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演歌の心でクラシックを歌う

 声楽のレッスンに行ってきました。

 本番も近いし、レッスンは貴重だし、いつもなら心ウキウキとレッスンに向かうのですが、今回は仕事が忙しい上に、休日出勤が続いて体力的に全く余裕がなかったので、お教室に向かうタクシーの中で「今日はこのままレッスンをバックレちゃおうかな…」なんて考えてしまいました。いやあ、ホントの話、泣きたくなるくらいに疲れていたんですよ。(そんな日々が続いているから、疲労臭が出ちゃうんだろうなあ)

 でも、頑張ってレッスンに行ってきました(エライ!)。

 今日もピアニストさん付きのレッスンでしたが、ピアニストさんが到着するまで、約30分間ほど時間の余裕がありました。そこで、その時間を使って発声練習をしました。

 まあ、発声練習と言っても、だいたい、いつもと同じメニューをやるわけなんですが…。

 最初はハミングからです。いやあ、ハミングって、実に気持ちいいですね。つい、この前までハミングが大嫌いだった私とは思えません。それくらいに、どこで声を響かせるかって、大きな問題なんです。響きが下がっていると、ハミングは気味悪いです。でも、きちんと響きが上がっていると、ハミングって気持ちいいんだよなあ。だから、ハミングをする事で、きちんと響きが上に行っている事が確認できるわけです。ハミング、大切だな。

 ハミングの後は、普通にいつもの発声練習(ってか、発声に関する筋トレ)をしましたが、今回からは、いつものメニューに、長めのフレーズを歌う発声練習が加わりました。狙いは…上昇音階では、音程が上がるたびに、支えをしっかり入れる事を練習をし、下降音階では、クチの奥を広げたまま&支えをある程度入れたまま、音程を下げていく練習って奴をしました。特に上昇音階で“少しずつ支えを入れていく”と言うのが、案外難しい、どこまで上がるのかを計算した上で、ゴール地点で目一杯になるように支えを入れていくなんて、たかが発声ですが、きちんと頭を使って計画的に出来なきゃいけないのです。どこぞの会社のCM文句じゃないですが「ご利用はご計画的に」って感じです。で、最後の最後は、声をクルリと回して出すのも忘れずに、です。

 ピアニストさんがまだ到着しなかったので、先生と二人で、トスティ作曲の「Ideale/理想」をやりました。

 まずは音色と言うか、声色の使い分けについて、もう少し気を配った方がいいと言われました。

 歌うとき、同じ音色、同じ調子のまま、一本調子で歌うのではなく、歌詞の内容に応じて、声色を変えたり、声の調子を変えたりと、より演劇的に歌うようにしましょうと言うわけです。

 で、先生からアレコレとアドヴァイスをいただいて思った事は「要するに、J-POPではなく、演歌のように歌うんだな」って事です。もちろん、様式だとか歌唱テクニックとかは違うのだけれど、歌の中に情念をわかりやすく込めて歌い上げると言うのは、演歌と共通するモノだなあって思ったわけです。

 トスティは演歌ではないけれど、演歌の心で歌えば、よりよく歌える…と、まあ解釈したわけです(間違っていたら、ごめんなさい)。

 それと、情念うんぬんと別で、テクニック的なアドヴァイスとして、低くて細かい音符の箇所は暗い音色で歌い、高くて見晴らしの良い箇所は明るい音色で歌う事なども注意されました。あと、細かい音符に細かく歌詞がついている部分を過剰に滑舌よく歌うと、違和感がある事も注意されました。(クラシック系歌手は滑舌の良すぎる人が多いので注意です)

 バリエーションで使う、高いAの発声を注意されました。ポイントは、Aに至るところで、どれだけノドを開くことができるか…なんだそうです。なので、そこに至るまで、何も考えずに高いポジションで歌い続けていて、そこからいざノドを開こうとしても、すでに高いポジションにいるので、そこからノドを上に開いていくのは無理があるわけです(でも、その無理を無理やり押し通そうとしているのが、現在の私なんですね)。

 そこで、高いAに移る前、できればフレーズなどの単位で、その前の箇所にいる時に、ポジションは高いままでも良いのだけれど、事前にノドを思いっきり下に開く必要があります。当然、何も考えずにノドを下に開けば、声は太くなって、ポジションが下がって、声が胸に落ちてしまいます。しかし声を胸に落としてはいけません。なので、気持ち的には、ポジションは高いまま(それでもいくらかはポジションが下がってしまいます)、ノドを下に開いて、そこから更にノドを上に思いっきり開いていきます。

 分かりづらければ、高音に移動する前に、ノドを一度“閉じる”と考えても良いかもしれません。ノドを一度閉じ、高音に移動する際に、ノドは閉じたまま、改めて上に引っ張って開けることで高音にトライしましょうって事です。

 なんか、言葉で書くと、全く違うことを書いているようですが、実は同じことなんです。高音Aぐらいになると、普通にノドを開いても出せない音なので、そこを出すためには、ちょっとばかり姑息な事をして、普通以上にノドを開くようにしましょうって事なんです。たぶん、矛盾して読めるのは、私自身がまだきちんと事情を理解把握していないからなんだと思います。でもそういう事なんです。

 高い声を出すために、一度、声のポジションを少々下げて、そこから改めてノドを開きます。あるいは、高い声を出すために、一度ノドを閉じて、改めて引っ張ります。

 どっちにせよ、甲高いテノールっぽい声のまま高音に行くのではなく、一度、倍音の多い、バリトンっぽい声にしてから、そこからグワーッとジャンプして高音に行くんです。難しいですね。

 まだ時間があったので、ヴェルディ作曲の「椿姫」の二重唱「Parigi, o cara, noi lasceremo/パリを離れて」のテノール部分の確認をしました。

 確認と言っても、この歌、リズム的に歌えないわけではありません。単に、音程を外す箇所と、音程を間違える箇所があるので、その箇所の確認をして、正しく歌えるようにしましょうってわけです。

 音程を外す箇所は、私の中にある“歌の音程のイメージ”があやふやな箇所です。音程と言うのは、イメージがはっきりしていれば、そんなに大きく外すものではありません。なので、音程を外すのは、そのイメージがあやふやなんです。なんであやふやなのかと言うと“耳慣れない”からです。

 そして音程を間違える箇所は、たいてい、テノールではなくソプラノのパートを歌ってしまって間違えるんですね。

 「パリを離れて」なんて曲は、よく知っていて、耳慣れている曲なんですね。なので、耳で結構覚えているわけですが、この“耳で覚えている”というのが厄介で、私が耳で覚えているのは、よく耳につくメロディーの箇所。つまり、ソプラノのパートを無意識に覚えているわけです。で、私が歌うべきテノールパートってのは…よく聞こえませんから、耳で覚えているという事がなくて、歌の練習では、改めて音取りをしてテノールのパートを覚え直すわけです。

 でも、人間と言うのは悲しいもので、慣れがあるわけですから、いざ歌い始めると、耳慣れたソプラノパートのメロディを歌ってしまいます。これが“間違える”の正体ですね。で、「ソプラノパートを歌っちゃいけない、テノールパートは別のメロディなんだ…」と思って、ソプラノとは違うメロディを歌おうとして、迷路とか袋小路とかに入ってしまうと“音を間違えてしまう”です。

 悲しいですね。音に関する記録力とか、絶対音感とかがあると、こういう惨めな間違え方はしないんだろうけれど、私のような、読譜力が低くて、音感の鈍い人間で、なおかつ音楽聴衆歴がそこそこあると、どうしても“耳で覚えてしまった”メロディをついつい歌ってしまうわけなんですね。ほんと、悲しいですよ、ぷぷぷ。

 それに加えて、メロディのイメージは正しいのだけれど、結果的に音程がぶら下がってしまって届いていないという間違い方もあります。これの原因は『力みすぎ』って奴です。力んで、ノドに力が入ってしまうために、ノドが不十分にしか開かず、その結果、音程が下がってしまうわけです。

 ノドに力が入ってしまうのは…不安だからです。その音程で歌えるか不安だから、その不安を打ち消そうと、ついつい力んで歌ってしまってドツボにはまるわけです。

 「Asまでは余裕で歌えるはずなんだから、もっと軽く歌いましょう」と先生に言われました。そうなんですよ、今の私、Asまでは、実用音域なんです。だから、変な事さえしなければ、Asまでの曲ならキレイに歌えるはずなんです。それが失敗するのは…変な事をしちゃうからです。

 気をつけないといけませんね。

 それにしても、音程の跳躍って難しいね。上に飛ぶのも難しいけれど、下に下がるのは、もっともっと難しいです。

 そんな事をしているうちに、ピアニストさんがやってたので、ピアニストさんを交えてのレッスンとなりました。

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