徹底的に学び、得意になると、このアリアが楽に気持ちよく歌えるようになるわけです。いやあ、それは大変だな。

 でもね、こういう声楽テクニックを教えてもらうと、やっぱり嬉しいですよ。以前の先生は「すとんさんは、すぐにコツを見つけようとするけれど、歌に近道はないんだよ。とにかく、歌って歌って何度も歌って身に付けるしか無いんだよ」と言って、テクニックの類を教えてくれない…と言うよりも、テクニックを否定していたからなあ。彼は自称“天才”でしたから、自分はテクニックなど習わなくても歌えたんでしょうが、私は自称でも他称でも“凡人”でしたから、そんな暗闇の中に放り出されるような事をされると、なかなか前に進めないんですよ。コツでもテクニックでも、そういう暗闇を照らす灯火と言うか、拠り所になるモノが必要なんだよなあ…。

 そうそう、昨年の発表会で私の二重唱の相方を務めてくださったNさんが、お教室をお休みする事になりました。昨今、F先生の方は生徒さんがドンドン増えているそうなので、Y先生の生徒さんが減ってしまうと、なんとなく肩身が狭い(分かります)ので、Y先生、生徒さんの募集を掛けたいのだそうです。とは言え、Y門下は、初心者歓迎って門下でもないし、基本的には関係者の紹介によって入門するタイプ(私自身もNさんに紹介していただいて門下に入ったわけだし…)の門下なので、生徒募集と言っても、そんなに簡単な話ではありません。

 今、私の身近にいる人で、声楽の先生を探している人って…いないよなあ。妻は、数人の友人に声をかけてみると言ってますが…。まあ、そんなわけで、リアルな私を知っている人で、ぜひY先生に声楽を習ってみたいという方がいたら、ぜひ連絡してください(笑)。

 あるいはお悩みの方とかね、例えば「今の先生は悪くないのだけれど、なんか行き詰まっているんだよなあ…」と感じていたら、先生の替え時かもしれませんよ。

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コメント

  1. のんきなとうさん より:

    こんにちは。
    自分も、Un’aura amorosaを学び始めました。レッスンでは別の曲を始めたばかりなので先生には言っていません。ひとりで楽しんでいます。

    たしかに、上のAがバンバン出てきますね。自分が歌で使える最高音がHなので、大丈夫なはずなんですが、跳躍のせいか、Aでも油断するとひっくり返ります(笑)

    声を楽器として、ですか。難しいな。
    声楽的なノリではないかもしれないですが、軽く歌えるといい曲ですね。

  2. アデーレ より:

    またまた、私の興味津々な記事を書いていただいて嬉しいです!
    息を回す?いわゆる、ジラーレって奴ですか?
    本当に難しんですよ!アペルタとキアーザの関係とか関連事項でしたっけ?ジラーレするのってカヴァーともいいますか?とにかく、息を回す、早く会得したいですね~
    私の場合、ジラーレしないで高音ピゅーとだし、ハイDから頭打ちになってます~。ジラーレみにつけてソプラクートを出したいです(涙)

  3. たまごっち より:

    こんばんは。
    コツの話・・・うんうん、わかるー!と、画面の前で頷いてしまいました。
    私はあまりレッスンではコツ的なことは習わないので、ネットでコツコツ
    探しては実践しています。(それでここのブログも見つけました)

    簡単にできるようになりたいから知りたいんでなくて、できるようになるための
    きっかけとして知りたいんですよ~。
    何度練習しても、「よくある間違い」にはひとつ残らず足跡を残す癖に
    「正解」には、どうしても辿りつけない万年迷子です。

    ネットのお蔭で楽器ができる私・・・。今の時代に生まれて感謝、感謝です。

  4. すとん より:

    のんきなとうさん

    >自分が歌で使える最高音がHなので、

     いいなあ…。私は“上の出ないテノール”なので、歌で使える最高音はGですよ、全く情けない。なので、この曲は、自分の最高音よりも高い音がバンバン出てくる歌なんで、そりゃあ大変なわけです。で、今現在の自分のやり方では出ない音だから、息を回して、なんとか出すわけですよ。ですから、私にとって『息を回す』というテクニックは、楽をするためのテクニックではなく、不可能を可能に変えるためのテクニックなんです。

    >軽く歌えるといい曲ですね。

     ほんと、そう思います。今はヘトヘトになってしまい、最後まで歌い切ることなど出来ません(涙)。まだ、脱力が足りないんだろうと思うんです。

  5. すとん より:

    アデーレさん

     ん? ジラーレ…なのかな? まあ、私はそのあたりの用語については、あまり気にしてませんが、そうかもしれませんね。

     私の声は、基本的にはアペルトなんです。だから、上が出ないんですね。ジラーレを学ぶ事で、アペルトのままアクートに行けたらいいなあって思ってます。もちろん、最後の最後は、キウーゾしないといけない事は理屈では分かっていますが、それは最後の最後であって、なるべくアペルトのまま歌いたいって思ってます。

     つまり、あけっぴろげの声のまま、どこまでも高く歌いたいんです。お馬鹿なテノールになりたいんです。へへへ。

  6. すとん より:

    たまごっちさん

    >簡単にできるようになりたいから知りたいんでなくて、できるようになるための
    きっかけとして知りたいんですよ~。

     そうね、私もそんな感じかな? 不可能を可能にするために、その方法を知りたいんです。『あらまほしきは先達なり』です。先生に習っているのは、遠回りをせずに最短で正解にたどり着くためなんですよね。なにしろ、こっちとら、人生そんなに多くは残っていないんだからね、焦るわけですよ。だから、コツでもテクニックでも、あるなら遠慮なく出してくれ!って感じです。

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